患者の物語を重視するとは?

患者の物語

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医療の新しい考え方



医療において「NBM 」(Narrative Based Medicine)「患者の物語を重視する医療」という現在注目を集めている新しい考え方があります。

NBMは、患者ひとりひとりが抱えている個別の問題や背景を把握しながら、より適切な医療を提供しようという考えに基づいて行われます。



病気を見て人を診ず



しかしながら、現在の医療現場は医療側に余裕がなく、患者の声に耳を傾ける余裕はほとんどありません。このため、病気に対する治療ということに主眼がおかれ、おのずと治療もそういう方向性になってしまわざるを得ません。

病気だけ治療する医療は、医学データに基づく治療が行われます。すると同じ治療でも患者さんの生活全般(QOL)は違っていますので、治療の成果も変わってきます。

心臓に病気が見つかり心臓だけを治療して医師は完治したと思っていても、患者はまだ痛みを感じるかもしれませんし、動機が起こり心配で不眠になるかもしれません。


NBMでは

・患者の思いや悩みを聞く
・患者の希望する治療

を聞き、その患者さんにベストな治療法を提供してゆきます。



ナラティヴとは



医師や看護士の前ではなかなか患者の本音は出しにくいものです。そういった中でも看護士が患者さんの状態を記録している日誌には、患者さんの様子(物語)が現れる一つの例だと思います。

医療や科学で使われるような専門用語には、人間の生き様のような“生きている言葉”は反映されず、冷たい印象を受けます。

患者の立場になると、自分の言いたい事を言い出せなかったり上手く言えなかったりします。そういった患者さんから、本当の声を物語として引き出すのが「ナラティヴ」といえます。

同じ病気でも、患者の思っている事と医者のとらえている事にはギャップがあります。

例えば、狭心症という病名では患者側は不整脈が狭心症と思っていても、医者は心臓の筋肉が酸素不足になっている状態を、ふたりとも【狭心症】と思っています。

しかし、もう少し話を続けることで病気の概念の違いに気づき、病気を正しく認識してお互いが歩み寄ることが「ナラティヴ」の大事なポイントになってきます。



伝えるポイント



患者側は医療の専門家ではありませんので、思ったことや感じていることを詳しく伝える事が大切です。

患者の物語のなかには、病気による症状とそれに伴う痛みや不安、心配などが含まれています。

得てして医療側は病気だけを治療してしまい勝ちですが、患者は病気とともに痛みや不安も治して欲しいと思っています。

このように病気の捉え方は、人間全体をとらえてゆかないと本当に満足のゆく治療にはつながってゆかないのです。
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01 患者の物語を重視するとは?
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