都農町の肉用和牛繁殖農家で、母牛3頭が家畜伝染病の「口蹄疫(こうていえき)」に感染した疑いが強いことが分かった。県は同日、東国原英夫知事を本部長とする対策本部を設置した。牛の移動・搬出区域を設定し、二次感染と風評被害を防ぐとともに「万一、感染した牛の肉を食べても人体にはまったく影響ない」と不安解消に努めている。【荒木勲、小原擁、川上珠実】
■県
県は家畜伝染病予防法に基づき、発生が確認された農家から半径10キロ(対象1市3町)を「移動制限区域」とし、牛などの移動を一切禁止した。また同半径20キロ(対象2市6町)を「搬出制限区域」とし、牛などの搬出を禁止した。これに伴い、日向市2カ所▽高鍋町▽新富町--の計4カ所の国道などに関係車両に対する消毒ポイントを設けた。さらに児湯地域家畜市場での競りを当面、禁止する措置を取った。期間はいずれも感染した牛を殺処分するなど防疫対策が終了してから3週間としている。
■家畜市場
児湯家畜市場(新富町)では、今月23~25日に予定されていた競りを中止した。3日間だけで取引高約5億4200万円(子牛1355頭分)の損失が出る見込み。奥野福見参事は「市場と農家にとって大きな打撃だ。感染が広がる可能性もあり、どのくらいの損失が出るのか先が見えない。これ以上、広がらないことを願うしかない」と話す。また「早く出荷しないと餌代がかさむし、月齢が超過すると市場での値段も下がる」と不安そうに語った。
また10年前の流行については「県や市から対策のために補助金が出されたので非常に助かった。今回も素早い対応をお願いしたい」と話した。
■畜産農家
川南町川南で、75頭を飼育する大山清子さん(58)は、10年前にも口蹄疫騒動を経験。23日から始まる競りでは4頭を出荷する予定だった。
「今は牛の価格が安い割に、餌代などの経費はかかる。ギリギリのやりくりなのに……」と声を落とした。「伝染病は目に見えないので、どれくらい広がるかのか怖い」と話した。
県などと宮崎牛のブランド化を進めてきた「より良き宮崎牛づくり対策協議会」事務局のJA宮崎経済連肉用牛課は「とにかく風評被害が心配だ。最近は海外の香港やマカオ、アメリカなどにも輸出をし始めていた。輸出禁止ともなれば残念としか言いようがない」と話した。
■関係自治体
日向市は県からの通達を受け、臨時部長会を開き、牛・豚の飼育数など状況の把握、市内で感染が確認された場合の規制対象範囲など、国のマニュアルに基づいた今後の対策を話し合った。
黒木健二市長は「前回10年前の発生時は感染力が弱かったため、大きくはならなかった。今回の感染力がどの程度なのか、非常に懸念をもっている。これ以上の拡大を阻止するための防疫体制を早く確立できるよう、全力で当たりたい」とコメントした。
毎日新聞 2010年4月21日 地方版