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医療新世紀
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2010.05.18

「飲酒の健康影響」-(2)
60以上の疾患に関係 
肝臓病、がん、依存症

 酒が健康に及ぼす影響は幅広い。ストレス解消やコミュニケーションの潤滑剤として働き、体に良い側面もあるが、依存性も強く、世界保健機関 (WHO)は60以上の病気やけがの原因になり得ると指摘する。
 特に多いのが肝臓病だ。アルコールは胃や小腸から吸収され、大部分がまず肝臓で分解される。飲みすぎて負担が大きくなると脂肪肝になる。さらに多量の飲酒が続くと、アルコール性肝炎や肝硬変の危険がある。日本酒7合を毎日、15年以上飲み続けると、半数の人が肝硬変になるといわれる。20100518rensai.gif
 すべての肝臓病に占めるアルコール性疾患の比率は1961年に3%だったが、2002年には23%に上昇した。
 消化やホルモン機能を担う膵臓にも影響が出る。男性では急性膵炎の30%、慢性膵炎の65%が飲みすぎが原因で起きる。急性膵炎になっても酒をやめられず、慢性膵炎に進む人も少なくない。
 飲酒を続けると脳がアルコールに慣れて、以前ほど酔わなくなる。酒量が増え、やめようと思っても飲酒がコントロールできなくなると、アルコール依存症の疑いがある。酔いがさめる際に手や体が震えたり不快な気分になる離脱症状が特徴。国立病院機構久里浜アルコール症センタ ーの樋口進・副院長らが08年に行った調査では、日本人男性の5・1%、女性の1・3%に依存症の疑いがあった。
 飲酒はがんとの関係も深い。アルコールが肝臓で分解されてできるアセトアルデヒドは発がん性のある物質。さらに酢酸に分解されるが、その過程で唾液中にも高濃度で分泌される。アルコール依存症の患者に食道がんや口腔がんが多いことが知られ、WHOは大腸がんや乳がんにも関係すると指摘している。
 短時間に大量の酒を飲んで起きるのが急性アルコール中毒。代謝できないアルコールが脳に回って中枢神経をまひさせる。歓迎会シーズンには救急搬送の多くを若者が占める場合もある。
 飲酒が原因で起きる外傷も多い。酒酔い運転による死亡事故は後を絶たず、職場や家庭での暴力も起きている。
 一方、適量の飲酒(1日に日本酒1合未満程度)をする中高年は、全く飲まない人に比べて心筋梗塞や脳梗塞が起きにくく、死亡リスクが低いことが知られている。血液の凝固を抑える作用がアルコールにあるためらしい。ただ酒量が多いと高血圧や脳出血を招き、逆に死亡リスクが高まる。樋口副院長は「やっぱり飲みすぎは禁物」と話す。(共同通信 吉村敬介)(2010/5/18)