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口蹄疫拡大 水際防止に万全を期せ


 宮崎県で発生している口蹄(こうてい)疫の感染被害が止まらない。感染や感染疑いのある家畜が見つかった農場は100例を超え、処分対象の家畜は8万5千頭を突破した。本県は大丈夫か。監視の目を怠ってはならない。

 口蹄疫は牛、豚、イノシシなど偶蹄(ぐうてい)類が感染するウイルス性の急性伝染病。家畜伝染病に指定されている。

 感染すると発熱、多量のよだれなどの症状が出て、舌や口中、ひずめの付け根などに水疱(すいほう)ができる。破裂すると傷の痛みから食べることや歩行が困難になり、体力を消耗し、ついには死亡する。

 伝染力が強く、感染家畜の分泌物だけでなく、空気感染する。日本では2000年に92年ぶりに宮崎県と北海道で発生。今年4月に国内で10年ぶりに宮崎県で発生が確認された。

 00年のときには約740頭の家畜が処分されている。今回はその100倍以上の規模で、まさに非常事態。種牛49頭も処分され、宮崎県は産地存亡の危機に陥っている。

 本県は3月以降に九州地方から県内に導入された牛について立ち入り検査を実施。異常がないことが確認されている。牛、豚などを飼育する全農家を対象に家畜の健康状態の聞き取り調査も行い、異常のないことが確認された。

 今回のウイルスは、感染力が強いとされ、人や車などに付着して運ばれることも十分に考えられる。発生地から遠く離れた地域でも決して油断できない。

 宮崎県では、4月9日に農家から県に、感染の疑いがあると報告があったにもかかわらず、確認するまで10日以上もかかった。その間に感染が広がったとみられ、県の対応の遅れが指摘されている。

 韓国や中国では05年に発生した口蹄疫が、その後、ほぼ全土に拡大した。今回、日本に感染が及ぶ可能性も予見できたはずだ。広い範囲で畜産業に打撃を与えることを考えると農林水産省に認識の甘さはなかったか。

 感染が確認された家畜は、ただちに殺処分される。しかし、殺処分が認められている家畜防疫員、獣医師らの不足と家畜を処分する土地の確保が問題となっている。

 宮崎県では、対象家畜のうち4万頭近くが処分されずにいる。殺処分が間に合わず、1週間以上も生きたまま農場にいる「待機家畜」は約3万頭に上る。

 防疫対策は「検疫」「早期発見と殺処分」「半径10キロの移動制限区域・半径20キロの搬出制限区域の設定」がある。初動の対処が、いかに大事かを宮崎県のケースは示している。本県もシミュレーションしてみる必要はないか。

 今のところ感染源や経路などは、はっきりしていない。宮崎県では家畜の競りが中止や延期され、農家は収入が得られないうえ、被害拡大に不安を募らせている。

 前沢牛のブランドを持つ本県。農業県として人ごとではない。未然防止に万全を期したい。

小田島康隆(2010.5.18)

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