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児童福祉司不足、都市部で深刻化 虐待対応遅れの恐れ

2010年5月17日

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 児童虐待に対応する児童福祉司の不足が主に都市部で深刻化し、1人あたり担当件数で都道府県の最大格差が7倍に上ることが、朝日新聞社の全国調査でわかった。財政難に悩む自治体の予算措置も限界で、迅速な対応に支障をきたす恐れもある。平均勤続年数も1年から8年まで開きがあり、質・量ともに子どもの生命を救う最前線の拡充が進まない実態が浮かんだ。

 調査は4月下旬、全都道府県と政令指定市、児童相談所(児相)を独自に設置する3中核市の計69自治体を対象に実施。今年4月現在の配置数で2008年度の虐待相談対応件数を割った1人あたり担当件数(新規案件のみ)は、最多が神奈川県の34.1件で、広島県(32.6件)が続いた。横浜、堺両市なども25件以上と都市部の多さが目立つ。最少は鳥取県の4.8件だった。

 児童福祉司の担当件数が多いと精神的負担が増え、個別対応も中途半端になる恐れが指摘されている。高橋重宏・日本社会事業大学長は「海外の事例を見ても上限は継続案件を含めて20件程度。新規なら10件が妥当だ」とみる。

 児童福祉司の人件費は、人口5.7万人に1人の基準で地方交付税として自治体に配分される。神奈川県や大阪府などは予算を上乗せして4万人台に1人の水準を保っているが、急増する虐待相談に追いつかず、担当件数に応じた見直しを求める声が強い。

 迅速な対応にも格差が生じている。国は虐待通告から48時間以内の安全確認を求めているが、群馬、福井、鳥取、長崎4県は、24時間以内に確認する独自ルールを設けていると回答。ただ、都市部での取り組みは進んでいない。さいたま市の担当者は「これ以上の厳しい基準を設けるには人手が足りない」と明かす。

 平均勤続年数(回答率91%)は最長が兵庫県の8.5年で、次いで埼玉県と京都府の7.6年。福祉職として児童福祉司を採用し、人事異動の範囲を福祉分野に限っていることなどが影響している。

 一方で、5年未満が全回答の8割以上を占めた。2年未満と回答したのは秋田、島根、愛媛、佐賀、大分の5県と、千葉、静岡、広島、北九州、熊本の5市。近年、児童福祉司を増やしたことが要因となっている自治体もあるが、行政職と同じ基準で人事異動をしている例が多く、専門性の蓄積が困難な状況だ。

 4月下旬、横浜市の「子どもの虹情報研修センター」で開かれた新任児相所長研修には、94人が参加。「全国約200カ所の児相のうち半分弱が新任所長。2〜3年で交代しているとすれば、経験が生かされない」とセンター関係者は心配する。実際、研修参加者のうち39人は児相経験3年以下だった。(山田佳奈、高橋健次郎)

     ◇

 〈児童福祉司〉 主に児童相談所で児童虐待対応の中心業務を担う職員。担当区域の親子らから相談を受けて調査・指導するとともに、子どもを一時保護し、施設側との調整も受け持つ。今年度、全国に2446人が配置されている。

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