きょうの社説 2010年5月18日

◎北陸の地銀が好決算 積極果敢な資金の供給を
 企業の3月期決算発表がピークを迎え、業績の回復傾向が鮮明になっている。北陸の地 銀6行も福邦銀行を除く5行が経常増益または黒字転換し、先行きに明るさが見えてきた。

 とはいえ、地場企業の多くは、売り上げを増やすことより、主に経費削減で利益を絞り 出している。不況下ではやむをえぬ選択とはいえ、いつまでも縮小均衡では景気は上向かない。北陸でも設備投資の動きは弱く、資金需要はなかなか盛り上がらないが、こんな時こそ地銀が地場企業の背中を押し、有望な投資先には積極果敢な資金供給を心掛けてほしい。

 改正貸金業法の全面施行をにらんで、地銀は個人向け融資の開拓に力を入れている。個 人顧客を対象に、所得状況に応じて資産運用のノウハウを提供し、融資にも応じるリテール(小口・個人)は地銀の生き残り戦略のカギを握るだろう。地銀は地域経済の要であり、生命線である。企業はもとより、個人への資金供給の役割もしっかりと果たすよう求めたい。

 地銀6行のうち、北國、富山、福井の3行は経常損益が赤字から黒字転換し、前期黒字 だった北陸銀行は利益が2・3倍、富山第一銀行は3・2倍に増えた。株式や債券などの有価証券の減損処理が一巡し、市場の持ち直しを受けて有価証券の損益が改善したこと、取引先企業の減益に歯止めがかかり、貸し倒れに備えた与信関連費用が減少したことなどが要因である。

 しかし、本業のもうけを示すコア業務純益は、北國、北陸、富山第一、福邦の4行で減 少し、今期も富山第一、福邦を除く4行が減益予想である。収益力が弱い要因は、何より企業の資金需要が低迷しているためだ。北陸財務局の調査では、今年度は全産業で設備投資が増加する見通しとなり、特に製造業は前年度より13%程度増えると予測される。地場企業の資金需要に積極的にこたえていくことで、コア業務純益を増やす攻めの経営が期待される。

 また、収益力アップのためにはリテールの拡充は欠かせない。個人向けのきめ細かな金 融サービスのノウハウを競い合い、地域経済の活性化につなげてもらいたい。

◎国民投票法 「違法状態」の指摘は重い
 憲法改正手続きを定めた国民投票法が、法律を動かす仕組みも整わないまま施行の日を 迎えたのは、極めて異常な状況と言わざるを得ない。民主党の西岡武夫参院議員運営委員長は参院憲法審査会で規程さえないことを「違法状態」と厳しく批判したが、とりわけ民主党は身内のこの指摘を重く受け止めてほしい。積み残された課題をどのようにクリアしていくのか、せめて今後の道筋を議論する場が必要ではないか。

 鳩山内閣の混迷ぶりをみれば、憲法論議の進展は無理な注文かもしれないが、民主党内 に憲法を議論する場もないのはやはり問題である。自然消滅のような状態になった党の憲法調査会を立て直すことから始める必要がある。施行後も国民投票法が機能不全のままでは、立法府として無責任のそしりは免れない。施行を機に思考停止から抜け出す努力がほしい。

 憲法96条は、改正について「各議院の総議員の3分の2以上の賛成」で国会が改正案 を決め、国民投票で過半数の賛成が必要としている。憲法の欠陥は長らく放置されてきたが、2007年5月にようやく国民投票法が成立した。

 国民投票法では投票権が18歳以上に定められたため、民法の成人年齢や公選法の選挙 年齢を18歳に引き下げる検討が求められていた。公務員の投票運動の在り方や最低投票率導入の是非なども3年間で詰めるはずだったが、いずれも議論は進んでいない。衆院は昨年6月、憲法審査会の規程を設けたが、委員は決まっていない。

 国民投票法は安倍政権下で自民党が参院選の争点に掲げようと強行採決で成立させた。 当時の対立のしこりが尾を引き、民主党内で議論が冷めた面も否めない。政権交代後は護憲の社民党と連立を組み、憲法論議は一層下火になったように見える。

 一方、自民党は民主党との違いを打ち出すため、国民投票法施行に合わせ、部分的な改 憲原案の提出に動いたが、党内はまとまらなかった。選挙絡みの思惑が先行すれば腰を据えた議論は難しいだろう。まずは投票法の形を整えることから考えていきたい。