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元・楽天取締役副社長 本城慎之介氏インタビュー
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自分で意志決定し続けること。それが輝きのコツ

田中:

本城さんは現在34歳ですよね。同年代の中ではどういう人が輝いていると思いますか? 僕の中では、目が輝いていることに対して重要性が高いのですが。

自分のやっていることが成功しているか失敗しているか、正しいかそうでないかという観点でモノを見るのではなく、「とにかく俺はこれが好きだからやっているんだ」というのを伝えられるような人、何かを高めていく生き方が好きですね。そういう意味で、本城さんの周りにはそういう人が多いでしょうか、少ないでしょうか。

横浜市東山田中学校校長(元・楽天取締役副社長)本城 愼之介氏インタビュー
本城:

いい仕事というか、その人自身の成長につながる仕事をしているなと感じられる人との付き合いはありますね。それに、そういう人の話を聞くのは面白い。面白いネタ持っているし、話をしていて楽しい。

逆に、いまやっていることについて自信を持って話せない人はつまらないですね。「何の仕事してるの?」と聞いても「んー、何をしていると言われても…」という人で、目が輝いている人を見たことがない。

田中:

どんな人に対して感じる場合が多いんでしょうか。

本城:

あくまでも僕の周りの話ですが…、大人数が所属している組織で働いている人かな。自分の存在意義が曖昧になるくらいに大人数が働いている組織。

田中:

僕は29歳になったばかりなのですが、もし大企業にいたとしたら「あと5年くらいいようかな、35歳になったらこの会社に居続けるしかないよな」といった気持ちになるのかなと想像したりします。

年齢が高くなればキャリアに関する選択もグッと狭くなるし、結婚して子供がいたらおいそれとは動けない。そんな制約条件が次から次へと現れてきて、自分がこの仕事を好きか嫌かというよりは、「とにかく続けなければいけないから続ける」という惰性になってしまい、目が死んでいく……というサイクルに陥ってしまう気がします。

横浜市東山田中学校校長(元・楽天取締役副社長)本城 愼之介氏インタビュー
本城:

基本的には、誰でも自分で意思決定して自分の行動を自分で決めたいでしょう。それができなくなると、ものすごくストレスを感じたり、自信喪失に繋がると思う。大人数が所属している組織というのは自分の行動を自分で決定する機会はやっぱり少なくなると思います。

だから意識的に、自分の行動を自分で決定することをトレーニング、習慣化していかないと、自分で自分のことを選択できなくなってしまう。すると、それが私生活を含めたいろんな場面においても、自分で切り開いて行動するということが減ってしまい、目が輝かなくなっちゃうんじゃないかなぁ。

田中:

どうすればいいんでしょうね。だからといって、大企業に行くことを全否定するのはちょっと違うとは思うのですが。

本城:

「自分の行動を自分で決定する」ことを、大人数が所属する組織の中においてもやっていかなければダメでしょうね。

横浜市東山田中学校校長(元・楽天取締役副社長)本城 愼之介氏インタビュー
田中:

つまりは、大企業でもそういう生き方はできると?

本城:

できる。

田中:

問題は、自分で意志決定しなくても生きられるようになっちゃっていて、目が死んでいく人が大企業には多く見られるということなんですね。

本城:

だって、沢山の人が働いているってことは、ある意味ラクでしょう、誰かが決めてくれることが多いだろうから。楽しいかどうかは別にして、自分が決めなくてよいのであれば、責任を負わずに済む。でも、ラクな方に流れると人間は退化しちゃう。

この間、こんな話を聞きました。30歳過ぎて運動をしないでいると、身体の筋肉は年間1%ずつ減っていくんですって。運動しないで80歳まで生きると、若い頃の半分しか筋肉がなくなり、骨折しやすくなってしまうそうです。それと同じことじゃないかな。

日々「決定力」を鍛えないと、人間として決定していくための筋肉が落ちていくんですよね。いま大人数が所属している人の話になっているけど、少人数組織でも自分の意志決定をしていないと、崩れ落ちていくのは同じですよ。

田中:

なるほど。ちょうど僕と同じ年代の30歳前後というのはそういう生き方をできるかどうか、ちょうどターニングポイントになっているのではないかと思います。

本城:

そう、僕も30歳がひとつの節目であると思います。

田中:

30歳は、ゼロからチャレンジしても許されるというか。もちろん40歳や50歳からでもできるのですが、手がけやすい雰囲気はありますよね。責任を負う立場にはなっているけれども、それより上の年代ほどではないし。だから、何かをやるんだったら早いうちがいい。

本城:

よく考えてみると、昔は「元服」が15歳頃でしたよね。30歳は、その2倍に値するわけですからね(笑)。やっぱり、ひとつのポイントにはなると思いますね。

「正しい答え」なんて、どこにも存在しない

田中:

本城さんはよく「思考よりも試行」「正解よりも回答」「成功よりも成長」という言葉をいろんな場面で口に出していますよね。ご自分の中学校の教育目標としても掲げていらっしゃる。

横浜市東山田中学校校長(元・楽天取締役副社長)本城 愼之介氏インタビュー
本城:

そうです。世の中、正しい答えなんて存在しませんからね。正しい答えを探すんじゃなくて、自分で回答を作り出すために頭と体と時間を使うことが重要です。「正しさ」を求め始めると、時間がかかったり臆病になったりしてしまいます。

でも、そうじゃない。本当は自分なりの答えを作り続けることが大切なんですよ。だって昔、長い間、天動説が「正解」だったでしょう? でも、いまの時代は地動説が当たり前のものとして受け入れられている。歴史の教科書も遺跡で捏造事件があれば書き直されるわけです。

 

だから正しさって、不変のものではないんです。常に正解は変わるものだと捉えるべきです。正しさや美しさを求めたら、たぶん何も行動できなくなってしまうのではないかな。

田中:

そういう意味では、僕もその意見に賛同できる反面、みんなはその言葉の真意をきちんと受け止めることができるのかなぁと思います……。

本城:

きちんと受け止めてもらえないことは、もちろんあるでしょうね。だから、僕は分かってもらうまで言い続けます。何度も、何度も。

田中:

繰り返し言う中で、みんなの生活の中で「あの言葉ってこういう意味なんだな」と理解が深まるのを待つしかないということでしょうか。

横浜市東山田中学校校長(元・楽天取締役副社長)本城 愼之介氏インタビュー
本城:

そうですね。だから「正解よりも回答」といったように、頭に残りやすいシンプルなメッセージで伝えるんです。すると、その言葉を使って会話するようになってくるんですよね。それが少しずつ広まっていけばいいんじゃないのかな。

とにかく、大人も子供も「伝わるまで伝えないと伝わらない」。伝わらないのは、こちらの伝え方が悪いのかもしれませんしね。僕はこれからも、何度も何度も伝わるまで繰り返し伝え続けていくつもりです。そして、僕自身も成長していきます。それがカッコいいと思ってますから。

構成/文:野田幾子 写真:小平裕臣
編集:島田敏宏(GREEキャリア編集部)
2006/05/27 14:00
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