おとり捜査:違法性は否定、警官偽証に賠償命令 札幌地裁

2010年3月19日 20時54分 更新:3月19日 21時56分

 北海道警の違法なおとり捜査と偽証によって拳銃所持容疑で逮捕、服役させられ精神的損害を受けたとして、元船員のロシア人男性(40)らが国と道に計2310万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が19日、札幌地裁であった。中山幾次郎裁判長は、おとり捜査の違法性を認めない一方で、「偽証がなければ無罪などになった可能性がないとは言えない」として、道に慰謝料など50万円の支払いを命じた。原告側は控訴する方針。

 判決によると、ロシア人男性は97年11月、パキスタン人男性から「拳銃と中古車を交換してやる」と持ちかけられ、小樽市の小樽港で拳銃を渡そうとしたところ、道警捜査員に逮捕された。刑事裁判で「違法なおとり捜査」と無罪を主張したが、捜査にかかわった稲葉圭昭・元道警警部(56)=覚せい剤取締法違反罪などで服役中=らが「パキスタン人男性はその場にいなかった」と偽証。懲役2年の実刑判決を受けて服役した。

 裁判の最大の争点はおとり捜査の違法性。原告側は違法な「犯意誘発型」と主張したが、中山裁判長は、ロシア人男性は(1)拳銃の取引に慣れていたと推認できる(2)マフィア関係者であるとの疑いを完全に払しょくできない(3)パキスタン人男性の働きかけ前から拳銃を日本に持ち込む意思を有していた疑いが残る--などと指摘。「違法なおとり捜査と断定することはできない」と結論付けた。一方、稲葉元警部らの偽証が「量刑に少なからず影響を及ぼした」と判断。ロシア人男性の精神的損害を認めた。

 判決を受けて、原告側弁護団の岸田洋輔弁護士は「主張がほぼ認められた。一定程度、評価する」としながら、「これだけの事実認定をしながら、おとり捜査を違法と判断しなかったことが納得できない」。弁護団は近く控訴する方針。【水戸健一、和田浩幸】

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