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足利事件
無罪証明判例なく 全国の再審請求事件(2009年3月21日 05:00)確定判決のDNA鑑定に初めて疑問を投げ掛けた足利事件。だが全国の再審請求で、DNA鑑定によって無罪が証明されたケースは一例もない。 一九九七年九月、札幌高裁。「ショックで失神しそうだった」。「晴山(はるやま)事件」の再審請求に奔走していた笹森学(ささもりまなぶ)弁護士。確信が崩れた瞬間の思いが脳裏を離れない。二十年以上無罪を訴えていた死刑囚のDNA鑑定。結果は「クロ」だった。 事件は七二年から北海道空知地方で発生した連続女性暴行殺人事件。被害女性に残された体液と死刑囚のDNAが一致し、再審請求は棄却された。 現在足利事件の弁護団に加わる笹森弁護士は「合理的な疑いが生じていたのに。DNA鑑定に舞い上がっていたのかもしれない」と苦い過去を振り返る。 静岡市で六六年に発生した一家四人強盗殺人事件(袴田(はかまだ)事件)。再審請求では犯行現場のみそタンクの中から発見された衣類の血液を、約三十年後DNA鑑定しようとしたが「鑑定不能」だった。 DNA鑑定の技術は日進月歩。精度や個人識別能力が上がるにつれ、犯罪捜査での重要性も高まる。「今は犯人が残した微物から、いろんなことが分かる。もしDNAがなかったらと思うと怖いくらいだ」。足で稼ぐ捜査を基本としてきた県警のベテラン刑事はその威力に脱帽する。 足利事件での鑑定が行われた九一年までに実施されたDNA鑑定は六十四件。二〇〇八年は年間三万件を超えた。〇四年からは警察庁が全国のDNA型情報を照合できるデータベースの運用を始めている。 二〇〇五年十二月に発生した今市女児殺害事件。県警は最重要課題と位置付けているが、捜査は長期化している。だが捜査幹部は「いつ急転直下、犯人が捕まるか分からないよ」と、常に繰り返す。 女児の遺体からは犯人のものとみられる微量のDNAが検出された。捜査員はわずかな遺伝子の手掛かりに望みをつなぎ、対象者からDNAの採取を続けている。 一覧
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