2010年5月17日17時50分
ウクレレでビートルズナンバーなどを演奏したジェイク・シマブクロさん
スタンダップコメディーのスタイルで会場を爆笑に巻き込んだ神田瀧夢さん
天井から下がった2枚のヴェールで体を支える、シルク・ドゥ・ソレイユのメンバーによる離れ業
尼僧の読経とバイオリンの厳粛なコラボレーションに続いては、介護用ロボットスーツを着用した一群が舞台に登場。哲学者は経済がテーマのたとえ話を静かに語り、シルク・ドゥ・ソレイユ団員や能楽師の熟練の演技にこたえる客席の盛大なスタンディングオベーション。学術、芸術、エンターテインメントなど各分野の一線で活動している表現者が一堂に集う講演会TEDxTokyo(テデックス・トーキョー)が15日、東京・お台場の日本科学未来館で開かれ、招待された約300人の観客を魅了した。(アサヒ・コム編集部 戸田拓)
TEDとは「広める価値のあるアイデア」をテーマに、米国カリフォルニア州を中心に多様で学際的な参加者を対象として開かれている招待制会議。テクノロジー、エンターテインメント、デザインの頭文字を取ったもので、これまでクリントン元米大統領や生物学者リチャード・ドーキンス氏、ロックミュージシャンのピーター・ガブリエル氏やグーグルやアマゾンの経営者ら、多くの著名人が出演した。そのスタイルや精神を共有して各国で個別に行われているローカル版イベントがTEDxで、東京では昨年に引き続き2回目の開催となった。
「リセット」をテーマに掲げた今回のイベントには、国も立場も年齢も様々な約30人(ビデオ参加を含む)がプレゼンターとして登場。客席には外国人の姿も多く、大半の出演者が英語で講演した。午前9時過ぎにジェイク・シマブクロさんのウクレレ演奏に始まったイベントは、休憩を挟んで全4セッション、約9時間に及んだ。野外イベントでこっけいな裸踊りをする若者の輪が広がっていく一部始終のビデオ映像を題材に「最初のフォロワーが大事」と説明するデレク・シヴァーズさんの「社会運動はどうやって起こすか」、ホワイトボードにマーカーで書いた線画が動き出して演者の動きに応答するマルコ・テンペストさんのマジックパフォーマンスなど、それぞれのプレゼンターが独特の方法でアイデアを披露した。
人権運動家土井香苗さんが「1997年時点で日本が受け入れた難民は1人だったが、10年活動した結果30倍の30人になった」と報告すると温かい拍手が起き、米ABCテレビでコメディー番組司会者を日本人として初めて務めた神田瀧夢(かんだ・ろむ)さんが演じた「日本とNYのマクドナルドの接客の違い」は会場を爆笑で包んだ。無料の飲み物や昼食、ディナーレセプションなども用意され、出演者と参加者が交流する場面が各所で見られた。
幼い頃にチョウを収集した思い出から科学の役割の大切さを語った脳科学者の茂木健一郎さんは、「聴衆が出演者を積極的に評価してくれて面白かった。異質な知の交流で新しいアイデアをインスパイアしてくれるイベントは、日本の文化の中にはなかなかない」と評価。自ら国際会議を主催しているイー・ウーマン社長の佐々木かをりさんも聴衆として参加し、「カジュアルなスタイルで将来のことを語り合えるイベント。すばらしいと思う」と感想を語っていた。
TEDxTOKYO当日のビデオ映像は、公式サイト(http://tedxtokyo.com)からアクセスできる。