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[7379] ある男の異界転生記(現実→型月転生オリ主・習作)
Name: 黒胡麻◆f6253164 E-MAIL ID:12bbb4db
Date: 2010/05/16 13:00
はじめまして。黒胡麻です。
なぜか突然書きたい衝動に襲われました。
初投稿なので拙いところや自己解釈・ご都合主義などあると思いますが
暖かい目で見守ってやって頂けると嬉しいです。

後々主人公がかなり強くなると思うのでそういったものが苦手な方はお気を付け下さい。
あと、主人公の能力はチートで出来ています。


3/15 死徒化の手順が省かれている、とのコメントがあり、自分でも気になっていたので第五話を修正。
    しかしこの手順、全部私の妄想です。お気を付け下さい。
3/15 言語関係のことで、第一話をちょっと修正。
   死徒化の手順の部分を、微妙に修正。


お久しぶりです。
15話がクソ短いわりに前後編に分かれているのは
私のネット環境がクソすぎてなぜか一気に投稿できないからです。

そして、今後も不定期になりそうです。すみません・・・



[7379] ある男の異界転生記 第一話
Name: 黒胡麻◆f6253164 E-MAIL ID:12bbb4db
Date: 2009/03/15 23:56
ここは、どこだ?
考えを巡らせてみる。

俺は、確か・・・

死んだんだ、と思う。

じゃあ、この目の前の人たちは何だろう。
特にこの俺の横に寝ている銀髪?白髪か?の美人さん。
ぜひお友達になりたい。いやむしろなってください。
とかそんなことを考えていると、

「おお!無事生まれたか!」

え?何いってんのこのおっさん?
美人さんの横に立っていた白髭のおっさんが俺を見ながらそう叫んだ。

何?無事生まれた、って。
こちとら二十年前以上前に生まれ落ちてるわ!

と、そう抗議の声を上げようとしたところ、

「おぎゃぁぁ~~~!」


え?
何?ギャグ?

「あぎゃぁぁ~~~」

・・・
まさか。
これってもしかしなくても転生か?





第一話 「ガッシ!ボカッ!俺は死んだ。スイーツ(笑)」




マジかよ・・・
と俺が呆然としていると、

「アインツベルンの悲願達成の第一歩というわけだな!」

またこのおっさんか。
って、
アインツベルン?
ちょ、Fateっすか。
死亡率高すぎるだろ・・・

んん?なんで俺、この人達の言葉がわかるんだ?
少なくとも日本人じゃあないだろう。この人達。

と考えてると脳に情報が流れ込んできた。
アインツベルンの歴史。
魔術知識。
一般知識。
俺のこと。
ホムンクルスのこと。

・・・なるほどね。
知識を’引き継いだ’ってことか。
なら、外国語も話せるだろうな。

それに俺、イリヤ関係?
と、またも呆然としていると

今まで押し黙っていた礼の美人さんが、
「ああ!無事生まれたのね!本当に!」

「ああ・・・元気な男の子だよ。」
おっさんが返答する。

「良かった・・・本当に・・良かった・・」
そう言いながら泣き崩れていった。

そしておっさんがなにやら慰めている。

ちょ、感動しすぎだろ。
子供産まれて嬉しいのは解るけど普通そこまで感動するのか?
いや、前世はある意味魔法使いだった俺には解りませんけどね?
本当にありがとうございました。

しかし、転生か・・・
俺はそう考えながら前世に思いを馳せていった。



思えば、特に変わったことのない、平凡な人生だった。
小学生。
中学生。
高校生。
大学生。
そして、社会人。
人波の才能もあって、人並みの努力もした。
しかし、それの全てが普通。
社会に埋もれていくなんてことない歯車の一つ。
一般的なレールにそった、一般的な人生。
唯一違うのは三十代に入ってすぐ死んでしまったことぐらいか。

未練がないとは言わない。
両親は大切だった。
気になる人もいた。
友達もいた。

でも、俺はここへ来てしまった。
だから、ここで幸せになろうと思う。
前までの俺はここで終わりだ。
たぶん、俺はこんな刺激を求めていたんだ。

Fateの世界。
大体知ってる。
型月は大好きだ。
その知識を使って、士郎じゃあないけどみんな救いたいと思う。

それだけの知恵と知識に立場、それに未来があるんだ!

ようこそ、非日常の世界へ!

あ、あとハーレムも作りたいな。





その企みが、そう簡単にはいかないことを俺が知るのはそう遠くない話である。



[7379] ある男の異界転生記 第二話
Name: 黒胡麻◆f6253164 E-MAIL ID:12bbb4db
Date: 2009/03/14 14:52

やぁ。うっかり転生しちゃったオリ主だよ。
今、僕は十歳なんだ。
周りからは天才だ、とか何とか言われてかなりの好待遇だよ。
当然だね。
三歳で読み書きをほぼマスターし、自主的に魔術訓練まで始めたんだから。
いまはお付きの先生に特訓して貰ってるよ。
さすが千年近い年月を重ねたアインツベルンだね。
魔術の才能もかなりあるみたいだよ。

でもね、現実はそう甘くはなかったよ。

ああ、気にしないでくれ。これはもういいんだ。

ところで、僕には七歳になるとてもかわいい妹がいるんだ。
母親に似た、美しい銀髪に透き通るような肌。

ああ、母親?僕が生まれたときに隣で寝てた人だよ。

それでね?その。どこか雪を思い起こさせる自慢の妹の名前は・・・









リズライヒ・ユスティーツア・フォン・アインツベルン







大聖杯の中の人じゃねーか!





第二話「冬木?なにそれおいしいの?」





いや、ここが第五次聖杯戦争の時代じゃあないな~ってのはすぐに気づいたんだよ。

なんせ外の風景がおかしいからね。文明の利器なさ過ぎ。
あってもやたらとモダン。
最初は「冬木のアインツベルン城もこんな感じだったしな~」とか思ってたんだけど、
いくらなんでもおかしい。

だって、ナポレオンが~とか機関車が~とか聞こえてくる。
ああ、これはやばいなって思ったね。

原作うんぬん以前の問題だったよ。
紀元前に生まれなかったことを感謝するべきなのか?ここ。

まぁそこに救いの手?かどうかはわからないけど一筋の光が見えたのは我が妹のおかげ。

これで原作との関係がちょっと見えた。
いや、ちょっとだけだけど。

まぁつまり、士郎君やセイバーが活躍するのは二百年後ってことですね。
わかります。


最初は絶望した。
原作知識なんて全く役にたたん。
どうしていいかわからなくなり、しばらく何も出来なかった。

そこで俺を助けてくれたのが、「魔術」と「我が妹」だった。

ます、魔術。
これ自体、「神秘」であり、俺の世界にはなかったもの。
俺の興味を引きつけるには十分だった。

当初、俺の頭にはゲームの中の世界に移動した、ということばかりあって
「原作への介入」やら「ハーレム」だのそんなことしか考えてなかった。

それが厳しいとわかり、目的を見失った俺を引きつけたのが「根源」である。

アカシックレコード。
この世の全ての存在・現象の原因。大元の一。
魔術師なら誰もが目指すこの境地。

そこに、俺も「普通」の魔術師らしく興味を引かれたのだ。
これが一つ。


そして、妹。
ユスティーツアである。

これがもう、かわいい。
ヤバイ。
もう、なんていうかヤバイ。

イリヤの顔で上目遣いに「お兄様」なんて言われたときには死んだかと思った。


それだけに、守りたい、と思う。
彼女がホムンクルスでもなんでも、俺は彼女の兄だから。

それだけに、彼女が大聖杯の器になるのは悲しい。
しかし、止めることは出来ない。

第三魔法はアインツベルンの悲願であり、なによりも彼女もそれを望んでいるから。
歴史も変わってしまう。
それに十歳になったばかりのガキの言い分なんて誰も聞かないだろう。

俺に出来ることは彼女を見守り、アンリマユで汚れた彼女を無に帰してやることぐらいだ。



まだ時間はある。大聖杯が起動する前に、二百年もの時をわたる妹を、受け止める方法を考えよう。







[7379] ある男の異界転生記 第三話
Name: 黒胡麻◆f6253164 E-MAIL ID:12bbb4db
Date: 2009/03/14 23:28

「お兄様~~!」

と、向こうからトコトコとかわいらしく走ってきたのは我が妹である。

「お兄様!」

グホォッ!
と、飛びかかってきただと!
トベ・アインツベルンはこの時代から健在なのか!

危ない危ない。油断して鼻血が出るところだった・・・
急いで鼻を押さえて上を向く。

「?どうしたんですか?クラウスお兄様?」

俺の挙動不審ぶりが見られてしまったようだ。

「あ、いや。なんでもないぞ。全然。うん。」
急いで返事する。
ユスティーツアに「この変態!」なんて言われたら死んでしまうだろう。
二つの意味で。

まだ納得できないらしくユスティーツアはうなりながら首をかしげている。

いちいち可愛いなチクショウ・・・!

あ、ちなみに「クラウス」は俺の名前ね。
クラウス・フォン・アインツベルン。


第三話「やるべきこと」


「今日はなんにもない、お休みなんですよね?」

「ああ。今日は魔術も体を鍛えるのもお休みだ。ユスティとゆっくり遊べる。」

ユスティーツアはパァッと花のような笑顔になり、

「やった!久しぶりにお兄様とゆっくり遊べます!」
と喜んでくれていた。

うむうむ。
なんだかこっちまで嬉しくなってくるな。ホントに。

「じゃあじゃあ!おままごとしましょう!」

魔術の腕は大人に並ぶ勢いなのにこういうところはいつまで経っても子供だな。
まぁ、それがいいんだけどね。

「ああ。わかった。じゃあ一緒に道具のとこまで行こうか。」

「はい!」






どうでもいいが、本当にこの屋敷、本家アインツベルン城は無駄に広い。
最初の頃、トイレに行って行方不明、なんてのはよくあるパターンだったほどだ。
今でこそトイレの位置を覚えたものの、実際に使っている部屋は寝室、食堂、トイレ、客間に工房ぐらいだ。
その他の部屋なんてほとんど使わない。
一回間違えて親父の工房に入ったときは死にかけた。
流石は魔術師の工房!と思ったね。
しこたま怒られたが。

そして、俺は隣を歩くユスティについて考えを巡らせる。









ホムンクルス。
イリヤほどではないにしろ、大聖杯となるため胎内にいるときから様々な呪的処理を施された存在。
いずれ成長も止まるだろう。
どのくらいで止まるんだろ。ていうか、止まるのか?
Fateの回想シーンでは大人の女性だったよなぁ。
アイリスフィールも普通に大人だし。
イリヤの存在が特殊すぎるのか?

ちなみに、俺もホムンクルスである。
どうやら、実験体らしい。
ユスティーツア前の肩慣らしである。
俺が女性であれば器になったかも解らんが、男なのであくまで「ホムンクルスの出産及び成長」などについての実験らしい。
だから俺もそれほど深刻ではないにしろいずれ成長は止まる。と思うよ。
でも、大聖杯に使うわけではないので呪的処理は軽い。
半人、半ホムンクルスといったところだろう。
体に魔術刻印がないのがせめてもの救いか。
アレ、めちゃくちゃキツそうだしなぁ。

詳しいことは知らされてないが、寿命も短いと思った方が良いだろう。
その前に何か手を考えなくては。

ユスティーツアの大聖杯回避。
それは不可能だ。前も言ったとおりまだ十歳の、成長したとしても二十かそこらの若造の頼みなんて聞かないだろう。
俺なら聞かないね。
なんせ千年近い悲願だし。

では、アヴェンジャー回避。
これも考えた。
でも、冷静に考えればかなり難しい。
確か、第三次聖杯戦争は戦時中であったはずである。
で、今が1800年代前半。

何戦争なのかはわからないが、エセ神父の父親、言峰璃正が監督役を務めたことからして第二次世界大戦だろう。

約120年かそこら。
ただでさえホムンクルスで寿命が短いのだ。
真っ当に生きていられる年月ではない。
例え生きていられたとしてもその頃の当主はアハト爺である。
今でこそ生まれていないものの、こいつも二世紀近く生き、聖杯に全てを掛けている。ある意味マキリの蟲爺と同類である。

そんな奴に「サーヴァント召喚はやめて、今回の聖杯は諦めろ。」
なんて言っても聞くとは思えない。
そもそも俺は当主ですらないのだ。
今代のアインツベルンの当主はユスティーツアである。

それに、アヴェンジャーがないと士郎君が切嗣に拾われないし、他にも原作との齟齬が出てくる。
原作と物語が離れる、というのも極力止めないといけない。
俺はまだ原作に介入する気満々だからね。

ていうか、アヴェンジャーに汚されてない聖杯ってどうなんだろう。
普通に願い叶うのか?
汚されてても桜ルートではある意味第三魔法は成功していたと思うが。


「お兄様!」

「ん?どうしたんだ?」

「もう!何回も呼んだんですよ?今日は私と遊ぶって言ったじゃないですか!」

おお、そうだったのか。

「ゴメンゴメン。気がつかなかったよ。」

「まったくもう!」

プンプン、と擬音が出そうな感じでユスティは怒っているが、どことなく嬉しそうだ。
というか、顔はニコニコしている。
怒りながら笑うとは器用な奴だな。





まぁ、良い。




今日は難しいことは無しだ。




今は目の前の笑顔を、どれだけ長く続かせられるかだけを、考えよう───────────








[7379] ある男の異界転生記 第四話
Name: 黒胡麻◆f6253164 E-MAIL ID:12bbb4db
Date: 2009/03/16 00:05
やぁ!俺だよ。
現在14歳さ。
かなり魔術も使えるようになったし、体も出来てきた。
だから、今後のことについて考えるとしよう。






第四話「お前らもっと真面目に魔術師しろ。」









まず、根源。
これにたどり着くのが一つの俺の人生の目標である。
しかし、たどり着く方法が全く解らん。

初めは、せっかくアインツベルンにいるんだからここは魂の物質化だろ、とか思っていた。が、無理だ。

第三魔法。その神秘を再び取り戻すための「聖杯」なのである。
いくら未来の知識があったって、ただの小僧にアインツベルンの千年の悲願が達成できるわけないのである。
むしろ、できたらひどい。
アインツベルンはこの千年何してたんだ、てことになるだろう。
ということで、却下。

ではどうすればいいか。
ここで俺は原作知識を参考にすることにした。
それじゃあ、いってみよう。





How to reach the 根源? ~Fate編~


・衛宮士郎
正義の味方。根源になんてこれっぽっちも興味ないだろう。
よって却下。

・遠坂凛
第二魔法を目指してるっぽい。
それによって根源に到達するつもりだろう。
でも俺は並行世界のことなんて何一つわかりません。
あ、生まれたときにある意味体験したのかな?
将来、仲良くなって宝石剣触らせて貰いたい。
今のところは却下。

・ 間桐桜
桜ルートではある意味たどり着いた?繫がってるのか?
でも本人は興味なさそう。
第三魔法の体現。
でも上の理由で今はまだ第三は無理だ。
もし俺が原作に関わることになったら回避したいルートである。

・間桐慎二
知識はあるかもしれんが、論外。

・蟲爺さん
不老不死のみを目指す狂人。
でも初めの方はユスティーツア、遠坂永人と共に目指すにすごい目標があった気がする。なんだっけ?
若い頃に接触できたら参考になるかも。
保留。

・エセ神父
うん。論外。

・アインツベルンの皆さん
第三魔法狙いだからなぁ。実践不可能。

・サーヴァントの皆さん
みんな興味なし。でもキャスターに会えたら参考になるかも。


結論:有益な情報 なし


・・・・・・・


いや、次!次行ってみよう!


How to reach the 根源? ~月姫andMeltyblood編~

・しっきー(直死)
直死が根源に繫がってるかも知れないけど、却下。
興味もないし方法も知らないだろう。

・アルク
意外と知識多いから参考になる話ぐらいあるかも。
でも教えてくれそうにない。
そもそも接触しようがない。

・シエル先輩
ロアの知識にはそういうことありそうな気がする。
でも本人は興味ナッシン。ロアを倒すことだけ。
つーか今はまだロアになってない気がする。

・ネロ教授
この人は知ってそう。
でも当面の目的が「混沌となった己の末路」とかそんなんだった気がする。
根源?というか永遠を求めてる。
ていうか話聞こうとしたら問答無用で殺されそう。

・ロア
参考になりそうそうではある。
でもこちらも永遠を探求。
それにアルクファン。
会ったら殺されそうだし、生まれてもアルクにすぐ殺される。

・タタリ
こちらも永遠。
あ、でもこいつは第六にたどり着くためか。
つーか接触できん。
会ったら吸われそうだし。

・シオン
吸血鬼化治療。
錬金術師だし根源には興味なさそう。



あれ?意外とみんな根源に興味ないね。
ていうか有益なのが全然ない・・・

つーか、よく考えたら知ってたとしても他の魔術師には研究したこと一切教えないんでしたね。
魔術師の特性忘れてたよ。


まぁ、次が最後だ。行ってみよう




How to reach the 根源? ~空の境界編~

・両儀式
根源に繫がっていて、根源に至れる体を持っているらしい。
あ、今思い出したけど荒耶さんが言うには根源に至れる奴は初めから決まっているのか・・・

・トーコさん
昔は目指してたらしいけど今は諦めている。
話聴けたらいいなぁ。
今気づいたけど俺がここで挙げた人の半分ぐらいまだ生まれてないね。

・超能力者軍団
脳の回線が根源に繫がってるらしいけど参考にはならん。
俺超能力使えないし。

・ゴドーワード
根源に到達した人。統一言語師。
でも俺統一言語なんて話せないし本人は魔術師じゃないらしいから参考にはならない。
会ってみたくはある。

・赤ザコ
いや、こいつこれで意外に優秀な方だよ。魔術師としては。
燈子にボコボコにやられてたけども。
根源については目指してるかすらわからん。

・荒耶宗蓮
正直、こんなに候補上げる前から参考になるのはこいつぐらいだろうな、とは思ってた。
具体的な到達方法あげてたのこいつぐらいだし。
確か、死の蒐集。
それでも到達できないと知り、式の肉体を乗っ取ろうと画策した。


と、こんなところか。
現時点で参考になるのは荒耶さんぐらいでしたね。
しかし、死の蒐集か。
でもそれだけだと人間の起源にしか辿り着けないんだったっけ?
霊長全体、宇宙全体のには辿り着けない。

・・・・・


じゃあ、そうだ。
俺は、「起源」を集めよう。
もちろん、人間だけじゃなく、生物全体から。
それなら辿り着けるかもしれない。

例えこの身が根源へ行く資格が無くとも、蒐集する「起源」にはあるかもしれない。
俺天才じゃね?


じゃあ、どう集めるか。

そこで思いついたのが、魂。

アインツベルンはもともと第三魔法、「魂の物質化」技術を持っていただけあって魂関連の研究が凄い。
これを利用しない手はないだろう。

それに、魂はその人間の情報全てが記録されていると言う。
「起源」も同時に蒐集できるだろう。

手段は?

そこで考えたのが血液を媒介にした魂の蒐集。

血液は魂の通貨である。
ヘル○ング読んでて良かった。

つまり、死徒化。

寿命も延びる。

ユスティも見守れて、原作介入できて、根源も目指せる。

まさに一石三鳥!

でも、ただ単に死徒になっただけじゃすぐ教会に滅ぼされる。

普段はあくまで「人間」として行動しなくてはならない。
そのためにも、魂の研究が使えるだろう。

そしておそらく俺は大聖杯起動後、サーヴァント召喚に使われるだろう。
だから、その前に死徒化して逃げる。
失敗するとわかってるものに手はださん。






そうして、俺は死徒化及び魂の研究を始めた。







[7379] ある男の異界転生記 第五話
Name: 黒胡麻◆f6253164 E-MAIL ID:12bbb4db
Date: 2009/03/16 00:28
成長が止まった。
十七歳の出来事である。
いずれ止まることは予想していたので、毎日体をチェックしていたのだ。
しかし、これは好都合だ。
死徒化を誤魔化すのが楽になる。

そうして俺は今日、死徒になることを決意した。





第五話「展開速すぎだろ常考」






死徒化に当たって、俺がやらなければならないことは、いかにして吸血鬼であることを隠し通すか、ということである。

当分の間、力を付けることになるのでその間はバレたくないのだ。

死徒化してすぐ代行者と戦闘にでもなろうものなら縊り殺されるだけだ。
魔術はかなり習得しているが、魂関連ばかりで戦闘用の者がほとんど無い。

今死徒化しても、「ちょっと力が強くて死ににくいだけの人間」である。

そこで、俺は魂を分割することにした。
要するに、「人間及びホムンクルスである自分」と「吸血鬼である自分」に魂を分けるのだ。

これがなかなか難しい作業である。
自身を死徒化した後、間髪入れず魂が完全に汚染される前に分割するのだ。
かなりのスピード、精密さが要求される。

しかしこれが成功すれば死徒としてかなりの隠密性が期待できる。

普段は「人間及びホムンクルスとしての自分」の魂を前面に押し出し活動する。
そうすることで「肉体は魂に引っ張られ」、吸血鬼としての能力は低下する。
もちろん完全に消えるわけではない。
いくら奥深く隠しているとはいえ肉体の中に吸血鬼としても側面もあるのだ。
肉体の劣化を防ぐため一年に数回は人間の血を吸う必要がある。

さらに、「人外」としての気配も薄れ、太陽の下、流水でもある程度活動できるようになる。

そして、戦闘時は吸血鬼としての側面を押し出す。
戦闘したこと無いけど。

しかし、隠密性や便利さは上がったが分割したことで人間としても吸血鬼としても身体能力が低下してしまった。
これをなんとかしなくては。


死徒化の手順自体は、そう難しい物ではなかった。
と、いってもやはりアインツベルンで得られる情報が無いとできなかったが。
さすがに城の中で死徒化はせず、前に見つけた人気のない山にある洞窟で行った。

"通常"はまず、素質ある人間の死体の脳髄が溶けて魂が肉体に完全に“固定”された”グール”になる。
その後、遺体を喰らって腐敗した血肉を補った”リビングデッド”に数年掛けて変化し、
「生きる死体」がさらに数年掛けて知性を人間の頃まで戻すといった過程を経て吸血鬼に成る。



が、その手順を、魂に直接刻みつけることで、吹っ飛ばす------------!



まず、全身に復元呪詛を術式を施す。
そして、自らの魂に直接復元呪詛の刻印を刻みつけ、魔力を流して発動させる。
これはマジで痛かった。全身をミキサーでかき混ぜられた上に硫酸を掛けられるような、発狂するほどの苦痛。
しかし、こうでもしないと死徒化に二年も三年もかかってしまう。
出来れば三日。
最長でも一週刊以内に終わらせるにはこうするしかないのだ。
この激痛が脳天を直撃した瞬間、脳はブレーカーを落とした。

しかし、これは体の痛みではなく、汚染される魂の痛み。
意識を失っても無くなるわけではない。
よって、再び激痛で目が覚める。
これを何度も繰り返して尚狂わなかった俺を褒めて欲しい。

ある程度痛みが和らぎ、刻印が安定してきたところで魂の分割作業に入る。
さっきほどでもないが、この作業も痛みが激しい。
しかもさっきと違い、ただ苦しんでいる訳にもいかないのだ。
作業を進めなくてはいけない。

刻印の侵食を体の全てのスペックを使って無理矢理押しとどめ、
そこから二つにカットする。

そしてすぐに死徒側の魂を奥深くへ引っ込ませる。

かかった時間、約一週間半。
こうして俺は、なんとか死徒になったのだ。

まぁそのあと、ふらつく体を引きずってアインツベルンへと帰り、
一週間ほど寝込んだが。

正直な話、死徒に関する資料を探しているときが一番怖かった。
この時自分の姿を見られて死徒に興味がある、と思われるのを恐れたからだ。







そして、死徒になったその日、俺はあることを早速行動に移した。



魂の蒐集。



対象は人間ではない。
とりあえず、鼠。
猫にしようかと思ったが、なんか心が痛んだのでやめた。
いずれこんな良心もなくなるんだろうが。


夜の街、路地裏。今のスタイルは黒いロングコート。
フードも付けているため、この暗さでは見られても顔は解らないだろう。
そして吸血鬼としての側面を押し出す。
とりあえずちょろちょろと動き回っている鼠を捕まえる。


するっ


あれ?


捕まえる。

するっ


捕まえる。

するっ

捕まえ・・・

するっ




・・・・・・



捕まらない。


鼠一匹捕まえられない吸血鬼ってどうよ。


その後も30分ほど奮闘したが捕まらなかった。

何この身体能力。
駄目すぎだろ。

力は上がった感じがするが、動体視力がてんで駄目だ。



帰ろう。


そう思った。


これ以上やってると誰かに魔の気配を感じられてしまうかもしれないし、
感じなかったとしても明らかに今の俺は不審者だ。
延々と素手で鼠を捕まえようと路地裏で四苦八苦している黒いコートの男。

何よりも空しくなった。



とりあえず鼠取りを路地裏にセットしてアインツベルンへと帰り、風呂入って寝た。






はい。五話です。
展開早くてすいません。
この時代はある意味プロローグなので、あまり時間掛けたくないんですよね。
読んでくれている方、ありがとうございます。
何かおかしい点やアドバイスありましたら、どんどんお願いします。
では。



[7379] ある男の異界転生記 第六話
Name: 黒胡麻◆f6253164 E-MAIL ID:12bbb4db
Date: 2009/03/15 04:27


俺が鼠と激しい鬼ごっこを繰り広げた次の日の夜。

俺は気持ちを新たに昨夜の路地裏へと来ていた。
着ているのはもちろん黒のロングコート。フードもすっぽり。

「昨日は不覚を取ったが・・・今日はそうはいかないぜ!」

とハイなテンションで昨日仕掛けた鼠取りへと近付く。

するとそこには目論み通り一匹の鼠がかかっていた。

「フフ・・・フハハ・・!力がなんだのと言っても、結局勝つのはココの使い方だよ!ココの!」
トントン、と指で自らの頭を軽く叩きながら、小躍りして鼠を掴む。
どう見ても不審者です。
本当にありがとうございました。

「あれ・・・?」
と、そこで異変に気づく。





「こいつ・・・死んでる・・・」



第六話「通報されてもおかしくない」



鼠の死体を片手にorzのポーズを取る、夜の路地裏。

またも心がブロークンファンタズムしかけるが、めげずに次の手を打つ。

コートのポケットを漁り、取り出したのはチーズである。


それをそっと足下に置き、自分は少し離れた場所で隠れながら見守る。


待つこと数分、何匹かの鼠がチーズに群がってきた。
最初はおそるおそる眺めていただけだったが、数分経って異変がないことが解ると飛びかかって食べ始める。


「魂」を吸血鬼に切り替える。
気配を消し、気づかれないようにそろりそろりと近付いていく・・・!
こういうことだけは無駄にうまいのだ。

そして-------------


むんず、と一匹の鼠を掴み取ることに成功した!

「よっしゃ!」

思わず声を上げる。

するといまだにチーズを食べていた鼠たちが一目散に逃げていった。
残ったのは半分以上食べられた、チーズの残骸のみ。

「ククク・・・」

いかにも吸血鬼らしい笑みを浮かべながら鼠を口へともっていく。

鼠は逃れようと必死で暴れているが、ざんねん!きゅうけつきからはにげられない。

そして血を吸おうとしたが、




臭い。


半端無く臭い。

なんだこれは。ヤバイ・・・!

っと、あまりの臭さに鼠を離してしまうところだった・・・

気を取り直し、開いている方の手で鼻をつまみ、鼠にかじりついた。



血液を確認。
魔術回路は異常なし。
相手の血を媒介に、自らの魔術を相手の魂に浸透させ、引きずり出す-------------!

そして、鼠の血を飲んだ。




瞬間。




流れ込む。

知らない景色。
路地裏。
下水道。
たくさんの仲間達。
突然落ちてきた、黄色い、美味しそうなモノ---------------!

走り方。獲物のニオイ。隠れる場所。

知識が、流れ込む。

流れ込む、小さな世界。
低い目線。
巨人。
捕まった自分。





捕まえたのは、俺----------------







「----------------は。なるほどね。」



たった今、心で理解した。

今はもういない、あの小さな生物の記録。

それが、内に流れ込んできた。

知識、経験、感情。

彼が体験したことが。

彼が知ったことが。

彼が感じたことが。

全て、「俺」に取り込まれた。

これが、魂を取り込むというコト。



小さな鼠。それだけでもこんなにも、こんなにも新鮮。


「彼」はもういない。
でも、彼が生きた証、ただ一片の、ただの命は俺の中にある。




今日、俺の命は二つに成った。




どうでもいいが、俺はその日から鼠狩りが飛躍的にうまくなった。





[7379] ある男の異界転生記 第七話
Name: 黒胡麻◆f6253164 E-MAIL ID:12bbb4db
Date: 2009/03/15 08:21
俺が死徒化してから、早5年。
たぶん、まだ誰にもばれてない、と思う。
思いたい。

これまで、いろいろな動物を吸った。
人間?まだだよ。
アインツベルンと縁を切るまで余計なゴタゴタ起こしたくないし。

吸血衝動どうしてたかって?
輸血パック飲んでましたが。
世の死徒達もおとなしくこれ飲んでればいいのに。
ま、俺もいずれ飲まなくなると思うけどね。



第七話「もっと家族愛を育もうぜ!」




少し前から、俺とアインツベルンは疎遠になっている。

というより、俺とユスティが。

この屋敷に住んでいる人たちはメイドを除くとほとんど関わりがない。
両親さえもだ。

いつも魔術の研究にいそしんでいる。
昔からそうだったが、最近は特にそれが顕著だ。

ユスティまでかり出されるところを見ると、大聖杯の起動が近いんだろう。
近いと言っても年単位で、だが。
なぜなら、ユスティはまだ可愛さの残る、「女の子」だからね。

Fateの回想のなかでの彼女は大人の女性だった。

あー、そうそう。目論み通り、アインツベルンの連中は
俺の体が成長しないのはホムンクルスだからだと思ってくれてる。
いや、それも間違っちゃいないんだけどね。
今の俺、1/3が人間で、1/3がホムンクルスで、1/3が吸血鬼だから。
魂がだけど。

普段は半人半ホムンクルスやってる。
吸血鬼の症状もたまに出るけど軽いもんだ。

「魂」に関する技術もかなり向上した。
前までアホみたいに時間掛けてた「蒐集」も2秒ほどで行えるようになったし。
噛みつけば勝ち。
まぁバーサーカーみたいなアホ装甲とか、聖骸布なんかで守られちゃうと厳しいが。

あと、噛みつきのみって言うのは厳しいんで、手からでも相手の血管に指をねじ込み、魔力を送り込めれば血を吸って蒐集できるように「改造」した。
こっちは牙と違って10秒ぐらいかかるから強敵との実践では使えないだろう。
こういうとき、ホムンクルスだと言うことが役に立つ。
ああ、この手からの吸血はDIO様に影響された。
いつか彼の真似をしてみたい。


それに加えて、俺は様々な動物の魂を蒐集し、経験、知識などを「自分の魂」に取り込める。
動物狩りは俺が世界で一番うまいだろう。
俺は吸収したあらゆる動物の思考形態、行動形態、サインなどがわかるのだ。
あ、でもネロ教授には負けるか?

さらに、吸収した動物の魂を俺の体の中にある魂の貯蔵庫、「霊蔵庫」に保管する。ここはある意味無間空間だ。式が捕まったとこみたいな。
そして、その動物、例えばコウモリの魂の形を一時的に「俺」の魂に上書きすることにより、
憧れの「体を多数のコウモリに変化させ、飛び立つ」という芸当が可能になったのだ!
あれは本当に感動した。
さらにその応用で体を様々な動物に変化させることが出来る。

魂の情報というのは本当に使える。
魂はさしずめ生物サイズの根源だろう。その生物のあらゆる事柄が記録されている。
アインツベルン様々だ。




まぁでも、







どうみてもネロ教授のパクリです。本当にありがとうございました。







だって仕方ないじゃん!参考になりそうなのあいつだけだったんだよ!






しかしネロか・・前は荒耶を参考にしたし中田さんに縁があるのか?






とりあえず、ネロとの相違点を挙げるとすれば

もともとの自分の体の質量以上の動物には変化できない。
魂を圧縮することによりミニチュアサイズで変化できる。
いや、そんな巨大な動物二,三体しかいないけどな。

自分の体から生み出すだけでなく、自分の体自体を変化させることも出来る。
その時には変化した動物の経験を憑依させ、能力を使うことが出来る。
士郎君の投影の生物版?みたいなもんだ。
人間形態のときでも出来るが、肉体が経験について行かない。
要するに、肉体が貧弱。前よりはだいぶ良くなったが、それでも普通の死徒には劣る。なんなの?この体。

666以上の魂の収容が可能。自我は全て俺が吸収してるからね。
俺の自我が薄れる心配もない。
命のみの混沌を作ってみたいけど、作り方がわからん。

ネロとは違い、「殺される」と再生する代わりに貯蔵した魂が一つ減る。いや、殺されたこと無いけど。まともな戦闘自体したことない。
普段は復元呪詛使うつもりだし、これは魔力が切れた時用かな。

とまぁこんなとこか。

将来的にはネロ + アーカードな不死身君になりたい。

いくら肉体スペックが貧弱でも死ななきゃ負けねーだろ!





とまぁ、ひたすらに不死身を追求してます。
え?俺の肉体?死徒状態で本気出して50メートル8秒ですけど何か?








そして、俺は今日また命を増やしに夜の街へ躍り出る。







あ、そういやアーカードも中田さんだったな。




※中田さんとはネロ・カオスや荒耶宗蓮、アーカード担当の声優さんです。あと、ちなみに言峰綺礼もそうです。

※アーカードは、漫画「ヘルシング」に出てくる吸血鬼です。
※DIO様は、漫画「ジョジョの奇妙な冒険」に出てくる吸血鬼です。



[7379] ある男の異界転生記 第八話
Name: 黒胡麻◆f6253164 E-MAIL ID:12bbb4db
Date: 2009/03/17 05:40

俺は今、ユスティーツアにと一緒に冬木へ向かっている真っ最中だ。

いよいよ運命の幕開けかと思うと緊張する。

俺の動向が許されたのはやはり俺にサーヴァントを召喚させるつもりだからだろう。
そうはいくか。
どうなってでも逃げ延びてやる。







第八話「前夜」






正直、来るかは本当に迷った。

ユスティーツアや遠坂永人、虫爺などはまだいいのである。

問題は宝石爺さんだ。

実力が未知数、というか朱い月倒したというバケモノということからも
俺の正体がばれてしまい、殺されるかもしれない。
魂の隠蔽はそう簡単にばれないと解っているが、不安なものは不安だ。

でも、やっぱり大聖杯の起動を見逃すわけにはいかない。

大聖杯の起動に立ち会った、と言う事実があれば後々有利になるかも、と言う理由もある。



だが一番の理由はやっぱりユスティーツアだ。

彼女が眠る場所。

妹の最後の土地。

これを見過ごせるほど、俺はまだ非情じゃない。

助けることは出来ない。第三は彼女の望みでもある。

だからせめて、彼女の姿をこの目に焼き付けよう。






そして、俺は彼らに会った。



「初めまして。遠路はるばるようこそいらっしゃいました。冬木の管理者、遠坂永人と申します。」

その男は友好的な笑みを浮かべながら挨拶した。

四十代ぐらいだろうか?黒髪で長身、そしてどことなく知的な雰囲気を漂わせている。

「こちらこそ。アインツベルンのリズライヒ・ユスティーツァ・フォン・アインツベルンです。」
流暢な日本語だ。彼女はホムンクルスなだけあって学習能力も高いのですぐに日本語をマスターした。


「兄のクラウス・フォン・アインツベルンです。どうぞよろしく。」

とこちらも友好的な挨拶を返す。
久々の日本語だ。話せるか心配だったが、杞憂だったようだ。

すると遠坂永人の隣にいた爺さんが、

「ほっほっほ。これはこれは。初めましてアインツベルンの方々。儂はマキリ・ゾォルケンという者じゃ。」

ゲッ!蟲爺じゃねえか。
こいつこんな頃からジジイだったのかよ。
どんだけ生きてるんだよこいつは。
なにこの化け物、と言いたいところだが体に関しては俺もそう変わらない状態なため言うに言えない。


でもなんか、妖しさというか、邪気?というかなんか嫌な感じがしないな・・・


と自己紹介を済ませた俺たちは、今後の予定について話し合う。
もう準備はほとんど済ませてあるらしく、あとは起動するだけ、と言う状況だそうだ。
なので、今日は冬木に一泊し、明日大聖杯を起動させる、と言う手はずになった。

ふぅ、とりあえず顔合わせは問題なしか。
宝石の爺さんがまだいなくて安心したぜ。




そして俺とユスティ、それと数人のアインツベルン関係者は郊外のアインツベルン城へと向かった。

ちなみにこの城、土地の権利やら根回しやらは遠坂の人が必死で頑張ったらしい。



永人、乙。



この時代のアインツベルン城は新築で、ステンドグラスやら階段やらホールやら、どこをとっても綺麗だった。

普通ならここで見惚れるところだが、この程度本国で見慣れてるので全然問題ないぜ!
 



その夜。

コンコン。

俺はユスティーツアの部屋の戸を叩いていた。

「はい。誰ですか?」

「クラウスだ。入っても良いか?」

「はい。どうぞ。」

了承が得られたので入っていく。


「どうしました?」

寝間着に着替え、腰を下ろしたユスティが尋ねる。

「いや、明日、大丈夫かなと思ってさ。」

その姿が妙に美しく、思わず視線をそらしてしまう。

「心配ないですよ。これが私の役割ですし、私たちの悲願。そのための準備は万全です。」

「いや、そういうことじゃなくてさ・・・」
魔術師としては今の反応が当たり前なのだろう。
未だ自分が魔術師になりきれてないことを認識させられる。





「大丈夫ですよ。」


「え?」

唐突に、笑顔を向けられて返答に詰まる。

「私が大聖杯になっても、私という存在は消えません。アインツベルンの女は、そういう存在なんです。」

「・・・・そうか。じゃあ俺はお前をずっと見守ってるよ。」

「・・・はい!宜しくお願いします。お兄様。」
と言って、彼女は笑った。


「じゃあ、おやすみ」

「はい。おやすみなさい。」




そして俺は部屋へと戻り、寝床へ着いた。



[7379] ある男の異界転生記 第九話
Name: 黒胡麻◆f6253164 E-MAIL ID:12bbb4db
Date: 2009/03/16 02:29


朝。
もう朝か。
結局あまり眠れなかったな。

ふと、ユスティーツアを連れてどこかへ逃げ出したい、という衝動に襲われる。


・・・駄目だ。


そんなことしたら--------------

そんなことしたら?


冬木の大火災。
あの場所にいるであろう人たちを救えるかもしれない。
士郎は、歪な正義の味方を目指さないかもしれない。
イリヤも、普通に生まれて、普通に育つかもしれない。
桜も。遠坂も。アーチャーも。




・・・・いや。
やめよう。
どちらにしろ、無理なことだ。

例えここで逃げおおせても、アレはアインツベルンの悲願。
結局次の代あたりで実現させ、あの運命に辿り着くだろう。

なら俺も、あの運命に、辿り着こう。






第九話「願い」






柳洞寺、地下。
今、大聖杯起動の地へ向かっている。

立ち会うのは、
まず俺。
ユスティーツア。
遠坂永人。
マキリの爺。
そして、まだ見ぬ万華鏡、キシュア・ゼルレッチ・シュバインオーグ。

正直、会うのは凄く怖いが腹をくくらねばならないだろう。









柳洞寺、地下。

「全員揃いましたか。では、始めましょう。」
遠坂永人が周りを見回しながら言う。

・・・頼むからここでうっかり属性発動させないでくれよ・・・




って、全員揃ったって?万華鏡さんいないじゃん。

「儂なら、ここにいるぞ。」

うおっ!いつのまに後ろに!心臓止まるかと思った・・・

ってアレ?心読まれた?

「いいや。なにやら捜し物をしているような顔じゃったからの。」

さいですか。

と、この人が万華鏡か・・・。どこか飄々としていてつかみ所がない。
それでいて厳格な雰囲気だ。

会うのが怖い、と思っていたのも忘れ、なぜか見入ってしまう。



魔導元帥は観察するように俺を眺め、
「・・・ふむ。お主も「そう」かな?」



・・・!?
見抜かれた・・・・!?

思わず後ずさる。


「そう構えるでない。お主は別に、ここで事を起こすつもりでは無かろう?
だったら、儂は何も言わんよ。お主のことが気に入らない、というわけでもないしの。
それにしても上手く隠しておるな。」
と言って、宝石爺は笑う。

「そう・・・ですか。ありがとうございます。」
どうやら問答無用に滅ぼされる、ということは無いようだ。
安心する。

「じゃが、気をつけろよ。儂は構わんが、この世にはそうでない者もたくさんいる。」

「・・・はい。心得ております。ありがとうございます。」
魔導元帥はクックッと笑うと、ユスティーツア達の方へ歩いていった。

・・・ふぅ。緊張した。意外に話しやすい爺さんだったな。
絶対に弟子にはなりたくないけど。

「お兄様。準備が出来ました。始めましょう。」
万華鏡との顔合わせも済んだようで、ユスティーツアが俺を呼んでいる。

とうとう、来たか。

「ああ。わかった。今行くよ」



ユスティーツアが言う。
「聖杯。それは願いのために。」

永人が言う。
「平和。幸福。皆が求める者のために。」

ゾォルケンが言う。
「その願いこそを、永遠に。」

ああ、そうか、と俺は一人納得する。


この頃はまだ、そんなことを願っていたのか。

ただ、永遠を望んだマキリの妖怪。
そんな願いも、根底にあるのは今な単純なことだったのか。

いずれは失われる願い。
先を知っている身としては、気持ちが沈むのを止めることは出来なかった。








ユスティーツアが、儀式場のような四角形の神殿の中に一人佇んでいる。

儀式の段取りについては昨日のうちに聞かされている。
俺はユスティ-ツアに術式と魔力をサポートする役割だ。


ユスティーツアが魔方陣の中で詠唱を始める。
それと同時に俺は外側から術式のサポートを始めた。
永人、ゾォルケンともに各々の役割をこなしているみたいだ。


詠唱が佳境に入る。

俺はサポートに力を注ぎながらも、昨日のことを思い出していた。







「私」という存在は、いなくならない。

彼女は言った。

そういう存在なのだと。


でも、やっぱり納得できない。


大聖杯の核となり、取り込まれる。

それは死と同じ事ではないのか。
大して変わらない。



しかし、それでも彼女は笑った。




大聖杯が、起動する。
魔力の光が、視界を遮る。





しかし最後に、俺は彼女がこちらを見て、笑ったように感じた。





次に見えたものは、魔力の固まり。
とてもきれいな、無色のエネルギー。



「・・・起動したか。」
ゼルレッチが軽く感心したように言った。




「・・・はい。次の段階に映りましょう。」
軽く目を奪われていたようだ。永人が少し送れて反応する。

「そうじゃの。これで終わったわけではない。」
ゾォルケンは歩き出そうとする。

そこに、

「それでは儂はここまでだ。成功を祈っておるよ。」
とゼルレッチが言い残し、何か歪な剣のような者を光らせ、虚空へ消えた。




「・・・行きましょう。我々だけではアレには触れられない。」
永人が歩き出し、ゾォルケンも止めていた足を再び動かし始めた。



「ゾォルケン。」
俺は、呼び止めずにはいられなかった。



「・・・なんじゃ?」
まだなにかあるのか?といった風にマキリの老人が振り向く。



俺は、意を決して、



「・・・永遠とは、手段であって目的では無い。
これを、忘れないでくれ。」




妖怪になるであろう老人に、そう伝えた。


Side/ゾォルケン

「・・・永遠とは、手段であって目的では無い。
これを、忘れないでくれ。」

何を言っているんだ?
この若造は。
と思いながらも返答する。


「ああ。当然じゃ。我らの願い、忘れるはずもない。」



そう答えたが、アインツベルンの若造の問いは、
ゾォルケンの心にいつまでも引っかかっていた。


















やっとここまで来ました。
ゼルレッチの性格、話し方が難しい・・・
大聖杯起動シーンは妄想です。



[7379] ある男の異界転生記 第十話
Name: 黒胡麻◆f6253164 E-MAIL ID:12bbb4db
Date: 2009/03/17 08:24




大聖杯起動後、俺は冬木のアインツベルン城で準備を進めて待ち構えているであろうアインツベルンのみなさんを総シカトして、荷物を取りに本国へと戻った。










最速で国に帰り、工房で予め用意しておいた荷物を取って外へ出る。

この時にはまだ俺が逃走した、って他の奴に伝わってなかったからアインツベルン御用達の船が使えた。
たぶん船無かっら帰れなかったね。
俺が聖杯に関する重大な忘れ物した!って言ったら大慌てで出航してくれたよ。
こういうときは当主の兄って肩書き便利だ。




さて、とりあえず準備は出来た。俺が逃げたという情報が入る前にズラからなくては!
こういう時にはネットとか無くて良かった、と思う。



息が切れるのも構わずに全力で走って城から離れる。


使用人がなんか言ってるけどスルー。
庭師がなんか言ってるけどスルー。
門番がなんか言ってるけどスルー。
ここまで運んできてくれた人も勿論スルーだ。





そして城から出て少し経ち、城の全貌が視界に収められるようになった頃。
俺は突然立ち止まって振り返り、







「さようならアインツベルン!僕は君のことを忘れないよ!」






そうシャウトして俺はアインツベルン領から姿を消した。













第十話「しゅじんこうは にげだした!」












幸い、追っ手を撒くのに時間はかからなかった。
ほとんどの有能な魔術師は聖杯にかかりっきりで俺に構ってる暇なんて無いんだろう。

でももう少し追いかけてきた方が良いんじゃね?
俺、アインツベルンの秘術とか知ってるよ?
他の奴に知られちゃうかもよ?
まぁ、教える気なんて無いけど。

みんな俺が死徒化してるなんて知らないから、いずれホムンクルスで短命な俺は勝手に滅ぶとか思ったんだろうな。
そうはいかないぜ。



それはいいとして、これからどうしよう。

金はある。本国から大量にパクって来たし、いざとなればイリヤ式魔眼でどうにかなるだろう。


考えを纏めるため、原作知識の記憶の匣を開ける。
「記憶の匣」というのは摩耗しないように隔離した前世の記憶が入ってる箱のことだ。

といっても、この時代に生きてる原作キャラなんてそれこそ人外さんしかいない。
そのうえほぼ全員所在不明。
というか、たとえ何処にいるか解っても関わりたくない。



・・・・どうしよう。
原作知識も今は役にたたん。

じゃあ何処に行く?


・・・消去法で行くか。

まずドイツは除外。見つかるとやっかいだ。
ロンドン、つまりイギリス。ここも除外。
魔術協会の本拠地だからね。
教会は何処にあるのか知らんが、たぶんこの辺だろう。

アトラス院、エジプト。
ここも用はない。
土地勘が無いところにはできるだけ行きたくない。




そうするとやっぱり、日本、か。むしろ、土地勘があるところなんてそこしかない。
と、思ったけど。
この時代、正規の手段で日本に渡るの難しくね?

そもそも、今はドイツにいるのだ。
前行ったときのような、アインツベルン的なコネは使えない。









・・・旅に出よう。




こうして俺は、あてのない旅を始めた。

いや、目的がないって訳じゃないよ?体も強化しないと行けないし。












・・・とりあえずドイツを離れよう。



[7379] ある男の異界転生記 第十一話
Name: 黒胡麻◆f6253164 E-MAIL ID:12bbb4db
Date: 2009/03/18 04:21





アインツベルンとお別れしてから数ヶ月。





俺は相変わらず、人気のない場所を選んで動物を貪っていた。











第十一話「死」










人は、まだ一回も吸っていない。








教会の目が。
周囲の目が。
まだ、吸う必要はない。







いや、これは言い訳だろう。
本当は、怖い。

人を吸うのが怖い。





人を吸って、本当に人の道を外れるのを、心のどこかで恐れている。








だから、いつまでも女々しく動物ばかり襲っているのだ。





随分前から、同じ事の繰り返しだ。







人を、襲おうと思う。
決心が付かず、襲えない。
結局チャンスを逃す。
そして「まぁ、今日はいいか。明日頑張ろう。」
繰り返しだ。









富樫が本気出したら俺も本気出す、と同じような考えである。
いつまで経っても堂々巡り。







もういっそ動物専門の吸血鬼になってしまおうか、とか考えながら動物を吸う。




その時。






ジャリ。






驚き、急いで振り向く。






そこには、両手に何かを持った、神父服の男----------------------------!



代行者。



そう認識した瞬間、体のスペックをフルに使いその場から離脱する。
動物に変化している暇はない。



全速力で逃げ出す。




しかし。





ドン、と何か見えない壁にぶつかり、逃走を阻まれる。





辺りを見回すと、黒いモノが四方に刺さっている。



------------------結界!



畜生、と思いながら様子を見ようと代行者の方へと振り向いた。





瞬間。







ずぶり、と鈍い音を立てながら何か黒いモノが眉間を貫き、










俺は、初めて死亡した。



















短すぎですね。無駄に行間空きすぎだろ。
でも一回ここで終わらせたかった・・・



[7379] ある男の異界転生記 第十二話
Name: 黒胡麻◆f6253164 E-MAIL ID:12bbb4db
Date: 2009/03/18 04:42





「--------------■■■事だ。」







ナニか、聞コえる。






声の出所は、倒れた俺を見ながら嗤う、あの神父。








「成■■か。手■■がま■■■■った。」








徐々に意識がクリアになる。







視界は良好。
左腕、右腕、左足、右足、頭部に胴体。
体に異常は無し。





そして、その男の顔を認識した瞬間、俺は考えるより先に襲いかかった。








第十二話「人外」






「!?」




男が驚き、動き出す。


しかし、その前に四肢を押さえ、首筋に噛みついた。
男が後ろに倒れる。
そんなことはかまわずに、牙をより深く突き刺す。



「っ!?」



男が苦しみからか、顔を歪める。



牙は、血管に到達。
間髪入れずに自らの魔力を流し込む。

魂を手繰り寄せる。


吸う。吸う。吸う。
血を吸う。


吸う。吸う。吸う。
魂を吸う。




そしてそのまま、悲鳴をあげることもできずに、男は絶命した。



「ハアッ・・ハァッ・・・」


呼吸が荒い。汗が滝のように流れ落ちる。


だが、不思議と気分は良い。


男の人生、全てを飲み込む。
経験。知識。感情。
全てを己がモノに。




その時、俺のどこかが、切れた気がした。



「ハアッ・・ハアッ・・」


「ハ・・・ハハハ・・・ハハハハハ!」


「ハハハハハハハハハハハハ!」





俺は、なぜだか嬉しくて、悲しくて。我慢できずに、笑い続けた。













--------------------------クラウス・フォン・アインツベルン。


起源は、「簒奪」。



















これまた短いな・・・十一話とセットとお考え下さい。



[7379] ある男の異界転生記 第十三話
Name: 黒胡麻◆f6253164 E-MAIL ID:12bbb4db
Date: 2009/03/18 07:38



あれからまたも数年たった。


あれからは、普通に人間も襲っている。


ただ、魂を頂くのは代行者や魔術師、いわゆる裏の連中からだけ、と決めた。

たまに一般の方からも血液を頂くが、その際はちゃんと注射器経由で飲んでいる。
殺したり、こちら悪意がなければにグールになることはないと思うが念のためだ。

ちなみに、血液だけでも知識だけは頂けることが解った。
今までは血を飲む=魂も一緒に、って感じだったからね。

で、だ。

今、そんなことを悠長に話してる場合じゃないんだ。

実は今、代行者に追われている。

人間状態で近付き、油断してるところをズバっとやろうと思ったんだけどこの人かなり勘が良くて気づかれてしまった。

いつもはこの方法で成功してたんだが・・・

でも戦闘になり、すぐにこいつは勘が良かっただけじゃないと気づいた。

かなり、強い。俺が今までに倒した最高の人間の経験を憑依して戦ってるのに、ぜんぜん攻撃があたらん。

しかも体を対吸血鬼用の概念武装か何かで守っているから下手に近づけない。

逃げ回るだけで精一杯だ。帰れよこいつ。





第十三話「ここは俺にまかせて先に行け!」







と、ふざけた態度を取っているが実際かなりヤバイ。


まだまだ死なないが逃げ切れる見込みも勝てる見込みも限りなく薄い。


それに実際既に200近い魂が殺されている。

これ以上消耗するのは避けた・・・


「ガッ!」


また死んだ。7つ一片に持ってかれた。


普段なら復元呪詛使えるのだが、基本代行者の武器で付けられた傷には復元呪詛が効かない。


ゆえにピンチなのだ。



「クソッ・・・!」



息も荒い。



かなりの距離が開いているが、代行者は遅れることなく追ってくる。
バイオハザードみたいだ。


走る。走る。走る。





走る。走る。走る。







民家が見えた。

かなり古ぼけている。
おそらくもう誰も住んでいないだろう。

「ハァッ・・・」

荒い息を整えながら一軒の民家に身を隠す。



「クソ・・・仕方ない。あれをやるか・・・」



気乗りしない。これをやるとますます俺本体の身体能力が落ちるかもしれない。



荷物から、あるモノを取り出す。






それは、人形。




それに自分の血を垂らす。




そして、血を媒介に、人形に魂を流し込む-------------------



「ッゼ、ハァ、ハァ、ハァ・・・」



人形はみるみるうちに形状が変わり、俺と瓜二つな姿になった。
俺が持つのはこの一体だけ。これが破られたらもう終わりである。


燈子と戦ったときに荒耶氏が使った物と同じような物だ。


でも、アレと同じにして貰っては困る。

形自体は同じような物だが、これには俺「本体」の魂を半分も込めたのだ。死んでも人形に戻ったりはせず、ちゃんと死体してくれるだろう。
戦闘能力はほぼないけど。魂一個だけだし。ただの死徒だ。しかも体弱い。

これならあの代行者相手にもバレないだろう。てか、バレるな。バレないで。頼む。


「・・・・じゃあ、頼むぞ。」



「・・・・・」


人形は答えない。
そりゃそうだ。死ねと言ってる奴に「OK!」なんて軽快に返事する奴がいたら見てみたい。

しかし、思考形態は俺と同じだ。だから理解している。ここはどちらかを犠牲にしないと逃げれない。そしてその役は自分だ、と。




「・・・・・」

人形、いや、「俺」をちらりと見る。感情は感じられない。いや、出せないようにしているのか。


「すまないな、俺。」



そう言い残し、人間モードで気配を消しながら逃げ出す。





「謝るなよ、俺だろ。お前。」




最後に、そう聞こえた気がした。















-------------------------ある教会、地下。




「では、”吸魂鬼”は完全に滅びたんだな?」
黒い神父服を着て、十字架を首に下げた初老の男がそう尋ねた。

「はい。対象を殲滅した代行者並びに現地の教会の者も確認しています。死体は死徒の物でありましたし、状況から考えても身代わりなどの可能性も極めて低いと思われます。」
金髪のシスターがそう告げる。


「そうか。そこまで言うのならそうなのだろうな。」
そう言って神父は対象の情報を思い出す。



”吸魂鬼”。
正体不明であり、”吸われた”と思われる代行者・魔術師の周りには戦闘の跡はなく、遺体にも傷は首筋に付いた吸血痕のみ。薬物反応なども検出されなかった。
完全な不意打ちである。
これらのことからかなり隠密性に優れる死徒のようである、と報告されている。
また、他の部位は全くの無傷であり、吸血されたと思われる血液も致死量には至ってなかった。
つまり、死ぬ要素が見つからないのも関わらず「肉体は完全に死んでいる」のである。
さらに、その遺体は魔術回路の稼働が完全に停止、魔力が枯渇しあらゆる魔術の使用が完全に「不可能」な状態になっていた。
これらのことから対象は魔術に必要な要素、「魂」またはそれに類する物に危害を加えるのではないか、と推測が立てられた。

しかし、この事件。
ちょうど現地にいた代行者は対死徒の戦闘経験豊富な手練れであったが、
背後から”襲われる”まで全くその存在に気付かなかったことと、
復元呪詛の効果が及ばない対死徒用の武装を使い攻撃したにも関わらず、対象が傷を”再生”したなどの死徒としてのレベルの高さ、
ならびに前回の犠牲者の位置からも、対象が”吸魂鬼”である可能性が高いと判断。
そして、代行者は無事対象を殲滅、帰還した。





殲滅したはず。
しかし、どこか引っかかる。
この死徒。
扱いが極めて難しいとされる第二要素”魂”を扱う、
”アカシャの蛇”に継ぐイレギュラー。
その能力だけなら彼の二十七祖にも肉薄する。
そんなものがこう簡単に殲滅されるのだろうか?

しかし、考えても埒が開かない。
現地の者たちも殲滅した、といっているのだ。
私が考えてどうにかなるものではない。

そう考え、神父は通常の業務に戻った。






それからしばらくの間、魂を抜かれた、と思われる者の死体は出なくなった。
しかし、魔術師や代行者が行方不明になる、という事が前よりも増えていた。が、それも全体から見れば微々たるものである。
だからそれを気にする者がいても、既に終わった事である”吸魂鬼”と結びつける者は一人としていなかった。




[7379] ある男の異界転生記 第十四話
Name: 黒胡麻◆f6253164 E-MAIL ID:12bbb4db
Date: 2009/03/19 06:36


 あ…ありのまま 今 起こった事を話すぜ!

『おれは代行者から必死に逃げ延び、
力尽きて気絶したと思ったらいつのまにか豪勢な部屋のベッドにいて、上から女の子が俺を見下ろしていた・・・』


な・・・何を言ってるのかわからねーと思うが、
俺も何をされたのわからなかった・・・

頭がどうにかなりそうだった・・・

幼なじみの目覚ましだとか知らない天井だとか
そんなチャチなもんじゃあ 断じてねえ

もっと恐ろしいものの片鱗を味わったぜ・・・






第十四話「黒」








「起きたか」


まだ頭がぼうっとしているが、体を起こして辺りを見回す。


「えっと・・・ここまで俺を運んできたのは、君なのか?」
とりあえず状況を確認しよう。
さっき俺を見下ろしていた黒いドレスに身を包み、綺麗な白い肌をした赤目の女の子に話しかける。


「そうだ、といっても『運んできた』のは正確にはこっちだ。」
そう言って少女は隣にある白い・・・?
白い・・・何これ?狼?これ明らかに普通の動物じゃないだろ、をポンポン、と軽く叩く。


「そ、そうか・・・ありがとう。それで、ここはどこ?」
白いナニカに関しては全力でスルーし、状況把握に努める。



「私の城だ。」


そうざんすか。
てか、城ですか。

「そ、そうなんだ・・・」









沈黙。






なんかしゃべれよ。頼むから。困るだろ。
と、少女に視線を向ける。




しかし、少女は視線なんて意に介さずに品定めするような目で俺を見まわす。







「えっとですね・・・」
言葉に詰まる。
何を言えばいいのか。







そうか。わかったぞ。
この沈黙は、これ以上ここにいると迷惑だから早く出て行け、という彼女の無言のメッセージか。

そういうことなら仕方ない。
わざわざ保護して貰って礼の一つも出来ないなんて悪いが、ここはおいとまさせてもらおう。

「じゃあ、これ以上ここにいても迷惑だと思うのでお暇させてもらいますね。お礼の一つも出来ないなんて申し訳ないんですけど・・・」
と言いながらベッドから起き上がろうとする。



少女は終始無言。


この娘、見た目に反してなぜか威圧感が異様に凄い。
そのせいか、言葉もいつのまにか敬語になってしまっている。

じゃあ、と手を上げてベッドから降りる。
この城の間取りなんて知らんが早くこの空気から逃れたい。
そこに、







「待て。」




有無を言わさぬ一言。
このお嬢さん怖すぎだろ、と思いながらも返答する。

「な、なにかな?」

助けてやった代わりにしばらく雑用しろとか?
それぐらいなら喜んでやりますよ。
時間にはまだまだ余裕がある。








「お前、上手く隠してあるようだが人ではないな?」




思考の外からの一言。
一瞬驚愕するが、同時に心のどこかで同時にああ、やっぱりね、と納得する。
この少女も、隣の白いナニカも、今まで会った何よりも異常な雰囲気を最初から出していた。
それを俺が無意識に気付かないようにしていただけなのだろう。




「・・・何でそう思う?」
内心、冷や汗をダラダラ流しながら尋ねる。
これでこの人が退魔関係だったら俺終了ですね。あばばばば。

普通に考えるとその手の人がわかってるくせに魔を家に連れて帰ってきたりするはずないのだが、そんなことを考える余裕がなかった。





「なに、この魔犬の特性を使っても死ななかったんでな。」
と、またもや白いナニカをつつきながら楽しそうに少女は言う。
ていうか魔犬?それ犬だったんだ。怖すぎだろ。
つーか特性って何だよ。それで人は死ぬのか。


白い魔犬に10代前半はどのカタチをした少女。
それに、殺人特性。

どこか気にかかり、全力で脳内サーチを開始する。




思案すること数秒。






おそるおそる尋ねる。
「・・・もしかして、死徒、って知ってたりする?」



「ほう。やはり人ではなかったか。予想はしていたが、死徒だったとな。」
少女はおもしろそうに口を歪める。


違う!いや、別に違くないけど俺が聞きたいのはそういうことじゃないんだ!

ああああああ、と頭を抱える。



「なんだ、違うのか?」
今の行動が否定に取られたのだろう。
若干驚いたように聞いてくる。


「いや、違くないよ・・・」
とりあえず返答する。



少女はなんだ、まったくまぎらわしい、というように口を尖らせている。



クソ、このまま悩んでいても埒が開かないだろ。



「あの・・・」



「なんだ?」



言うぞ!俺はこんな空気には負けない!






「お名前は?」






「アルトルージュだ。アルトルージュ・ブリュンスタッド。」






・・・予想通りすぎだろ。
外れて欲しかった・・・





この後、人に名前を聞くときは自分から名乗れ、と怒られた。



















アルトルージュの口調がわからん。アルクェイドの姉と言うことで、とりあえずこんな口調にしてみました。
「~じゃ」口調にしようかと思いましたがさすがにそれはやめた。
要望があれば口調直します。ここの段階ならまだそれほど影響ないので。



ここからしばらくのお話は作者の妄想で続きます。
読み返したら場面進んでなさ過ぎて吹いた。



[7379] ある男の異界転生記 第十五話・前
Name: 黒胡麻◆f6253164 ID:369b17e8
Date: 2010/05/16 12:59
―――死徒、吸魂鬼。
血を吸い、魂を吸い、その者の人生そのものを奪い去る、卑劣なる簒奪者。

その実態は家を捨てたアインツベルンの忌まわしき失敗作、未来を望む男。

その男は半世紀の、そのまた半分すらもまだ生き抜いてはおらず。

男の主観時間で数えたとしても重ねた年月は半世紀に届くか届かないかというところ。

人間としても、死徒としても若すぎるそれは、まだまだ何も知らない小僧でしかなかった。


しかし。


教会によって殲滅されたかと思われたそれは、まだここでしぶとく息づいていた。

それは、黒の吸血姫の下に。



「どうした、早く飯をもってこい」


「はいはいただいまっ」


――そこに在る意味はわからずとも。


第十五話「その生活は」



「お待たせしました」

と、でかいテーブルまで食べ物の乗ったカートを押して走っていく。

そこでは姫様がお待ちかねだ。

「遅いぞ。私が空腹で死んだらどうしてくれる」

姫様は少し怒った様子でこちらを指さしながら文句を投げてくる。

それだけ見るならただの少女だ。

「大丈夫です死徒はそんな簡単には死にませんから」

言いながらもテーブルの上に食器、さらにその上に食事を用意していく。

「それぐらいわかっている。以後気をつけろ、ということだ」

フン、と腕組みしながらさらに足も組み始める姫君。ずいぶんと偉そうだ。

「わかりましたって。

・・・はい、準備できましたよ」

だが、偉そうなのは仕方がない。
この空間では、この城ではそれが必然なのだ。



「よし、それで今朝のメニューは何だ」



彼女こそが姫にしてこの城の主、アルトルージュ・ブリュンスタッドその人なのだから。


――俺が此処に来て、数週間がたった。

始めはすぐ放り出されるかと思ったが、
なぜか姫様が俺に興味を持ったらしく、ここにおいてもらえることになった。
そして、住むことになったからには自由気ままにニートを営業す%E



[7379] ある男の異界転生記 第十五話・後
Name: 黒胡麻◆f6253164 ID:369b17e8
Date: 2010/05/16 12:58
そして、住むことになったからには自由気ままにニートを営業するわけにもいかなくなり、
そこでこの城の使用人のひとりとなった次第だ。
そこで姫様から興味を失われないように頑張っている。

さて、使用人といっても、普段は掃除とか庭の手入れぐらいしかすることがない。
客はいないし、主たちも全く外出しない。
でも、最初は大変だったのだ。
この無駄にでかい城に主たちだけで住んでいたのもあって、至る所に汚れが溜まっていた。
使ってない部屋にいたっては目を覆いたくなるほどの惨状が広がっていて、
それらを全て掃除するのは骨が折れた。
しかし、一回一通り掃除してしまえばまた目立つ汚れがでてくるまでに時間がかかる。

だから、ここ数日の仕事内容はもっぱら姫様の暇つぶし相手だけだったのだが―――

「おお。これもなかなかうまいな」

これだ。
数日前から、「食事」に嵌りだしたのである。
きっかけは、些細な会話。
俺が外の世界の食物について話したことにある。
もともと知ってはいたのだが、俺の話を聞いて興味がわき、食べてみたら嵌った、ということだ。
ただの知識と実際に経験するのとでは違う、という奴だ。

他にも、この姫様の側近である白いのも黒いのも食べ物なんぞに興味をもつ性格ではなく、
あの白いワケの分からない動物は論外だ。

これに加え、また姫様が半分真祖だというのも原因だろう。
半分とはいえ、真祖の血が流れているのだ。
うかつに血でも飲んだら大変な事になるだろう。
いままでは何かを口に入れる、という行為すらもほとんどしてこなかっただろう。

このことも、飲む――食べるという行為にかなりの興味を抱いた原因の一つだ、と思う。

「これも中々…もっともってこい」

……まぁなんにせよ、食べ物で満足してくれるなら楽なものだ。



――あ、口に食べかすついてんぞ。


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