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[18801] 水の橋の先にある物【リリカルなのはクロス物、ユーなの】
Name: パディル◆4effd48e ID:c89b8002
Date: 2010/05/13 00:30
はじめまして、パディルと申します

このSSは様々な作品から様々なキャラが出ていますが、一つ呼ばれたキャラには共通点が有ります(すぐ解るだろうけど)

かなり頭の悪い作品ですし、きちんと続くかも解りませんが、なのはとユーノの再会くらいは書きたいと思っています

一人でも楽しんで頂ければ幸いかと



[18801] 第一話 魔界戦記デュエルファントムクレイドルブラッドレジェンディアと召喚獣
Name: パディル◆4effd48e ID:c89b8002
Date: 2010/05/13 00:33


彼の名を聞けば死者も目覚める
血も涙も流れぬ悪の化身
どんな悪魔でも裸で逃げ惑う

「…ふむ」

それが、ユーノが遺跡の最深部で見付けた碑文だった
傍に置いて有ったのは水差し
目の前には縦向きに置かれて崖から突き出された2枚の長い鉄の板
そして、その先には巨大なリングが有る
そのリングを通れば、碑文の指す『彼』の所に行ける様だ

引き返そう、彼の理性はそう考えた
しかし、彼の好奇心は理性を超えてしまう
気付けば水差しを手に取り中から無限に沸き出す水を空中にぶちまけていた
それは鉄の板を繋ぐように流れ、リングの中を満たして行く
…今ここに、水の橋が出来た

彼は最近孤独だった
仲の良かった友人二人は養子を取り家族のような状態
親友、とも言えるかもしれないが言いたくない真っ黒黒助はそれこそ本物の家族と円満に暮らしている
他の知り合い達も、それぞれ充実した人生を過ごしている
自分の居場所が解らない、自分の生きる意味が、生きる楽しさが解らない
そんな事を考えるようになっていた
だから、彼の足はその橋を踏んでいた
何が有るのか解らない世界、そこに飛び込んでみよう、と
「……さよなら、みんな」
一人、誰も居ない空間で呟き
彼は、この世界から姿を消した

橋を渡り水のリングを潜ると、突然世界が暗転した
自分の使う転移術式とは全く違う、でも何処かに運ばれているという事は解った
時間がかかりそうだ、そう思い彼は眠りに就いた



ぱさっ、と、髪が広がった
突然髪を留めていたゴムが切れてしまったのだ
大切な友人…最近想いを自覚したせいで、恥ずかしくて会えなくなっている大好きな人
彼とお揃いの、緑色のゴム
「…ユーノ、君?」
何だろう、凄く胸がざわざわする
彼がもう会えない遠い所に行ってしまった、そんな喪失感
私は思わず携帯電話を取り出し彼に電話をかける
「お願い…繋がって…お願い…!!」
願い虚しく、帰ってくる言葉は無い
携帯電話を握る手に力が籠る
いつの間にか、目には涙が浮かんでいた



暗い世界、燃え盛る火山、とどろく雷
ここはそのような場所、魔界
そこには巨大な城が有った
その中を一人の緑髪の少女が駆けまわる
しばらく走ると目的の人物を見つけたのか、息を切らし呼びかける
そこに居たのは黒髪の青年だった、心なしか顔色が悪い
「どうしたんだいマローネ?そんなに慌てて」
マローネ、それが少女の名前の様だ
少女は息を落ちつけ、彼に話しかける
「大変なんだよアッシュ!ノーマさんに聞いたんだけどね、星の墓場にまた誰か落ちて来たんだって」
アッシュと呼ばれた青年が驚く
「またかい?本当に不安定みたいだね、この世界は」
「うん、今ラハール達が迎えに行ってる…どんな人なんだろうね?」
不安そうな青年と、同じように不安が浮かんでは居るが少し楽しそうな少女だった



その城の別の場所
今度は黄色い服装の少女が走っていた
「あ、クレクレー!!」
標的を見つけたのか彼女は前を歩いていた少女の前に回り込んだ
「む?なんだ、ノーマか。私は今この世界の事を調べるので忙しいのだ…まったく、大河の奴め、早く助けに来ぬか」
どことなく気品を感じる少女(帽子は変だが)は、低いテンションで返した
しかし黄色い少女はそれが不満なようで
「おやおやー?クレシーダ王女殿下は救世主様が恋しくてたまらないご様子ぐへえ」
にやにやと笑いながらつついっと彼女に近づく
しかし、その脳天に突然拳が叩きこまれた
目の前の、クレシーダと呼ばれた少女の帽子から飛び出したボクシンググローブが彼女の頭に直撃したのである
どうやら言い方にいらついたようだ、頭を押さえて蹲るノーマに、ふんぞり返ったクレシーダが話しかける
「…ふん、想い人との再会を願って何が悪い?それに私は一刻も早く王都に帰って国を治めねばならんのだ」
「いったぁーい!図星だからってそんな反撃しなくても良いじゃない!折角ノーマさんが耳寄り情報持ってきてあげたのにぃー!」
「耳より情報、だと?」
「そだよ、プリニー達に聞いたんだけどね、なんか星の墓場に男の人が落ちて来たんだって」
ノーマがそう言うと、急にクレシーダが笑いだした、年相応の、幼い少女の笑みだ
「男!?…ふ、ふふふ、なんだ、大河の奴。予想以上に速いではないか!流石私の救世主!!」
そして走って行く、星の墓場の場所も知らないだろうに
「…さて、次は誰に話そうかなー!」
ノーマは見ないふりをして次の標的を探しに行った



そこは、雪で覆われた山だった
白い少女と過激な服装の踊り子、それが炬燵に入りお茶をしている
「あら…ねぇシェマ、また面白い事が起こりそうよ?」
ふと、お茶をしていた片割れ、白い少女が踊り子に話しかける
「ん?また何か有ったのかい?」
シェマと呼ばれた踊り子が答える、どうでもいいが寒くないのだろうか
「えぇ、どうやらまた『呼ばれた』みたいね。今度は男、今まで居なかったタイプの」
「…へぇ、場所は?」
「星の墓場、もうラハール達が着く頃だけどお城からクレア…あ、美波がクレア見つけて付いて行ってるみたい」
「ご苦労だ事…じゃあ私達はお城で待ってようか。態々あんな所まで歩く必要はないわ」
そう言うとシェマは立ち上がった
「そうね、効率よく楽しまないと」
白い少女は、立ち上がった後優雅な仕草でスカートを払い、猫の姿へと変わりシェマの肩に乗った
「さて、行こうかレン」
「ええ」
彼女達は、城に向かう事にした


「…つっ」
頭の痛みで目を覚ます
こめかみの辺りが酷く痛む
落ちていた眼鏡を拾い立ち上がると荒廃した世界が見えた
「…なんだ、ここ」
周りを見渡すと、様々な物が落ちていた
なのはの世界で見たような宇宙船の残骸、巨大な魔物の骨、隕石
見た事もない機械や異形をもした作り物
「僕は…無事に跳べたみたいだな」
とりあえず自分が5体満足で有る事に安堵する
「…!?」
複数人の足音が聞こえて来た、見つかって拙いとも思わないが、まずはどんな相手かを確認したい
「オプティックハイド」
印を結び自分の姿を隠す魔法を唱え、近くの岩陰にしゃがみ込んだ

「あっれー?おっかしいなー、プリニーの奴らが言うにはここら辺の筈なのに」
「…誰も居ませんねー?」
「人形か何かと見間違えたのではないか?」
聞こえて来たのは子供達の話声だった
岩陰から顔だけを出して姿を伺う
一人は、アギトとどこか似た感じの露出の高いツインテールの少女
もう一人は蝙蝠のような羽に白と赤の服を着た八重歯…牙の生えた少女
そして最後に、半ズボン上半身裸でマフラーだけを着けた少年だった
ああでもないこうでもないと話し始める子供たちを見ていたが、突然少年がこちらを向いた
「…ふん、なるほど。ただの人間ではない様だ、エトナ、フロン、下がっていろ」
「へ?どうしたんですか殿下」
「ラハールさん?」
「何、少し相手の実力を見てやろうと思ってな」
そう言うと少年は持っていた剣を両手で掲げた
その何気ない仕草が、何故か凄まじく恐ろしい物に感じられた
「…っ!?」
咄嗟にその本能に従い転移魔法を組む
「風車…!」
少年が跳び上がり、技の名前を叫び出す
遅い遅い遅い遅い死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ
「間に合えーーーー!!」
「切りぃっ!!」
叫んだ、跳んだ、細かい設定はせずにただただ真上に

転移が終わると同時に轟音が辺りに響き渡った
物凄い速さでリズムを刻む胸を押さえながら下を見る
ついさっきまで僕が居たその場所には、巨大な底も見えない溝が出来ていた
そしてその溝の手前に居た先程の少年と少女二人が突然上空に現れた僕を見る
「ふむ、鈍くは無いようだな」
「もー、殿下ったら相変わらず単純ですねー」
「ラハールさん!あの男の人凄く驚いてるじゃないですか!!」
そしてこんな軽口を叩く
まるで、先程の破壊が当たり前、不思議ではない事のように
少年にも全く疲れが見えない
「おいお前、とりあえず降りてきたらどうだ?」
少年が声をかけてくる
逃げようか、とも考えたが恐らく逃げきれはしないだろう
僕は大人しく彼らの前に降りた
「…僕は、ユーノ・スクライア。ある遺跡の最深部に有ったロストロギアを使ってここに来た」
「ロス…なんですかそれ?」
一見天使にも見えそうな少女が頬に指先を当てて目を丸くしながら聞いてくる
「遺失物、かな。使い方も効果も良く解ってない古代文明の遺物の事だよ」
「んまっ!それは神秘的ですねー!」
「…少し待て、お前ひょっとして、自分の意思でここに来たのか?」
「え?う、うん」
「物好きも居たもんですねー」
少年が呆れ顔で、露出の高い少女がにやにやとした顔でこちらを見てくる
「えーと、とりあえず名前を聞かせてもらえるかな?」
色々と知りたい事は有ったがまずこれを聞くべきだろう
と、白と赤の少女が手を上げて話しだす
「はいっ!私はフロン、今は堕天使ですが心はいつだって愛で溢れてまっす!」
次にツインテールの少女
「私はエトナよ…ふーん、ひょろいけど悪い見掛けじゃないわね、使えそう」
そして最後はマフラーを付けた少年
「俺様はラハール、この魔界の王にしてあの伝説の魔王バールを倒した超魔王だ!フゥーハッハッハッ!!」
「!?」
突然高笑いを始めた少年に驚きつつも、僕は彼の名前から有る一つの事を思い出した
「ラハー、ル?」
それは、僕が遺跡の最深部で見付けた碑文に書かれていた名前と同じ物だった


これが僕の長いようで短いような不思議な魔界での生活の始まりだった



[18801] 第2話 ひだまりsisterブレイド 前編
Name: パディル◆4effd48e ID:c89b8002
Date: 2010/05/16 14:58

あれから1日が過ぎた
ユーノに連絡が繋がらない事をなのはは泣きながらフェイトに話し
フェイトからクロノに連絡が行き、彼が遺跡発掘に携わっていた事を知った
そして今日、彼女らはクラナガンの有る店でクロノが来るのを待っている
彼も最近ユーノと会って居なかった為色々気になる事も有り、急いで捜索に乗り出したのだ
ちなみに店は居酒屋だ、店長は様々な事を知っている情報通で『蛇の道は蛇』という訳で困った事件等が有ると誰もがよく相談に行く
筆者が某所で出してるオリキャラだったりするがこの世界では出番は無い

なのはの隣にはヴィヴィオが座っている、彼女もユーノには良く懐いていたから今回の事が不安で仕方ないのだ
「ユーノくん、大丈夫かな?」
ヴィヴィオが更に隣に座るフェイトに問いかける
「大丈夫だよ、ああ見えてユーノは強いから。それに遺跡発掘のベテランさんだし」
フェイトがヴィヴィオの髪を撫でながら優しく笑う
その言葉で安心したのかヴィヴィオは少し笑顔になった

しかしそれを暗い目で見る人間が居た
なのはである
「(…フェイトちゃんはあの時のユーノくん見てないからこんな風に笑えるのかな…)」
彼女はここ数日碌に睡眠を取って居ない、管理局での仕事も休んでいる
何か有るたびに、目を瞑る度にユーノの事を考えてしまい、そしてその度思い出すのだ
出会った時の、傷だらけで倒れていた彼の事を
「(怖いよ…背中が冷たいよ…)」
もしこのまま彼に会えなかったら自分はどうなってしまうのか、そんな風に考えると身体が震える
「(身勝手だよね…我がままだよね、会うのもメールも、全然しなかったのに)」
繋ぎ止めようとしなかったのに消えた時には縋ろうとする
そんな自分を責めながらなのははクロノが来るのを待っていた
ユーノが生きていて、自分達の下に戻って来るのならなんでもする
そんな決意を、自分を責める気持ちと一緒に静かに胸に秘めて

数十分後、クロノがやってきた。辛そうで、どこか怒ったような表情だ
「…店長、蟹グラタンを頼む。DVDプレイヤーとモニターも」
カウンターにまで歩き店長にそう注文する
店長は了解の意を伝え厨房に引っ込んだ、少しして店員の一人…着物の女性が機械を持ってくる
「有難う」
「いえいえ、お得意様ですしー。というか宴会用の個室使いますか?ここだと他のお客様にも見られちゃいます、真昼間から」
「そうだな…頼む…真昼間は関係ない!いかがわしい事をするみたいに言わないでくれ!」
「はいはいさー!」
元気よく走って階段を上って行く女性店員
それを見てからクロノはなのは達の方を向く
「3人とも、上の部屋に行くぞ」
クロノの話しかける声には、悲しみと怒りが綯い交ぜになっていた

「…結論から言うと、恐らくユーノは生きている」
数分後、蟹グラタンを食べ終わったクロノはそう言った
その一言に3人の顔が明るくなる
「そう明るい話でもないけどな…これを見てくれ」
そう言うと、クロノは一枚のDVDを再生し始めた
映っているのはどこかの遺跡と、ユーノの姿だった
「ユーノくん!?」
思わずなのはが身を乗り出す
「落ち着けなのは、これは録画映像だ。あいつの行っていた遺跡の最深部。あいつ自身の設置したカメラの」
「そ、そう」
一先ず安心したのかなのはは照れながら座りなおす
しかし、それを見たクロノは微笑む事もしなかった
「…再生を続けるぞ」
そうこうしている間にも映像は動き続ける
ユーノはうろうろと歩きまわり、石碑に触れ、落ちている水差しを眺め、鉄の板の上を歩き、飛行魔法で飛んで行ってリングを調べる
罠もなくユーノを襲いそうな人物なども一切映らない。なのは達は何故ユーノが消えたのか一向に解らない
「…え?」
突然、画面の中のユーノが水差しを手に取った、そこから次々と水が溢れだす
そしてその水を彼が空中にかけると水の橋が出来た

「待って…!!」
なのはが画面の中のユーノに手を伸ばす、解ってしまったのだろう、この後何が有ったか
彼がこちらを向く
そして口を動かした
音声は入っていないが、その唇は確かにさよならと言っていた、何処か寂しげな『笑顔』で
「なん、で…?」
なのはの力無い声とヴィヴィオの啜り泣きが部屋に響く

画面にはもう誰も映っていなかった


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一方その頃、噂のユーノくん

「何でこんな事になってるんだろう」
散歩から戻って来てあてがわれたアパートの一室で寝転ぶ
部屋にはTVが有るには有るが何だかよく解らない男が歌っている番組しか僕の興味を引く物は無かった
その番組だって興味を持ったのは闇の書事件の時リーゼさん達が変装してた仮面の男に声が似てたからだし
「ユノっちー!」
と、部屋の外から僕を呼ぶ声が聞こえた
「んー?なんだい宮子さん」
「宮ちゃんで良いってー♪」
いつの間にか扉を開けているのは金髪の明るい笑顔の少女、なのはの世界で学生をやっていたらしい
返事しただけなのに彼女はずんずんと部屋に入り込んできて寝転ぶ僕の横に座った
「流石に勘弁して…」
「えー、折角こっちでも『ユノっちー』『なぁに宮ちゃん?』が出来ると思ったのに…」
ふと彼女の顔を見上げる、その顔は何処か寂しそうだった
…その顔を少しでも笑顔に出来るのなら
「……解ったよ、宮ちゃん」
「お…おおーーー!やっぱユノって名前の人は良い人だー!」
そう言って歓喜の声を上げると彼女は僕の胸の上に寝転んで来た
しかも
「ちょっ、宮ちゃん!?」
「んむー、何だかお兄ちゃんと居た頃を思い出しますな―」
そのままごろごろとお腹の上を転がられる
コンコン、更に来客だろうか、ドアをノックする音が聞こえた
「はーい!」
何故か宮ちゃんが返事をする、凄く元気の良い声で
「え!?み、宮子さん!?いったい何やって…」
ガチャっとドアを開ける音がする、そこに居たのは昨日僕をここまで案内してくれたマローネだった
「……お邪魔しました!!」
しかし何を勘違いしたのか彼女は顔を赤くして走り去って行ってしまった
どうやって誤解を解こう、とか考えながら僕は思い出していた
昨日、ラハールに会ってからの事を


「ラハー、ル?」
僕の口が、自然と彼の名前を再度呟いていた
「なんだ?俺様を知っているのか?」
「…彼の名を聞けば死者も目覚める、血も涙も流れぬ悪の化身、どんな悪魔でも裸で逃げ惑う…魔界を統べる貴公子、神の敵対者」
「おお!それは俺様の讃美歌ではないか!!知らぬ者は是非1で人間界に攻め込むと良い」
僕が碑文に載っていた詩を暗唱すると彼は興奮した、讃美歌…成程、どうやら本当に魔王らしい
「ふむふむ、俺様を讃える物がこの魔界以外にも居たとは。…面白い、その世界の事聞かせて貰おうか!」
「…解ったよ。……魔王相手だと敬語の方が良いのかな?」
「構わん、元より言っても聞かん奴らばかりだ。敬語の方が話しやすいというのなら止めはせんが」
やたらとご機嫌だ。…やっぱり嬉しいんだろうか、誰かが自分を認めてくれる、というのは
いや、魔王なんだからそれだけ恐れられてるって事だし喜ぶのも当たり前か
「じゃあこのままでいかせて貰おうかな、宜しく、魔王様」
僕は彼の前に跪いた、しかし、即座に襟首を持ち上げられきちんと立たせられる
僕を見上げる彼の顔は冷たい
「お前の様な何考えてるか解らん人間の見せかけだけの忠誠は気味が悪いぞ?…ラハール、それか陛下だ」
「呼び捨てでも良いの?」
「…正直、許可も得ず呼び捨てする奴らよりお前は数段マシだ、許してやる…まったく、宮子もレンもエレナもクレアも…」
ぶつぶつと少年が呟く、その仕草が何だか可笑しくて僕は吹き出してしまった
魔王がなんだ、さっきの技の威力がなんだ…確かに怖いけど、良い友達になれそうだ
「解った、宜しくお願いするよ、ラハール」
きちんとハンカチで拭って手を差し出す
「あぁ、とはいえ歓迎なんてせんぞ。魔王の面子にかかわる。生きる術は自分で探せ…家来としてなら使えると解れば雇わないでもない」
ラハールはそのまま、ぐっと手を握ってくれた、表情は少し獰猛な笑みだ
「了解…もしもの時は頼むよ」
言葉ではこう言うが生きる術を探すのは望む所、元々自分で選んだ道だ、身一つで苦労する覚悟はこの世界に来る前から出来ていた
「殿下ー、新しいお友達が出来てうれしいのは解りますけどそろそろ移動しませんかー?」
「そうですよー、お腹も空いてきましたし。…はっ、そういえば私おやつの途中でした!!」
僕達がちょっとした男の友情を楽しんでいると横から声がかかった
「…そういえば二人の事は何て呼べばいいかな?」
「ん、気安く呼び捨てしたらぶっ飛ばす」
「私の事はフロンで構いませんよ、ユーノさん」
ぶっ飛ばす、という言葉に身体が震えた。さっきのラハールのあれを見る限り彼女もこう見えて相当の力が有るんだろう
「えーと、じゃあエトナさんとフロン、改めてよろしくね?」
「まぁ短い付き合いかもしれないけどねー、アンタみたいにヒョロいと」
「もー、なんて物騒な事言うんですかエトナさん。…でも確かにこのままだと危ないかもですね、行動力は有りそうですしー」
僕がそんな事を色々言われていると、遠くから誰かの走ってくる音が聞こえた

「大河大河大河大河大河大河大河大河大河大河大河ーーーーー!!!」
それと同時に良く解らない叫び声
トラ・トラ・トラとかと同じ意味だろうか、タイガーだし
「って、うわぁっ!?」
そんな事を思いながらボーっとしていると、遠い所から突っ込んできた少女に跳ね飛ばされた
ずざーーーっと遠くまで飛ばされ尻もちをつく、痛い
「ラハール!落ちて来た男というのは誰だ!!」
しかし跳ね飛ばした当の本人…大きめの帽子をかぶった少女は僕そっちのけでラハールに話しかけた
「お前が今跳ね飛ばした所だ」
ラハールが呆れながら答える
「何…?」
少女が尻もちを付いている僕を見る
…10秒…20秒…30秒
彼女は僕をじろじろ見た後
「大河では無いではないかーーーーー!!!」
急に爆発した
「………」
そして一気に力が抜ける、真っ白だ
「え、えーと、彼女は?」
近くに居たエトナさんに聞く
「クレシーダ・バーンフリート、何処かの世界の女王様だってさ、自称だけど。あと通称クレア」
「王、か」
元の世界で本人の望みとは関係なく聖王や陛下と呼ばれていた少女を思い浮かべる
そういえば読ませてあげてた本が途中だった、まあもうそんな年でもないか…幸せに暮らしてくれると良いけど
「…まったく、なんだろうね。王とは縁が有るんだろうか僕」
ついでに魔王と呼ばれた幼馴染も思い出した
でもこの思い出は封印しとこう、こっちモードで来られると漏れなく死ねる

少し時間をおいて、僕は落ち込んでいる彼女に話しかけた
「クレシーダ様」
「…クレアで良い、すまなかったな急に跳ね飛ばしたりして、許せ」
驚いた事に彼女は即座に頭を下げた、王族と聞いて居たのに
思わず硬くなってしまう
「いえ、誰かと会いたかったという事ははっきりと解りました。僕はユーノ、ユーノ・スクライアです」
「そうか。ユーノ、敬語も必要無い、今の私には国が無いからな、お飾りにすらなれない現状だ」
そう言うと彼女は自虐的に笑った、が、その後興味深そうに僕を見た
そして近づいて僕の身体に触る
「…金髪、眼鏡、その話し方…女顔…女装させればすぐにでもベリオⅡに」
と、彼女はこんなことを口走った
「いやー女装は勘弁…」
「なんだ、お前は目の前に故郷の友人に会えなくて寂しがっておるいたいけな少女が居るのに協力してくれぬのか?」
戸惑う僕に彼女は意地悪く笑う
…ひょっとして頼まれたら断れない性格を見透かされたのだろうか
僕が答えに詰まっているといきなりクレアの頭が縮んだ
というか急にここへ来た誰かに殴られた
「おぐぅっ!?…誰だ!!」
涙目でクレアが、後ろに現れて息を切らしている少女の方を向く

「誰だじゃないわよ!ウチがレイスと戦ってる内に走って行って、どれだけ心配したか!!」
同じく新しく来た女の子も涙目だった、ポニーテールの勝気な美少女だ
その横にはデフォルメされた感じの軍服・サーベル装備の彼女と似た顔の妖精も居る、どちらも傷だらけだ
「………」
まあ僕が注目してしまったのはその傷よりも彼女の身体の有る部分だったのだがそれは言わないでおこう
その件でさっきから有る疑問が浮かんで仕方ないけどとりあえず今は
「君、大丈夫?」
治療魔法をかけて彼女の傷を癒していく、この世界でも魔法は問題なく使えるらしい
彼女は僕の顔をまじまじと見上げている
「あ、有難うございます…。貴方が今日こちらの世界に来たっていう?」
「うん、ユーノ・スクライア。職業は考古学者と図書館の司書」
「ウチは美波、島田 美波って言います。文月学園2年Fクラス」
この世界では意味のない自己紹介をする僕に彼女も倣って言葉を返してきた
ここに学校が有るのかあるいは彼女も他の世界から来たのかは解らないが
「よろしく、島田さん」
「はい、スクライア先生」
握手する僕と島田さん
「先生?」
「学者さんなんですよね?」
「あぁ、そう言う事か。…うん、その呼び方も良いかもしれない」
呼ばれ慣れてるから違和感は感じないし彼女が学生だと言うのならそっちの方が呼びやすいだろう
「…さて、挨拶も済んだ所で、クレア!」
と、ニコニコしていた島田さんの表情が変わりクレアの方を向いた
「な、なんだ美波」
「お説教させて貰うわよ?大体城から出る時だって一人だったでしょ、危ないって解ってるでしょうに」
「時空の渡し人に頼めばすぐではないか!」
「それで襲われてちゃ世話ないわよ…まぁ、逃げ足の早さは凄かったけど、でもね(くどくどくどくど)」
長い説教が始まった、僕はそれをまるで姉妹みたいだなぁとのんびり眺めていた




次回予告

「ユーノの貞操の危機に立ち上がる殿下!しかしその前に立ちはだかるのは冥王NANOHAと聖王VIVIO!
 果たしてユーノは無事逃げ切る事が出来るのか!殿下とNANOHAのフリースロー勝負の結果は!?
 次回、第2話後編『起動!魔神獣機フェレットマスク!』…来週もこの時間にー「スターライト3Pシュート!」…あの女、いつかしばく」



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