ソフトバンクの孫正義社長と、ITジャーナリストの佐々木俊尚さんが13日、光ファイバー回線によるインフラ整備について論戦を繰り広げた。「光の道の実現に向けて」と題して東京都港区のソフトバンク本社に設けた特設スタジオで対談は行われ、ネット中継サービスのユーストリームで生中継された。
総務省は超高速のブロードバンド環境を整備する「光の道」構想を検討中で、孫社長は同省の作業部会で「光100%を税金ゼロで実現できる」と述べている。これに対し、佐々木さんが自身のブログで「全面反論する」と書いたことからネット上で論議が始まり、ツイッターで両者が直接やり取りしたうえで、「公開の場での論議」を佐々木さんが求めたことから対談が実現した。
孫社長は、ADSL(非対称デジタル加入者線)より安い価格で光ファイバーによるブロードバンドを全国民が利用できるようにして、「電子カルテや電子教科書が全国どこでも使える環境にすべきだ」と持論を展開。必要な資金は民間調達で可能で、NTTを分割し、光ファイバーによるアクセス網を整備する会社をつくればできるとした。
構想実現を裏付けるコスト構造など数値を含めた資料を、孫社長は今回初めて公開した。傘下のソフトバンクテレコムなど通信事業者が実際に光ファイバーを敷設した際にかかった費用や、NTTが公開している資料をもとに積算したという。
一方、佐々木さんは、日本のブロードバンド環境は既に世界最高水準にあり、光ブロードバンドの利用が30%の世帯にとどまって伸びないのは、「生活に密着した使いやすいサービスがないから」と話した。電子カルテが普及しないのは光ブロードバンドが整備されていないからでなく、カルテの規格がばらばらだったり、現場の医師の抵抗感に加えて、日本医師会や厚生労働省が積極的に進めないから、と指摘。「選択と集中が必要。光ブロードバンド整備より優先すべきなのは、使い勝手のいい魅力的サービスを提供できる仕組み作り」と強調した。
孫社長は「メタル回線を全部やめて光に置き換えると腹をくくれば達成できる。国費はいらない。光が100%になればパラダイムシフトが起き、(ブロードバンドの)利活用のレベルが上がる」と力説した。しかし、佐々木さんは「今回公開されたデータをよく検証すべきだ。ネットはテキスト文化であり、ブロードバンドによるリッチなコンテンツはネットの一部に過ぎない」などと反論。論戦は深夜まで続いた。【毎日jp編集部】
2010年5月13日