「知能が高い生物ほど命の価値が重い」という論理こそ傲慢だ
クジラ、マグロ保護を叫ぶ欧米人の独善
(SAPIO 2010年5月12日掲載) 2010年5月17日(月)配信
文=秋道智彌(総合地球環境学研究所副所長)
捕鯨船に対して過激な妨害工作を行なうシー・シェパードを豪政府は野放しにし、むしろ捕鯨をする日本が悪い、という論調すらある。一方でワシントン条約締約国会議で否決されたものの、大西洋地中海産クロマグロの禁輸提案がなされるなど、日本の漁業は世界からのいわれなき攻撃に晒されている。だが、クジラもマグロも捕獲に反対している国の論は非常に乱暴だ。そこには彼らの差別意識も透けて見える。
ミンククジラの
個体数は増えている
捕鯨反対派が根拠としている「クジラは絶滅の危機に瀕している」という論は大雑把すぎる。確かにシロナガスクジラ、ザトウクジラ、セミクジラの資源量は低いレベルまで減ってきているが、絶滅に瀕しているのではない。その一方で日本が調査捕鯨で獲っているミンククジラは絶滅どころか増え過ぎている。南氷洋だけで76万頭もいるというデータがある。そしてミンククジラもシロナガスクジラも主にオキアミを食べる。つまり、ミンククジラが増え過ぎると、むしろシロナガスクジラの生存はますます難しくなる。
1982年に国際捕鯨委員会(IWC)において商業捕鯨のモラトリアムが可決された。この時、IWCの科学委員会は、北太平洋、北大西洋におけるミンククジラと南極海のクロミンククジラ、北太平洋のニタリクジラ、北大西洋のナガスクジラはいずれも捕獲してもよい良好なレベルにあるとの勧告を提示していた。にもかかわらず、勧告は無視され、モラトリアムは可決されたのだ。しかも、モラトリアム条文には附帯事項があり、90年までにモラトリアムの実施がクジラの頭数にどう影響するのか評価し、規定の修正や捕獲可能な頭数の検討を行なう、という内容だったが、それも無視されたままだ。
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