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きょうの社説 2010年5月17日
◎ハトムギ食品開発 大学発ベンチャーのモデルに
ハトムギエキスを使った健康飲料などの開発に取り組む氷見市農協と金大が、女性の肌
荒れに効く新しい健康食品の商品化をめざして、モニター試験に乗り出した。産学連携や農商工連携の好例と評価される同農協と金大の取り組みは、いわゆる大学発ベンチャー企業の積極的な事業としても注目される。そのモデル例となるよう、経営を安定軌道に乗せてもらいたい。政府は2002年度に「大学発ベンチャー1000社計画」をスタートさせた。大学の 研究成果をもとに1千社の起業をめざす計画目標は既に達成され、経産省の08年度のまとめでは1800社を超える。大学発ベンチャーは「数」から「質」を追求する時代に入ったともいわれる。 美肌効果があるハトムギエキスは、金大大学院医学系研究科の鈴木信孝特任教授らが製 法特許を取得しており、その特許を管理する会社に続いて、ハトムギエキス商品の販売会社が今年3月、氷見市農協内に設立された。 最近の大学発ベンチャーでは、金大でがんの診断キットや人工関節に関する新技術を実 用化する会社がつくられ、金沢医科大では、胎児のDNA診断に関する知的財産権を管理するベンチャーが生まれている。また、金大、富大、新潟大などの技術移転機関(TLO)が提携し、医薬品や医療機器の研究成果を製品化に結びつける取り組みも行われている。 成長戦略の面からも、こうした大学発ベンチャーに対する期待は大きい。が、教員中心 のベンチャーゆえに、資金調達はむろん、経営能力のある人材の確保、業務提携先や販路の開拓といった課題が絶えずつきまとっている。国立大学の法人化以降は、既存企業との共同研究や受託研究を重視する教員が増え、短期に成果を出しにくい大学発ベンチャーの設立が減っているとの指摘もある。 日本政策金融公庫金沢支店が出資に近い劣後ローンで大学発ベンチャーに無担保融資を 行うようになり注目されるが、当該大学、自治体、地域金融機関などがさらに連携を密にして、支援を強化することが望まれる。
◎外国人看護師 受け入れ体制の充実を
経済連携協定(EPA)に基づき、日本で看護師として働くことを希望するフィリピン
人候補者が来日し、半年間の日本語研修に入った。EPAで来日したフィリピンとインドネシアの看護師候補者のうち、今年2月の国家試験に合格したのはわずか3人にすぎない。言葉の壁が厚いため来日する候補者が当初計画より減っているが、優秀な外国人看護師の確保は、日本の医療、病院の国際化を進める上でも重要なことを認識しておきたい。政府は医療や介護、健康関連産業を今後の成長分野に位置づけており、日本で長期療養 を希望する外国人のために「医療滞在ビザ」を新設することを検討している。中国、アジアなどの富裕層を対象にした国際的な医療ビジネスを拡大する狙いで、6月に閣議決定する成長戦略にも反映させる方針という。そうであればなおさら、外国人看護師候補者の受け入れ体制を見直す必要があろう。 フィリピンとインドネシアの候補者の中から日本の看護師国家試験合格者が出たのは今 年、初めてである。しかし、受験した候補者254人の1%程度であり、90%近い全体の合格率に比べると、その落差はあまりに大きい。 EPAに基づく看護師・介護福祉士の候補者受け入れは2008年から始まり、当初の 計画では2年間で両国からそれぞれ最大1千人を招くことになっている。が、現状では候補者が計画に届かない上、3〜4年の限られた期間内に国家試験に合格できず、帰国しなければならない候補者が大半を占めることになりかねない。 外国人受験者の最大のハードルは、やはり漢字や難解な専門用語である。このため、長 妻昭厚労相は「褥創(じょくそう)(床擦れ)」などの難解な言葉の言い換えを検討する考えを示している。ミスの許されない医療現場であるから、相応の日本語の習得は必須であるが、試験については外国人向けの工夫、配慮があってよい。 半年の研修を終えて就労した後の日本語教育や生活、受験指導は受け入れ施設任せとい う制度自体も再検討してもらいたい。
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