きょうのコラム「時鐘」 2010年5月17日

 「は」と「わ」の使い分けは意外と難しい。なぜ「こんにちわ」といいながら「こんにちは」と書くのか。即答できる人は少ない

先に、金沢で開かれた日仏自治体交流会議の置きみやげがある。街角の看板表記「こんにちわ」に異議が出た。正式には「こんにちは」とすべきだが、そこに制作者の遊び心が入ったらしい。例えば、フランソワーズ・モレシャンさんなら「こんにちわ」が似合うということかもしれない

日本人でも気軽に「こんちわー」と言う時は「こんちはー」では馴染まない。昭和30年代の歌謡曲に「お月さん今晩わ」(遠藤実作詞)とあるのも不思議だ

富山の総曲輪は「そうがわ」で「そうがは」ではない。最近は最後の「わ」を「わっ」と強調した愉快な商店街フラッグが街中にはためいている。「わ」に和や輪を当てる遊びもある。古代からある文字と発音の変遷史は複雑で、今も動いている

「わ」と「は」は、「え」と「へ」の使い分け同様に難しい。「ふらんすへ行きたしと思へども、ふらんすはあまりに遠し」(萩原朔太郎)。言葉は時とともに変わる。時代の何がそうさせるのか。面白い宿題である。