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[17178] 【習作】奪還部隊。 第二次国端新島事変:18時間の死闘。
Name: ブラボー6◆5808edae HOME E-MAIL ID:97158d40
Date: 2010/05/05 18:37
初めまして。
「ブラボー6」と申します。
この度人生で初めて自分の小説を公開させていただきます。
お手間でなく、読んで楽しんで頂ければ光栄であります。
何卒初心者でありますので、何か不文律や投稿規約に知らずに触れているようなことがありましたら、直ぐ是正しますので、お手数ではありますがご指摘の程をお願い申し上げます。

架空の近未来ノンフィクション小説という設定になっております。
登場する組織や兵器等の名称、編成、諸元が実際とは異なる場合がございます、あらかじめご了承ください。

なお、本作はノンフィクション風の仮想戦記に見せかけたファンタジーです。




沖縄県国端新島。

全周189キロ。
東地区、中央地区、西地区の三つに区切られ、広大な森林地帯と水源地があり、中央地区の岩山「国端富士」の地下には、無数の洞窟と遺跡と思われる人工物が確認されている。


国端新島と周辺国年表概略。

2011年9月3日未明。
沖縄南東沖204キロを震源とするマグニチュード7強の地震「沖縄沖地震」が発生。

これにともなう津波により沖縄九州全域、中国東海地区、朝鮮半島黄海沿岸部、フィリピン諸島が甚大な被害を被る。

同年9月4日。
海上保安庁が震源地海上に「島」の存在を確認。
日本政府、「国端新島」と命名し領有を宣言。

当初その出現は海底火山による海底隆起と発表される。
しかし発見時すでに島内に樹木が群生しているなど、海底隆起では説明できない事象が多々あり、調査活動も津波による被害の復旧の為、調査が始まるのは2012年末からとなる。

2013年5月20日。
日本、沖縄沖地震の復興も終わり同島開発と調査に本格的に着手。
地下資源などの発見はなかったが、未知の鉱物や植物、遺跡と思われる人工物を発見。
南北縦断道路と灯台、港湾設備を整備。
気象観測所を建設する。

同年9月31日。
中国政府が「国端新島」の領有権を主張。
日本の同島整備事業の中止を要求。
日本政府、これに対し抗議するも対外摩擦を避けるため開発事業を一時凍結。

2015年2月23日。
北朝鮮で内乱。
沖縄沖地震の津波による被害が止めとなり、体制崩壊とともに無政府状態に。
北朝鮮国内より難民が韓国、中国国境に殺到。
日本にも対馬と博多に武装難民が大挙して漂着。
極度に治安が悪化し一時騒乱状態に。
九州全域に戦後初の戒厳令布告。
後に国防体制の見直しの切っ掛けとなる。

同年3月1日。
人民解放軍が北朝鮮国境を南侵。
「中国に亡命した北朝鮮政府高官からの要請により」北朝鮮の信託統治を宣言。
これに米韓猛反発。
人民解放軍の撤退を巡り38度線で韓国軍、在韓米軍と一触即発状態に。
「第二次朝鮮半島危機」

同年8月4日。
インドネシアでイスラム過激派が武装蜂起。
各地で外国人虐殺と国外企業の排斥が繰り広げられる。
インドネシア政府の要請により秩序回復の為多国籍軍が介入。
半島危機に兵力が拘束され米軍が参加できず。
代わりに米国の圧力で日本がPKF初参加。
自衛隊過去最大規模の海外展開となる。
しかし装備、法律の不備から犠牲が続出。
今後の活動に大きな課題を残す。

2016年1月16日。
ロシアの仲介で半島危機が終結。
中国軍が治安部隊を残し北朝鮮国内より撤退する。

2019年8月15日。
中国でクーデター。
香港特別行政区を本拠地とする自由主義勢力と中国共産党が南北に別れ内戦に突入。
この混乱で北中国(共産党)で在留邦人の殺傷事件が続発。
日本政府、北中国政府に厳重抗議する。

同年10月9日。
南中国(自由主義)への海上航路封鎖のため、北中国の潜水艦が尖閣諸島近海に出没。

同年10月18日。
尖閣諸島付近を哨戒中だった海上自衛隊の護衛艦が、国籍不明の潜水艦を捕捉。
追尾したところ当該潜水艦に雷撃される。
北中国政府は関与を否定するも、音紋データにより北中国軍青海艦隊所属の「漢」級潜水艦と判明。
以降日中関係が急激に悪化。

同年9月28日。
台湾が南中国政府支援を表明。
台湾国内の海軍基地の使用を認める。
北中国政府、青海艦隊に台湾侵攻準備と思われる空母を含む機動部隊の編成を指示。
米機動部隊が台湾海峡に急行。
「第3次台湾海峡危機」
アジア全域が緊張状態に。

同年12月2日。
北中国軍空挺部隊が国端新島を占拠。
日本政府、国連安全保障理事会に提訴。
北中国政府に国端新島からの即時撤退を要求。
北中国政府、南中国が台湾と結託し東シナ海の海上ガス田奪取を目論んでいるとの「国防上の問題」と沖縄トラフトを理由に国端新島中国領土編入を通告。
(この時点で北中国は国端新島を台湾攻略の前線基地兼最終防衛拠点にする意図は明白であった。)
国端新島に中国名「青宝島」と命名。
さらに一個軍団の増援を送り込み防備を固める。

日本政府、非常事態を宣言。
自衛隊に防衛出動待機命令を発令。
アメリカ政府に日米安全保障条約に基づき軍事支援を求める。
アメリカ政府、非公式会談で「尖閣諸島近辺は日米安保の対象外」との立場を示す。
自衛隊への情報支援は確約するも、台湾海峡危機の対応で戦力に余力がないことを日本側に理解を求める。

同年12月8日。
日本政府は国家安全保障会議で自力での国端新島奪還を決断。
自衛隊に奪還部隊の編成を指示。

2020年2月26日。
国端新島奪還作戦「ほむら」発動。
自衛隊、北中国軍「青宝島」守備隊との戦闘に突入。
「第一次国端新島事変」勃発。

同年3月2日。
青宝島守備隊司令部が全滅。
組織的抵抗が終結し戦闘は掃討戦に移行。
同日北中国政府が国連安保理を通じて南中国と日米政府に停戦交渉を打診。
以後アジア一帯の緊張は緩まり、国端新島事変は終結に向かう・・・筈だった。



[17178] 午前8時35分
Name: ブラボー6◆5808edae HOME E-MAIL ID:2791b494
Date: 2010/05/05 17:48

「絶対日本じゃねぇ」

高度300メートルを飛行するヘリコプター、CHー48JBのキャビンに完全武装の男達が狭い機内で寿司詰めとなっていた。

その中の1人。
山岡大樹は開け放たれた後部ハッチから眼下を見下ろし呟いた。
切り立った山影。
乱立する直径2メートル以上の幹の巨木。
恐ろしく透明度の高い湖。
おおよそ自分の知っている日本の風景とかけ離れた光景に、まるで別の惑星の上を飛んでいるような錯覚に陥っていた。
山岡は今年で19歳の一等陸士。
第17普通科連隊、第3中隊、第2小銃班の擲弾手だ。
彼は地元の山口県の高校を卒業後、自衛隊に入隊した。
理由は、人生の一部となっている柔道を社会人になっても続けたかったからだ。

神奈川県の武山駐屯地で前期教育を受けた後、東京の練馬駐屯地で普通科(歩兵)としての後期教育を受けた。
その後自衛隊のオリンピック選手養成機関である埼玉県朝霞駐屯地にある自衛隊体育学校に送られた。
しかし世界への壁は厚く、中高と県大会優勝の実績を持つ彼の技量を持ってしても超えられなかった。

結局、半年ほどで体育学校を去る事になり、その時は退職を考えたが、折角自衛隊に入ったのだから大型免許くらいは欲しいと思い、自衛隊に留まることを決意した。

地元がある第17普通科連隊に配属を希望し、着隊したのが3ヶ月前。
まさかの有事出来である。

重苦しい空気が支配する機内で、視線を前に向けると小隊陸曹、谷本学一等陸曹がいた。
自衛隊歴21年の43歳。
物静かなマラソンが趣味の男で性格は至って温厚。
滅多に声を荒げる事はないが、人を見る観察眼は鋭い。
先週、小児癌で6歳になる1人娘を亡くしている。
隊員には何事も無かったかのように、気丈に振る舞ってはいるが、彼の表情には影がついてまわっていた。

小隊陸曹の右隣には一班長の小山亨二等陸曹がいた。
小隊のポジションで言うなら、谷本が仏で小山は鬼だ。
レンジャーの有資格者で、指導矯正に直ぐに手が出ることから、班員からは「軍曹殿」と呼ばれていた。
特に190センチを超える体躯を利用して繰り出す、頭頂部への垂直の拳骨打撃は神話の武器に因んで「トオル・ハンマー」と呼ばれ恐れられていた。
これを受けた者は、例え鉄帽(ヘルメット)の上からであっても脳震盪を起こす。

自分のすぐ左には二年先輩で山岡の教育係、大野汰一陸士長が広い肩幅を無理矢理縮めて座っていた。
中隊の選抜射手で狙撃手を務めている。
熱烈な戦争映画ファンでもある大野は、よく映画から台詞を引用したりする。
離陸の時など映画の名セリフに因んで「アイリーン!!」と叫び周囲の失笑を買っていた。
本人は気合いを入れようとしたらしい。
直後に小山二曹から「縁起が悪いだろ」と拳骨を喰らった。
彼は中隊の「トオル・ハンマー」被弾記録保持者でもある。
今は小山二曹に聞こえないよう小声でワーグナーの、ワルキューレ騎侯を口ずさんでいる。

右側、山岡を挟んで大野と小声でハミングしている機関銃手の金突(かなづき)良博陸士長がいた。
大野とは同期入隊で、趣味が黒魔術と言う変わり者である。
「呪術師」と渾名される彼は、どういう訳か大野とは気が合い、相棒のポジションに収まっている。
このコンビが中隊の忘年会や結婚式等で披露するコント「大明神カオス金突」は毎回大好評で、他中隊からも出演依頼がくる程だ。
最近このコントに山岡を引き込もうと画策しているらしく、山岡は逃げ回っていた。

小隊長の後田義明三等陸尉がインターホンを通じて到着時間を告げた。
後田三尉は部隊内幹部候補生、通称部内幹侯上がりの叩き上げ。
幹部として部隊を預かったのはこの第二小隊が初めてだった。

「後5分!!」

山岡は89式小銃を引寄せ着陸に備えた。
彼の武器・・・89式小銃3型には銃身の下に40ミリグレネードランチャーを取り付けられている。
164センチしかない山岡が持つと、かなりアンバランスに見えた。
大野が大口を開け、ビニールテープを、マウスピースよろしく突っ込んだ。
何の積もりかと聞いてみたら、「前の降下訓練で舌を噛んだ」と答えた。
そしてニカっと笑い、山岡にビニールテープを差し出した。

ちょっと、僕もやれと!?

すかさず小山が「降下はしねぇって言ったろうが!」と大野にトオル・ハンマーを見舞った。
ビニールテープに噛み千切らんばかりに歯が食い込んだ。

「良かったな、それ無駄にならなくて!」

こっそりビニールテープをポケットに仕舞いながら金突が大笑いした。
それに周りもつられて笑った。
24人の大爆笑に機内に張り詰めていた重い空気が和らいだ。
後田三尉もこの日初めての笑顔を見せた。
部下達がいつもと変わらないことを知り安心したようだ。
機付長まで笑っている
山岡も胸を撫で下ろしつつ笑った。
この、束の間の笑顔見せる、小柄の擲弾手にとって、国端新島は人生で忘れられない戦場となった。

自衛隊奪還部隊との激戦の末、北中国軍青宝島守備隊は、東西に分断され、主力部隊は中央地区の標高300メートルもない岩山、通称「国端富士」に追い詰められ、総攻撃を待つ身となっといた。

山岡が所属する第17普通科連隊は、有事勃発より山口市内で重要防護施設の警護任務についていたが、今朝未明、第3中隊に国端新島への移動命令がきた。任務は、第14旅団隷下で東地区の敵残存部隊掃討だった。

2020年3月3日。
全世界を「キューバ危機」以来の恐怖に陥れた、運命の1日が始まった。



[17178] 午前8時35分
Name: ブラボー6◆5808edae HOME E-MAIL ID:f6946965
Date: 2010/05/05 17:51

「ここ、やっぱり中国じゃないヨ」

国端新島東地区森林地帯。

防空砲兵、李太平上等兵は、乱立する巨木の内の一本、幹の直径が5メートルを超え、高さが三階建てのビルほどある木の天辺に独り、双眼鏡と携帯無線機を背負って日本軍の無線交信に聞き耳を立てていた。

李は先月23歳になったばかりの上海出身の若者でインターネット関係のシステムエンジニアを志していた。
大学在学中、日本に留学したいと思い、奨学金を申請したが、選考から漏れてしまい、卒業後日本への留学を諦めきれず、除隊後の奨学特典を目当てに陸軍に入隊した。
それが運の尽きだった。
内戦で北京の防空任務に就いていた彼の部隊は、「青宝島防衛作戦」発動と同時に引き抜かれてしまったのだ。

李は中距離地対空ミサイル、紅旗4のレーダー手だったが、彼の履歴書を見て、大学で日本語を専攻していたこと知った上官が、彼を司令部付通信大隊に転属させ、傍受した日本軍の交信内容を翻訳させいた。

日本語を覚えた理由が理由なだけに、監視も兼ねての人事だったようで、任務中は背後に「傍受分隊長」という名の監視役が常に張り付き、サボタージュを警戒しているのか翻訳内容に不審な点がないか常に目を光らせていた。
お陰で原隊の対空陣地が空爆され壊滅したとき、死なずに済んだが。

東の空を見上げると、日本軍のヘリコプター編隊が悠然と海岸線を飛んでいた。
昨日まで1日2〜3回は来ていた友軍機の姿はなく、傍受無線も暗号化通信ではなく、ただの平文の交信が増えていた。

戦争、負けたかナ?。

そんな事は司令部が壊滅した時点で解っていたことだが。
どの道、戦争に勝とうが負けようがもう留学の機会は永遠に無さそうだ。

新たな爆音が李を現実に引き戻した。
今度は別の方角から日本軍の偵察ヘリが近づいてきた。
この先南に2キロの地点に、気象観測施設がある。
日本が数年前に建てた物で、昨日まで砲兵隊が本部兼兵舎として利用していた。
潮時だ、それに交代時間はとっくに過ぎてる。
李は足場の幹にくくりつけたロープを手繰り地上へと降下した。


「だから、俺は彼女に言ったのサ。『それでも俺と一緒になりたいのか?』って」

直下、巨木の根元。
楊宝栄下士(軍曹)は、既に30分近くこの海軍陸戦隊員の熱弁を聞き続けていた。
顔半分を汚れた包帯で覆い、爆撃で左目を失ったという彼は、内戦が始まる前は第二海兵旅団で香港に勤務していて、その時知り合ったモデルの女と結婚する約束をしていたらしい。
3年前自分が北朝鮮に出兵するとき彼女からプロポーズされ、無事帰ってきたら一緒になることを約束していた。
しかし、彼は北朝鮮で反政府組織・・・というよりは野盗軍団との戦闘で重傷を負い、旅順の海軍病院に収容された。
仕事で香港を離れられなかった彼女とは手紙とメールの遠距離恋愛を続け、退院したら名誉除隊して香港に向かう予定だった。
だが内戦が始まり、彼女とは音信不通になってしまったと。

「部隊に復帰したのは命令されたからじゃない、自分から志願したのサ。何も香港に強襲上陸しようなんて考えてない」

熱弁はまだ続いた。

「ただ俺は1日でも早く戦争を終わらせて彼女に会いに行きたいのサ。彼女は売れっ子のトップモデルだ、それが俺みたいな男と結婚してくれるってんだ、軽い気持ちじゃない。俺だってそうだ、だから俺も・・・」

楊は辛抱強く陸戦隊員の話を聞き入っていたが、微かな苛立ちは隠せなかった。
それでも陸戦隊員は意に介さず、ますます残った右目に熱を帯びて喋り続ける。

李が地上へ降りたときは丁度そんなところだった。
李は楊の背中から滲み出る焦燥感を感じ取り助け船を出した。
陸戦隊員から死角になるように楊の背後に回り込み、ワザと形式張った動きと声で楊に声を掛けた。

「李上等兵報告します!」

ビックリして振り向いた楊は、顔に微かな安堵が浮かべたが直ぐに済まなさそうな顔を作り陸戦隊員に向き直った。

「すまんな、話の途中だけど仕事が入った」

陸戦隊員も流石に話を切り上げた。

「いや、こっちこそ話を聞いてくれて有り難う」

「達者でな、必ず生き延びて彼女に会うんだゾ、こんな所で死ぬんじゃねぇゾ」

その陸戦隊員は楊に軽く敬礼すると、自分の部隊がいる巨木の下へ戻って行った。
彼の姿が見えなくなったところで、楊がやれやれと肩の線を下げた。

「遅いから心配してたヨ、随分長いこと話し込んでたけど、オヤジさん、海軍に知り合いがいたの?」

楊は首を振って答えた。

「いや、今日初めて会った」

心なしか顔のシワの深さが増した気がする。
「たまたま目があったらずっとあの調子だ。最初は水餃子の話だった」

楊は40絡みの予備役工兵で、招集前は食堂の店主だった。
子供が6人いて、いつか子供たち全員で店を切り盛りしたいと語っていた。
若いときには日本の横浜の中華料街で料理人として働いていた事があり、ある程度日本語を話せた。
その為、李と同じ理由で「傍受分隊」に回されてきたのだ。
年齢差と階級の事もあって、緊張気味の李だったが、楊の気さくな性格と、日本での生活の話題で意気投合し、今では階級を超越した間柄となっていた。

「下で変わりは?」

回りを見渡すと、随分と味方の数が減っている。
交代前には300人程いたが、今では森に50〜60人位しかいない。

「さっき砲兵旅団の連中が全部洞窟に入って行ったところだ。俺等も撤収の用意しとけってさ」

前日、青宝島守備隊司令部が全滅した後、指揮を引き継いだ第115歩兵連隊本部が、東地区で生き残った兵士達に示した集合場所がこの森だった。

理由は二つ。
一つは、空から完全に隠蔽されていること。
東地区全体を覆う、樹齢千年はありそうな巨木の傘は、空を完全に覆い尽くし、根本で息を殺す北中国兵達を空からの監視の目から隠していた。
それに、生い茂る葉は、どう言う訳か赤外線と電波を遮断し、身を隠すには絶好の場所ではあったが、お陰で李達は危険を冒してメリット確保の為、大木の天辺まで登らねばならなかった。

二つ目は、この森には中央地区へ続く地下洞窟が存在した。
元々この島には、中央山(国端富士の中国名)を中心に、無数の大小様々な洞窟が、蜘蛛の巣状に拡がっており、工兵隊の測量班が確認しただけでも、その数ざっと約13000本。
そのうち、約1500本がここ東地区に集中していた。
北中国軍は、この中から人が通れる7本に手を加え、中央山との地下連絡道兼退避道として使っていた。
しかし、人が通れると言っても、人一人が通れる程度の大きさしかなく、集まってきた生き残りは再編された後、少人数に分けて洞窟に入っていった。

青宝島守備隊臨時司令部は、中央山に残存兵力を結集させ最後の抵抗を試みる腹積もりなのだ。

「招集兵は集合しろ」

この「集結地点」を統括する少佐がやって来て叫んだ。

元は兵站本部付の将校で、階級の序列で今のポストに据えられた男だ。
神経質そうなヒョロリとした男で、おおよそ軍隊にいながら、戦闘とは無縁な経歴を辿って来たようだ。
戦場で大声を上げるなんて・・・。
流石に、傍らにいた下士官の一人に注意されてる。

「招集兵は私の元に集まれ」

少佐が若干トーンを下げて繰り返した。
楊が少佐の元へ向かおうか迷っていると、この集結地点の実質的統括指揮官、白中尉が楊を手で制した。
白中尉はいつの間にか二人の後ろに立っていた。

「貴様はいい、今の役目を続けろ。」

白中尉は北朝鮮の「統治」後、人民解放軍に鞍替えした将校で、噂によると元人民武力偵察部の特殊部隊出身らしい。
恐ろしい程冷静さと高い指揮能力を持ち、李達のような「残兵」を拾い集めここまで引っ張ってきた。
司令部から焼き出された李達に、再び同じ任務を与えたのも彼だ。
今予備役兵に集合をかけてる少佐は、軍隊の指揮系統の原則を守る為のお飾りに過ぎず、白のスピーカーでしかない。

「敵が我々の意図に気づいたらしい、遅滞防御部隊を編成する。だが、お前はそのままだ。日本語を理解できるのは貴様らだけだからな」

酷薄な笑みを浮かべる白中尉に、楊は複雑な心境であった。
そこへ工兵隊の指揮官がきて、白中尉に全ての洞穴の爆破準備に後一時間掛かる事を告げた。
30分で完了させろと言う白に工兵指揮官は手が足りないと訴えた。
あと30分。
あと30分が、東地区に生き延びている味方に与えられる制限時間。
息を飲む二人に白中尉が向き直った。

「楊下士、貴様元は工兵だったな?」

李の交代はお預けとなり彼は再び木に上り出した。
楊は洞穴に向かう途中、配置に向かう「遅滞防御部隊」の隊列とすれ違った。
楊は言葉を失った。
「遅滞防御部隊」の殆どは楊のような予備役兵の年寄と「まだ歩ける」負傷兵で編成されていた。
列にはさっきの海軍陸戦隊員の姿もあった。陸戦隊員は楊に気が付くと笑顔で手を振り、足を引き摺る仲間に手を貸しながら観測所へ向かっていった。



[17178] 午前8時35分
Name: ブラボー6◆5808edae HOME E-MAIL ID:994d3cd9
Date: 2010/05/15 21:16
国端新島西海岸。

15DPC(第15師団司令部)

第15旅団長、田中竜也陸将と師団幕僚一同にとって、凶報と朗報が同時にもたらされた。

朗報は北中国が停戦交渉に応じたこと。
既に予備交渉が始まり、近日中には話がまとまるらしい。
この島に8千名で乗り込んでから7日間。
これまで、220名以上の死傷者を出した戦争がやっと終わる。

凶報は、東地区の敗残兵が、中央地区の主力部隊に合流しつつあるるとの知らせだった。

潜入した情報小隊がもたらした報告で、東地区全域に配備されていた北中国軍部隊が、司令部壊滅後、一斉に陣地を放棄。
森林地帯に後退中とのことだった。

元々の計画では、東地区を海岸線と中央地区の両面から2個大隊で包囲圧縮。
敵残兵を森林地帯に押し込める作戦だった。

しかし、この動きを好都合と思うほど田中達は楽観的ではなかった。

ゲリラとなって第2戦線を展開するにも、何故身を隠す以外なんの戦略的価値の無い森へ?

東地区森林地帯は広大ではあるものの、渓谷と平原に挟まれ、回りには何もない孤立地帯だ。
森に入ったら最後。
中にいる間は、赤外線も通さぬ樹木に紛れることはできても、一歩外へ出れば直ちに空地より捕捉され、一巻の終わりだ。
木の密度が濃いため、重火器も運用できない。
しかも、重要高地や補給線、港湾施設からも離れているので、放置しても全く問題はない。
それゆえ森林地帯に敵を追い込もうとしていたのだ。
敵がこれ幸いと逃げ込んだ後は、勝手に干上がるのを待てばいい。
自ら牢獄に入る北中国軍の行動に、意図を感じずにはいられなかった。

国端富士の監視哨から、「敵主力の戦力増強を確認」の報せに、田中の疑念は確信に変わった。

まさかとは思いつつ、東地区で捕虜になった北中国兵を問い詰めると、アッサリ「抜け穴」があることを白状した。
中央地理隊製作の自衛隊地図には、地下洞穴の記載はない。
裏を取るべく、島の測量と遺跡調査を担当した国土地理院と文化庁に問い合わせたところ、驚愕すべき返答が帰ってきた。
遺跡の戦争利用を良くないとする文化庁の幹部が、洞窟の調査データを隠蔽したのである。

師団司令部は色めき立った。
このまま合流を許したら、敵を東西に分断した意味がなくなる。
二つの弱い部隊ではなく、一つの強力な部隊になってしまうのだ。
大至急、即応部隊を編成して「遁道」確保しなければ。

場所は気象観測所より2キロ西。
東地区掃討部隊に圧縮を早めさせる訳にはいかない。
無理に強行すれば統制線に穴が出る。
敵の後方地域への浸透は、絶対に防がねばならない。
直ちに奄美大島に待機していた機動予備部隊を投入し、不足分は、第17普通科連隊と第2普通科連隊から各1個中隊を増援に出させ充足に当てた。
北中国軍主力の包囲部隊からの兵力抽出は問題外。
敵はまだ有力な重火器を保有している。
幸い、本土へのテロ活動の可能性が低くなったので、すんなり部隊編入の許可が降りた。

現況表示盤に張られていく、増援部隊を示すピンを見ながら、田中は頭を抱えた。

田中は、第15師団初代師団長となって2年。その前は前身である第15旅団副旅団長を務め、それまではイラク復興支援群、沖縄沖地震、朝鮮動乱、インドネシアと、ずっと現場を駆け巡っていたせいか、齢49歳にして頭は完全に白髪となり実年齢の倍は老けて見える。

「その後、市ヶ谷からは?」

疲労で目が落ち窪んだ情報担当の第2部長が答えた。

「未だ文化庁が情報開示に難色を示しているため、強制執行の手続きを…」

「解った、もういい」

どうせ、そんな処だろうと思った。
懲戒免職では済まさんぞ!

「捕虜からは他に何か聞き出せたか?」

「他に3名、無作為に尋問しましたが、全て答えが一致しております。ただし、何処に繋がっているかは知らされてなかったようです」

十中八九当たりか、次。

「航空偵察」

剃り残した無精髭の長さが3センチを超えた作戦担当の第3部長が魂を吐き出すかのように答えた。

「FLIR(赤外線暗視装置)が役に立ちませんので、大した情報は・・・。ただ、遁道所在地地点と思われる地域より、携帯式対空ミサイルによる攻撃を受けました」

以前北中国軍が、森にヘリと人力で分解した榴弾砲を持ち込み、秘匿野砲陣地をこしらえていただけに、あの森の秘匿性は敵味方熟知済みだ。
しかし、木が鉛でできていると言うのか?
一体この島の生態系はどうなっている!?

やはり、対空兵器の待ち伏せが分かった以上、ヘリボーンは不可能だ。
したがって、地上より徒歩で、敵が待ち構えている中を進まねばならない。
策に溺れた上、戦力の逐次投入の愚策に、貴重な予備兵力を摺り減らすことへの忸怩たる思いが、田中の脳内を支配していた。

「空自の対地支援体制は?」

「現在、那覇基地で爆装した支援戦闘機2機が、警急待機中です。30分以内に最大2回の近接航空支援が可能です」

連日多勢に無勢の要撃任務に明け暮れていたのを考えると、これは感謝せねば。

「他には?」

目の下に盛大な隈を作った人事担当の第1部長が、読経のように口を開いた。

「各国のプレスが橋頭堡に到着、師団広報が補給段列地域に案内しております」

停戦交渉開始と国端新島攻略の目処が立ったのを受けて、陸幕より航空自衛隊那覇基地に設けられていた「プレスセンター」より、国内外の記者団を島内入させる事になっていた。

ただし、記者団滞在は最大48時間の期限付。
戦時中という事もあり、指定地域外での生放送と衛星電話の使用は禁止となっている。

記者会見は午前と午前に2回。
記者会見には副師団長がやってくれることになった。

「なに、災害派遣じゃ毎回のことですし、北朝鮮の時にも経験はあります。旅団長は戦闘指揮に専念してください」

損な役回りである広報担当を、阿佐嶋誠陸将補は笑って引き受けてくれた。

彼は高射中隊にいた長男、阿佐嶋武志三曹を3月1日の空襲で亡くしている。

そうだ、俺は俺の役目を果たすんだ。
クダを巻いてる場合じゃない。

「では諸君、務めを果たすか」

口調を改めた田中の言葉に、幕僚一堂が背筋を伸ばした。
一瞬にして天幕内の空気が、「会議室」から「作戦司令部」に変わる。


「即応部隊に下命。東地区森林地帯へ前進、敵秘匿遁道を確保せよ!」



[17178] 午前9時45分
Name: ブラボー6◆5808edae HOME E-MAIL ID:d997c16d
Date: 2010/05/05 18:17

東地区森林地帯。

「七番遁道」付近。

トンネルへ続々と続く北中国軍兵士の列の脇。
二メートル程の深さに掘られた塹壕から刺激臭が漂っていた。
時折列から何事かと塹壕を覗き込む兵士もいたが、即座に踵を返して列に戻った。

「鍋で砲弾を煮てる馬鹿がいる!」

防護マスクの下、楊下士は深い溜め息をついた。
彼は、その辺の石でこしらえた即席の釜戸と、その上で湯を張った中華鍋に砲弾を乗せ湯煎していた。

別に彼は気が狂った訳ではない。

彼は今ちょっとしたトラブルに巻き込まれていた。
工兵隊の応援に向かったは良いが、人手だけでなく爆薬も足りない事が分かり、ついでに一番作業が遅れている七番トンネルの爆破担当にされたのだ。

他の6本が正規の脱出用なのに対して、この七番トンネルは途中で二番トンネルへ繋がる、いわゆる「非常口」的なものだった。
ほぼ天然の空洞で、発見されたときは通風口にする予定だった。
だが日本軍の反撃が本格化してきた為、非常口に変更された。
ただ、戦時下の混乱で非常口に変更された事が周知されず、今日までその存在が一部の司令部勤務員しか知られずにいたのである。

本来こういった戦略通路には、遅滞防備用に埋没閉塞の為の爆薬か、又はその準備用に設置孔があるのだが、件の理由からそれらは全くの手付かずで放置されていた。
おまけに、トンネル警備兼保守管理を担当する遁道警備小隊は真っ先に撤退してしまった。
爆薬の割り当てもなく、人員も寄せ集め。人数も足りない。

仕方なく楊は遺棄された装備を漁り「現地調達」を試みた。
元々この森には砲兵部隊が陣地を構えており、砲弾のストックがまだ残されていた。
楊はこの中から130ミリ砲弾を選び炸薬の抽出作業に当たった。

榴弾の製造過程では、炸薬は液状で砲弾に充填される。
TNTなら約80度で液状化する。

中華鍋で湯煎することで、その逆順をやっているわけだ。
火にくべたり、電流を流せば話は別だが、信管を外してしまえば砲弾はそうそう爆発しないものだ。

液化した炸薬は、空の水筒に詰め、水を張った鉄帽(中国製はフリッツ型でも本当に鉄)に入れて冷やして固める。

通算5本目の水筒爆薬を作り終えた頃、白中尉が進捗状況を見にやってきた。
中尉は気配もなく後ろに立っていた。

「後、どの位掛かる?」

楊は肝を冷やしつつ、必要量を確保するのに後45分。設置に30分掛かると答えた。

「後30分とは言ったが、爆破はギリギリまで待つぞ?」

楊は不穏分子の疑いを掛けられまいと、慎重に言葉を選んだ。

「そういう訳ではありません、中尉殿。設置行程は省けても、爆薬造りは事故防止の為どうしても時間が要ります」


「砲弾に電気信管を繋いで、そのまま使えば…?」


「破壊工作や通路啓開には良いでしょうが、これは閉塞作業です。勢い余ってトンネルを地上に露出させる恐れがあります。ご命令であれば取り掛かりますが、今からだと威力計算や設置場所の選定が一からやり直しになります」

「・・・・」

白中尉の沈黙に不気味さを覚えつつ楊は畳み掛けた。

「それに不発弾処理以外に砲弾を爆破した経験は自分には無く、結果に責任が持てません。砲弾に関して助言を得ようにも、砲兵は全て撤退しました。下手に使えば爆破の影響が何処まで波及するか分かりません。トンネルは全て最終的に一本に繋がっているのはご存じでしょう?」

遂に白中尉が折れた。

「…分かった、仕事を続けろ」

ホッと胸を撫で下ろす楊に白中尉が中華鍋を指して尋ねた。

「そいつは何処にあった?」

楊は胸を張って答えた。

「自分の私物であります」

「・・・持って歩いてるのか?」

「本業は料理人ですので」

「・・・」

黙るなよ、あんた怖いんだから。

「他の連中は?」

「2人発火装置を探しにいかせて、残りはトンネル内で設置孔を開けさせてます」

普通爆破作業は、準備から設置、爆破まで一人で行う。責任分担するとミスが発生しやすいからだ。
今回は敵の襲来が近い事もあり例外であった。
それに、砲弾から炸薬を安全に抜き取る技術を持っていたのは楊だけだった。

「爆薬造り、誰かに手伝わせるか?」

「彼等にですか?」

楊はトンネル待ちの列を見た。
白中尉が視線を向けると、皆一斉に目を背けた。

白中尉はそれ以上何も言わず、肩をすくめただけだった。

直後、気象観測所の方から銃声が聞こえた。
順番待ちの北中国兵が騒ぎ始めた。
白中尉は朝鮮語で「チョッパリ!」と吐き捨て、楊に急ぐように言い残すと踵を返して森の中に消えていった。



[17178] 午前9時45分
Name: ブラボー6◆5808edae HOME E-MAIL ID:8f36fd52
Date: 2010/05/15 10:00
東地区気象観測所付近。

正式名称、沖縄気象台国端新島出張所。
短いL字型の鉄筋コンクリートの三階建て。
2013年に沖縄沖地震を教訓に地震予知と台風観測を目的として建てられるが、中国政府(当時)の横槍で建設が途中で中止。
今日に至るまで放置されていた。

既に小山二曹が率いる斥候班が施設内に突入してから5分。
1階を制圧したら本隊を呼び寄せ、後は接敵するまで索敵を続ける。
緊急時には機動部隊が装甲車で救援に向かう手筈になっていた。
大野を組長とする山岡、金突の三人は、火力支援チームとして斥候班と本隊を援護する為観測所より200メートルの位置に配置され、倒木を遮蔽物に息を潜めていた。


第17普通科連隊、第3中隊の任務は、気象観測所の占拠。
それによる国道3号線を通過する後続部隊の安全確保である。

海岸地区ヘリポートに到着した山岡達増援部隊は、短いブリーティングと編成完結の後、第15師団が用意した車輌に乗り込み、90式戦車改と105ミリ低反動機動砲装備の96式装輪装甲車2型を護衛に従えて一路戦場へ向け瀑進したのだった。

皆いきなりの実戦投入に、話が違うと一瞬慌ててはいたが、今はとても落ち着いていた。
その要因は中隊名物の大野、金突コンビVS小山とのどつき漫才である。
道中、組分けと合言葉の徹底がなされた。
その際合言葉を募集したところ、大野が「境界線」と言い出し「不吉だろうが」と小山二曹に拳固と共に一蹴され、それを金突に大笑いされるという一幕があった。

山岡は狙撃手とはもう少しクールな人種だと思っていたが、それが思い込みであるコトをこの数ヵ月で思い知った。
大野はどこでも眠るし食い意地が張ってるし、そのくせ要領が悪い。
しかし、射撃に関しては全自衛隊射撃競技会第三位の成績保持者で、有事が起きなければ先月より狙撃手の専門教育を受ける為、富士学校に入校する予定だった。
だが、初の実戦を前にして笑いが絶えないのは良いことなのかもしれない。
他の小隊では緊張の余り、胃痙攣を起こしている隊員もいる。
最初から落ち着き払っているのは、谷本一曹や小山二曹といった、九州騒乱やPKFを経験した一部の古株だけだ。

進出経路は特殊作戦群の哨戒挺身部隊(戦闘パトロール)が確保し、敵砲兵部隊が本部として利用していた事もあって、警戒されていた待ち伏せもブービートラップも無く、物事は万事滞りなく進んでいるかのように思えた。

1階エントランス・ホールを確保との連絡を受け、中隊長の原田昌史一尉が、本隊への前進命令を下した直後だった。

施設内から銃声が響き、特小無線ががなり立てた。

『敵とコンタクト!真上から撃たれている!』

斥候班からはそれっきり連絡が途絶え、即座に原田一尉は機動部隊に出撃を命じた。
機動部隊は重装甲機動車2輌に40ミリ自動擲弾銃装備の96式装輪装甲車2型が1輌で編成され、指揮するのは第二小隊長の後田三尉だ。
重機関銃ポッド搭載型の重装甲機動車を先頭に国道3号線を猛スピード瀑進した。

その時山岡達火力支援チームは、銃声が聞こえても成り行きを見守るしかなかった。
撃とうにも観測所の窓は全て内側より土嚢や角材で築かれたバリケードで塞がれ、外から中を窺うことはできない。
屋上には北中国軍が遺した衛星通信システムのパラボラアンテナの残骸が残されているのが見えるだけだ。
後方から重装甲機動車と装輪装甲車の車列が猛スピードで近づいてきた。
やはり斥候班が危機に陥っているらしい。
何処を狙えばいいか分からず狼狽える山岡に大野は「屋上を見張れ」と命じた。
山岡が屋上からRPGで装甲車を狙う敵が現れないかと見張っているその時、施設三階の壁の一角が爆破され吹き飛び、中から25ミリ双連高射機関砲の太い銃身が現れた。
それが重装甲機動車を認めるや否や、一斉射を見舞った。
重装甲機動車の基となった〈ライトアーマー〉こと軽装甲機動車は、「インドネシアPKF」でRPGはおろか、重機関銃に対しても無力との指摘を受け、乗員の生存率向上と対戦車、対拠点防御用に重装甲、重武装化を目指し改良されたものだ。
2010年頃迄武装は5,56ミリ機関銃だけだったが、今では50口径重機関銃とスモークディスチャージャーのコンビネーションポッドを装備した物や、中MAT装備の対戦車型、50口径重機関銃や40ミリ自動擲弾銃装備型、通信支援型、救急車型等々バリエーションが増え、名称も重装甲機動車〈ヘビーアーマー〉へと改められた。
重量増化による速度低下や、燃費が悪くなったなどの欠点もあるが、現場の評判は上々である。
しかし、上から高射機関砲で撃たれるのは想定されていなかった。
25ミリのカウンターパンチを喰らった先導車が紙細工のように宙を舞った。
乗っていた3人の自衛隊員は即死し、後に続く小隊長車も直ぐに射線に捉えられ擱座した。
ドライバーの三輪士長が上半身を粉砕されて即死。
無事だった後田三尉は破片を浴びて伸びている通信手の平田三曹の襟を掴んで、施設とは反対側のハッチから重装甲機動車の外へ引っ張り出した。
装輪装甲車が乗員を救助すべく自動擲弾銃を撃ちながら高射機関砲の射線に割り込んだ。
96式装輪装甲車2型は、従来型の装甲、火力向上に加え、情報共有化システムを搭載した〈ストライカー装甲車〉の日本版を目指したモノだ。
初期型が形的な問題で、対戦車ロケットや地雷に対して脆弱だったためデザイン、装甲材質が一新された。スペースドアーマーの採用やリアクティブアーマーのオプション等防御力が大幅に改善された。
だが、上面からのRPG釣瓶撃ちには無力だった。
観測所の屋上に北中国兵が現れ、RPG(正確にはコピーの69式火筒)と機関銃の猛射を浴びせてきた。
装輪装甲車が煙を上げて停止し、後部ランプから消火剤の泡にまみれた乗員達が脱出した。
小隊陸曹の谷本一曹と共に転がり出てきた矢岳友重二等陸曹は、部下と一緒に装甲車の陰にへばりつき、銃撃を凌ごうとしていた。
擱座した重装甲機動車の方をみると、後田三尉が平田実三等陸曹の手当をしつつ、無線で何処かと連絡を取っていた。
通信手の平田三曹は、両手を世話しなく動かしながらしゃべる男で格舌が悪く、よくドモる。
しかし、一旦受話器を握ると流暢にしゃべりだす珍しい男だ。
とにかくラーメンが好きで、休日に隊舎で昼寝をしている陸士を見つけると「ラーメン食い行きましょう!」と近所のラーメン屋に引きずっていくので皆非常に迷惑がっていた。
手当を受けている最中も平田三曹は頚から血を流しながらピクリとも動かず、既に死んでるようだった。
後田三尉が谷本へ向け大声で叫んだ。

「小隊陸曹!そっちに行きます。援護してください!」

直後、後田三尉は頭上で炸裂した擲弾の破片を全身に受け倒れ込んだ。
平田三曹は半身を砕かれ完全に息絶えた。
後田三尉は無線機にもたれ掛かり、血塗れの顔を矢岳の方へ向けた。
それを見た矢岳の中で何かが爆発した。
矢岳は回りに向けて叫んだ。

「小隊長を助ける、みんな撃て、撃ちまくれ!!」

自衛隊員達が一斉に銃を撃ち始め、屋上からの銃撃が弱まるのを見定めると、全速力で後田三尉の元へ走った。
回りで銃弾が飛び回っていたが、そんなの気にしていられなかった。
重装甲機動車の残骸の陰に飛び込むと、後田三尉を地面に引き倒し、平田の遺体から無線機を外そうとした。
しかし無線機のハーネスを掴んだら、そのまま本体がバラバラになった。
銃弾が貫通していのだ。
無線機の残骸を投げ捨て、後田三尉の体を折り畳むかの様に抱えると、もと来た道を駆けを戻った。

後田三尉を抱える矢岳を狙って、再び高射機関砲が唸りだし、擱座した重装甲機動車を完全に破壊した。
屋上の敵も撃ち出し、たちまち2人は銃弾の土埃に包まれた。
矢岳二曹と小隊長の危機に火力支援チームのトリオは射撃を開始した。
金突のSAW(ミニミ)が轟然と屋上に向け曳光弾を吐き出した。
山岡はとにかく屋上の空際線上を狙い単連射を撃ち続けた。
機動部隊との撃ち合いに集中していて、目前にいた脅威を失念していた北中国兵達は伏せる間も無く銃撃に晒された。

「山岡!銃座を撃て!」

大野が89式小銃で屋上の北中国兵を狙撃しながら叫んだ。
大野の持つ89式小銃は山岡達が持つ3型とは違い〈高級品〉と言われる初期型だ。
左右非対称の握把。緻密に計算され、日本人の体格に合わせて湾曲した銃床。
掴みやすい被筒部。
生産性とコスト削減のため、質実剛健と言えば聞こえは良いが、味も素っ気もないデザインとなった3型と元は同じ銃には見えない。
大野はそれに12倍率のスコープを載せ、消炎制退器の代わりにナイツ社製減音器を着け撃ちまくる。
恐ろしい精度で屋上の敵が倒れていく。

「早く銃座を撃て!小隊長達が殺られちまう!」

慌ててAOCGサイトを覗き、機関砲に向けて引き金を引いた。

機関砲の防盾に火花が散った。

「馬鹿!違う!40ミリだ!」

大野に怒鳴られ震える手で40ミリ擲弾発射器に榴弾を装填する。
こちらの位置を掴んだ敵が撃ち返し初め、山岡の頭上を銃弾が飛び交った。
擲弾発射器の尾栓を閉じて再びサイトのレクティルを機関砲に合わせる。
しかし、今の銃撃で砲手の注意を引いてしまったようだ。
サイト越しに機関砲の銃口がこちらに狙いを付けていた。
山岡の思考が止まった。
金突が「狙われているぞ!」と叫んでいた。大野から「早く撃て!」と叫ばれていた。
しかし体が鋤くんで動かない。
次の瞬間山岡の視界は閃光に染まった。



[17178] 午前9時45分
Name: ブラボー6◆5808edae HOME E-MAIL ID:0d16b962
Date: 2010/05/05 18:16

唐突に高射機関砲からの射撃が止み、これ幸いに後田三尉を担いだ矢岳二曹は装輪装甲車の陰に駆け込んだ。
再び背後で砲声が響いたので、最後は後ろも見ずに滑り込んだ。
矢岳は防弾ベストをさすり、あれだけ撃たれたのに一発も当たらなかったことが信じられなかった。

衛生隊員の猪野光夫二等陸曹が後田三尉の手当てを初めた。
後田三尉は重傷ではあったが意識はしっかりとあり、しきりに「左足の感覚が無い」と訴えた。
猪野が止血のために対人榴弾で千切れ飛んだ左足にバンテージを巻き、ストラップを締め上げると後田は悲鳴をあげた。

「早く後送しないと死んでしまう!」

谷本が消火剤の泡風呂と化した装輪装甲車のキャビンから、車載無線機を探しだし、中隊本部を呼び出した。

この森で日中両軍共に悩ませたのは通信手段の確保であった。
樹木の下からでは電波は飛ばない。しかし傘の下、近距離の部隊間通信であれば精度と通話距離が極端に下がるが可能だ。

結局この森で一番信頼できた通信手段は電話線を用いた有線通信で、通信隊は躍通信線を巻いたドラムをもって森を駆け巡り、第3中隊の戦闘指揮所開設地域に有線回線を張り巡らした。

目標との中間地点では、旅団司令部と前方航空統制所との連絡確保の為、電波搬送中隊が中継用ホイップアンテナを建てており、上空には航空自衛隊の電子支援機が旋回し、不測事態の場合電波をリレーしてくれることになっている。

送信ボタンを押して原田一尉を呼び出した。

『飛車○一アルファ(後田三尉の呼び出し符号)が重傷です。増援と負傷者後送をお願いします。送レ!』

原田一尉より既に向かっていると返されると同時に、国道3号線から90式戦車改を先頭にした装甲車の車列が現れた。

先頭の戦車が猛スピードで突進しながら主砲を発射した。
砲弾は観測所手前に着弾すると白煙を吹き出し、北中国兵の視界を奪った。

戦車はそのまま発煙弾を行進射で3発撃ち込むと車列から外れ、谷本達の装輪装甲車の盾となるべく、観測所の高射機関砲に対し右斜め40度の角度で停止した。

そこへ屋上の北中国兵が69式火筒を見当を付けて撃ち込んできた。しかし、増加装甲に全て弾かれ同軸機銃の返礼を受けている。

装甲車の車列は機関銃と擲弾銃を撃ちながら前進し、観測所正面入り口50メートル手前で停車。ハの字型に展開し、制圧射撃を加えつつ増援部隊を降車させている。
彼等により、斥候班の一部が救出された。

一台の高機動車が急ブレーキを掛けつつ谷本達の所にやって来た。

「負傷者を早く載せろ!

こちらの位置を掴んでいる北中国兵は高機動車を察知し、煙幕越しに機関銃を撃ってきた。
戦車が熱線視察装置(CITV)を頼りに同軸機銃を撃ち返す。
自衛隊の赤い曳光弾と北中国軍の青い曳光弾が白煙の中を飛び交った。

戦車が機関銃を黙らせている間に、矢岳は先導車と小隊長車の残骸を調べ乗員達の安否を確かめた。
生存者はいなかったので、全員の認識票を集め装輪装甲車に駆け戻った。

「あの銃座を潰せ」

モルヒネの影響で朦朧としながらも指揮を取ろうとする後田三尉を猪野は必死になだめた。

「落ち着いてください。小隊陸曹が指揮を代行しています」

「火力支援班に機関砲を破壊するように伝えろ…」

後田三尉はすぐさま高機動車に乗せられ、後方の包帯所に運び込まれた。
応急処置を受けている間も意識はあったので、みんな彼は助かると思っていた。
しかし、負傷者後送ヘリで野戦救護所に向かう途中、空中で息を引き取った。
第2小隊の指揮は谷本に引き継がれた。


・・・火力支援班?

しまった、忘れてた。



[17178] 午前9時45分
Name: ブラボー6◆5808edae HOME E-MAIL ID:d997c16d
Date: 2010/05/05 23:16
観測所手前200メートル。
火力支援チーム。

存在を忘れられていても山岡達の闘いは続いていた。
視野一杯に閃光が走ったとき、何者かに背後から蹴り倒された。
頭上スレスレを通過する砲弾が叩きつける凄まじい衝撃波に、目を回しながら首を後ろにねじ曲げた。
同じ高さに引きつった大野の顔があった。
血走った目が「立つな」と叫んでいた。
左側では金突がSAWを放り出して地面に突っ伏している。
三人とも反撃を諦め、只ひたすら嵐が過ぎるのを待っていた。
今姿勢を上げることは速やかな自殺を意味する。
このまま撃ち続ければいずれ弾切れ若しくは砲身加熱で、再給弾なり砲身交換なりで隙ができる。
そうなったら、立ち上がり観測所までダッシュし、機関砲の死角に逃れる。
このトリオに残された生き残るプランはそれしかなかった。
今に敵の砲手は弾着地点を手前にずらして自分達を挽き肉に変えようとする筈だ。
三人の内上手く行けば最低一人は脱出できるかもしれない。
誰が最初に餌食になるか、目を閉じてその時を待った。
しかし、何時になっても機関砲は弾着修正をしてくる気配がない。ひたすら背後の地面を抉り続けている。

「・・・?」

流石に若干余裕が戻ってきた。
金突がSAWに取り付けたエルカンスコープで様子を伺うなり大爆笑を始めた。 いぶかしむ大野と山岡に、金突が地面を叩きながら高前方を指差す。
二人は各々の銃を構え、スコープを覗いた。

高射機関砲を操作する3人の砲手の内、砲身角度を操作する兵士が必死になって操作ハンドルを廻そうとしている・・・が砲身はそれ以上下がらない。
隣の方向操作手と真ん中の射手か慌てだした。
事態を察知した山岡と大野が馬鹿笑いを始めた。
機関砲…正式には87式25ミリ双連高射機関砲。
旧ソ連のASUー23ー2のコピーである85式の口径を、ソ連式の23ミリから欧米式の25ミリに変更したものだ。
北中国兵はそれを施設内に分解して運び込み、存在を秘匿するため屋内で組み立て、日本側の予想進路方向に据え付けたのである。
敵ながら中々の根性と創意工夫ではあった。
しかし、彼等は肝心な「俯角」を考えていなかった。
高射機関砲は低空の航空機を撃つための、拠点防空兵器である。従って砲身は「仰角」は高く取れるが水平より下「俯角」は取れない。今山岡達は高射機関砲の「最大俯角」の下にいたのである。
勿論彼等も土台に土嚢などを用いてスロープを授け、ある程度下を狙えるようにしてはいた。しかし、目的の都合上標定射撃はできないとしても北中国兵は完全に目測を誤った。
機関砲の背後に控えていた給弾手の1人が03式手槍を持って火力支援チームを狙おうとした。
即座に笑いを治めた金突がSAWを一連射すると給弾手は大慌てで奥に引っ込んだ。砲手達も防楯の陰で縮こまっている。

「さて山岡一士、返礼といくか」

大野に階級で呼ばれ弛緩した神経が一気に引き締まった。

「擲弾手!目標前方の機関砲、200!」

今度は慌てなかった。擲弾発射器の安全装置を外し、引き金を引いた。
擲弾は弧を描いて飛び、銃座の外壁に当たり炸裂した。中より中国語の悲鳴と怒号が上がる。
バレル・アッセンブリを前進させ、排莢と同時に次弾を装填する。
発射!今度は銃座内に飛び込んだ。
機関砲の背後から閃光と共に敵兵が吹き飛ばされ、落下していった。

やったかな?

山岡が89式を肩からはずした直後。 銃座の奥から複数の中国語の掛け声と共に機関砲の後ろが持ち上げられた。
なんと、北中国兵は力業で機関砲を持ち上げ、強引に俯角を付けようとしていた。
大野が背中からM72LAWE6を外しながら叫んだ。

「しぶといぞ、ロケットランチャーだ!!」

M72LAWE6はインドネシアPKF後、個人火力向上計画の一環と84ミリ無反動砲の間隙を埋めるものとして2017年に自衛隊が採用した使い捨て軽量ロケット砲である。従来型が射撃時の後方噴射のため40メートルの安全距離が必要だったの対し、E6モデルは砲身チューブ内にカウンターマスを装備し、安全距離が10メートルとなった最新型だ。
完全な輸入製で、本体の英語表記の説明文の上から、日本語の説明文シールが貼り付けられていて、説明文の最後の「敵に向けて撃て」の表記には笑ってしまう。
山岡はLAWのチューブを伸ばし、照準器を跳ね上げた。
照準器を覗き込むと、俯角を増した機関砲の砲口と再び目が合った。
今度は平気だった。防楯の隙間から血塗れの、しかし戦意の衰えぬ北中国兵の顔が見えた。

「擲弾手、準備いいか!?」
組長こと大野士長の号令。山岡は「射撃準備よし!」と大声で答える。

「テェッ!」

二発の66ミリロケット弾が高射機関砲を粉々に粉砕した。


第2小隊の指揮を引き継いだ谷本一曹は、その轟音を煙幕のカーテン越しに聞いた。
続いて鳴り響いていた機関砲の砲声が止み、白煙の空間から、観測所の銃座のある辺りから真っ赤な炎が上がるのが見えた。
谷本は血相を変え特小無線機を掴み、呼び出し符号も使わず直接怒鳴り付けた。

そうだった、連中を忘れていた。

「バカ野郎、重火器を使うな!中にまだ斥候班が閉じ込められてんだぞ!」




[17178] 午前9時45分
Name: ブラボー6◆5808edae HOME E-MAIL ID:03c7d7a7
Date: 2010/05/06 10:15

管理棟1階。

話しは少し遡る。

小山二等陸曹が率いる斥候班の6人は施設外の捜索を終え、内部捜索を開始した。予想されていたトラップや地雷による障害もなく、敵は退去した後と思われた。

正面玄関より一階エントランスに突入したが人の気配は無かった。
窓という窓や通用口は全てバリケードで塞がれ、陽光が届かず内部は薄暗かった。
観測所は空から見ると北と東に向けてL字型に伸びている。そこで斥候班は二手に別れることにした。
小山が率いる弘田愁陸士長、斉藤信夫士長の3人は東棟へ。副班長の糸山孝則三等陸曹が率いる、五十嵐昇三等陸曹、遠山兼光陸士長は北棟へ向かった。

北棟へ進んだ小山達は一部屋づつ検索しながら進んだ。罠どころか人っ子一人いない。逆にそれが不気味だった。立地的に森林地区への進行を食い止めるには此所しかない筈なのだが。

後方警戒を務める弘田士長は去年行った東富士演習場の市街地戦闘訓練場を思い出した。内装も家具もない。冷たいコンクリート剥き出しな所がソックリだった。そうこうしているうちに一行は防火扉に出くわした。

先頭の斉藤が小山の援護を受けて、扉をそっと押した。扉は動かなかった。今度は小山が代わり、斉藤が援護に回った。筋肉質な小山が力一杯防火扉を肩で押すと、少しずつ開いてきた。
隙間が50センチ程空いた頃だった。小山の鉄帽に、なにか固いモノが落ちてきて足元で跳ねた。それはシュー、と音を立てて転がった。

「手榴弾!!」

小山が叫び、手榴弾を通路の隅へ蹴り飛ばすと、空中に身を投げた、続いて弘田、斉藤が空中に身を踊らせた。
着地と同時に手榴弾が炸裂した。弘田が爆風をまともに受け「やられた!」と叫びその場に崩れ落ちる。
斉藤が弘田を助けに向かおうとした瞬間、防火扉の隙間から銃身が突き出された。先ず斉藤が撃たれて床に叩きつけられ、続いて小山が左肩を撃たれれ仰向けに倒れた。
小山が起き上がろうと半身を起こした所を更に撃たれた。胸板を5発連打され、再び仰向けに倒れ込んだが、銃弾は全て防弾ベストが全て防でいた。
小山は仰向けのまま89式を構えて防火扉へ向けて撃ち返した。防火扉の向こうで中国語の悲鳴と悪態が聞こえ、銃身がスルリと引っ込んだ。
斉藤が手榴弾を投げ込もうと、血塗れの手で防弾ベストのポーチをまさぐっていたら、目の前に、再び手榴弾が降ってきた。
斉藤は「ぎゃあ」と叫び、手榴弾を掴むと防火扉に投げ込んだ。
小山は床に伏せて爆風を避けると、天井を見上げた。
一体何処から飛んできた?
目線の先には、穴だらけのコンクリートむき出しの天井しかない。

ん、穴だと!?

次の瞬間、穴の一つから閃光が閃いた。
右足に捻れたような激痛が走り、たまらず床に倒れ込んだ。
斉藤が起き上がろうとしたところを、背中を真上から撃たれた。

北中国兵は、壁や床に穴を開け、階段や廊下を使わず、建物を縦横無尽に動き回れるようにすると同時に、階下や壁越しに敵を狙えるよう、銃眼と手榴弾孔を設けていた。

事態を掌握した小山が小銃を天井に向けて撃ったが、跳弾があちこちに跳ね回るだけだった。

「敵とコンタクト!真上から撃たれている!」

小山は無線機のリップマイクに叫ぶと防火扉に向けて1連射し、渾身の力を込めて扉に飛び蹴りを見舞った。扉が内側に積まれていたバリケードを吹っ飛ばしながら開いた。
斉藤を入り口まで引き摺ると、89式を構えながら部屋を点検した。
部屋は無人で机一つ無く、部屋の角に脚立が立てられているだけだった。

さっき撃ってきた奴は何処に消えた!?

小山が脚立に近づくと、スルリと天井の穴へ引き上げられた。小山が脚立の端に飛び付き、思い切り下へ引っ張った。上から悲鳴と共に脚立と北中国兵が一緒に墜ちてきた。
小山は北中国兵を床に踏みつけると、銃口を向けた。事態を飲み込んだ北中国兵は手足をバタつかせて、小山の解らない言葉で喚き散らした。

「悪く思うなよ!」

引き金をを引く寸前、小山の頭上で影が舞った。
反射的に飛び退くと、,5秒前まで頭のあった位置を、ブーツの踵落としが掠った。ブーツの主は、着地すると半回転しながら体を丸めた。自分への攻撃の予備動作と悟った小山が、89式を体の前に掲げ防御する。直後、鳩尾を狙った強烈な廻し蹴りが襲った。
強烈な衝撃で壁までぶっ飛び、打撃を受けた小銃が機関部から折れ曲がった。
新たに降ってきた敵は、顔半分を包帯で覆われた男で、デジタル迷彩に防弾チョッキを着ていた。
背中にブルパップ型の小銃、95式手槍を提げているがどういうつもりか、使う気はないらしい。
カンフー映画のように両手を左右に開き、小山に向けた右手の掌は垂直に立てている。
床に転がっている奴とは、明らかに格が違う。小山は空挺か海兵隊に相当する兵士と判断した。

面白い。

89式を投げ棄てると同時に突進した。北中国兵が前蹴りを繰り出した。
頭を下げて寸前で避けると、胴体に向け拳を突き降ろした。北中国兵の防弾チョッキは、自衛隊の物と同じ防弾板を挟み込んだプレート・キャリアーだったが、防弾板の出来は日本の物と比べ、良くなかったらしい。空手五段の小山の正突きを受け、カバー越しに割れたのを感じた。

「ぐぼぅ」

肺から空気を吐き出しながら北中国兵が後退りする。小山は一気に勝負に出た。北中国兵の顎目掛け掌底を放つ。しかし、体勢を建て直した北中国兵は、両手をクロスさせ小山の掌底を上へ弾き飛ばすと、そのまま重心を下げて渾身の肘鉄を見舞った。
全体重を掛けた肘鉄を胸に受け、一瞬息が詰まる。だが、まだ闘える!!
北中国兵が畳み掛けてきた、小山の頭上に踵落としを仕掛けた。小山は降り下ろされる豪脚を受け止めるが、何故か右足に力が入らず、床に膝を付く。北中国兵はそのまま左足を小山の喉元に絡ませると、押し倒そうとした。

首を折る気だ!

小山は全力で、立ち上がり逆にバックドロップをに持ち込んだ。
しかし、北中国兵は床に叩きつけられる寸前、小山のブロックを外し、飛び退いた。受け身を取って跳ね起きる北中国兵。
小山も立ち上がろうとするが、やはり右足に力が入らない。

一体なんだと言うのだ!?

右足を見ると、太股と脹ら脛に二つ穴が空き、血が吹き出していた。
そこで初めて自分が撃たれている事に気がついた。
北中国兵は背中から95式手槍を外して構えた。

お遊びは終わりと言うことか。

小山は観念したが、撃ってくる気配はない。
北中国兵はそのまま後ろに下がると、未だ腰を抜かしている相棒を片手で引き起こした。
まだ若い、腰を抜かしていた兵士は泣きべそをかきながら立ち上がると、小銃を拾い上げ小山に向けた。
小山は一瞬身構えたが、北中国兵は相棒の銃を取り上げると、脚立を立てて、上に上がるよう諭した。

なんのつもりだ!?

北中国兵は銃口で斉藤と弘田を示した。
部屋の中に入れろと言いたいらしい。
直後に北中国兵の意図に気付いた。
小山を激しい怒りが貫いた。
これは慈悲でもなんでもない。
何故地雷も仕掛け爆弾も仕掛けられていなかったのか理解した。
敵の思惑通りになってたまるかと、右足の拳銃を意識した。
しかし、最後の勝負を挑んで、自らの矜持に部下を道連れにする程小山は愚かではなかった。
北中国兵は軽く敬礼すると、銃口を向けたまま脚立を登っていった。
脚立が上げられると、穴がが鉄板で塞がれ、その上に更に何か重量物を載せる音が響いた。

自衛隊員3人は、味方を誘き寄せる餌にされた。





やはり既存の自衛隊装備では物語が成り立たないでありマス。
架空兵器のパワーバランスを考えるのは楽しいですが大変でありマス。



[17178] 午前9時45分
Name: ブラボー6◆5808edae HOME E-MAIL ID:478c24fd
Date: 2010/05/15 09:11
気象観測所北棟。

斥候班別班を率いる糸山孝則三等陸曹は、北棟一階の最後の部屋のドアの前で手榴弾の炸裂音を聞いた。
続いて鳴り響く銃声に、引き返して小山達の加勢に行くべきか迷っていると、五十嵐昇三等陸曹が「敵がいる!」と鋭くささやいた。彼は張り付いていたドアの向こうから、銃の遊底を引く音を聞いたのだ。
ハンドシグナルで遠山兼光陸士長を呼び寄せると、小銃のレールシステムに取り付けたショットガンを蝶番目掛け撃ち込んだ。
木製ドアが吹っ飛び、すかさず遠山が音響閃光手榴弾を投げ込む。爆音と同時に糸山は拳銃を抜いて踏み込んだ。
部屋に飛び込むなりドアの後ろに隠れている北中国兵を見つけた。走りながら5発撃ち北中国兵を倒した。続いて突入した遠山士長が北中国兵の死体に躓き盛大に転けた。

「立て!」

五十嵐は叫ぶと遠山を引き起こし、倒れている北中国兵に数発撃つと糸山の隣の壁に張り付いた。順番を変え遠山が隣に付く。
糸山のすぐ向こうの壁には大きな穴が開けられ、隣のフロアと繋がっていた。
糸山は拳銃の残弾を確め、フレームに取り付けた小型ライトのスイッチを入れた。

「行くぞ!」

背後に五十嵐を従えて穴から隣の部屋に飛び込むな否や、2人の網膜を03式手槍の放つマズルフラッシュが焼いた。
糸山は半回転して北中国兵に向けて引き金を引いた。至近距離でお互い必死に撃ち続けた。ライトで目が眩んだ北中国兵の狙いが、僅かながら逸れた。
糸山の拳銃の腕は確かで、弾丸は確実に北中国兵の胴体を捉えていたが、防弾ベストに阻まれ倒すことができない。
7発撃ち残弾が乏しくなってきたので撃ちながら後退し、五十嵐を穴の中に押し戻した。
外れた北中国兵の弾丸は、壁を貫通し遠山の防弾ベストに命中し、勢いで彼は床に倒れていた。
遠山の防弾ベストの脇腹辺りに2発孔が開いていたが出血は見当たらない。
糸山が手を取って引き起こすと力強く握り返してきたので無傷と判断した。(実は助骨が折れていた)彼の防弾ベストの背面ポーチから2発目の閃光手榴弾を取り出し、穴に投げ込んだ。
3人が数秒後にくる大音響に備えていると、反対に穴から何か投げ込まれた。
最初閃光手榴弾が敵に投げ返されたのかと思った。
しかしソレは2420000カンデラの閃光と174・5デシベルの大音響の代わりに、爆風と破片を撒き散らした。
遅れて穴の向こうで爆音。北中国兵が衝撃で押し出されるように転がり出てきて耳を押さえてのたうち回っている。
糸山は手榴弾の破片で顔面に酷い切り傷を負ったが他に怪我はなかった。爆風で投げ出した拳銃を、脱落防止のカールコードで引っ張り戻しながらメンバーの様子を見た。
遠山がまたもや仰向けにひっくり返っていたが死んではいないようだ。手榴弾の一番近くにいた五十嵐は、もうもうたる硝煙の中で姿が見えない。

あいつ、吹っ飛んだか!?

そうこうしている内に北中国兵が立ち直った。
耳を押さえて膝立ちになったところで糸山と目があった。北中国兵は目を「何でお前等がここにいる!?」と言わんばかりに見開き、飛び退いた。

「これが挨拶だぜ!」

糸山と北中国兵が引き金を引くのは同時だった。だか、双方弾がでない。
糸山の拳銃はスライドが後退したままだ。弾倉を換えるのを忘れていのだ。
一方北中国兵の03式手槍は排莢不良を起していた。彼は必死に項稈を引いて詰まった薬莢を弾き出そうとしたが上手くいかない。
糸山は拳銃のリリースボタンを押して空の弾倉を振り捨てた。
それを見た北中国兵は故障排除を諦めた。彼は鉄帽の顎紐を引きちぎるように外すと、糸山の顔面に投げつけた。

中国軍の鉄帽は、日本や欧米の軍隊の物と同じ、耳まで隠れる形の「フリッツタイプ」と呼ばれるものだ。しかし、先進国の物が重量軽減と強度向上のため合成繊維などの新素材を使っているのに対し、中国軍の鉄帽の素材は未だ文字通り「鉄」。これをまともに喰らった糸山はたまったものではない。

視野一杯に星が舞い、耐えがたい衝撃で鼻骨が潰れるのを感じた。
しかし遠退く意識を怒りで掴まえ、憤怒に任せて自分の鉄帽を投げ付けた。
鼻先に高張アラミド繊維製の鉄帽を喰らった北中国兵が、怒り狂って03式手槍を振り上げた。先端にはいつの間に着けたのか、銃剣が鈍く光っていた。
北中国兵は雄叫びを上げ、慌てる糸山の頚元を狙い銃剣突き下ろした。

轟音。北中国兵が横っ飛びに穴の向こうに消えた。

「糸山さん。なに遊んでんスか?」

爆煙の向こうから2年後輩の若曹の声がした。
つまるところ五十嵐も無事だった。五十嵐は穴の向こう側で倒れている北中国兵が手榴弾をまさぐっていたので、ショットガンのスライドをポンプすると止めを刺した。

「もうちょっと早く来てくれよ」

「すんません、耳鳴りでよく聞こえないっス」

五十嵐は無事ではあったが無傷という訳にはいかなかったようだ。彼の顔面の右半分は破片が刺さり、殴られたように痣となって蒼く腫れ上がっていた。
五十嵐は北中国兵が完全に死んだのを確認すると、ショットガンに弾薬を補充した。

自衛隊は慢性的な人手不足に加え、過去二度の戦役と一度の大災害で殉職した隊員の充当が現在に至るも追い付ていない。また、入隊志願者の激減がそれに追い討ちをかけた。普通科部隊の戦力低下を補うため、こういったコンビネーション火器を持つことを推奨している。

拳銃に新しい弾倉を込め、未だ目を回している遠山を足でつついて起こした。
遠山は直ぐに起き上がるが苦しそうだ。

「大丈夫か!?」

遠山はとても無口な若者で、班員とも最低限しか会話をしない。集団生活ではそれだと不都合なので、上官達は何度か遠山を呼びつけ指導した。
しかしそれは人を無視する類いのモノではなく、訓練や日常業務での復命復唱はキチンとやるし、不平不満は勿論、他人の陰口は一切口にしない。そのお陰で無口は忍耐力の裏返しの個性として大目に見られていた。
しかし任期満了が近いので、自衛隊を辞めるにしろ続けるにしろそのままでは社会人的にまずいので、糸山は近い内彼と腹を割って話し合わなければならないと思っていた。

遠山は返事の代わりに血の混じった淡を吐き捨て、89式をローレディー構えた。糸山は一瞬不安になったが今は戦えるなら付いて来させるしかない。
ここから出たら、戦列から外して衛生に診させよう。
五十嵐がショットシェルを込め終えた。
糸山も鉄帽の顎紐を締め直し立ち上がった。

傷だらけの3人は、エントランスホールへ向け前進を再開した。


すみません。もう少し「午前9時45分篇」が続きマス。
今暫くお付き合いください。

ノンフィクションのノリは意外と大変でありマス。



[17178] 国端新島事変兵器年鑑
Name: ブラボー6◆5808edae HOME E-MAIL ID:e0e40f61
Date: 2010/05/15 15:12
日中共にマイナーな兵器が多く、また兵器の名称に両軍とも「○○式」を使用しているのと、シナリオ上架空の兵器が混在しているため補足させて頂きます。
尚、架空兵器は(架)と表示してあります。


〈日本〉

CH-47JB チヌーク(架)

言わずと知れたタンデムローターの大型輸送ヘリ。
外部燃料タンクを大型化して後続距離を伸ばしたJA型に、給油プロープと大出力エンジンを搭載した出力向上モデル。
朝鮮動乱以降、搭載する車両が重装甲化する傾向になり、現行の輸送ヘリでは役不足とされ、2014年防衛省で新機種の採用が検討される。しかし本命とされたV-22オスプレイが機密保持の為米国がライセンス生産の認可に難色を示し、その為予想調達価格が高騰、選定を断念する。
新規国産開発は予算不足で不可能であり、最終的に運用ノウハウの面から同シリーズの最新モデル、MH47-E型をベースにJA型の能力向上に着手。完成した機体をCH47-JB型として採用する。
シリーズ初の引き込み脚と、ジェットタービンの採用により最高速度が攻撃ヘリ並みの345キロとなった。


90式戦車改(架)

90式戦車の改良型。
沖縄沖地震の影響で後継の10式戦車の開発が凍結された為、現在も主力。
朝鮮動乱の際、宮崎県に上陸した重火器装備の北朝鮮軍部離脱部隊を撃破するのに活躍。防衛省は戦車の必要性を再認識すると同時に改良に着手。随時改良を繰り返し現在はG型。
モジュール式装甲の採用などで見た目はレオパルド2A6に似ている。
主砲は新型55口径120ミリ滑腔砲に換装。
重量が4トン程増加したため馬力向上と油圧式トーションバー併用サスペンションから外装式油圧式サスペンションに変更され、車長用ぺリスコープは全周探査が(従来は180度までだった)できるようになった。
しかし90式に搭載可能なデータリンクシステム(C4I)の開発が遅れ、2019年から富士教導団で試験運用が始まったばかり。
因みに日本初のエアコン搭載戦車である。
74式戦車は一部仮装敵部隊と機甲教育部隊を除き全て退役。


96式装輪装甲車2型(架)

96式装輪装甲車のビッグマイナーチェンジ型。
当初インドネシアPKFで「棺桶」と酷評されたのを契機に、兵員の生存率向上を目指して改良が進められたが、途中より中央即応集団向けに軽量多機能重装備装甲車(早い話ストライカー装甲車)を目指す新型装甲車のテストベットとされる。
点視孔を廃止し、リアクティブアーマーとスペースアーマーを装備して防御力を強化したのに加え、用途により武装の選択が可能になった。
また従来の輸送型に加え対空型、医療支援型、対戦車型など多くの派生型が造られる。
74式戦車退役に伴う機甲戦力の不足分は105ミリ低反動機動砲搭載型が充足に当てられている。
しかし重装備、重装甲の結果、輸送機に収まる重量かつ寸法に収めるのは非常に困難となり新素材の開発が急がれている。


重装甲機動車(架)

文字通り軽装甲機動車を重装甲化したもの。
インドネシアPKFで民兵の重機関銃に耐えられなかった反省より改良に着手。
それにともない武装も見直され、対戦車ミサイル装備型など多くの派生型が産まれる。
重量増加の結果従来のCH47-JA型では運べなくなったため、JB型採用の切っ掛けとなった。


高機動車

日本版ハンビー。
大きな改造はないが、360度レールマウントが取り付け可能になり、重機関銃か96式自動擲弾銃が載せられるようになる。
また、状況に応じ内装に防弾板を入れ、軽装甲車化できるようになった。
発展型に新しく救急車仕様ができた。


89式小銃3型(架)

89式小銃の発展型。
日本人の体格と人体力学を考慮して作られた89式は、優秀ではあるが量産に向かず、日本独自の事情からくる高い生産コストのため、採用から20年以上経つのに全部隊に行き渡らない有り様であった。
朝鮮動乱の際、64式小銃装備の後方部隊がAK装備のゲリラとの銃撃戦で苦戦を強いられた戦訓より、とにかく数を揃えるため防衛省はメーカーに簡易製造型の開発を指示。
生産に手間の掛かる行程を省き、徹底したコストダウンを目指して完成した簡易急増型を89式小銃2型として採用。
二脚が廃止され、左右非対称だった握杷(グリップ)と銃床(ストック)は左右対称になり、弾倉は残弾確認孔が廃止されM-16シリーズ(それまでM-16の弾倉は使えても、89式の弾倉はM-16には使えなかった)と完全供用可能になった。

3型はそれにレールシステムを取り付け、各種ミルスペックアクセサリーとグレネードランチャー、LSS(ライトウェイト・ショットガン・システム)等に応できるようにしている。
自衛隊はこれまで不発率の高さから40ミリ擲弾の採用には及び腰だったが、朝鮮動乱で擲弾発射器装備のゲリラに苦しめられた経験と人員不足に輪を掛けた昨今、不足分を個人火力向上で乗り切るため採用に踏み切った。現在はこういったコンビネーションを推奨している。
尚初期型の89式は〈高級品〉とされ、高精度故に能力証明射手用(マークスマン)に調整され分隊支援火器として今も残されている。

M72E6-LAW (架)

アメリカ製の使い捨てロケットランチャー。
開発は1965年と以外に古い。
既に米軍は1985年にAT-4を後継として導入したが、使い勝手が良いことから未だ使用中。
インドネシアPKFで、形振り構わず撃ち込まれる民兵のRPGに業を煮やした自衛隊はインドネシア国軍より「現地調達」して対抗。
その時の経験より採用を決定。
自衛隊が使用中なのはインナーチューブにカウンターマスが内蔵され、後方に10メートルの空間があれば発射できる最新型である。
防衛省は最初ライセンス生産を予定していたが、調達価格が予想以上に高価だったことから輸入に変更。
しかし取扱い表記が全て英語だったことから、導入初期に訓練で誤って前後逆に発射する事故が多発。
後にランチャー本体に日本語訳の説明文が張り付けられる。



[17178] 変更のお知らせ。
Name: ブラボー6◆5808edae HOME E-MAIL ID:583195ba
Date: 2010/05/15 10:27
第15旅団〜第15師団に変更したのと、兵器年鑑の表記を修正しました。


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