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[18705] <習作>魔法先生カズま! (ネギま×スクライド)
Name: 仙水獏◆4a6ce410 ID:0d323c6d
Date: 2010/05/16 18:52
どーも、初投稿になります。仙水獏です。
この作品は、題名に前述したとおりのクロスオーバー作品となっております。まずそう言うのが駄目な方は此所で廻れ右をして下さい。

作者のうろ覚えによる書き間違いや、おかしな表現、誤字脱字等々、見受けられましたら感想掲示板の方にご一報下されば幸いです。
尚、作者の都合により、更新の方はあまり頻度が高くはならないと思われます。ご容赦下さい。
しかしながら、作者も人間でありますので感想などいただけると多少なりとも加速する可能性が御座いますので、面白かったと思われた方は感想よろしくお願いします。
……クーガー兄貴のようなスピードはまず無理なので平にご容赦下さい。


それでは長い前置きとなりましたが、見てもいいと思った方は、どうぞ先にお進み下さい。

追記
時期としては、君島死亡。劉鳳との対決直後の状態となっています。つまり、シェルブリットは二段階目です。わざとぼかしていたが、どうにも説明不足だったようなので追記。

五月十六日
五話を確認しなくても良い程度に加筆修正。




                                   



[18705]
Name: 仙水獏◆4a6ce410 ID:0d323c6d
Date: 2010/05/09 11:43

「あぁ?」

カズマは目の前の光景に、訝しげに声を上げた。
燃えている。村が。夜の帷が墜ちた世界の中でしかし此所だけは、炎の赤でまるで昼間のような明かりを爛々と放っていた。

「此所は一体何処だ? 俺はあのくそったれホーリー野郎をぶん殴らなきゃ何ねぇってのに」

全くつかめない現状に、カズマは苛立たしげに顔を歪めた。
親友を殺したあの糞共を、許すわけにはいかなかった。思いっきり殴ってやらねば気が済まない。だからこそ――。

「こんな所で道草喰ってる暇なんざねぇんだよぉ!」

そうだ。こんな身も知らぬ場所で無為に時間を潰す暇など無いのだ。カズマは歩き出す。
目に映るのは異様な光景。紅の劫火に浮かぶ人の形をした幾つもの石の像。躍動感に溢れるその石像は、まるでそれらが生きているような印象をカズマに与えた。

「一体何だっつうんだ、此所は? どっかのアルタ―使いの攻撃でも受けたか?」

『ALTER(アルター)』
正式名称は精神感応性物質変換能力。自分の意志(精神力)により周辺の生物以外のあらゆる物質を原子レベルで分解し、各々の特殊能力形態に再構成することができる特殊能力。
カズマの育ったロストグラウンド出身の新生児の2~5%に見られる能力だ。
その能力形式はまさに多種多様。それでいて強大な能力だ。こういった惨状を作り出せる程度には。

「あぁん? 何だ、テメェらは?」

カズマの目の前に、異形の大群が姿を現す。人では有り得ない醜悪さ。牙を持ち、翼を持ち、その姿はまるで悪魔のようだった。
一匹がカズマの前に進みでる。巨大な悪魔だ。それなりに身長はあると自負しているカズマが見上げてしまうほどに。そんな悪魔がカズマに向かって殺意を発する。

「ヘッ! 何だよ? やるってのか? いいぜ! ちょうどムシャクシャしてたとこだ。付き合ってやろうじゃねぇか!」

――しかし、それがどうしたというのか。今までだって見上げるような大きさの敵なんてのは五万といた。俺はどうしてきた、どうすればいい!? 簡単だ、叩き潰せばいい。何時も通り、この俺のアルタ―で。

右手をゆっくりと前に出し、構える。相手もそれを何かの合図と取ったのか、その丸太のような右手を振り上げる。
殴られればただでは済まないだろう。だが、それを知りながらもカズマの口元は自然と笑みを浮かべる。

「俺を退屈させんなよ?」

周りの瓦礫の幾つかが消え失せる。アルタ―能力を構成するための物質の分解だ。
異常を感じ取ったのか、悪魔はその手を振り下ろす。確実に命を奪わんとする一撃。カズマはそれを半回転して躱そうとし――。
その前に、第三者によって悪魔の拳が止められた。
ローブを着て、頭をすっぽりと隠した男だった。これまた異様にでかい。一体どれくらいあるのか、と少し場違いなことを考える。
男は、悪魔を蹴り飛ばし、何かを呟いたかと思うと、そいつを空中で真っ二つにせしめた。
――攻撃は終わらない。更に男は何かを呟き――否、これはもう唱えると言った方が正しいだろう。そのまま腕を突き出した。
その腕から飛び出した光条は、幾多もの異形を塵に返し、しかしそれでも止まらず、飽きたらず、先にある山の一部を喰らった。
でたらめだ。でたらめすぎる。こんな事アルタ―使いでも簡単な事じゃない。アルターを使った様子もないコイツは一体どうやったというのか。敵にするには危険すぎる。が――

「アンタ、なに人の相手を横からぶんどってやがる?」
「あ?」
「だから! なに人の喧嘩を奪ってんだよって聞いてんだよ!」

今のは、俺の相手だ。俺の戦だ。俺の喧嘩だ。横から首を突っ込んできた奴がそれをかっさらっていって、それが面白いわけもない。

「ハハッ! 血の気の多いガキだな。流石は俺の息子!」
「……はぁ?」

怒りを受けて、男は楽しそうに笑って言った。台詞の意味が分からず、カズマは胡乱げな瞳を男に向ける。
息子? 誰が? 残念ながら、ロストグラウンドに生を受けて十六年。父親なぞついぞ見たことはないが、コイツがそうなのだろうか。否、そんなわけ無いだろう。きっと頭に蛆が湧いてしまった可哀想な人間なのだ。

「ほら、行くぞ? あぁ、ネカネ達は助けといたから安心しろ。お前も早くねぇちゃんに逢いたいだろう?」
「さっきから何言ってやがるんだ、アンタは? 俺には姉何かいねぇ――って、うぉぉぉ!?」

人の話を最期まで聞かずに、男はカズマの腕を引っ張り――飛んだ。いきなりのことに驚くカズマを気にすることもなく。速度は上がっていく。

(……これもアルタ―能力じゃねぇな。一体何だコイツは)

単一で科学の力も借りずに空を飛ぶ、一体それが如何ほどの奇跡か。疑念、疑惑、疑問。そして更にカズマを驚愕させたのは空から見た風景だった。
地上には青々とした森が広がる。荒野や岩石群が広がるロストグラウンドではほとんど見られないような光景だ。

「……すげぇ」
「ん? あぁ、空を飛ぶのは初めてか? ハハッ、スッゲーだろ? 世界はこんなに広いんだぜ!」

男はカズマの感嘆とした言葉を、見当違いに解釈して声を掛ける。だが、それも今のカズマの耳には届かない。その目は子供のような輝きで溢れていた。

「――おぉ! いたいた。あそこだ」

男が何かを見つけて騒ぎ出したようなので、カズマもそちらに目を向ける。そこにいたのはこちらを指さして騒ぐ、一人の少女と、妙な格好をした一人の老人。
ゆっくりと男は下降して、地面の近くに降ろされる。

「ネギ!」
「誰が葱だ――って、ムグッ!」

ポピュラーな野菜の名前を叫んで駆け寄ってくる少女に抱きつかれる。鬱陶しいと抵抗するが離れる気配は全くない。

「ナギ! お前今まで一体何処で何をしていたんじゃ!」
「がなるなよ、スタンの爺さん。……遅れて済まなかった」
「むぅ……」

傍らで爺さんとなにやら言い合っていた男がこちらに向き直る。しかしこいつらはでかい。少女さえも俺をすっぽりと抱けるぐらいのサイズだ。何かおかしい気がする。
男はこちらに木で出来た杖を差し出す。長い杖だ。持つのも一苦労だった。

「……もう時間がない。残念だが感動の再会ってのはまた今度になりそうだ、ネギ。代わりと言っちゃあ何だがそれをやろう。俺の形見だ」
「いらねぇよ。こんな棒ッきれ」
「……元気に育て、幸せにな!」

どうやら聞かなかったことにしたらしい。そのまま高度を上げて男は遠ざかっていって、消えた。

「大丈夫だったネギ!? 貴方はまだ小さいのにこんな――」

何か喚き散らす少女を無視して、カズマはそろそろ現実を見ることにした。明らかに、今のカズマは小さい。何処かでちらっと見た感じでは、容姿すら変わっている。
カズマの頭の中に、数々の記憶が去来する。ロストグラウンド、ホーリー、かなみのこと、劉鳳との決着、君島の敵討ち――。
全てを胸の内にカズマは叫んだ。

「―― 一体、何だつうんだよーーーーーーーーー!」

これが、ロストグラウンドのアルタ―使い、シェルブリットのカズマ――否、異端の魔法使い、ネギ・スプリングフィールドとしてのはじめの一歩だった。











と言うことで、プロローグでした。仙水獏です。なんかこのクロス、どうにもうまく廻らなそうな予感。書いてみたはいい物の、原作のフラグはほとんど無視せざるをえない。
今回、途中まで憑依モノと分からないように書いてみたのですが如何だったでしょうか? ちなみにネギまの方の原作が実家な為、うろ覚えで書いています。シチュエーションや、台詞回しでおかしな事があったらお知らせ下さい。
……カズマの口調がちゃんと出来てるか不安。
では、また。








[18705] 一話
Name: 仙水獏◆4a6ce410 ID:0d323c6d
Date: 2010/05/09 17:25
カズマがネギ・スプリングフィールドとなって、六年の歳月が過ぎた。六年間色々なことがあったが、特筆して語ることもないだろう。強いて言えば、あの事件が落ち着いてから、ネカネがネギがぐれたと騒ぎ出したぐらいである。

「卒業証書授与――ネギ・スプリングフィールド。この七年間、問題ばかり起こしおってこの糞孫が」
「うるせぇよ、爺。さっさとそいつをよこせ」

今日は、魔法学校の卒業式。晴れの舞台にはあるまじきやりとりをしながらも、二人は笑顔を浮かべている。仮にも校長から見れば孫ではあるし、可愛くないわけがない。……例えそれがこの七年間、ろくに勉強もせず、よく分からない謎の能力で敵対する全ての先生、生徒を殴り倒してきた問題児だとしても、だ。はっきり言ってしまえば、この卒業もそろそろ面倒が見きれなくなってきたからである。
カズマにしたって世話になっている自覚はある。そんなにこの老人が嫌いなわけでもない。ただ、正義を題目にそれをこちらに強要してくる他の大人はどうにも嫌いだった。
自分は自分の道を行く。今までもこれからも。誰に言われたわけでもなく、それが自分の意志だからだ。

「ネギ―! 修行内容なんて書いてあった?」
「ん? んだよ、アーニャか……」

卒業式もつつがなく終わり、周りの生徒がなにやら盛り上がっている中、カズマが一人廊下を歩いていると、一人の少女が話しかけてくる。―アンナ・ユーリエウナ・ココロウァ。通称アーニャである。ちなみに本名についてはカズマは覚えていない、と言うか長いのでそもそも覚える気がなかった。

「何だとは何よ! 修行内容出た? って聞いてんだから教えなさいよ!」
「うるせぇな。別にお前にゃ関係ーねーだろうが」
「関係あるわよ! いいから教えなさい!」

カズマのぞんざいな扱いに、アーニャは声を荒げる。昔からこうだった。いや、そう言っては語弊があるだろう。正しくは六年前のあの日からだ。それまでは年相応な子供だった。あの日からネギは変わった。アーニャはそう思う。
言葉遣いは悪くなったし、大人の言うことは聞かない。ぶっきらぼうで乱暴になった。そして、何より大人になったような気がする。世の中の理不尽を、不公平を知りながら、それでもそれをよしとしない。あくまでも皮肉気に、それに逆らう。何処か子供っぽい大人に。
それは気に入らないが、何よりほっとけない。いじめられている子供がいれば、「気にいらねぇ……」と言って、相手が何であろうと殴りかかる大馬鹿者だ。拳で何でも片付くと思っている節があるこの大人っぽい弟分をアーニャは放ってはおけないのだ。

「こら! 二人ともなにやってるの!」
「ネカネさん!」
「……別に何もやっちゃいねぇよ」
「ネギ! 貴方はもう! あれほど卒業式ぐらいはちゃんとしなさいって言ったのに!」
「あぁ! もうっうっるせぇなぁ! 別にどうでもいいだろうがあんなもん!」
「良いわけないでしょう! ホントに、何処で育て方間違えたのかしらねぇ?」
「知るかっ!」

間違いなく一番逞しくなったのはネカネだろう。日々是、不良少年とのぶつかり合いだ。肉体言語で話したことも数回ある。一方的な、だが。世話になっている自覚はあるのでカズマから反撃はほとんど無い。あっても拘束を振り解いて逃走するぐらいだ。

「というか、何で言い争っていたの?」
「わかんねぇのに首突っ込んでくるんじゃねぇよ」
「……」
「―イテェ! 何しやがる!」

全く仲の良い姉弟である。そのやりとりを呆れたように見ながら、アーニャはカズマの卒業証書を奪い取って中身を見た。褒められた行為では無いが、このままじゃ、話が進まない。

「って、えぇ!!?」
「? どうしたの、アーニャちゃん?」
「人のモン勝手に見てんじゃねぇよ、糞ガキ」

驚いたアーニャを見て、続いてネカネも卒業証書を覗き込む。驚愕。二人ともまるで石のように固まっている。それを自分には関係がないとでも言うようにカズマは冷めた目で見て、ぽつりと呟いた。

「……バカじゃねぇのか、こいつら」

二人は驚愕のあまりそんな罵倒の言葉さえも聞こえていなかった。……しっかりと、アーニャは足、ネカネは手が出ていたが。




「校長先生! 一体どういう事ですかこれは!」
「そうよ! どうなっているの、先生!?」
「まぁ、まて。ちょっと落ち着きなさい二人とも」
「早く説明しろよ、糞爺」
「表に出ろ、糞孫」

卒業証書に書かれていたのは『日本で教師をすること』。そんな無茶な課題に一言もの申そうと、カズマ一行は校長室に来ていた。

「ネギはまだ九歳ですよ!? それ以前にこんな馬鹿な子に、先生なんて出来るわけ無いじゃないですか!?」
「そ、そうよ! 未だに1+1=3なんて答えるバカなのよ!」
「よし、表に出ろ」

口元を押さえ、泣く振りをするネカネと、少しばかり誇張の過ぎる表現をするアーニャに、カズマの顔が引きつる。カズマとてこの身体になってから七年間、なにもしてこなかったわけではない。
勉強という未知にも、魔法という未知にも興味がないわけではなかったのである程度まではやったのだ。……飽きて途中から身体を鍛える方向にシフトしたが。しかし、5~7歳児相当と評価されたこともあるカズマからしてみれば大きな進歩である。

「知っとるわ! 魔法は魔法の射手までしか使えず、学力は中学校卒業程度! 仕舞いにゃ、飽きたから学校止めるとか言い出すから無理矢理卒業させたんじゃぞ!?」

カズマを指さし、喀血するような勢いで言葉を吐く校長を尻目に、カズマは何処吹く風だ。窓から外を見て黄昏れている。

「話を聞いておるのかっ!? この愚孫が! 全くどうしたもんかのう、ハッハッハッ」
「――アハハハハ」
「――お前が笑うなぁ!」

疲れたように笑う校長を指さし、バカにしたように笑うカズマ。切れる校長。全く仲が良い物である。二人のやりとりは何時もこんな感じだ。

「――ふぅ。まぁ、アレじゃ。先生であればいいわけだからの。中学生までならギリギリ教えられる訳じゃし。最悪幼稚園の先生でも可じゃろ」
「こんな子に育てられたら、みんな将来チンピラです!」
「……おい、俺も気が長い方じゃねぇんだがよ。ネカネサンよぉ」

校長室は暫く騒ぎが収まらなかったが、学園長の鶴の一声でカズマの日本行きは決定した。





「……チッ」
カズマは揺れる電車の中、小さく舌打ちを洩らした。自分を物珍しげに見る視線が鬱陶しくてたまらなかった。そんな外人の子供が珍しいかと怒鳴り散らしたい気分だが、周りが少女ばかりなので止めた。

「ぼく、何処行くの? ここから先は中学、高校だよ?」
「あ? あぁ、ちっと学園長とか言うのにようがあんだよ……」
「ふ~ん。そうなんだ。一人で大丈夫?」
「当然のパーペキだ」

『次はー、麻帆良学園中央駅ー』

「あ、着くよ」
「じゃーね、坊や♥」
「おう」

挨拶もほどほどに、電車から降りる。そこに広がるのは人、人、人。人の波なんて言葉がまさにふさわしいそんな光景。

「ハハッ! スゲェな!」

子供のような笑みを浮かべて、カズマもまた走り出す。そもそもこの修行を受けたのも、日本に行けるからだ。
ロストグラウンドがない世界。そんな嘘のような世界でも、日本はあった。ある意味母国とも言えるこの国。来たいと思ったのも割と自然なことだった。
このネギとか言うガキになってから、しばらくはあっちに戻ってみようとしたが、どうにもならなかった。今だって諦めてるわけじゃない。かなみの事、劉鳳との決着。気になることもやり残したことも山ほどある。だから、どんな手を使っても俺はあそこに、ロストグラウンドに帰らなきゃならない。

「アンタ、迷子? この先は女子中よ?」
「せやえ~? 初等部は前の駅やよ?」
「あぁ?」

掛けられた声に振り向く。そこに立っていたのは、黒髪の妙にゆっくりとした少女と、睨むようにこちらを見ているツインテール。

「俺は此所に用があんだよ。ほっとけ」
「なっ!? 生意気なガキね! 年上を敬えってお母さんに教わらなかったの?!」
「明日菜~。そんな怒らんでもええやん。何の用事何や、坊や?」

鼻を鳴らして、歩き出そうとするカズマに明日菜が怒鳴り散らす。親切で声を掛けてやったのに、そんな風に返されては頭に来ても当然だった。このかはそんな明日菜を宥めながら、カズマにもう一度声を掛ける。

「いやー良いんだよ、このか君。久しぶりー、ネギ君」
「た、高畑先生!? お、お早う御座います!!」
「おはよーございまーす」

急に態度を変えた明日菜を胡乱げに眺めながら、カズマは二階から手を振る眼鏡――タカミチ・T・高畑――に軽く右手を挙げて答えた。

「麻帆良学園にようこそ。良いところでしょう? ネギ君」
「ふん、別に何処だろうが雨風凌げりゃ問題なんかねぇだろ?」
「ちょ、ちょっと! あ、アンタ高畑先生と知り合い!?」

いつかのビッグマグナム野郎並みにうるせぇ野郎、失礼、尼だな。とカズマは明日菜を睨み付けた。その眼光の鋭さに思わず後ずさる明日菜。

「こら、これから生徒になる人を睨み付けるのは駄目でしょう? ネギ先生」
「そうよ! って、先生?」
「ほら、自己紹介」

いつの間にか降りてきていたタカミチに促され、舌打ちを洩らしながらもカズマは目の前で騒ぎ立てる猿のような少女と、何処か所在なさげに立っている黒髪の少女に名を名乗る。

「……今日から、この学園で教師をすることになったネギ・スプリングフィールドだ」
「よろしくお願いしますは?」
「…………ヨロシク」

それを聞いて絶叫する明日菜とこのかを無視して、カズマは良くできましたとばかりに頭を撫でてくるタカミチにボディーブローを叩き込んだ。











と言うことで一話目投下。仙水獏です。知ってる人は知っている。知らない人は覚えてネっと。
どうにも違和感がつきまとうカズマ君。一体この違和感の正体は何なのか。
感想もらって調子に乗ったあげくが、御覧の在り様だよ……。
誤字脱字報告、此所ちょっと文章的に可笑しくね? キャラちげぇーだろ!って方はどうぞ感想板まで。
今日中にもう一話あげて欲しい場合は感想をくれると作者がラーーーーディカル・グッドスピーーード!!! する可能性が上がる。
では、また。



[18705] 二話
Name: 仙水獏◆4a6ce410 ID:0d323c6d
Date: 2010/05/09 23:41

「……おい、タカミチ」
「ん? なんだい? ネギ君」
「なんつーか、聞きにくいんだが……。ありゃ、人間か?」
「……僕は人であるのに必要なのは、種族云々より心だと思っているんだ」
「……そうか」
「そうさ」

喚き散らす明日菜を鑑賞しながら、タカミチとカズマは人間とは何なのかという命題に挑戦していた。

「人のことを好き勝手言っている最中悪いんじゃが。ちょっと言いかね」
「長ぇ頭に青筋浮かべてんじゃねぇよ、爺さん。卑猥なんだよ」

学園長の頭に青筋が増える。表情が変わらない辺りが流石だ。

「ふ、ふぉっふぉっふぉっ、どうやら聞いていたとおりの悪ガキのようじゃのう。噂はかねがね聞いておるよ、ネギ君」
「そぉかい」

口元を引きつらせながらも、出来るだけ穏和に語りかける学園長に、カズマは心底どうでも良さそうに答えた。

「あぁ、学園半壊、教師、生徒の半分以上を卒業までにしばき倒したある意味伝説の生徒らしいの?」
「おい、待て。訂正しろ。殴り倒したのは教師全員と、全生徒の四分の三だ」
「訂正する部分が間違っちゃいないかのう?」

それを聞いて、明日菜が引きつった顔をしてカズマから離れる。端から聞けばとんでもない危険人物だ。

「まぁ、いいわい」
「良いんですか!? 学園長!!?」
「明日菜ちゃん、静かにしとれ。さて、ネギ君。君には伝えてあったとおり此所で先生をしてもらう。厳しい修行になるぞ? 覚悟は良いかの」

その問いかけに面倒そうにカズマは頷いた。個人的には心底どうでも良いのだが、今帰ってネカネに泣かれでもしたら家に居にくくなるし、糞爺を殴り倒す、失敬、説得するのは割と骨が折れる。

「あと、住む家がないので。明日菜ちゃん、木乃香。暫くネギ君を泊めてはくれんか――」

殺気。迸るような殺気を、学園長は感じた。一般人でさえ分かるような濃さの殺気に、明日菜は震え上がり、木乃香はのほほんとしている。出所は言うまでもなくカズマ。学園長は右手をこちらにまっすぐ向けるカズマに言いようのない恐怖を覚えた。

「てめぇ、本気で言ってんのか?」
「だって、他にないんじゃもん」
「気色わりぃ、喋んな。待ってろ、今壁の頑固なシミにしてやるよ」
「あーん、お爺ちゃん苛めんといて~」

木乃香の声で緊迫感は薄れるが、未だに一触即発。下手に動くと学園長の頭が吹っ飛びかねない状況だ。

「そ、それじゃあ、君は野宿でも良いというのかね!?」
「――慣れてる」

――学園長室に戦慄が走る。
その一言で世界が止まった。今この少年はなんと言ったのか。数えで十歳の少年が、野宿に慣れてる? 冗談だろうと彼の顔をみんなが見るが、どうにも真面目な表情だ。本当かも知れないという疑念が全員に生まれた。
口火を切ったのは木乃香だった。

「なぁ、アスナー、この子家に泊めちゃあかん?」
「うっ……!」
「アスナー」
「ううっ」
「アスナー」
「ううぅ、分かったわよ! ただ木乃香がちゃんと面倒見るのよ?」
「やったー! あんがとなぁ、アスナ」

アスナにお礼を言って、カズマに笑顔を向ける木乃香。本人は犬猫のような扱いに少々ぶすっとしている。

「ありがとのう、二人とも。さぁ、先に教室に戻ってなさい」
「うん!」
「……はい」

一人は満面の笑みで、一人は憂鬱そうな顔で退室していく。カズマはそこはかとなくアスナに同情を覚えた。

「良かったのう。二人とも飼ってくれるんじゃと」
「……その長ぇ頭を上から叩き潰して普通サイズにしてやろうか、爺」
「しずなくーん、紹介しよう。彼女が君の指導をしてくれるしずな先生じゃ! 助けてしずな君!」
「あらあら、セクハラですよ? 学園長」

カズマは入ってきた女教師の胸に顔を埋める学園長を見て、溜息を吐いた。此所の学園は本当に大丈夫なのかと。





「ネギ先生のクラスの生徒はとっても良い子ばかりですからね。大変でしょうけど頑張ってください」
「ん」
しずなから受け取った名簿を、カズマはぱらぱらと開きながら適当に相づちを打った。生徒の顔と名前を覚えようとして――止めた。そのうち嫌でも覚えるだろう。

「あ、ここですよ」
「ん? あぁ、あんがとよ」
「いえ、じゃあ、頑張ってください」

カズマは気づいていないようだが、扉に挟まっている黒板消しを見てしずなは苦笑いを浮かべた。まぁ、これも生徒なりの歓迎の仕方だからと、止めない。
カズマは緊張した様子もなく、無造作に扉を開ける。
上から落ちる黒板消し。一瞬で何かが落ちてきたことを知ったカズマは、前に向かって加速した。
しかし、罠は一つではない。仕掛けられていたのは足下に張られたロープ。加速した上に、一個目の罠を破り、油断していたカズマにはそれは避けられず――。
勢いも手伝って、カズマは飛んだ。回転する視界。視界に驚愕した生徒と思わしき少女達が映る。カズマの顔が引きつった。そんなに驚くなら、そもそもこんな事するんじゃねぇ! と。

「――おっ、ラァ!」

轟音。回転していた視界が元に戻り着地する。出来たのは一つのオブジェだ。題名『殴り抜かれた教卓』
カズマは空中にいる不安定な体勢から、ぶつかりそうだった教卓を殴ることで無理矢理衝撃を殺したのだった。

「――嘗めた事してくれんじゃねぇか、あぁ?」

カズマは引きつった顔を生徒に向ける。教卓を殴り抜く子供などという、シュールな構図に生徒の顔もさぞかし引きつっているだろうと思いきや、違った。
全員が全員、マヌケ面、失敬、唖然とした顔でカズマを見ていた。まだ此所までは予想の範疇。まだその足りないお味噌が追いついていないのだろうと判断。
――だが、次の一言は完全に予想外だった。

「「「「「「かわいいっ!!」」」」」」
「……はぁ!? ツーかうるせぇぞっ!」

一気に大量の生徒が集まってくる。カズマに触れようとするセクハラまがいの手を叩き落とし、一喝。

「席に着けっ! 仕舞いにゃ殴るぞ!?」

キャー、と騒いで席に戻る生徒達。本気で怖がっていない辺り、やっぱり嘗められているらしい。こいつら教卓を見てないのか? と自分が壊した教卓をカズマは横目で見て、――見なかったことにした。

「ネギ先生! 質問しても良いですか!?」

ペンと手帳を持ったパイナップル頭が、妙に張り切って聞いてきた。しずなに目で問いかけると苦笑して頷かれた。やってあげてと言うことらしい。

「勝手にしろ」

それを皮切りに次々と手が上がる。名前も覚えてないのに指名できるわけもなく、うんざりした顔で適当に質問してくれ、と頼んだ。

「はいはい、先生って幾つ?」
「数えで十だ」
「数えってなーに?」
「……今年で十歳だ」

おぉーっと感嘆の声が上がるが、カズマ的にはそんなのは良いからさっさと終わって欲しかった。そもそも何で自分が教師なのか、絶対噂に聞いた拳闘士とかの方があってんだろ、と信じてもいない神様を呪ってみる。

「どこからきたのー?」
「イギリスとか言う国の、ウェールズとか言うとこの山奥だ」
「そーなのかー」
「……そーなんだよ」

何か頭の痛くなる会話だった。自分も頭は悪いが、こいつらはもっと悪い気がする。

「もう、終わりで良いか? 授業やんぞ、授業」
「えぇ~」
「もうー?」
「喧しい! 俺だってやりたかねぇんだよ! 仕事だからやッてんだ! 分かったらさっさと教科書を開け!」

ブーブーと文句を言いながらも、素直に教科書を広げる少女達。それを見て、まぁ退屈はし無さそうだな、とカズマは微笑を浮かべた。




授業を終え、放課後。学園内にある噴水の近くで、カズマは寝転んで空を見ていた。空だけはあのロストグラウンドとも変わらない。ただ青い。

「……かなみ、どうしってかなぁ」

気になるのは、あの世界に置いてきた血の繋がらない妹分。嘘を吐いて、苦労もさせて、それでも自分から離れなかった少女が、未だにカズマの心に引っかかる。また瓦礫の影で泣いてやしないだろうか。

「……あぁ、クソッ!」

頭を掻きながら起き上がる。どうやらホームシックらしいと、カズマは苦笑いを浮かべた。まさかあの嫌なことがほとんどを占める故郷を懐かしむ日がこようとは、本当に夢にも思わなかった。

「――ん?」

奇妙なモノが目に映る。本の塔が動いていた。魔法か? とマジマジ見るとどうやら人が持っているらしい。何処かで見たような少女だった。
フラフラフラフラと動く様は、とてつもなく危なっかしい。

「あわわっ!」
「――馬っ鹿野郎!!」

案の定足を踏み外し、階段から落ちる。このままでは大怪我は必死。距離的に、いくら軽い身体強化魔法を使っていようと、アルタ―能力者の身体能力とはいえ、ここからでは届かない。
分かっているから、届かないから杖を使う。中途半端にしか覚えてないそれでも、風を起こし、彼女を浮かせる位なら可能だった。
この杖も中途半端に使えるから困る。邪魔なのに手放せないのだ。これも自称父親の呪いに違いないと、次にあったときには殴ることに決めた。

「――っとぉ、大丈夫かよ?」
「えっ? あ、ネギ先生」

驚愕を顔に貼り付ける少女。どうやら落ちると思っていたらしい。まぁ、普通なら落ちるが運の良い事にカズマがいた。ただそれだけの話だ。奇跡なんてモノはそれこそ何処にだって転がっている。

「……本が散らばっちまったなぁ。拾うか……って、あっ」

散らばっていた本を見渡すと、こちらを指さして驚愕しているツインテールが見える。ア、ア、何て言ったっけ? と名前が思い出せないがとにかくヤバイ。誠に巫山戯たことに魔法がばれるとオコジョにされてしまう。ネカネはそっちの方が大人しくなるかもね、と疲れた顔で呟いていたが冗談ではない。
両者一瞬の硬直。先に硬直から抜けたのはアスナだった。カズマを捕獲して速やかに戦線を離脱。森の中に連れ込んだ。
一瞬の出来事に残された少女――宮崎のどかはとりあえず自分の頬を抓ってみた。

「……痛いです」

痛かった。





「あ、あんた一体何者よ!? 杖を振ったら本が浮いたわよ!?」
「知るか」
「アンタがやったんでしょーーー!!」

ホントに煩い野郎、失礼、尼だ。そう考えながら半眼でこちらを疑り深く見るアスナをちらりと横目で見る。状況は限りなく危険。ホーリーに捕まったあのとき並みの危機だ。オコジョになったが最期、ネカネによる弟オコジョ飼い殺し劇場の始まりだ。爺の説教付で。それは異様に面倒だ。

「……アレは魔法だ」
「へっ?」

惚けたようなマヌケ面を晒す少女に、軽く魔法について説明する。とぼけてもよかったがつきまとわれるのも面倒だ。イカした解決方法を思いついたのでそれにすることにして、冥土の土産に説明もしてやることにした。

「ふーっん。んじゃあ、アンタばれたらオコジョになっちゃうのねぇ?」
「……まぁな」

厭らしい笑みを浮かべて、こちらを見る少女を見返す。弱みを握って喜んでいるようだが、別にこれからすることには問題ない。

「それじゃあ、ばらされたくなかったら私の言うことを聞きなさい! なに酷いことはしないわ! アンタが担任止めて高畑先生を――って、きゃあ!」
「避けんじゃねぇよ、こら」

樹の砕ける音が響く。自慢の身体能力で辛うじて避けた拳の先には、抉られた樹が映り、九歳児の異様なパンチ力を現していた。

「えっ、えっ、なに、どういう事よ」
「いや、アレだ。記憶消そうにもそんな魔法覚えちゃいねぇしな。こっちの方が手っ取り早いだろ? 大丈夫だ、痛みを感じる前に気絶する」
「それの何処が大丈夫なのよ! 生徒を殴ろうなんてそれでも教師!?」
「教師を脅そうとするなんて悪い生徒は、鉄拳制裁するしかねぇだろ?」

拳を掲げてニヤリと笑うカズマに、アスナの背に悪寒が走った。アレは本気の目だと。コイツ私を殴って記憶を消す気だと。
――リアル鬼ごっこ開始。 注:この先は音声のみでお楽しみ下さい。

「避けんな、こら!」
「いや、そんなの喰らったら私死んじゃうからイヤー!」
「動くんじゃねぇ! 当たんねぇだろうが!」
「な、何でアンタみたいな子供のパンチで、岩に罅がはいんのよーー!?」
「お・と・な・し・く殴られろつってんだろーがぁ!」
「ごめん! 絶対言わないから、言わないから許してーーー!?」

その言葉を聞いて、ぴたりとカズマが止まる。その様子を尻餅をついたアスナが涙目で見上げた。

「ホントに言わねぇだろうな?」

コクリコクリ、と壊れたおもちゃのように頷くアスナを見て、カズマは拳を下げた。若干苛めすぎた気はしていたし、望んだ言葉を引き出せたからまぁいいだろう。……言わなければマジで殴るつもりではあったが。

「掴まれ」
「えっ?」
「いつまで地ベタに座ってやがんだよ。早く立て」
「あっ、うん」

声を掛けられて、何処か照れくさそうにアスナは差し出されたてを掴んだ。その時だった――

「騒がしいなぁ、一体なんだい――ってネギ君!? と明日…菜…君……?」
「へっ?」

がさがさと草木を避け、タカミチが姿を現す。場所が悪かったとしか言いようがない。タカミチが出てきたのは、ちょうどアスナの正面であり、追っかけ回された挙げ句のアスナのスカートは、膝の辺りまでめくれ上がっていた。
悲劇だった。カズマほどの至近距離ならまだしも、微妙に離れたその位置からは、アスナの秘所を守る下着と、その守護者・熊さんがしっかりと見えていた。
気まずそうに視線をそらす中年。視線に気づき顔をトマトのように紅くするアスナ。よく分からず事態の推移を見守るカズマ。

「……いっ――」
「い?」
「――いっやぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーーー!!!!」
「うおっ!」

臨界点突破。暴走モードに突入したアスナはその場から脱兎の如く逃げ出した。……カズマをタカミチに投げつけて。
とっさのことに反応できないタカミチ。――しかし、カズマは違った。教室の罠を教訓にして、教卓と同じようにタカミチを殴りつけ、速度を殺す。
倒れ込むタカミチの上に、カズマは座るように着地した。

「殴って悪かったな、俺もうまく避けれなかった」
「いいさ、これは罰だろうからね……」

悪びれる様子もなく謝るカズマに、タカミチは悟っているような様子で返した。怒ってはいないらしい。不思議なことに。

「何で、あいつ逃げたんだ?」
「……ネギ君、あの年頃の女の子には色々あるモノ何だよ」
「……そーなのか」
「そーなのさ」














ということで、二話目。予告通りラディカル・グッドスピード。一日に三話分も書くとは思わなんだ。
今日はぶっちゃけもう無理。平日も割ときついので、休日に期待してください。感想でパワーアップの可能性はなきにしもあらず。
何というか、はっちゃけているカズマ君。鬼畜である。進行が遅いが勘弁してもらいたい。
では、また。



[18705] If:超速生徒ミソラ!
Name: 仙水獏◆4a6ce410 ID:0d323c6d
Date: 2010/05/12 00:54
ラーディカル・グッドスピーーーード! どうも仙水獏です。今回は短編。
皆様の感想大変励みになっています。こんな風に限界突破する程度には。
さて、本編まだ一話目も終了してねぇ―だろ! という御怒りの声は封殺し、今回は短編なのです。
感想を書いてくれたも皆さんの言葉に応え、『超速生徒春日・C・美空!』始まりマース。









魔都・京都。古から、魑魅魍魎が跋扈すると言われたその土地で今、再び人と妖の戦いが始まっていた。満ちることの出来ぬ月だけがそれを静かに見つめている。

「あ~、もう! 切りが無いわね、こいつら!」
「アスナさん頑張ってください!」

百鬼夜行も相応しい、幾多の妖がたった二人の少女を囲み、次々と襲いかかる。
しかし、少女達も黙ってはいない。黒髪の少女は、自分の背より長大な刀を自由自在に振り回し、襲い来る妖共を切り倒し、もう一人の髪を二つにまとめた少女はハリセンといういかにも冗談のような、武器とも言えぬ武器を振り回し、それでも一撃で妖を屠っていく。
夜に舞う、妖と二人の少女。果たしてこれはいかな時代の演目か、観客がいたのなら、目どころか心まで奪われることは必死だった。
だが、いくら強いと言ってもそこはまだ年端のいかぬ子供達。疲れもすれば、油断もしないわけがない。

「きゃあ!」
「アスナさん!」
「ふん、いかにそのハリセンが我らを一撃で向こうに還すとしても、こうなってしまえば手も足も出まい」

ハリセンの少女――アスナを鴉の頭を持つ人型の妖が片手で持ち上げる。手を掴まれてはハリセンを振ることも出来ず、もう一人の少女――刹那が、悲痛な叫び声を上げる。

「お嬢ちゃん達には悪いが、此所で仕舞いや。ほれ、そこの神鳴流の嬢ちゃんもその太刀捨てぃ」
「くっ……!」
「はよせんかい! このお嬢ちゃんがどうなってもええのか!?」
「――イタッ!」
「くそっ――!!」

やはり人が妖に勝つことは出来ないのか、友を助けるために闘った少女達の志は此所で潰えたように見えた。しかし――。

「やれやれ、お前ら女の子には優しくしろってママには教わらなかったのかぁ?」
「――ぐぁ!?」

アスナの腕を押さえつけていた烏族がいきなり吹き飛ぶ。全員が目を向けると、そこには赤のサングラスを掛け、シスター服を着た少女が立っていた。
アスナはその姿に、何処か既視感を覚え問いかけた。

「み、美空ちゃん?」
「へっ?」

刹那が目を見開いて、シスターを眺める。同じクラスの春日美空かと言われると似ていないこともないような気がする。

「おいおい、今はそんなことどうでも良いだろう? お前らが今一番しなきゃいけないことは何だ? やれることがあるなら行動しろ! 此所は俺に任せて先に行け! アスカ! セスナ!」
「アスナよ!」
「刹那です!」
「ん? あぁ、済まんな、人の名前を覚えるのは苦手なんだ」

美空は鬼達へと向き直る。アスナと刹那はその威風堂々とした背中を見て、決意を固める。
後ろで二人が走り出したのを感じて、美空――否、最速のアルタ―使い、ストレイト・クーガーは笑みを浮かべた。そうだ、それで良いのだ、と。

「待てや、コラァ!」
「行かせねぇよ」
「あぁ!? お嬢ちゃん一人で何が出来るいうんや! 死にたくなかったらそこ退きぃ!」
「あぁ~?」

クーガーは、鬼の言葉に一つ息を吸い込んで――言った。

「大は小を兼ねるのか速さは質量に勝てないのか一人では大勢には負けるのか、いやいやそんなことは有り得ない速さを一点に集中すればどんな分厚い壁でも砕けるし誰よりも速く動けば一人でも千人をぶっ倒せる! 今からそれを魅せてやる! 脚部限定! ラディカル・グッドスピーーーーーーーーード!」

周りから幾つかの岩が消失する。そしてクーガーの足に先鋭的な脚甲が装備される。これこそ彼のアルタ―能力。最速の名を欲しいままにする最高のアルタ―。

「いいか、刻め! 俺の速さを!」

爪先で地面を軽く打ち付けながら、クーガーが叫ぶ。その仕草は、まるでスタートを待つレーシングカーのようだった。
――そして、爆音。地面が抉れたときには既にそこにクーガーの姿はない。周りを見渡しても何処にも姿はない。地面を踏み抜く音だけが耳朶に響く。

「衝撃のぉ――!」
「――!?」
「――ファー―ストブリットォー!!」

妖の一角が吹き飛ぶ。そこに立つのは一人のシスター。サングラスを指であげ直し退屈そうに欠伸をしている。鬼達は初めて彼女に恐怖を覚えた。この人間一体何をしたのかと。

「き、貴様! どんな小細工を使いおった!?」
「小細工ぅ? そんな物使っちゃいない」
「な、ならば、どうやって我らの前から消えたというのだ!?」

くだらない質問をされたとばかりにクーガーは、皮肉げに笑って溜息を吐いた。そしていかにも楽しそうに彼らに向かって語りかける。

「お前ら、この世の理はすなわち速さだと思わないか、物事を速く成し遂げればその分時間が有効に使える、遅いことなら誰でも出来る、20年かければバカでも傑作小説が書ける!有能なのは月刊漫画家より週刊漫画家、週刊より日刊だ、つまり速さこそが有能なのが基本法則! そして俺の持論だ!」

つまりクーガーは速く動いただけだと言いたいのだ。そんな馬鹿な話があるだろうか、魔力も気も使わず、目にも止まらぬ速さで動く人間などいていい物ではない。
しかし、そんな妖共の心境も無視して、またクーガーが消える。
一匹、また一匹と化物共が消えていく。攻撃する瞬間に姿を現したと思ったら、そこにはもういない。堂々とした暗殺のような攻撃だ。
鬼達は、闇雲に武器を振り回す。一撃でも当たればいい。そうすれば脆弱な人間などそれで終わりだ。
しかし、当たらない。最速の死神が妖を削っていく。

「クソッ! 何で当たらんのや!」
「ハッハー! 遅い遅い遅い遅い、遅すぎるぞォー! 全く持ってスロウリィー! 足りない、足りない、足りなすぎる! お前らに足りないモノ! それは~ 情熱思想哲学理念努力優雅さ勤勉さ! そして何よりもぉーーー!」
「――速さが足りないィィィィ!!」

気づけば辺りは死屍累々。立っているのはシスターただ一人。残念ながら、どいつもこいつも遅すぎた。次にくるときは全身真っ赤にペイントしてくればいいだろう。三倍だ。

「あぁ~、また、世界を縮めた……ァ!」

そんな中、一人恍惚としているシスターはこの上なく怪しかった。ふと、空が明るくなる。クーガーがそちらを見ると、光の柱が天に昇っているのが見える。

「ふむ、間に合わなかったか? いやいや、マソラ、俺はこう思っているんだ、友達とは最高なモノであると。日々を通じお互いを高め合い、時に拳で語り、時にお互いを慰め合う、そんなかけがえのない一生の宝物だと! だからあの子達はきっと何よりも速く彼処に辿り着き、友を救っているはずだと俺は信じているんだ!! 聞いてんのか、マソラ―、マソラーーーー!!」

シスターは叫びつつ、サングラスに手を伸ばし、外した。

「聞いてるって、クーガーの兄貴。ってか人の身体勝手に借りて、友達の危機に俺参上すんの止めてくんないっスか? 私の評価がマッハで下落してるんですけど」
「マッハ! ん~、良い響きだ!」
「……はぁ」

身体の支配権を取り戻した美空は、疲れたように溜息を吐いた。友達のピンチを救ってくれたことには感謝するが、絶対にばれてる。後々問い詰められることを考えれば、胃が痛くなる思いだった。

「おいおい、マソラ。溜息を吐くなよ、幸せが逃げちまうぞ?」
「……兄貴なら、追いついてとっ捕まえるんだろうね」
「あったり前だ! 全てのモノは速さに通ず! 生き急ごうが何しようが、常人の三倍で走り抜ければ密度も三倍、幸せに追いつく速さだって三倍だ! 遅くて良い事など何一つ有りはしないんだ! ん~~、ファンタスティッッ~ク!!」

喧しいサングラスを捨てていきたくなる衝動に駆られるが、こう見えても物凄いいい人だってのは分かっている。例え、「そうだ京都行こう」で京都、麻帆良間を十分かからず走破しようとも、だ。

「ま、良いか。面白いし」
「何が良いんだ? マソラ」
「前々からしつこく言ってるけど、美空だよ」
「おぉっ! 済まんなぁ、人の名前を覚えるのは苦手なんだ」
「ほぼ、身体をシェアしてる人間の名前ぐらいは覚えてよ……」
「ハッハー、それじゃ帰るぞ、マソラぁ! 合体!」

サングラスを装着する。身体の支配権は再びクーガーに移る。ラディカル・グッドスピードを発動させ、走り出そうとするクーガーに美空は問いかけた。

『兄貴ー、何で合体なの?』
「マソラ、俺はこう思っている、合体とは素晴らしい物だと。1+1が正に3にも4にもなる計算が通用しない強さ! ロボット無くして戦隊モノが語れないように、合体無くしてロボットは語れない! 少年の浪漫として無くてはならないファクターだ! だから俺は合体が大好きだ! 分かったかぁ? マソラーーー!」

妙なサングラスを拾ったのが運の尽き。こうして妙な兄貴分を持つ羽目になってしまった。しかしまぁ、こう言うのも悪くはないな、と風のように走りながら美空は思った。












――『クーガーのサングラス』 呪われたアイテム。着けると圧倒的な力を得られるが、度々身体を乗っ取られる。
とまぁ、今回は憑依と見せかけた呪いのアイテム『クーガー・サングラス』でした。
ちゃんとクーガー出来てるか不安だ。文句のある方は感想掲示板までどうぞ。
戦闘シーンも味気ない。いや、だって見えないじゃんクーガーの兄貴。と言い訳してみる。
ちなみに、カズマ編ではきっちり戦闘シーンを書く予定。こんなんじゃないので多少期待して欲しい。
書いてみて思ったが、クーガー書きにくい。戦闘シーンスピード任せだし。次は違う子でやってみよう。スクライドとは限らないが。
何時も通り。感想をくれると作者がラディカル・グッドスピードする。明日も一話あげたいから、みんな、オラに元気をわけてくれ。
ちなみに本編は暫く戦闘無し。一話が終わったら、図書館島編やります。惚れ薬は無し。カズマが作るわきゃねぇーだろ! って話。
それでは仙水獏でした。では、また




[18705] 三話
Name: 仙水獏◆4a6ce410 ID:0d323c6d
Date: 2010/05/11 13:32
あの後、顔を紅くしたまま戻ってきたアスナが恨みがましそうな目でこちらを見ながら、歓迎会がある旨をカズマに伝えた。

「歓迎会? わざわざそんなことやんのか?」
「何よ? 嬉しくないの?」
「別に、嬉しくねぇわけじゃねぇけどな」

歓迎会。一度ホーリーに入隊したときやったことはある。ただ、アレは打算があった上での行動であり、心の底から楽しめたかと言えば、どうだろうか。

「ツーか、お前あんだけ追っかけ回されて俺のことが怖くねぇのか?」
「ふ、ふん! 強いっていってもどうせガキンチョじゃない! 怖がる必要なんか無いわよ! ……それにアンタも必死だったんでしょ?」
「……まぁな」

実はそれほど必死でもなかった。別に立派な魔法使いになりたい訳じゃないし、オコジョになったところで、気に入らないモノは殴り倒すだけだ。
しかし、この少女、ア、アス、何だったか? はどうやらお人好しらしい。あそこまでやった人間を心配するとは信じられない。
顔を紅くしたアスナを見て、カズマはちょっとした笑みを浮かべた。悪くはない、全く持って悪くはないと。

「そう言えばアンタ、魔法使いなら惚れ薬とか作れないの?」
「はぁ? 何に使うんだよそんなもん」
「べ、別に良いじゃないの! 使えるの!? 使えないの!?」

物凄い剣幕に流石のカズマもたじろぐ、恋する乙女は何時だって無敵らしい。

「い、いや、読心術ぐらいならつかえねぇことも無いが惚れ薬は無理だな」
「何よ、使えないわね―。って読心術!? 心が読めるの!?」
「まぁな、……得意じゃねぇが」

最後にボソリと呟いた一言は、恋する乙女(笑)には聞こえていないらしい。真面目な話、補助系呪文は全く得意ではないのだ。何というか、柄じゃないというか、相性が悪いというか……。

「ならそれで高畑先生が、私のことどう思ってるのか心を読んできてよ!」
「……お前、タカミチが好きなのか?」
「な、何よ! 悪い!?」
「いや、どうでも良い」

墓穴を掘って好きな人を晒すマヌケをからかいながら、教室に到達する。
アスナに促され、ドアを開けると――

「「「「「ようこそ! ネギ先生!!」」」」」

鳴り響くクラッカー。舞い散る紙吹雪。予想していながらも割と大きな音量に、カズマは目を見開いた。
手を引かれる。引いているのは金髪の背の高い生徒――雪広あやかだ。

「さぁ、主役は席についてゆっくりと楽しんでください、先生」
「あぁ、すまねぇ」
「アスナおっそーい! どうせ忘れてたんでしょう?」
「危うく、記憶ごと吹き飛ばされそうだったけど覚えてたわよ……」

コップと食べ物を渡され、直ぐに飲み物をつがれる。至れり尽くせりとはこの事か。
食べ物一つとっても、昔―ロストグラウンド―とは、訳が違う。こんな上等なモノは中々食えたもんじゃなかった。満足感と、一人こんなものを食べているという罪悪感を何となく覚えた。

「あのー……ネギせんせい」

話しかけられて気づくと、目の前に一人の女生徒が立っていた。長い前髪で顔を隠している少女。さっきカズマが階段で助けた少女、宮崎のどかだった。

「あぁ? ん? お前さっきの……」
「はい、宮崎のどかです。あの、さっきはそのー、危ないところを助けて戴いて、その、あのー」

つっかえつっかえながら、一生懸命に喋り続けているのどかを、カズマも根気よく待つ。指が一定のリズムを刻んでいるのはご愛嬌だろう。

「これはお礼です――図書券……」
「おっ、あんがとよ」

意を決したように、のどかは手に持った図書券を差し出した。カズマはそれを受け取って懐に入れた。金券ショップに売っぱらえば、小遣いくらいにはなるだろう。……酷い話である。
騒ぎ始める女生徒達を尻目に食べ物をぱくついていると、脇腹をつつかれた。

「……んだよ」
「ほらっ! 高畑先生!」
「…………ちっ」
「舌打ちするんじゃないわよ! 早く行ってきてよ、お願いだから!」

流石に涙目で懇願されては、重い腰を上げないわけにも行かなかった。飲み物だけもって高畑に近づく。途中で気づいたらしく、カズマに向かって右手を挙げて挨拶する。

「やぁ、ネギ君。楽しんでるかい?」
「まぁ、飯は旨いな」
「それは良かった」

隣に座る。二人で生徒を眺めながら、静かな時間が流れる。気不味い雰囲気ではない。何処か眩しい物、美しい物を見るような表情を高畑は浮かべていた。

「みんなとは、仲良くやれそうかい?」
「知らねぇな。ま、どうにでもなるさ。……ところで、あのア、ア、アス、何つったか? まぁさっき逃げてった奴なんだが、どういう奴なんだ?」
「? アスナ君かい? 良い子だよ。ちょっと元気すぎるかもしれないけどね?」

耳打ちするように話しかけ、ついでに読心術を使ったカズマは驚愕したような表情を浮かべる。その顔を見て、高畑は訝しげな表情を浮かべた。その顔に微妙に軽蔑の色を読み取ったからだ。

「ど、どうしたんだい? ネギ君」
「いや、別に。あ、ちょっと近づくなよ、タカミチ」
「何でだい!?」

カズマはそさくさと、タカミチから離れる。有り得ない思考を読み取ってしまった。あの少女の恋などどうでも良いが、これは伝えても良いモノかどうか。

「どうだった!? 何か高畑先生私のこと考えてたりしてくれた?」
「……んー、あぁ、まぁな」
「何々!? 早く教えなさいよ! 勿体振ってないで!」
「……クマパン」
「…………は?」
「クマパンだとよ。良くわかんねぇが、何考えてやがんだ、あいつは?」

カズマにしてみればよく分からない変態的思考だが、当事者は違う。今日のスカートの下はクマパンだ。実に奇遇なことに。

「……もっ――」
「も?」
「もうお嫁に行けない―ーー!」

嫁に行く気があったのかと、密かにカズマが驚愕する中、アスナは何処かへと走り去っていく。何か自分にも責任があるようで後味が悪いので、カズマは後を追いかけることにした。……こちらを不思議そうに見ていたタカミチを一睨みしてから。






「何やッてんだよ」
「煩いわねっ! ほっといてよ!」
「あぁ!? わざわざ追いかけてきてやッてんだから感謝しやがれ」

階段の中段で座り込むアスナを見つけて話しかける。どうやらご立腹のようだった。

「――うぅ、もう駄目よ、絶対高畑先生に嫌われたー」
「んなの、わかんねぇだろうが」
「……分かるわよぅ。はぁ、ホントどうしよう……」

カズマの額に青筋が走る。メソメソうじうじされるとこの上なく鬱陶しい。

「……あれだ、何つったか。告白ッつったっけ? お前はそういう事したのかよ?」
「出来るわけ無いでしょうが! そんな恥ずかしいこと! ……それにもし断られたらどうすんのよ」
「弱ぇな」
「はぁ!?」

カズマの一言にアスナが激昂する。立ち上がってカズマの胸元に掴みかかる。

「弱いってどういう事よ!? ガキのアンタに何が分かるって言うのよ!?」
「わかんねぇな、お前の気持ちなんざ。だがこれだけは分かるぜ」
「何よ!? 言ってみなさいよ!」
「――戦って勝てねぇからって逃げ出す奴は負け犬だが、戦いもせずに逃げ出す奴はそれ以下だ」
「――っ!」
「やりもしないで勝手に結果を決めつけんじゃねぇ! 最初から決めつけてちゃ勝てるもんも勝てやしねぇんだよ!」

いつの間にか体勢は逆転して、今はカズマがアスナの胸ぐらを掴んでいた。カズマの強い言葉にアスナの心が揺れる。そうだ、自分は何を弱気になっていたのか。このままじゃ、このガキンチョの言うとおり、負け犬以下になってしまう。
カズマの手を振り払う。カズマが顔を見ると、そこには顔を紅くしてこちらを睨み付けるアスナがいた。

「そ、そんなことあんたに言われなくても分かってるわよ! 見てなさいよ! 絶対に高畑先生に告白してやるんだからーーー!」
「そーかい」

アスナが叫びながら走り去っていくのを、カズマは見送った。別に発破をかける気は無かったのだが、性分かうじうじしてる奴を見てるとつい、怒鳴りつけてしまう。
何となく、窓から空を見る。紅い夕焼け空が広がっている。空は何処から見ても一緒だ。ウェールズからも、此所でも、……ロストグラウンドでも。
暫しの郷愁。こんなセンチメンタルに浸るなんて自分らしくもないと思いながら、夕焼けから目をそらせはしなかった。

「アンタ、何やってんのよ! 主役がいないんじゃ盛り上がらないでしょ!? 早く戻ってきなさいよ!」
「あぁ、今行く」

さっき走り去ったはずのアスナが、カズマを呼びに戻ってきていた。切り替えの早い少女だ。もう暗い雰囲気は引きずってもいなかった。
歩き出す。何、何処だってやっていけるさ。今までだって、一人でやってきた。俺は俺の道を行くだけ。やれることをやるだけだ。とりあえず今日は、飯を食って寝よう。
そんな駄目人間のような思考を展開して、カズマはアスナの後ろをゆっくりと教室に戻っていった。
















と言うことで三話。カズマ君説教の巻。恋愛について語っているように見えて、その実自分のルールなところが味噌。
とりあえず更新。今日の夜は割ときついかも。更新が。
それでも書けっていう人は感想を書くと作者が有頂天。図書館島編に突入する。
実はこの話、資料が全くない為、後半は微かな記憶に頼ったオリジナルとかしている。
何か、作者が一番カズマっぽさに疑問を覚えているのだが、その辺どうなのか。
誤字脱字、カズマが変だよ―、原作と違うよ―、レベル下がってねぇかこれ、ってところがあれば、ご一報を。
では、また。





[18705] 四話
Name: 仙水獏◆4a6ce410 ID:0d323c6d
Date: 2010/05/11 23:56
「おはよー、アスナ-」
「おはよ、木乃香。……何やッてんの?」

朝の挨拶を返したアスナが木乃香の方を見ると、木乃香がソファーで眠るカズマの顔をじーっと覗き込んでいる。カズマが麻帆良に来て、早一週間が過ぎた。カズマは二人の部屋に来てからずっとソファーで寝起きしていた。

「ん-? ネギ君見とるんやけど、なんか変?」
「いや、見てて楽しいの?」
「えぇー、かわええで? ほら、アスナも見てみぃー?」
「ん-? ……まぁ、寝てればそれなりね」

眠っているカズマを二人で覗き込む。普段は不機嫌そうに歪んでいることが多い顔も、今は険がとれ、年相応な顔になっていた。

「あーん、ウチもこんな弟欲しかったわー」
「えぇっ!? このか本気? こんなクソ生意気なガキが弟だなんて、私は絶対嫌だけど」
「そこがいいんやん。それにネギ君は頼りになるしなー。ちょっと口が悪いのはご愛嬌ってもんやろ?」
「ふーん。こいつがねー?」
「あー、アスナずるいー! ウチもやるー!」

アスナがカズマの頬を引っ張る。餅のように滑らかで柔らかい感触。癖になりそうな頬だった。それを見て木乃香も負けじと引っ張り出す。

「うわー、プニプニやー」
「そーね。何か癖になりそ」
「……ちょ、止め―」

起きたのかとビクッとなる二人だが、どうやら寝言のようだ。カズマの初めて聞く寝言に、二人は耳を研ぎ澄まし――。

「ちょ、止め、ネカネ、そんな伸びねぇ! 伸びねぇって!! 千切れる千切れる! 止めろッつってんだろーがぁ!」

魘されるカズマを見て、聞かなかったことにした。二人の眼には、不憫な少年を想う一筋の涙が流れていた。





「何か、頬が痛ぇな。何だ?」
「え!? 気のせいよ、気のせい! ねぇ、このか!」
「うん。偶にはそういうこともあるんやない?」

何処か挙動不審な二人に、カズマは半眼を向ける。絶対コイツら何か知ってやがる、と。
しかし、問い詰めてる暇もない。只今、絶賛遅刻寸前大疾走の真っ最中。主に、人の頬に夢中になっていた二人組が原因だった。
走る三人に、周りから声が掛かる。

「ネギ君、おはよー!」
「やっほー♡ ネギ先生」
「よぉ、あー、えー、佐々木と和泉だったか?」
「……アンタ、まだ名前覚えてなかったの?」

呆れたようにこちらを見るアスナを華麗にシカトして、そのまま走り続ける。亜子とまき絵もそれに合わせるように並走する。

「この間のドッチボール凄かったね! ネギ君!」
「ホンマや、凄かったわ―ネギ君」
「そうか?」

話題に出たのはちょっと前に行われた、2―A vs 高校生のドッチボール対決。
最終的には2―A の圧勝だったが、最後に高校生がアスナにボールをぶつけようとしたのだ。そこで悲劇は起こった。

「まさか、ネギ君の殴ったボールがあの高校生に当たるとは思わんかったわ―」
「やり過ぎよ、アンタ。助かったのは助かったけど、相手の高校生パスタ吹いてたじゃない」
「知るか、自業自得だ」

何処までも不憫な女子高生だった。







六時限目終了後。
カズマは、廊下を日直の明石祐奈と、椎名桜子と歩いていた。

「そういや、期末テストがあったな……」

他の教室から伝わるピリピリとした空気に、カズマはふと重要なイベントを思い出した。学生にとっては一大事である。かくいうカズマも魔法学校時代には、一生懸命勉強は――しなかった。
そういや、教師襲撃して回答奪い取ってたか、と懐かしい思い出に浸る。まぁ、爺にばれてカンニング扱いで毎回零点だったが。後半は既にバレないようにする競技になってたような気がしなくもない。

「あー、そだね。近いんだっけ」
「来週の月曜からだよ、ネギ君」
「勉強してんのか、お前ら」

んーん、と元気よく首を横に振る二人を軽くこづく。自分も勉強は嫌いなので、煩いことは言わない。やりたい奴だけやればいいのだ。――こういう考え方が何気に生徒からの人気になっているカズマだった。

「だってー、うちの学校エスカレーター式だからあんまし関係ないんだよ?」
「ウチのクラス、万年学年最下位だけど大丈夫だしねぇ?」
「……便利だな、エスカレーター式」
「あっ、ネギ先生」
「ん?」

声のかけられた方を見ると、焦った様子でしずなが現れた。

「あの、学園長先生がこれをあなたにって」

手渡された封筒を見て、カズマは訝しげに眼を細めた。

「最終課題だぁ?」

いかにもめんどくさそうな響きのする書類を開けるのをカズマは躊躇った。だが、開けぬ訳にもいかない。
魔物退治とか、そう言うのだったら楽だな、と考えながら封を切ってカズマが中身を見るとそこには――。

「ネカネに土産買ってかなきゃいけねぇのか、……何が良いんだろうな?」

――次の期末試験で2-Aが最下位脱出できたら、正式な先生にしてあげる。

とりあえず、帰る準備をしようとカズマは買っていくべきお土産に思いを馳せた。










「ん~、何が良いんだろうな。ホントに」

カズマは教卓の前で悩んでいた。ホームルームまでまだ時間があり、生徒達も互いに遊んだり喋ったりしている。
バカの頂点が君臨するこのクラスに、最下位脱出させるのはまず無理だろう。トップクラスが三人でもフォロー不可な辺り、手の施しようがない。
別に、正式な先生になりたいわけでもないので、頑張らせる必要もないだろう。
ウェールズに帰るのなら、お土産が必要だ。爺にはペナントと木刀、ついでに提灯辺りがあれば上等だが、ネカネにはそうも行かない。下手なチョイスではキれられる。

「ま、聞けばいいか」

カズマは思考を切り上げて、ホームルームを始めることにした。





「と、言うわけで、誰かお勧めの土産はねぇか?」
「何の話よ!?」

アスナのツッコミが入るがスルー。些事だ。

「すいませんネギ先生」
「何だ、えー、ゆ、ゆ、……いいんちょ」
「あやかで結構ですわ、先生♡ いえ、テストも近いのでホームルームの時間を勉強会にさせてもらいたいと思いまして」

周りからのブーイングを封殺する辺り、流石いいんちょ。聞く耳を持っていない。

「え~、じゃあいいんちょ! 提案がありマース!」
「何ですか? 桜子さん」
「では!! お題は『英単語野球拳』が良いと思いまーすっ!!」

上がる歓声。ヒートアップする教室。狼狽えるいいんちょ。そんな混沌とした空間で一つの声が全員の耳に届いた。

「俺のグーで全員黙らせてやろうか?」
「「「「「「「すいまっせんでしたー!!」」」」」」

斜め四五度。一糸乱れぬ見事な礼だった。カズマは鼻を鳴らすと教室から出ようと歩き出す。

「ちょっと! 何処行くのよ、ネギ?」
「適当に問題プリント奪ってくる。待ってろ」

そのあと十分ほどでカズマは出所不明なプリントを持って帰り、2-Aの生徒に配って勉強を始めさせた。









「で、一体全体、此所は何処だよ? あぁ?」
「痛い痛い、痛いでござるよ。ネギ先生」
「あいたたたた! ゴメンゴメンゴメン、ゴメンってばー! 離してネギ―!」

似非忍者と、馬鹿な同居人に寝起きの不機嫌さでアイアンクローをかましつつ、後ろで様子を見ているバカブラック――綾瀬ゆえと、木乃香にカズマは現状の説明を要求した。

「その前に、二人を離してもらえないですか、ネギ先生。此所で貴重な戦力が減るのは好ましくないのですが……」
「せやでー、ネギ君。離したってや。アスナ動かなくなっとるし」

『瓜核のスイカ汁』と書かれたパッケージの飲み物を啜りながら言うゆえに、カズマは仕方なく二人の拘束を外した。ぴくぴくと震えているだけで二人とも起き上がらない。
木乃香の説明によるとこうだ。期末試験で最下位を取ると、大変なことになるらしい。だが図書館島には頭の良くなる魔法の本があるという噂なので、それに頼ろう。と言うことらしい。

「……俺がとやかく言えた義理じゃねぇから何にもいわねぇけどよぉ。俺、必要だったのか?」
「アスナが役に立つからどうしてもって」

余計なことを言ったバカを蹴りつける。「きゃん!」とか聞こえたが気にしない。

「で、在ったのか?」
「えぇ、アレです」

ゆえが指さした先にあるのは、二体の石像が守るように立つ祭壇。そこに一冊の本が安置されているのが遠くからでも見えた。

「ふーん、何でまだ取ってきてないんだ?」
「直前でアンタが起きてアイアンクローかましたんじゃない! ほらっ、みんなもたもたしてないで早く行くわよっ!」

アスナ復活。大声を出した挙げ句、みんなに発破をかけて、祭壇まで走っていく。落ちた。

「……お前ら、ひょっとしなくてもバカなのか? 罠ぐらいあるだろ普通」
「分かってんなら先に言いなさいよ!」
「テメェの無能を人の所為にするなよ」

むき~、と怒る猿を無視して、石像に向かい直る。何処かで見たことのある顔だ。

「爺」

ビクッと石像が身じろぎする。カズマはあの長い頭に詰まっているのは脳じゃないのかと、溜息を吐いた。この程度の鎌掛けに引っかかるのはどうなんだろう。絶対の自信でもあったのか。

「爺。これはお前の企画か?」

再び身じろぎ。図星らしい。一体この爺何を考えているのか。

「テメェ、次見かけたら絶対殴るからな」
「フ、フォォォォォォォ!!」
「――なッ!」

石像がいきなり雄叫びを上げたかと思うと、石で出来た槌を振りかぶる。カズマはアルターを構成し、気の触れた爺を迎撃しようとして――。

「はぁ!?」

地面を狙った一撃に、足場を破壊されバカレンジャーごと虚空に放り出される。
下は先の見えない、暗闇が大口を開いて待っている。
重力に引かれ、全てが落ちていく中、カズマは雄叫びを上げる。

「てっめぇーーーー!! 戻ったらその頭、変形するまで殴り続けてやっからなーーーー!!!!」
「……わし、はやまっちゃったかも。てへっ♡」

広い空間の中、石像は気持ち悪い老人の声で独りごちた。

















ラーディカル・グッドスピーーーーーード! ども仙水獏です。
と言うことで図書館島編。あまり長々やる気もないので、要点に絞って書いてみた。
何時も感想ありがとうございます。とこの場を借りて御礼。皆さんのおかげで作者がクーガー化している。
あとは何時も通り。何かあったら感想掲示板まで。正直帰ってから三時間で仕上げたら疲れた。
クオリティが下がってきているなどがあったら言ってください。ちょっとスピードダウンします。
では、また。

追記:瓜核かっこよすぎじゃね?



[18705] 五話
Name: 仙水獏◆4a6ce410 ID:0d323c6d
Date: 2010/05/16 08:21
前回のあらすじ
――トンネルを抜けると、そこは南国だった。

「殺す。あの爺、絶対殴り飛ばす。嘗め腐りやがって、クソが。やってやろうじゃねぇか、学園長室ごと吹っ飛ばしてやる」
「……あいつ何ブツブツ言ってるの、楓ちゃん」
「さぁ? 何かよっぽど腹に据えかねる事でもあったんでござろうな」
「ネギ坊主ー! 私と勝負するアル――っもが!?」
「駄目やでー、くーふぇ。アレは人殺しの目や」
「……ネギ先生も色々大変そうですね」
「どうしたのかな―、ネギ君」

糞爺もとい学園長の攻撃により、落下した先は不思議な空間だった。ゆえ曰く、未だかつて行って帰ってきた者は居ないと言われる幻の地底図書館。そもそも、そんな見にくい場所に本を置くな、とかそんなことはいってはいけないのだ。
気絶していたバカレンジャー+1が目を覚ますと、そこではカズマが呪詛を吐いていた。ビショビショに濡れた挙げ句、水を吸って重たい生徒を引き上げたのだ。爺のせいで。

「ネギく~ん? あっちに休憩所っぽいところがあったんだけど行かない?」
「…………行く」
「うん! こっちだよ、こっち!」

バカピンクこと佐々木まき絵に、声を掛けられ頭を冷やす。コイツらに自分の怒りをぶつける訳にはいかない。ぶつけて良いのは、あの糞爺だけだ。

「あっ! ネギ君こっちやで~」

ブンブンと両手を振ってカズマに声を掛ける木乃香。それを見て、カズマの怒りも収まっていくが――。

「凄いんやで! 食べモンもいっぱいあるし、何やよう分からんけどテキストも置いてあったわ」

――再燃。もしや、あの爺勉強させるためだけに、こんな所に叩き込んだって言うのだろうか。帰れるのかどうか心配する少女達の横で、静かにカズマの顔に青筋が浮かぶ。

「――いい。心配すんな。ここからは俺がどんな事があっても出してやる。だからお前らは勉強でもしとけ」
「ネギ……」

アスナを筆頭に全員が感動した面持ちを見せる中、カズマは一人出口を捜すために歩き出した。学園長への確かな殺意を抱いて。







「……ちっ、見つかんねぇ」
「ネギく~ん、ご飯やでー」
「分かった、今行く」

木乃香に呼ばれて、休憩所に戻る。そこには飯を前に突っ伏す奇妙な少女が数人いた。死屍累々という言葉が相応しい在り様だ。

「……何やった、木乃香」
「ウチ何もしてへんよ? 勉強教えてただけや」
「それだな」

どうやら脳が許容量を超えてオーバーヒートを起こしたらしい。容量はきっと2KB位しかないんだろうな、とカズマは頭から煙を吐く、器用な五人を見つめた。

「うぅ~、どうしようネギ君。このままじゃ私たち小学生に逆戻りだよ~」
「? 良くわかんねぇけど、お前らはやり直した方が良いんじゃねぇか?」
「……アンタ、他人事だと思ってぇぇぇぇ!」
「他人事だ」

恨みがましげにこちらを睨むアスナを切って捨て、とりあえずカズマは目の前に広がる食事に手を着けた。







「ネギくーん。ネギ君もアスナ達に勉強教えったってー」
「……まぁ、いいけどな」

食後の勉強会に、木乃香に頼まれカズマは教鞭を執った。勉強したいというのなら、見てやるのが筋だ。強要はしないが、求められたら教えるのがカズマのやり方だ。

「いいか? 此所はこうやってやんだよ――」
「あぁ、なるほどでござる」

カズマの授業は実はわかりやすいと評判だ。中学校までの過程しか押さえていない上に、本人も頭があまりよろしくないというのがその理由だった。
つまり、経験を生かしたやり方である。自分が同じところで苦労したから、相手の分からないところも何処が分からないのか理解できる。最初からやり方を理解できている人間は、全く分からない人間の分からないところがそもそも理解できない。何故分からないのかが分からないのだ。その点において、カズマの授業は下手な教師より分かりやすいものと化していた。
ただ、居眠りしていると口より先に手が飛んでくる授業、と割と恐れられてもいるが。

「寝るな!」
「痛いアル、ネギ坊主」
「使ってもない脳を休眠させるんじゃねぇ! 偶には使え! お前の頭は帽子を乗せる台か何かか? あぁ?」

全く油断も隙もないバカイエローを殴って覚醒させる。一度勉強がしたいと言った以上、甘やかすことはない。選んだら後戻りは出来ない、させない。

「ネギ~、休憩させて~。このままじゃ、あたしの脳が破裂しそうよ~」
「じゃあ、死ね」
「酷っ!!?」

図書館島の夜は眠らない。というか、暗くなる様子もない地下で、生徒達はカズマが納得するまで頭に知識を叩き込まれた。







三日後。

「やっぱねぇな。あの糞爺、何処に出口隠しやがった」

勉強は休憩中だ。叩き込みすぎてアスナ達が「ビバ=ノウレッジ!」などと叫びだしたときには、カズマも冷や汗を流した。ちなみにビバはイタリア語で、ノウレッジは英語だ。あいつらは甚だしい勘違いをしている。

「……マジでそろそろ洒落になんねぇぞ、あの爺――って、おぉ!」

滝の裏側をのぞくと、避難口の表示を発見。その先を見ると、幾つもの扉と、長大な螺旋階段が見えた。

「あの爺、マジでふざけてやがんな」

扉に何か張ってあるのを見ると、其処には問題文が書いてある。本当に学力アップのためにだけ此所に落としたのだと確信し、カズマの手に力が籠もる。
この拳を振り上げる先は、この外にいる。出口も見つけたことだし、生徒を連れて早く爺を殴ろう、とカズマはアスナ達を呼びに行こうとしたが――。

「きゃぁぁぁ~!!」
「――っ何だ!?」

まき絵の叫び声がした方へ走る。そこには――。

「ふぉっふぉっふぉっふぉっふぉ!!」
「いや~、ネギ君見ないで~!」
「てめぇ……!!」

生徒をぶら下げて楽しそうに笑う石像―もとい学園長がいた。
カズマは怒りに顔を歪めて、右手を前にゆっくりと出した。周りから地面と岩の幾つかが消失する。――ついでに石像の腕も軽く消失した。

「ふぉっ!!?」
「きゃ!」
「にんにん、大丈夫でござったか? まき絵殿」
「うん、ありがと楓ちゃん!」

カズマ以外全員がいきなり消えた石像の手に驚愕する中、カズマはアスナ達に声を掛けた。

「行け」
「え?」
「俺が始末をつける。この先の滝の裏に出口がある。そこから外に出ろ」
「ちょ、ちょっと! あんた一人で何が出来るってのよ!?」
「そうアル! ネギ坊主一人にはさせられないアル!」
「うるせぇ! テメェらはさっさと帰って勉強でもしてやがれ! こんなモン、俺一人で釣りが来る」
「――あぁっ、もうっ! 絶対無事に帰ってきなさいよね、ネギ! 行くわよ、皆!!」

魔法のことを知るアスナは、ネギの自身に何かを感じたのか、皆を引きずって滝の裏側へと駆けていく。そうだ、それで良い。カズマは学園長を睨み付けた。

「い、痛いぞい!? まるで手から先が消失したような痛みじゃあ!!」
「……へぇ」

まるで我が事のように騒ぎ立てる学園長を見て、カズマの顔に笑みが広がる。どうやら精神をつないでいるらしい。これはわざわざ外に出なくても爺を殴るチャンスだった。

「ぐ、ぐぅ。良くもやってくれおったなぁ―。このゴーレムが日頃の恨み―ゲフンゲフン、この地底図書に忍び込んだ罰を与えてやるわ―」
「……本音が透けてんぞ。爺」
「ふぉっ!? 黙らんかー!」

学園長が残った右手を振り上げた。瞬間、カズマが差し出した右手をゆっくりと握りしめる。ネギの髪が逆立つ。
――右手が三分割され、それを無理矢理戻すかのように、腕を締め付けるバンド状のモノが現れる。最後に全てを覆うのは――金色の、手甲。そして背中に顕現する三枚の紅い羽根。
現れたのは、ロストグラウンド時代から彼と共にある最高の相棒。望んで手に入れた訳でもない、だが何よりも確かな己の力。
アルタ―能力『シェルブリット』。カズマの持つ唯一無二の力だった。

学園長が右腕を振り落とす。カズマは跳躍しそれを避け、足下を通過する腕を踏み台にまた跳躍。石像から距離を取る。

「むぅぅ、ちょこまかと逃げおって」
「ハッ! 悔しかったら追いついてみろよ。ウスノロぉ!」

挑発するカズマに、追う学園長。カズマの顔は楽しそうに歪んでいた。なんと言っても久しぶりの闘争だ。相手が如何に物足りない木偶とは言え、闘争には変わりない。と心が躍った。
また、学園長が腕を振り上げる。次は消失した左腕。しかしながら、拳を失ったそれも、鈍器として使うには申し分のない威力を有しているのも確かだった。
――だが、遅い。遅すぎる。如何に大きくてもスピードが伴わないなら、避けることは容易に過ぎる。

「むっ! 何処へ行き追った!?」
「遅ぇっ!! いいか、糞爺! テメェに足りないモノ、それは! 常識思考理念自重気品謙虚さ思慮深さ! そして何より――」
「ぬぉ!?」
「速さが足りねぇっ!! ってかぁ?」

振り切った左の腕の先。土煙が腫れた頃には既に其処にカズマは居なかった。その時カズマは遙か頭上。拳を地面に打ち付け、飛び上がった先で発した言葉に学園長がやっと反応する。

「――衝っ撃のォォォォォ!!!」
「ちょ、ネギ君! ストップ! ストップじゃ!」
「ファーストッブリットォォォォォ!!!!!」
「フォォォォォォォォ!!!!?」

空中で一つ目の羽根が消失。緑の光を放つ推進力となり、カズマが加速する。その有り余る勢いで一回転しながら、カズマは学園長の頭頂にシェルブリットを叩き込んだ。
そのまま、カズマは股下まで石像を貫通し、石像は無残に砕け散った。

「これに懲りたら、同じ事はしねぇことだな、爺」
「…………」

返事はない。ただの屍になったようだ。学園長に声を掛けるのを止めて、カズマも出口へと歩き出した。

「後は学園長室吹っ飛ばせば終わりだな」

ぽつりと呟いた不穏な言葉は、風に流され誰にも届くことはなかった。






後日。バカレンジャー+1は当日テストに遅れたモノのテストを何とか完遂。遅れた五人の点数づけを現在不在の学園長が出来るはずもなく、新田先生の厳格な審査のもと、行われた。
結果、2-Aは学年一位いう素晴らしい快挙を達成し、カズマは正式な先生へと相成った。

「ん~、おいしぃ~!」
「あ、まきちゃん。何食べてんの?」
「あっ、アスナだ! アスナも食べる? ネギ君がくれたんだけど」
「へっ? なんで」
「何か、要らなくなったんだって。今から料金の徴収に行くって言ってたよ?」
「ふ~ん? まぁ、いいわ。私ももらおうっと。ん? 麻帆良饅頭に、ひよこやら何やら、何かお土産みたいな品揃えね」
「おいしぃからいいアル!」




学園長室。其処には全身を包帯で巻いた学園長と高畑がいた。

「学園長、いくら何でも大丈夫ですか?」
「ほっ! こんなんで死ぬほど脆くないわい。……それにしても、話に聞いてはいたが凄まじかったのぉ」

思い出されるのは、今までに見たこともない現象と、顕現した力。
一撃で破壊された石像を学園長は思い返し―――、目の前のドアが吹っ飛んだ。

「爺! 無駄になった土産代寄越せ!」
「その前に治療費くれんかのう。ついでに今壊したドアの修繕費」
「あぁ? 治療費だぁ? 何、寝ぼけたこと言ってやがる俺はアンタなんか殴っちゃいねぇぞ?」
「むぐぅ……」
「ドアもあれだ、学園長室ごと吹っ飛ばさなかっただけ感謝しろ。敬老精神って奴だな」
「お主が一度でも老人を敬ったのか?」
「アンタは、敬われる老人なのか?」
「むぐぅ……」

その会話を端から見ていたタカミチ――頭に包帯を巻いている――は、カズマにやんわりと話しかけた。

「それくらいにしといてくれないか? ネギ君。学園長が気の毒だし、土産代は僕が立て替えよう。ついでに、言ってくれれば問題のプリントぐらいあげるから、人を襲って奪うのは止めてくれ」
「分かった。この前は済まなかったな、タカミチ」
「まさか、校内で後ろから殴られるとは思ってなかったよ……」

今日も学園内は概ね平和らしかった。











偶には皆さんご一緒に。
ラーディカル・グッドスピーーーーーード! どうもまた世界を縮めた仙水獏です。昨日より若干早い投稿。
初戦闘カズマ君。BGMはアニメ一話 VS NRハンマーの時のイメージでお願いします。わかんない人は聞いてね。作者は割とあのBGMは好きだった。
初戦闘どうだったでしょうか?今後の参考にするためご意見ご感想ヨロシクお願いします。……うちの子、魔法つかわねぇなぁ。
後は何時も通り。作者をクーガーにしたい方は感想掲示板までご足労願います。

あと、これからのことですが、他スクライドキャラの登場は本編では予定しておりません。理由は単純に書きにくいから。みんな単独行動するから視点代わりまくりですよ。
かなみはちょっと考えたけど微妙なところ。成長したかなみが来て、ネギカズマを色んな意味で可愛がるのを想像した作者は一片死んだ方がいいと思った。

では、また。



[18705] 六話
Name: 仙水獏◆4a6ce410 ID:0d323c6d
Date: 2010/05/15 13:25
「眠ぃ……」
「ちょっと! しゃきっとしなさいよ、今日から新学期なのよ?」

期末テスト終了後の春休みも早々と終わりを告げ、今日からは新学期。アスナ達は三年生に。カズマは正式な教師となり、新学期を迎えていた。
春休みの怠惰な生活が抜けないのか、カズマは大きな欠伸を零した。

「ネギ君、ネクタイちゃんと締めなあかんよ?」
「……かったりぃ」
「またそんなことゆうて―、ほら、じっとしぃ」
「……分かった。分かったから止めろ」

スーツを完璧に着崩したカズマに、直そうとした木乃香が近づくがカズマは直される前に自分で直すことにした。

『次は麻帆良学園中央――』

「ほらっ、行くわよこのか!」
「ネギくーん、遅れへんようにな―?」
「あいよ」

また、騒がしい日常が始まる。







「三年!」
「A組!!」
「「「「「「「「ネギ先生ーっ!!」」」」」」」」」
「……うるせぇな」

盛り上げようと掛けた声をカズマが冷たく返しても、クラスの雰囲気に変化はなかった。どうやら皆慣れたらしい。暴言に慣れるとか、嫌な慣れもあったモノである。

「残念ながら、もう一年テメェらの子守だ。今年は大人しくしてろよ?」
「ネギ君の方が年下なのに生意気ー」
「精神年齢はお前らより遙かに上だ」
「えぇーーーー?」

全員から疑いの声が上がるが、事実である。実際精神年齢は23歳くらいだ。改めてカズマは教室を見渡す。完璧に名前が分かる生徒はバカレンジャーと木乃香ぐらいだった。あまり親しくない生徒は名字すら覚えていない。

「ん?」

懐かしい視線を感じる。敵意だ、呆れるほどの敵意がその視線には込められている。まるであの男のような強さを感じる視線だった。
そちらに目を向けると、一人の少女がこちらを睨み付けているのが見える。長い金髪を持つ、人形のような少女だった。
睨み合う。その中心点で火花が散る様さえ幻視する、そんな睨み合い。
他の生徒達がワイワイと騒ぐ中、其処だけは空気が違った。それは、闘争の空気だ。
――先に目をそらしたのは、少女だった。最後にニヤリとその姿に似合わぬ、好戦的な笑みを浮かべて彼女はカズマを視界から外した。
それを見たカズマの顔は、これから来るやも知れぬ闘争の空気に、楽しそうに歪んでいた。







保健室に横たわる一人の少女の横で、カズマは何をするでもなく座っていた。
新学期の身体測定が行われている最中、保健委員の亜子からまき絵が外で倒れていたことを聞き、元々何もやることの無かったカズマは保健室へと赴いた。

「桜通りねぇ……」
「…………」

気持ちよさそうに眠りこけるバカピンクを前に独りごちる。どうやらこのバカ、桜の下で眠っていたらしい。酔っぱらいか何かか、コイツは。

「まきちゃん、大丈夫!?」

他の生徒が駆け込んでくる。保健室で騒ぐのは戴けないが、まき絵が起きる気配もないので今は放っておく。
あーでもないこーでもないと騒ぐ生徒達の話し声の中で、一つの声が何となくカズマの耳の中に残った。
――曰く、桜通りの吸血鬼と。







夜、桜通りを一人の少女が歩いている。
彼女の名前は宮崎のどか。常にいる友達とは用事があるから、と別れていた。
風が桜の枝を揺らす。月下、月明かりの下に輝く桜は妖しく、美しい。散っていく花びらは、風に舞い何処かへと流されていく。

「か、風強いですね―……ちょっと、急ごうかな」

本屋のあだ名から親しまれる彼女は、その名の通り読書家だ。なので割と博学でもある。
桜には色々な逸話がある。特にポピュラーで良く聞く話、曰く桜の下には死体が埋まっている、だ。
そんな寒々しい話もあり、自然のどかの足は速まった。一度想像すると、それは際限なく膨らむ。
もしや、桜の下には本当に死体が埋まっているのではないだろうか。もしや、桜は命を吸って咲くから、人の心を奪うまでに美しく咲くのではないだろうか。
――そして、次に桜の木の下に埋められ、命を吸われるのは、自分なのではないだろうか?

「……」

足はもう走り出さんばかりの速さになっていた。恐怖だ。夜の桜は美しさだけではない、そんな凄味があった。

「……?」

風が止む。まるで何かの登場を促すかのように。
後方から指した影に、のどかは恐る恐る振り返る。
遙か高く、街灯の上に佇む小柄な影。黒一色のその何かは、とてつもない不吉をのどかに連想させた。

「ひっ……!」
「宮崎のどかか、悪いが少しばかり血をもらうぞ」

影はマントをはためかせ、飛んだ。大型の蝙蝠のようなシルエットは、のどかに覆い被さらんとして――

「何やッてんだ、こらっ!」
「――むっ!」

――横から飛んできたカズマに蹴り飛ばされる。しかし、大したダメージもないらしく軽く下がったところで止まる。その間にカズマは守るようにのどかの前へと立つ。

「――今晩わ、先生。いい夜だな。月明かりが素敵な夜だと、そうは思わんか?」
「生憎、学が無くてな。そう言うのは分かんねぇ」

――二人の間に風が走る。影の被っていた黒の三角帽子が流される。代わりに現れたのは、月光に映える金の髪。夜に浮かび上がる人形のような白い肌。

「テメェ、こんな夜中に何やってやがる?」
「知りたいか、先生? ならば私を捕まえてみるがいい!!」

そう言って、エヴァンジェリン―エヴァは夜の空へと飛び上がる。その手にはフラスコと試験管が握られていた。

「氷結・武装解除!」
「ちっ!」

空中でぶつかり、混ざり合った薬が魔法の触媒としての効果を発揮する。凍てつくような冷気が発生し、カズマとのどかに襲いかかる。

「――っちぃ!」

カズマが右手を掲げると、其処に空気の盾が発生、しばし拮抗するが遂に負けて四散し、カズマの上半身の衣服が吹き飛んだ。辺りは盾と冷気の衝突による余波で煙に包まれている。

「? あいつの息子にしては障壁が薄いな、これぐらいの魔力を抑えられぬとは」
「テメェ、人の一張羅を……」

一着しかないスーツをぶち壊されたカズマが声に怒りを乗せる。

「何や今の音!?」
「ネギ!?」
「アスナに木乃香か!?」
「フフッ」

カズマが急に現れた二人に気を取られている間に、エヴァは辺りの煙に紛れる。

「お前ら、そいつを頼む」
「え、ちょっとネギ君……」

それを見てカズマは走り出す。いや、走るなんてモノではなく、一瞬の轟音の後。完璧に二人の前から消え失せた。

「……其処か」
「!」

後ろから追ってくるカズマを見つけ、エヴァは顔を引きつらせた。

「なんつー強引な瞬動もどきだ。身体能力強化の呪文で足の強化に使ってる魔力を無理矢理爆ぜさせて加速しているとは……」

やっぱりあの血族はバカとでたらめだ。と一人呟き、エヴァは空へと躍り出た。
黒色のマントが翼と化し、エヴァは空へと浮かび上がった。

「浮遊術だぁ? やるじゃねぇか、この野郎!」

そう言ってカズマは跳んだ。木々を足場にして、更にエヴァへと迫る、迫る、迫る!

「! 飛ばないのか、坊や!? その背の杖は飾りか?」
「飾りだ!」

言い切るカズマに絶句するエヴァ。しかし、両者スピードを上げ、麻帆良の夜を飛び回る。
このままでは埒が開かない。カズマは手の内のカードを一枚切る。さぁ、埒を開けよう!

「シェルブリットォ!」

周りの木々の枝が分解される。そして、カズマの右手で再構成を果たし、出来たのは金色の手甲と、三枚の紅き翼。

「!? 坊や、それは一体何だ!?」

今まで見たことのない現象。そして急にカズマに装備された手甲にエヴァの動きが止まる。カズマはその瞬間に足に魔力を多量に送り込み、跳躍。空高く飛ぶエヴァと同じ高度まで飛び――。

「ッオオォォォォォォ!」
「――!」
「喰っらいやがれ!!」
「――ぐっ!?」

エヴァが一撃をもらい、建物の屋上へと叩きつけられようとしたその時。一つの影が空中でエヴァを受け止め屋上へと着地した。

遅れて着地したカズマがその人物を見据える。何処かで見たような顔だった。

「くっ、やるじゃないか坊や。やられたよ」
「テメェの仲間か?」

エヴァの賞賛を無視して、カズマが聞く。エヴァの横で従者のように控える人物。それは――。

「ん? あぁ、紹介しよう。私のパートナー、3-A出席番号10番、絡繰茶々丸だ」
「あぁ? ウチのクラスの生徒かテメェら?」
「貴様、自分のクラスの生徒を未だに把握していないのか!?」

驚愕し、エヴァが叫ぶ。しょうがないだろう、人の名前を覚えるのは苦手なのだ。

「最初は襲って血を呑むだけのつもりだったが、貴様には聞きたいことが出来てしまったな。その手甲と翼のことだが」
「テメェ、蚊の親戚か何かか?」
「蚊だと!? あんな虫けらと吸血鬼である私を一緒にするな! 不愉快だ」
「じゃ、ダニだな」
「なにぃ!?」

地団駄を踏んで暴れるエヴァ。それを諫める絡繰。どうにも緊迫感が欠如している。

「くっ、まぁいい! 茶々丸、あいつを捕らえろ! 血を戴いて、さっさとこのうざったい呪いを解くんだ!」
「イエス、マイマスター」

命令に従い、カズマへと駆け寄る茶々丸。しかしカズマも負けてはいない。近接戦闘こそ真骨頂だ。
茶々丸が左のストレートを打ち、カズマはシェルブリットで逸らしながら右のミドルキックを放つ。目まぐるしく変わる攻防、千日手にも近いような状況に近づいてきた時、カズマの横合いから氷の魔弾が飛んでくる。

「ちぃ! ――がはぁ!!?」
「すいませんネギ先生」

シェルブリットで魔弾を叩き落とした時の隙を突かれ、強烈なボディーブローを腹に喰らう。軽いカズマはそのまま後方に吹き飛んだ。

「まさか茶々丸が此所まで手間取るとは思ってもいなかったぞ。やるではないか坊や」
「……うるせぇ、負けちゃ意味がねぇんだよ……!!!」

カズマがよろけながら立ち上がる。それを見てエヴァは笑みを深めた。面白い小僧だ、と。

「立ち上がってどうする、坊や。今この状態を打破することが、貴様に出来るとでも言うのか?」

その言葉を聞いて、カズマが叫ぶ。

「出来る出来ないが問題じゃねぇ! やるんだよ!!!」

背中の羽根が一枚消える。吹き出す緑色の光。それは突き破るための力。

「!! 茶々丸、避けろ!!」
「遅ぇっ! 衝撃のォォッォ!」
「! 回避不可。防御行動を行います」

茶々丸は両手をクロスさせ、カズマの拳を防御しようとする。しかし、足りない。その攻撃を防御するのにはそれではまだ足りなかった。

「ファーストブリットッッ!!」
「!!!」

茶々丸の腕がひしゃげる。だが、それでもまだ勢いは止まらない。カズマは拳を振り切って、茶々丸をはじき飛ばした。

「ぴぎゃ!?」
「あぁ、すいません。マスター」

はじき飛ばした先には、ミニ吸血鬼。割と重い茶々丸に下敷きにされじたばたしてる様は滑稽に過ぎた。

「くそ、よくもやってくれたな……。大丈夫か茶々丸?」
「腕以外に特に問題はありません。腕も家にスペアのモノがあるので直ぐに交換可能です」
「そうか。先生、今日の処はこれで勘弁してやろう。精々夜道には気をつけることだな! 行くぞ、茶々丸!」
「ネギ先生、それでは」

カズマは、彼女たちが去っていくのを黙って見送った。仮にも生徒だ、こちらから襲っては不味いだろう。
――だが、彼女たちがまた自分の前に壁として立ちふさがるのなら――

「……打ち砕くだけだ。この自慢の拳で」

そう呟いて、カズマもその場から立ち去っていった。
















ども、仙水獏です。やっとでけた。とりあえず投下。
後は何時も通り。感想掲示板まで。あと、戦闘シーン味気なくないですか? それともこんなモンでしょうか?
あと、嘘次回予告だけしておく。



――大きいモノ、固いモノ、雄々しいモノ
それは龍宮真名の”ビッグマグナム”である
龍宮の弾丸とネギの拳の衝突と衝撃が
学園を大きく震わす
二人が漢の太さを競う

「実は龍宮はふたなりだったんだ」
「な、なんだってー!?」

こんな感じ。何? シュールすぎて好きじゃない? すんまそん。



[18705] 六・五話
Name: 仙水獏◆4a6ce410 ID:0d323c6d
Date: 2010/05/15 21:22
吸血鬼との邂逅から翌日。
あの後、帰ってからアスナに何があったのかと問い詰められ、それをのらりくらりと躱した。
誰にも話す気は無かった。自分の道は自分で切り開くべきだと、そう考える。
授業をするために教室に入ると、あの吸血鬼はいなかった。ただ、従者だけが何時も通り何事もなかったかのように座っている。

「絡繰? エヴァンジェリンだったか? はどうした」
「ハイ、マスターは欠席です。ネギ先生」
「……本当は?」
「屋上でサボタージュです、ネギ先生」

それを聞いてカズマは黒板へと向き直り、白墨で黒板に文字を刻んだ。

『自習』

「以上」
「えっ!?」

それだけ言って、カズマは教室の外へと出て行く。生徒全員が呆然とする中で、アスナは一人カズマに向け、心配げな視線を送っていた。







屋上。其処では一人の少女が、麗らかな春の日差しの下で眠っていた。
金の髪は春風に流され、陽光に照らされながら美しく煌めいている。
柵に寄りかかりながら寝息を零す彼女は、まるで一枚の絵画のようだった。が――

「みぎゃっ!?」
「人様の授業放っぽといて、気持ちよさそうに寝てんじゃねぇ、このタコ助」

―― 一人の介入者の手で、その光景は一瞬にして崩された。

「なななな、何をする!? 痛いだろ―が!?」
「殴った俺はもっと痛いんだぜ、心が」
「嘘を吐くな、嘘を!」

フーッ! っとまるで子猫のように威嚇してくるエヴァを無視して、カズマはその隣に移動し、柵に寄りかかった。

「……おい、先生。授業はどうした?」
「自習だ。偶にゃあいいだろ。ところで、生徒。授業はどうした」
「自主休業だ。偶にはいいだろ」
「テメェはいつもだ、馬鹿野郎」

二人で空を見上げたまま、話を続ける。不思議な空気だった。昨日敵対していたというのに、変な気負いも全くない。

「……坊や。自分を襲ってきたモノに話しかけるなど、一体どういう了見だ」
「……テメェはなんで俺を襲った?」

カズマが聞くと、エヴァは不機嫌そうな面持ちに変わる。彼女は一呼吸置くと忌々しげに語り始めた。

「私はこの学園から出ることが出来ない。それこそ一歩もな。なぜだか分かるか坊や?」
「……俺が知るか」
「呪いだ。呪いなんだよ、坊や。私はお前の父に敗れ、情けなくも魔力を封じられ、この学園に縛られている……。もう十五年も私はこの学校で無意味に学生を続けているんだ」

父。それを聞いて何となくカズマは背に背負う杖を撫でた。六年前にこの杖を渡し、去っていった男。父と言われてもカズマにはなんの感慨も湧かないのも確かだった。

「……で、それを聞いて貴様はどうするつもりなのだ? 命乞いでもするか、それとも愛しい父の尻ぬぐいのために己の身でも捧げるか?」

何処か自嘲気味に笑いながら、エヴァはカズマへと問いかけた。

「父親? 肉親だぁ? そんなモンはテメェと俺との喧嘩にゃ関係ねぇ。覚えておけ、吸血鬼。確固たる信念は時に肉親の情に勝るっつう事をな!」
「――ほぅ?」
「テメェは俺を襲い自由になる道を選び、俺はそれを叩き潰す道を選んだ。その二つの道がぶつかったのなら! ――闘うしかねぇだろうが!」
「――ハハッ、ハハハハハハ! 言うじゃないか、坊や。貴様、このエヴァンジェリン・A・K・マクダウェルに! 偉大なる悪の魔法使いに! この闇の福音に! 勝てるつもりなのか?!」
「やるさ、やってやる」
「――ハッ、それならやって見せろ小僧。お手並み拝見と行こうじゃないか」

そう言ってエヴァは立ち上がり、屋上から去っていった。その顔に楽しそうな笑みを浮かべながら。









――我が弟、ネギへ。
『拝啓、春の日差しも穏やかな今日この頃。如何お過ごしでしょうか?
そちらで貴方のような人間が迷惑を掛けていないか、私はとても心配です。
学園長を殴っていませんか? 気に入らない同僚を殴っていませんか?
言うことを聞かない生徒を殴ってはいませんか? 学校を壊してはいませんか?
盗んだバイクで走り出したりは流石にしないと私は信じています。
口うるさいようですが、別に殴るなとは言っていないのです。やるなら上手くやりなさい。
さて、こちらの近況をお話しすると、アーニャは上手くやっているようです。貴方と違って一ヶ月に一回連絡もくれます。貴方も連絡は取りなさい。
私は、貴方がいないのでとても楽です。苦情はないし、治療費の請求も、建物の修理費の請求書も最近は全くありません。嬉しい悲鳴が上がりっぱなしです。あっ、少しは寂しいのも本当ですよ?
校長は、惚けてしまわないのか心配なほど気が抜けています。色んな意味で孫が生き甲斐だったようですね。早く帰ってきてあげてください。お爺様に迷惑を掛ける分には一向に構いません。
あっ、そう言えば貴方が昔、助けたオコジョが――――――。』

「長ぇ!」
「アンタのお姉さんって……」
「黙れ! 少し頭が可哀想なだけだ!」
「いや、アウトでしょ。それ……」


オコジョが不和を呼び、不和が戦いを呼び、戦いが悲しみを呼ぶ
その中で芽生えた友情も、愛も、光のなかに溶け込むしかないのか
行くはオコジョ
来るはオコジョ
すべてオコジョ













……俺が遅い…! 俺がスロウリィ!!
どうも仙水獏です。実はこの台詞が使いたいためだけに更新を遅らせました……嘘です。
だいぶ展開すっ飛ばさざるを得ないので、此所で切り。中途半端さ加減も否めないが、皆カモに大して思うところがあるらしいので考えさせてくれ、もうちょい。
後は何時も通り。感想掲示板まで。次の話は次回予告通り。



[18705] 七話
Name: 仙水獏◆4a6ce410 ID:0d323c6d
Date: 2010/05/16 20:37
「おぅ! ネギの旦那ぁ。久しぶりじゃねぇか!」
「あ? テメェ……。か、カ、カ?」
「アルベール・カモミールだ、旦那! 旦那に助けられ幾星霜! 下着ドロがばれて旦那にボコにされてから早三年! この漢、アルベール・カモミール! つい四日ほど前に出所して、その足で旦那のお手伝いに来た次第!」
「い、イタチが喋って……!?」
「あぁ? オコジョが喋っちゃ悪いってのか姉ちゃん? あぁん!?」

ファンタジーがやってきた。……随分柄の悪いモノだったが。








「ね、ネギ? イタチが喋ってるわよ!?」
「イタチじゃねぇ! オコジョだ! ネコ目(食肉目) ネコ亜目(裂脚亜目) イタチ科 イタチ属っつう意味じゃ間違っちゃいねぇが、其処だけははっきりさせとかなきゃいけないな、姉ちゃん。……俺っちたちにも安いモンだが、プライドがあんのさ」
「えっ、あぁ、ゴメン……ね?」
「いいさ、慣れてらぁ」

オコジョに謝る女子中学生。シュールな光景だった。割と真面目に謝っている辺り、アスナの素直さが現れている。

「で、何しに来やがった。あ、あ、ア?」
「……もうカモでいいぜ、旦那」
「で、何しに来た。カモ」

そうカズマが聞くと、カモは正座をして、手を前に突き頭を下げた。……実に器用なオコジョである。

「おう! 出所して直ぐ、旦那の家に挨拶しに言ったら旦那は日本で修行中だって姐さんが言うじゃねぇか! こりゃ、俺っちを更正させてくれた恩を返すチャンスだと思って此所まで駆けつけてきたわけよ! つう事で旦那! アンタの修行の手助けをさせちゃくれねぇか!?」
「帰れ」
「……つれねぇなぁ、旦那」

真っ白い頭を項垂れさせて、カモは呟いた。ウェールズから遙々此所までやって来て、コレはないだろうと思う。ここに来るまでの様々な障害を思い出す。
猫との闘争。犬からの逃亡。鷲との壮絶な戦い。飛行機への潜行。麻帆良への進入。その全てに打ち勝って、カモは此所に立っていた。……このオコジョ、伊達じゃない。
とりあえず、折れるまで頼み込んでみよう。とカモは新たな戦いを決意した。








「行くぞ、カモ」
「合点、旦那ぁ!」

あれから二日。遂に折れた。というのも、カモが問題を起こさなかったに他ならない。
本当に下着ドロからは足を洗ったらしかった。まぁ、仮にしていたら、今頃閻魔に説教を受けているだろうが。
やる気もあるらしいので、とりあえず使い魔にしてみたカズマだった。時給は250円だ。

「お早う、先生」
「……」

声を掛けられ、カズマはそちらに顔を向けた。
其処に立っていたのは予想通り。吸血鬼エヴァンジェリンとその従者、絡繰茶々丸だった。

「ククッ、返事ぐらいしたらどうだ小僧。それとも何か? 不良生徒には掛ける言葉もないと言うことか?」
「オハヨーゴザイマスゥ」

カズマの棒読みの挨拶にエヴァは再び笑って、身を翻した。そして、後ろを向いたままカズマへと宣告する。

「先生、やり合うのはまた今度。学園が闇に呑まれる日にしよう。舞台は学園都市の果ての橋。それまではお預けだ。……まさかとは思うが、一度吐いた唾は飲み込むなよ? 小僧」
「それでは失礼します、先生」

歩き出した主人に従者は追従し去っていった。残されたのは、獣と教師と女子生徒。

「何か面倒事に巻き込まれてるんじゃないでしょうね、ネギ」
「……テメェにゃ、関係ねぇ」
「――なっ! 関係ないって何よ!? いいわよ! 勝手にすれば!?」
「あぁ、勝手にするさ。ずっとそうしてきた。だからこれからもそうする」

肩を怒らせ、走り去っていくアスナに、カズマはそう呟いた。その言葉は彼女に届くことはなく、風にながれて消えた。

「……いいのか? 旦那」
「いいも糞もねぇ。こりゃ、俺の喧嘩だ。誰にも邪魔させやしねぇ」
「素直に一般人は巻き込めないって言やぁいいのに……。不器用だねぇ、旦那」
「うるせぇ、ひねり潰すぞ」
「おぉ、怖っ! おっと、冗談だよ、冗談。ところで、その喧嘩には俺っちも混ぜて戴けるんで?」
「当たり前だ、役に立たなきゃ捨てるからな。ま、期待はしてねぇけどな?」
「……言うじゃねぇか、旦那。まぁ見てろって、オコジョ妖精の本気って奴をよ」
「ハッ、テメェも中々吹くなぁ。カモ」
「だろ? さぁ、それじゃ情報収集だ。師曰く『敵を知り、己を知れば、百戦危うからず』だぜ、旦那」
「……どういう意味だ?」
「……学がないねぇ、旦那は」









「オイオイオイオイ、真祖の吸血鬼って……。半端ねぇぞこりゃ。旦那、アンタ喧嘩を売るにも相手を良く見てだなぁ……」
「違ぇ! 今回はあっちからだ!」
「……うそーん。旦那ぁ、俺っち帰っても良い?」
「まぁ、骨だけならイギリスに送り返してやってもいいけどな」
「冗談だから拳を降ろして! 旦那!」

エヴァンジェリンのデータを眺めて、カモが冷や汗を流しながらカズマに声を掛けた。賞金600万$は実力に裏打ちされた値段に違いなかった。なるほど、あの無駄にでかい態度も伊達じゃないらしい。

「でもよぉ、正直なところどうするつもりだい? 俺っちとしちゃ、敵戦力の各個撃破をお勧めしちゃうんだけど……」
「嫌だね」
「だろぉ? そもそも二対一ってのがキツイんだよなぁ。どうだい旦那、此所はいっちょ俺のお小遣いと戦力アップのために仮契約でも?」
「白いオコジョの毛は重宝されるらしいぜ?」
「冗談が通じねぇよなぁ、旦那は」

乾いた笑いを漏らしながら笑っていたかと思うと、急にカモは真面目な顔を作る。

「――じゃあ、正面突破しかねぇな。一人一殺だ。コレが一番簡単だろ」
「いいねぇ。シンプルで分かりやすい」
「……この作戦には問題があるんだ、旦那」
「なんだよ?」
「なんと、俺っちが一人担当する計算だ」
「……できんのか?」

カズマが疑わしげに聞くと、カモは不適な笑顔を浮かべる。

「寝惚けたこと言ってんじゃねぇよ、旦那。俺っちはアンタの手助けをするために此所に来たんだ。それに――」

更にカモはニヤリと笑った。自慢げなムカツク顔だった。

「――出来る出来ないじゃねぇ、やるんだろ?」
「――っ! ……ハッ、違ぇねぇ」

二人は笑った。なに、何とかなるだろう、と。やってやるさ、と。二人は暫く笑い続けた。








「で、何で俺たちは絡繰をつけているんだ?」
「言ったろ、旦那。敵を知り、だよ」

こそりこそりと、電柱の影に隠れながら二人― 否、一人と一匹は、絡繰茶々丸の後をつけていた。
近くの親子に注視されているのにも気付いていないようだった。

「ねぇ、お母さん。あのお兄ちゃん何やってるの?」
「シッ! 見ちゃいけません!」



~三十分後~



「……いい奴じゃねぇか」
「あんな子を殴ろうだなんて、旦那鬼畜!」

良い子だった。子供の風船を取ってやり、老人を担いで歩道橋に上り、川で流される仔猫を助けてやる素晴らしい生徒だった。
とりえあずカモを殴ッて置いた。各個撃破を主張したのが誰だったのか覚えていないようなので、思い出させる意味も含めて。ギャーギャー煩いが放っておく。

「……にゃー」
「あ?」
「ん?」
「………」

野良猫は見た。ついでにロボも見ていた。









「油断しました、先生。ですが本当に闘わないでよろしいのですか?」
「だから、良いつってんだろ? もう興が冷めちまった」
「旦那! 嬢ちゃん! どっちでもいいから助けて!?」

カズマと茶々丸は、仔猫の大群に追い回されるオコジョを眺めていた。仔猫たちは実に楽しそうだった。小動物に野生の本能を刺激されたらしい。
オコジョは一生懸命助けを求めているが無視だ。

「……ですが、此所で私を破壊すればネギ先生はかなり有利になります。それでもやらないのですか?」
「やらねぇ」
「……そう、ですか」
「旦那~!」

風が吹き、茶々丸の長い緑色の髪が流れる。今、此所にはただ穏やかな空気が流れていた。
心地良い沈黙の中、茶々丸がふと口を開く。

「ネギ先生」
「あ?」
「私のマスターは、一般的には悪い魔法使いとされ、立派な魔法使いの敵とされています。そして私はその従者。それなのに貴方は私を破壊しようとしない。何故ですか?」
「――クソッ! こうなったらオコジョの本気見せてやらぁ! 喰らいやがれ! ヨコスカ・ベイブル……!? ぐはぁっ!」

その問いにカズマは少しばかり考え、答える。その顔は何処か何かを嘲笑っているようにも見えた。

「俺にとっちゃ、悪も正義も関係ねぇ。俺は俺の道を行くだけだ。それに言っちまえば、この世に悪も正義もありゃしねぇんだよ。――あるのは、意固地なまでの己の意志だけだ。それが他の馬鹿共が勝手に解釈してそんなもんを作っちまう」
「……」
「それになにより――」
「いや! 止めて! 毛を毟らないでー!」
「やる気が削がれちまった。それだけだ。――やっかましいぞ、糞オコジョ! ちょっとは静かに出来ねぇのか!?」

それだけ言ってカズマはカモの救出へと向かう。茶々丸は静かにその背を見つめていた。









「それじゃあな、絡繰」
「はい、ネギ先生」
「おう、嬢ちゃん。あの猫共に言っときな、次はこんなんで済むと思うなよ、ってな」

所々、毛が毟られたカモが煙草を吸いながら茶々丸に伝えた。惨敗した癖に、無駄に偉そうな態度だ。茶々丸はそれに律儀に頷いた後、帰って行く。
遠ざかる後ろ姿に、カズマは声を掛けた。

「……次に合うときは、敵同士だ! 腹ぁ括れよ、絡繰ぃ! 中途半端じゃ、負けるぜ?」
「――了解。全力を尽くすことを誓いましょう、先生。では、また」
「おう」

しばし、絡繰を見送る。心優しき機械人形は、足取り軽くその場を去っていった。
彼女が視界から消え、日も落ちた。どちらとも無く、帰るかと提案し、歩き出す。

「旦那ぁ、俺っちのふつくしい毛並みが見る影もなくなっちまったよ……」
「お前、弱ぇなぁ。そんなんで絡繰の相手が出来んのか?」
「……え? 俺っち、あの子担当?」
「いや、別にお前がエヴァンジェリンでも良いけどな」
「いや、ロボでいいや」
「……大丈夫かぁ?」
「ヘッ、旦那は知らねぇだろうけどな。俺っちは白面白毛一尾のオコジョと呼ばれたこともあるんだぜ?」
「……見たまんまだな」

今日も麻帆良は概ね平和らしかった。








窮地
追い詰められたものは、生き延びたいと強く願う
生を渇望する
崖っぷちに追い込まれたアルベール・カモミールもまた、大声で泣き叫ぶ
そして天空からの来訪者は
神か、悪魔か、スーパーピンチか



















ビバババババ!
どうも仙水獏です。この話のカモ、作者内呼称は、カモ島さん。
別にオコジョは不和を呼ばなかった。次回予告は軽い冗談程度に捉えておいてください。
後は何時も通り。感想掲示板まで。次回はまぁ、概ね予告通り。エヴァ編完結かな?




オマケ 『ぼくのかんがえたおもしろそーなSS』


リリカルなのは×テイルズ

なのは憑依バルバトス・ゲーティア

「フォトンランサー!」
「――魔法なんぞ使ってんじゃねぇぇぇぇぇぇぇ!!!」

この一言に尽きる。思いついたのは良いが、作者がテイルズ未プレイのため断念。



BLACKLAGOON×GS

ロックの代わりに横島。ただしギャグ時の再生能力以外無し。あと回避能力。

「バラライカおねーさまー!!」
「軍曹」
「はっ」

バキューン! よこしまはしんだ! 
死亡フラグしか見えない。ついでに双子救済イベント有り。ただ、横島がロリに襲われる。



リリカルなのは×ヘルシング

神父 in リリなの
最初に目を覚ますのは、月村家の庭。まぁ、とりあえず――。

――すずか逃げて、超逃げて!

まぁ、あんまし吸血鬼吸血鬼してないから、襲われないって説が無くもない。



こんなんでいいか。リリなの系は、スクライド・中の人ネタ的に有りではなかろーか?作者は若本が大好きです。
このオマケまじ蛇足なんですけどーって方は、感想掲示板まで。直ぐ消すから。





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