2010-02-18 オキシトシンが自閉症の社会的相互作用を改善させる可能性
オキシトシンが自閉症の社会的相互作用を改善させる可能性
オキシトシンというホルモンが自閉症の社会的相互作用の改善に有効かもしれないという研究が発表されました。高機能自閉症とアスペルガー症候群の13人を対象にしたランダム化比較試験です。
■愛情に関連するホルモンが自閉症を改善させる可能性、フランス研究(AFPBB NEWS)
【2月17日 AFP】ロマンチックな恋や母性愛に関連するホルモンであるオキシトシンを吸入すると、自閉症患者の社交性が向上する可能性があるとする研究結果が、16日の米科学アカデミー紀要(Proceedings of the National Academy of Sciences、PNAS)のウェブサイトに掲載された。
これまでの研究で、自閉症患者においてはオキシトシンの血中濃度が低いことが明らかになっている。フランスの認知・社会神経科学センター(Centre for Cognitive Neuroscience)の研究チームは、高機能自閉症またはアスペルガー障害を持つ13人を対象に、オキシトシンを吸入するグループと吸入しないグループに分け、「ボールをパスする仮想ゲームを行う」「人の顔写真を見る」という2つの実験を行った。
その結果、オキシトシンを吸入したグループでは、吸入しないグループに比べ、人の顔を見た時に視覚により注意力を払い、仮想ゲームにおいても社会的な手掛かりにより留意することが明らかになった。
研究チームは、社会的反応の個人差は大きいと前置きしながらも、オキシトシンの長期使用が自閉症患者の他人を信用する気持ちを高め社会的行動を助ける可能性があることを探る今後の研究への道を開いたと自負している。(c)AFP
論文の要約
■Promoting social behavior with oxytocin in high-functioning autism spectrum disorders(PNAS)
海外での報道等
■Hopes grow over potential autism treatment(nature news)
■’Bonding’ Hormone Might Help Some With Autism(US News and World Report)
オキシトシンについて
■信頼のホルモン オキシトシン(日経サイエンス)−自閉症についても少しだけ言及されています。
自閉症治療の道へ光を射すようなニュースですが、同時に代替医療業者に新たなビジネスチャンスを与えるような情報でもあります。オキシトシン(と称した)サプリメントとか出てきそうな悪寒がするので、留意点をいくつか書いておきます。
- 今回示されたのはあくまで「可能性」であって今後更なる研究が必要であり、現時点で実際の治療法として確立されるかどうかは分からないこと
- 今回の研究の対象は高機能自閉症とアスペルガー症候群であって、知的障害のある自閉症について同じような結果になるかどうかは分からないこと
- 効果の持続時間が2〜3分しかないこと
- 性的興奮などいくつかの副作用が考えられ、安全性について慎重に検討される必要があること
これまで、テトラハイドロバイオプテリンやセクレチンなどなど、自閉症の特効薬として期待された薬物が次々と現れて騒がれましたが、結局どれも期待された効果がないことが判明して消えていっています。今回の件についても、興奮しすぎず研究が進められていくのを気長に見守っていくのが賢明でしょう。
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