ブラジル日本移民100百周年史編纂委員会(森幸一委員長)は、記者会見の席上で農業編執筆者にすでに支払った調査費を含む原稿料の返還について協議することを明らかにした。特に、田中規子氏の提出した原稿については、昨日委員会を開き、査読した上で金額を決定したが、現時点で発表されていない。他の執筆者に関しては査読が終了次第、順次行うとしている▼同委員会を管轄するブラジル日本移民100周年記念協会は、農業編に関し、すでに約5万レアルを支出している。この詳細は明らかにされていないが、田中氏のコーディネーター(調整役)料、原稿料、そのほかの執筆者の原稿料の前払い金だと記者会見では説明した。また、調査旅行として北東伯、北伯地域への旅費も支払っているが、これについては、森委員長は、「原稿執筆の必然性はなく調査とは認められないので返却してもらう」と記者会見で明言している。さらに、コーディネーターとして満足な仕事ができず途中で解任され、提出原稿も約束の半分。これらのことを勘案すると、返還要求金額はかなり高額になると予想される▼関係者の話によると、同委員会が田中氏に返却を求めた金額の中には、原稿提出遅延によって受けた損害を慰謝料や損害賠償金という形で組み込んでいないという。これは、温情というべきだろう。2度の農業編発刊延期を余儀なくされたことは、同委員会だけでなく、日系コロニアの信用を失墜させた。その責任を取らせることをしなかったということだ。しかし、印刷製本を予定していた出版社から遅延による契約不履行の違約金が請求されたり、JICAをはじめ移民100周年史への支援金を支払った企業団体からの返還要求が出た場合は、当然、その費用を田中氏に別途請求することになるだろう▼同委員会では、委員会終了後、田中氏に書類をすでに郵送しており、返却期限は6月10日と決めている。期限内に返却するのか、田中氏が異議申し立てをするのか、注目される。森委員長は、記者会見で「田中氏が応じない場合、法的手段も含めて検討する」と強硬姿勢を崩していない。「発つ鳥後を濁さず」の諺がある。これ以上、日系コロニアの信用を落とすことだけはしないでほしい。(おわり、鈴)
2010年5月13日付
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