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ギリシャ危機は対岸の火事か?! −前田拓生
2010年05月15日00時50分 / 提供:アゴラ
これが現状のユーロの状態です。
では、日本は「ユーロ圏のようにはならないか?」ということですが、おそらく、すぐにはユーロ圏のような事態にはならないでしょう。といっても、決して「対岸の火事」ではありません。
例えば、日本の家計が預金を減らすようなことがあれば、マクロ的な「本源的預金」が減少することになるので、金融機関は国債運用を絞り込む可能性があります。そうなると、たちまち国内での運用が難しくなるでしょう。
このような話をすると、このような事態になれば日銀がマネーを増発して、市中にある、または、直接に「国債を購入すればよい」と考える人もいるかもしれません。確かに日銀引き受けによってある程度は対応できるかもしれませんが、このやり方では円の価値を毀損させるだけであり、根本的な対策にはなりません。例えば、ギリシャ問題でユーロ基金設立の話しが出る前に、ECBがギリシャ国債を購入したり、ギリシャへ融資をしたとしても、単にECBの資産を劣化させるだけなので、ユーロはもっと激しく売られていたと推測されます。
つまり、債務超過に陥っている会社と同じですから、リスクマネーの供給が必要なのであり、中央銀行からの資金では駄目なのです(通貨が急速に下落するとともに、債券価格も下落するため、市場金利が高騰するだけです)。このような際にはIMFや、今回設立したユーロ基金のような機関等からの資金でないとうまくいかないのです。
話を戻して・・・
マクロ的な「本源的預金」が減少するとは、家計がタンス預金の割合を高めたり、海外へ資金を流すなどによって、預貯金残高が今よりも減少するような場合を指します。そのようなことが起これば、銀行等の金融機関は日本国債の保有を減らすかもしれません。そしてこの傾向が強くなれば、国内には国債を引き受ける主体がいなくなるので、海外投資家から資金を調達せざるを得なくなるのですが、といっても、すでに日本はギリシャ以上に悪い状態なのですから、国内が駄目だから海外からとは行きません。つまり、借金を積み重ねていくことが不可能になってしまうわけです。
他から借りることができない場合には、日本でも、強制的に増税や財政圧縮をせざるを得なくなります。そのようなことになれば、経済自体が破壊されるような状態になると予想されても、景気状態や福祉状態に関係なく、財政再建を図らなければならないので、日本でもギリシャのような状態になる可能性は十分に考えられるのです(ギリシャのような状態ではなく、日銀引き受けによって事態を収拾した場合、円は大きく売られ、暴落することによって、日本経済にダメージを与える可能性もあります)。
今回のギリシャ危機を受け、このようなことが政府でも、漸く、理解し始めたものと思われ、財政に対して慎重な話が出始めてきています。
菅財務相からは「44兆円を超えないようにしなければならない」という発言があり、仙谷大臣からも「次回の衆議院選挙後には消費税減税をする旨を参議院選挙で掲げる」という話がありました。些か気づくのが遅いようにも思いますが、このままズルズルと「悪夢のシナリオ」を続けられるよりはマシですから、まだ、時間がある今の段階で、しっかりと議論をしていただきたいものです。
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