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[10942] 【習作】 恋姫ライダーカブト 【仮面ライダーカブト(オリジナル設定)+恋姫夢想(TV版無双の一部設定流用)+その他ネタetc】
Name: 突撃戦法◆5a858fe9 ID:045e0bd9
Date: 2010/05/15 14:09
 前書き

タイトルにある通り、仮面ライダーカブト(オリジナル設定)と恋姫夢想のクロスオーバーになっております。

初めての投稿ということで稚拙極まりない文章な上、原作レイプみたいになったりするかもしれませんが、どうかご理解のほどをよろしくお願いします。

 とりあえず設定として、

 仮面ライダーカブト……原作より十数年後の設定。主人公は「あの人」の名前だが別人。
 恋姫無双……TV版の設定を一部流用

その他、思いつきで他作品のネタを出すかもしれません。

最後に……がんばって書いていきたいと思います。


久々の更新になりました。
もしも見てくれていた人がいたのなら本当に申し訳ありません。

2010 5/15 第5話更新



[10942] プロローグ
Name: 突撃戦法◆c5f8077d ID:045e0bd9
Date: 2009/09/19 21:12
それは8年前・・・海外に行っていた父親と母親の二人を、妹と一緒に空港へ迎えに行った時だった。

笑顔で手を振ってゲートから出てくる父さんと母さん・・・妹と手を繋いで、二人に駆け寄っていた。

会えなかった寂しさ―

会えた嬉しさ―

そしてこれから沢山二人に甘えられる楽しみ―

心躍らせて、二人に向かって走っていた。

母さんは『走ったら危ない』と笑顔のまま困った様子で俺達を見ていた。

父さんは俺達の名前を呼びながら、両手を大きく広げて受け止めようとしてくれた。



だが次の瞬間、俺たち家族を紅蓮の炎が包み込む。



「うっ・・・つぅっ・・・」



どれほど意識を失っていたのか・・・ぼやける意識の中、全身を酷い熱気が襲ってくる。息苦しさに瞼を開くとそこは全てが紅にそまった世界だった。

瞳を開き、辺りを見回す・・・

瓦礫、瓦礫、炎、炎・・・

混濁する意識の中で、右手に握られたいる妹の手の感触を思い出す。

だが俺が見たのは瓦礫の中から伸びる手であった・・・

そこで一気に意識が覚醒する・・・必死に妹の名を呼びながら立ち上がり、瓦礫をどかそうとするが、子供の力では微動だにしない重さの瓦礫が妹の上に覆いかぶさっていた。



そして・・・俺が何度名を呼んでも、活発でわがままで寂しがり屋の妹が返事をすることは二度となかった。



涙があふれた・・・状況がだんだんと理解できてきた・・・知りたくもなかったのに・・・

必死に妹の名を呼びながら、父と母に助けを求める・・・だが二人がいた場所には瓦礫と炎と・・・大量に流れ出る血の溜まりが見えた。


ここはどこなのだろうか・・・地獄?


俺にはそう思えた・・・でなければ悪夢以外の何物でもない。

俺は一人、地獄に取り残されたのだ。



そしてその紅蓮地獄の炎を引き裂いて、地獄の使者達が俺に迫ってくる。


それは緑色の体色

昆虫のような角

人間ではない異形でありながら二足で歩く足

テレビで見たことがある・・・こいつら『ワーム』だ。

一匹、二匹、三匹・・・その数は次第に増え、十数匹が俺を取り囲む・・・


『このまま死ぬのか』


子供ながらにそれは理解できた・・・むしろ笑顔で歓迎したいぐらいだ。


家族のいない、一人ぼっちの地獄になど、誰が一人置き去りにされたいのか。


だから全身を襲う震えは、喜びの震えだ。断じて死の恐怖からくる震えではない。

俺はそう自分に言い聞かせた。

このまま死にたい・・・家族のいない世界などに居たくない・・・でも死にたくない・・・死ぬのは怖い、嫌だ!!

二律背反が俺に涙を流させる・・・

迫るワームの爪

恐怖と混乱で身動きが取れない俺



だが俺は出会った・・・


<<CLOCK UP!!>>


目に見えない何かがワームを瞬く間に薙ぎ払っていく。

目の前で爆発していくワーム達・・・そして・・・


<<CLOCK OVER!!>>


目の前にその人は現れてくた・・・


周囲の炎より、鮮烈にして深い真紅のボディー

蒼天のような、澄んだ蒼い瞳

そして選ばれた者しか纏う事ができない強烈なオーラ


『仮面ライダーカブト』


俺が地獄と思った世界にいながら、尚、輝きを失わない、真なる『英雄(ヒーロー)』がそこにはいた。

最後に残ったワームが、がむしゃらに攻めてくるが、カブトはその攻撃を鮮やかに片手で捌くと、腰に装備されていた『カブト・クナイガン』で素早く斬り返す。

吹き飛ぶワーム・・・そしてカブトはあえてワームに背を向けながら、ベルトの『カブトゼクター』のボタンを順番に押していく。

<<ONE!>><<TWO!!>><< THREE!!!>>

迫るワーム・・・だが、

「ライダー・・・キックッ!」
<<RIDER KICK!!!!>>

カブトの足と角に一瞬、雷が走ったかと思えば、カブトは振り向きざまの回し蹴りでワームを瞬く間に爆殺してしまう。


俺はその姿に心が奪われた・・・家族を襲った悲劇も忘れ、ただ呆然とその姿に魅入っていた。

カブトが俺のほうを見る。

「お前・・・そうか・・・」

俺が握る妹の手と、父母の流す血を見たカブトは全てを理解した・・・もう俺には何も残っていないということを・・・

そして俺はカブトに願った。

「俺を・・・殺してください・・・」
「何?」
「嫌だ・・・一人は・・・嫌だ!!・・・みんなが居ないこんな場所には居たくない!!」
「・・・・・・」
「だから、早く!!」

俺とカブトの間に沈黙が流れる・・・そしてカブトは俺に尋ねた。

「お前・・・名前はなんていう・・・」
「・・・総司・・・北郷・・・総司・・です」
「総司・・・だと?」
「・・・あの?」
「その名を持つ奴が俺以外にいるとはな・・・」

ベルトからカブトゼクターが飛び出す・・・変身を解除したその姿は、やはり何か選ばれた人間のオーラを纏った男のものであった。

「死にたいと言ったな・・・だが俺はそれを許しはしない・・・」
「!!なんで・・・どうして!!!」
「・・・おばあちゃんは言っていた・・・俺は天の道を往き、総てを司る男だと・・・だから俺と同じ名前を持つお前がそんなにも弱いままなど、俺の名において許さん・・・」
「・・・そんな・・・」
「お前は今日から『天道』を名乗れ・・・」
「え?」
「お前の今日から名は・・・『天道 総司』だ」


その時は混乱していた何のことかわからなかった・・・俺の名前が変わったこと・・・そしてそれは目の前のこの人が、俺を引き取ってくれたこと・・・


だけど俺は後で気がついた・・・


本当の『絶望』の中で、俺は自分自身を変える本当の『希望』を見つけたのだと・・・



[10942] 第一話 天の道を往く
Name: 突撃戦法◆5a858fe9 ID:045e0bd9
Date: 2009/09/19 21:13

 ―天の道を往き、総てを司る―


 一人の選ばれた男は、自らの大切な者を守るために世界を変える戦いを始める・・・

 紅き鎧を携え、蒼き戦友(とも)と共に『彼』は激しい戦いの後、本当に世界の在り方を変えてしまった・・・

 それは己の大切な者が、『自分』としてそこにいてもいい・・・ただ、その願いを叶えるために・・・



 時代(とき)は流れる・・・


 
 それは、違う世界の違う物語・・・

 だが、『彼』の名がそこには刻まれていた・・・

 このお話は、そんな選ばれた『男』の名を受け継いだ男と、

 その男の下に集った『少女』達が紡ぐ物語である・・・


 第一話 『天の道を往く』


「・・・ここは何処だ?」

聖フランチェスカ学園二年生、仏頂面をした『天道 総司』は本人にしか分からない微妙なうねり声を上げる・・・


天高く照りつける太陽、流れいく白い雲・・・

目の前に広がるのは、360度見える荒野、荒野、荒野、時々岩山・・・

たまに雑草のように草木が生えているが、それも本当にごく僅かなだけである。

コンクリートと舗装された道、そして人が賑わう街中といった場所とは掛け離れた完全に先ほどまで自分がいた世界とは別の世界であった・・・


「・・・『師匠(せんせい)』に食わせる夕食の買出しをしていて、その途中に突如、目も眩む『緑色』の光に包まれ・・・」

己の身に起きたことを思い出すこと3秒・・・彼は自身の肩に担いだバックと、手に下げたスーパーの袋を見比べ、早々と結論を出すことにした。

「師匠(せんせい)が言っていた・・・俺が望みさえすれば、運命は絶えず俺に味方する・・・」

誰に向かって言った何のための言葉なのであろうか?だが言った本人は、なぜか清清しいほどに輝いていた(笑)

「・・・・・・」

だが、誰にもツッコミは得られなかったのはチト面白くなかったのか、一瞬で元の仏頂面に戻った天道は、無人の荒野を歩き始める。


普通ならパニックになったり、夢だと決め付け現実逃避の二度寝をする場面であったが、この『天道 総司』は、恐ろしいほどの落ち着きぶりで無人の荒地に歩を進ませていく。

歩くこと10分少々、小さな丘を越えた辺りで彼の目に前方から馬に跨った三人の男が見える。

三人とも黄色いバンダナに、その手にはどうみても質の悪い鉄を加工した刀剣を携えていた

髭を生やした『中間』のリーダー格

デカッ鼻の『チビ』と『デブ』な下っ端

天道は言葉を一言も交わさないウチから心の中で彼らを短的に命名する。

「おい!そこのお前!!」
「・・・・・」
「おい!!聞こえてんのか!?」
「・・・・・」
「無視すんじゃねえっー!!!」
「・・・・・」

中間が何か怒鳴りながらガンを飛ばしてくるが、天道は見向きもせず、相手にしないまま歩き続ける。その態度に腹を立てたチビが持っていた剣を彼の鼻先に突きつけるのであった。

「兄貴が止まれってんだ!! 無視すんじゃねえーー!!」
「・・・・・」

ようやく足を止める天道に、チンピラ三人は満足げに下品な笑みを浮かべる。

「そうだ、最初から素直にいうこと聞きゃーいいんだよ!」
「なんか見たことない服を着てやがんな?」
「ど、どうします~?アニキィ~?」

デブの下っ端が中間に問いかける。

「ヘッ!!珍しい奴隷として売り飛ばすに決まってんだろ!!・・・女じゃないのがチト残念だが、高く売れるに決まってる!」
「なるほどなんだな~!」
「そうと決まればっ・・・て、おい!!」

だが、その時天道はこのチンピラ三人を放置して再び歩き始めていた・・慌てて彼の前に先回りする三人

「てっめぇっえ?さっきから俺たちを馬鹿にしてんのか?」
「・・・なんだ?・・・俺はお前達になどに付き合ってる時間はない・・・」
「なにを?」
「スーパーのタイムセールがもうすぐ始まる・・・今日の目玉は大根と鯖だ・・・先着50名による松輪鯖販売・・・逃すわけにはいかない」
「すーぱー? さば?」
「そういうわけだ・・・用があるなら日を改めろ」
「ふざけやがって!!もう我慢ならね!!」

ようやく話したと思ったら、おもいっきり上から目線の天道の言葉に、チンピラ三人はブチギレ、刃を振り上げ襲い掛かってくる。

自身はあった。偉そうな口を叩いてはいるが見た目はひょろい若造だ・・・一人なら万が一も有り得るが、三人がかりなら怖くはない・・・と。

だが、彼らは知らなかった・・・目の前にいる男はひょろいのでなく、『実践向き』に体を徹底的に鍛え、絞り上げた肉体であり、それに相応しい運用方法・・・即ち武術に精通しており、なによりも飛びぬけた度胸と場慣れをしているということに・・・

最初に飛び掛ったチビが振り下ろした刃を最小限の動きで回避し、僅かに足払いをすることで、チビはハデに転がっていく・・・
次に襲い掛かってきたデブ。チンピラの中で単純な力では一番の男であったが、所詮は力任せのデブでしかなく、天道の目には動きが止まって見えた・・・するりと斬撃を潜り抜け、背後に回りこみ背中を肘で撃つ。
軽く小突いたように見えた肘打ちは、喰らった本人の呼吸が一瞬止まるほどの威力を発揮し、チビの上にデブが倒れこんでしまう・・・それを見たリーダー格の中間は動きを止め、青ざめた表情で天道を凝視する・・・その間もどんどん近づいてくる天道・・・そして彼の鼻先で足を止め・・・

「失せろ。そこの二人を連れて・・・」
「ハ・・・ハイィィィィィーーーー!!!!!」

とてもじゃないが自分たちでは手に負えない、天道が発した『本物』のオーラを感じたのか・・・驚くほど素早く動き、手下の二人のケツを蹴り上げ、三人で一目散と逃げ出してしまうチンピラ達。

「・・・・・・・」

最初からまったく興味のない相手なだけに、逃げていく姿を適当に見送った後、踵を返してその場から歩き出そうとした。


「お待ちくださいっ!そこの御仁!!」


再び声を掛けてくる者がいた・・・今度は下品な声ではなく、凛としたソプラノボイスのよく通る声であった。
白いマントに身も素顔も包み、手には柄に青龍が一匹刻まれた『青龍偃月刀』を持っている一人の武人であった。

「・・・・・・」
「そこの御仁!・・・お待ちくだされぇ!!」

武人がローブを取り、素顔を見せる。

黒く美しい髪を左で纏めたサイドテールに、キリッとした瞳を持ち、生真面目で義理堅いというのが伝わってくる凛々しい表情の美少女がまっすぐに天道を見つめていた。

その表情に何かを感じたのか、足を止め、天道もじっと目の前の少女を見つめるのであった。

「何か用か?」
「はい・・・申し送れました。私の姓は関、名は羽、字は雲長。貴方様をお迎えに上がるために幽州から参りました。」
「関羽?」

思わず目の前の少女が嘘を言っていると思いかける天道・・・幽州、関羽雲長、この二つの名は確か三国志演義に出てくる地名と人物名である。

というか、そもそもこの場所が昔の中国というのなら、自分の言葉がそのまま通じるのはおかしい・・・日本語がそのまま通じるなどと・・・

思考の海に足を踏み入れていた天道であったが、そんな彼を心配するように関羽が覗き込んでくる。

「あの・・・どうかされましたか?」
「・・・おい、お前は『日本』という国と『平成』という年号に心当たりはあるか?」
「『にほん』?『へいせい』?・・・それは貴方様のお国のことなのですか?」

自分がした質問に対して、質問で返してくる関羽を見た天道はほぼ確信する・・・少なくとも目の前の少女は嘘をついてはいない・・・そしてここは本当の三国志の世界かどうかは別にして、間違いなく自分が先ほどまでいた世界とは異なっているということを。

「(『師匠(せんせい)』も昔、時を遡り、違う世界に言ったことがあると言ってはいたが・・・これも天の道なのか)・・・そうか、分からないのなら構わん・・・だが、もう一つだけ聞かせろ・・・俺を迎えに来たとは?」
「?・・・貴方様はご自身が『天の御使い』であることをお知りにならないのでしょうか?」
「天の御使い?」
「はい!!先日、管輅という占い師がこの戦乱を治めるために、天より遣わされた方が降り立つという言葉を受け、私はこの地に赴きました。」
「そしてこの場には、見たこともない服を着られ、三人の野盗をものともしない貴方様が居られた・・・そして私は確信しました。貴方こそ、この乱世の世を静める天の御使いであると!!」

力強く力説する関羽の言葉を聴き、考え込む天道・・・目の前の少女は嘘を言っている様子はない・・・そして自分が置かれた状況・・・

「関羽と言ったな・・・乱世の世、ということは、今この世界は・・・」

天道の言葉に、関羽は沈痛な面持ちで話を進めてくれる。

「はい・・・世を統べる朝廷もすでに権威を失い、それによって民の暮らしは乱れに乱れ、その流れを押し止める力はすでに誰にもなく・・・他県の諸侯同士の領地の奪い合いによる戦(いくさ)・・・黄巾党なる者どもによる略奪行為・・・そして最近では、謎の妖(あやかし)までもが現れる始末・・・」
「妖(あやかし)?」
「あっ!?いえ!?・・・単なる噂だと思うのですが・・・」
「詳しく聞かせろ・・・」

今まで一番真剣な声色で問いかけてくる天道の雰囲気に押され気味の関羽。

「・・・はい。なんでも人の姿から虫の化け物のような姿に自在に変化し、目の前から突然消えるという妖術まで使えると・・・大陸のあちこちで最近出没しているのですが・・・」
「・・・なるほどな・・・」

何かを納得したようにうなずく天道を見て関羽は、

「では!!私達と共にこの乱世を鎮めるために・・・」
「断る」

だが、ようやく見つけたハズの天の御使いはその願いをきっぱりと断るのであった。

「なぜです!!?今、この乱世を鎮めねばっ・」
「俺には関係のないことだ・・・」
「貴方は、力無き民がどうなってもよろしいというのですか!!?」
「ではなぜ俺の力をアテにする?そんなに民が大事ならば、まずは自分が率先して行動したらどうだ?」

冷静に反論する天道とは対照的に、関羽のテンションはドンドンヒートアップする。

「私とて、ただ指を咥えて見ていた訳ではありません!!ですが、私の力だけでは目の前の民すら満足に救うこともできないのです!!?ですから!!!?」

「だから胡散臭い占いを信じて、良く知りもしない俺の力をアテにしたのか?」
「~~~~!!!!」

天道の言葉に顔を真っ赤にして激高する関羽・・・そこへ、幼い声が二人の間を割って入ってくるのであった。

「姉者~~!!」

赤毛の小柄な少女・・・だが、その手には身の丈の倍以上はある矛が握られており、特に気にした様子もなく軽々と担いで走ってくる。

「鈴々!?・・・ようやく追い付いたのか!?」
「愛紗は酷いのだ!!鈴々を置いて、一人でさっさと行っちゃうなんてぇ~!!」
「お前が犬を追いかけてどこか一人で行ってしまうから悪いのだ!!それよりも・・・行くぞ!鈴々!!」
「ふえ?・・・ところで、このお兄ちゃんは誰なのだ?」

鈴々と呼ばれた少女が、目の前の天道を指差す。

「俺が何者か・・・だと?いいだろう」

天道はそういうと、

「師匠(せんせい)が言っていた・・・」

遥か空を見上げながら太陽を指差し高々と告げるのであった。



「俺は天の道を往き、総てを司る男・・・天道 総司だ!」



全身に日の光を受けた天道は輝きながら誇らしげにそう告げる・・・まるで本当に天が彼を選んだかのように・・・その姿に、関羽は我を忘れたように魅入ってしまう。

「ニャハハハハハッ~♪おもしろいお兄ちゃんなのだ!!鈴々の姓は張!名は飛!字は翼徳!真名は鈴々なのだ~!!」
「ほう~。お前があの有名な燕人張飛か」
「そう!!あの有名な燕人張飛とは鈴々のことなのだ!!」

絶対によくわかっていないのだが、天道はあえてそこにはツッコミを入れない・・・しばらく呆けていた関羽だったが、慌てて首を横に振り意識を覚醒させる。

「いくぞ鈴々!!街の様子が気になる!?」
「ふえ?・・・でも天の御使いの人を探すのが先決じゃなかったのか?」
「その必要はなくなった・・・」

天道を睨み付ける関羽・・・事情を知らない鈴々は戸惑ってしまう。

「じゃあ、このお兄ちゃんが天の御使いなのか?」
「断じて違う!!むしろそのような者に頼ろうとした私達が間違いだった!!」

踵を返すと、黙ってその場を後にする関羽・・・そしてその後を慌てて追いかける鈴々。途中、一度だけ関羽は天道のほうを睨みながら僅かに振り返るが、すぐさま前を向き、やや早歩きでその場を立ち去ってしまう。

後に残された天道は、しばらく去っていく二人の後ろ姿―――特に関羽の方を見つめながら、ぽつりと呟く。

「関羽・・・面白い奴だ。」

本人が気づいていたかは定かではないが、この世界に来て、初めて天道は微笑んでいたのだ。



  ―それから二刻―



「天運は我らに有り!怯むな!!勇気を奮え!!!」

関羽は天道と別れた後、当初の目的である黄巾党の討伐をするため、街の義勇兵達と共に、黄巾党の野営地に奇襲攻撃を仕掛けようとしていた。

彼女の言葉に説得され、そして戦場において尚、凛々しいその姿に鼓舞され、中々の士気の高さを見せる義勇兵であったが、関羽は厳しい状況だと判断していた。

「(一度襲われた後とはいえ、義勇兵の数は千に満たない・・・対して黄巾党は四千弱・・・これはかなり厳しい戦になるな・・・)鈴々!!」
「応っ!!ここにいるのだ!!」

関羽の隣で、矛を構え、今にも突撃しようとする鈴々に関羽は、

「この戦い、お前と私に掛かっている!?・・・油断はするなよ!」
「判っているのだ!・・・愛紗は心配性なのだ!」
「お前のその言葉が新たな不安を私にもたらすのだが・・・後一つ、姉としての言葉だ・・・頼むから無茶はしないでくれよ、鈴々・・・」

関羽が僅かに『姉』としての表情で『妹』の鈴々に微笑む・・・鈴々もその笑顔を見て、頬を赤らめながら黙って頷くのであった。


「・・・よし!では全軍突撃!!!妻を!子を!友を!そして仲間を守るために!!力の限り戦えっ!!!」


関羽の号令が響き渡り、それを合図に義勇兵たちが突撃していく・・・その先頭に立つのは関羽と鈴々・・・否、張飛。世に轟く二大武将であった。突然の奇襲に浮き足立つ黄巾党・・・所詮は烏合の衆である。優れた統率者のいない集まりである彼らに、彼女たちの勢いを止めることはできなかった。

「うりゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃーーー!!!!」

身の丈よりも遥かに巨大な矛を軽々と振り回し、4.5人を一気に吹き飛ばし、重い武器を持っているとは思えない身の軽さで、次々と黄巾党を斬り捨てていく鈴々。

「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっーーーーー!!!!!」

その手に握られた青龍偃月刀を振り回し、自分の周囲にいた敵をすべて一刀両断した関羽は、続けざまに放った強烈な打ち下ろしの一撃で、攻撃を受けようとした黄巾党の剣ごと真っ二つにしてしまう。

二人の格の違う強さを目の当たりにした黄巾党の前線が、徐々に下がり始める・・・。

このまま押し切れば勝てる。関羽がそう確信した時それは起こった。

「うわあああああっ!!!」
「「!!!??」」

義勇兵の一人が絶叫しながら事切れる・・・だが、その目の前にいた黄巾党は他の者たちとは明らかに異質であった。

肩から腹にかけて致命の切り傷が付けられているにも関わらず、なぜか息絶えていないのである・・・しかも、その傷口からは、『緑色』の血が流れていた。

「なっ!!」
「あいつ等・・・なんか変なのだ!!」

関羽達の周囲でも異変が起こる。自分たちが倒した敵兵の中から、ムクリと立ち上がる者がいるのである・・・緑色の血を流して・・・

その姿を見た義勇兵・・・いや、他の黄巾党達も絶句する。死体が突然動き出すなどと・・・だが彼らは・・・いや、関羽達も知らなかった。

彼らは生き返ったのではない・・・元々死んでいなかったのだ。

絶句して、静寂が訪れた戦場で、一人動く者がいた。この黄巾党の集団を束ねていた頭目である。

彼は関羽達に不気味な笑みを見せ付けながら、その本性を露にした。体が一瞬光ったかと思えば、その全身を蜘蛛のような足をもった不気味な怪物にその姿を変えたのである!!

「コ、コイツは!!」

関羽が構えるより早く、蜘蛛の化け物はその姿を消すと、義勇兵たちを次々薙ぎ払い、見れば味方のハズの黄巾党までもを一緒に蹂躙していくのである。

『クロック・アップ』

彼女達が知る由もないが、この怪物(ワーム)達の成虫にしか見られない加速能力を持ったワーム相手に、普通の人間では対処すらできない。

再びその姿を現したワームの足元には、一瞬で百近い人間の死体が出来上がっていた・・・この信じられない光景を目の当たりにした関羽は決断する。

「全軍一時撤退しろ!!・・・体勢を立て直す!!!」

関羽の掛け声で、我を取り戻した義勇兵たちが絶叫しながら戦場から逃げ出していく・・・無理もない・・・同じ人間相手なら状況と戦略で五分に戦えるかもしれないが、相手は見たこともない怪物なのである。

「鈴々!!!お前も早く逃げろ!!私が時間を稼ぐ!!」
「何言ってるのだ!!愛紗も一緒に逃げるのだ!!」

ワーム相手に、皆を逃がすため殿を勤めようとする関羽であったが、鈴々はそれを納得しようとしない・・・彼女も直感していた。

戦えば死んでしまうと・・・それが判っているだけに、互いをこの場には置いていけないのだ。

だが状況は更に悪くなっていく・・・先ほどの立ち上がった黄巾党の者達も本性を現し、緑色のワーム・・・どれも似た姿の幼虫に姿を次々変えていく・・・数は20体・・・だが、関羽達を殺し、その後逃げ出した兵達を殺すには十分すぎる・・・

蜘蛛のワームは、関羽と鈴々を活きの良い獲物と見たのか、ゆっくりと舌なめずりするように近づいてくる・・・所詮は強くても鼠の二匹。獅子に勝るにはあまりに絶望的な状況だ。

振り上げるワームの手・・・死を覚悟する二人・・・


その瞬間、真紅の『何か』がワームの手を弾く!!


「「!!」」

その真紅色の何か・・・カブトムシのような物体は二人の目の前を通り過ぎると、後退していく義勇兵と黄巾党の中、『たった一人』流れに逆らうようにゆっくりと近づいてくる男の手に握られる。


「・・・俺はこの瞬間を待っていた・・・選ばれし者として・・・俺は今この手で『未来』を掴んだ!」

手に握られた真紅のカブトムシを見つめる男・・・

「貴方は!!」
「お兄ちゃんなのだ!!?」

未来をその手に掴み、そしてその男――『天道 総司』は静かに語る・・・

「俺は・・・この一瞬のために生きてきた!!」

肩に担いだバックから、銀色のベルトを取り出すと、素早く腰に巻き、そしてワーム達を睨みながら叫ぶ。


「変身!」

腰のベルトに、真紅のカブトムシ――『カブト・ゼクター』を装着する。

<<HENSINN!>>

電子音声が発せられると同時に、天道の全身を銀色の装甲が包み、彼を銀色の戦士『仮面ライダーカブト・マスクドフォーム』に変えるのであった。

全身を装甲が包んだ瞬間、強烈な衝撃波がワームと関羽達を襲い、危うく彼女たちも吹き飛びそうになる。

「あれは・・・一体何なのだ!?」
「あれは・・・天の・・・御使い?」

呆然となる二人・・・だがワームはそんな二人を無視して、一足飛びで目の前の銀色の戦士に襲い掛かる。

飛び掛りながらのワームのパンチを軽く受け流し、転がったワームの体勢が直る前に続けざま連続でパンチを繰り出すカブト。それを受けて怯んだワームに今度は力を乗せた重いパンチを叩き込む。

ダメージを受けたのか、更に後退するワームは苦し紛れに殴りかかってくるが、その攻撃すら華麗な受けと、怒涛の攻撃でカブトは余裕で押し勝ってしまう。
最後にもう一度体重を乗せた重いパンチで蜘蛛のワームを吹き飛ばしたカブトに、円を描き集団で幼体のワームが襲い掛かる。
最初に背後から仕掛けてきたワームに、カブトは腰に装備された『カブトクナイガン』を抜き、ガンモードで撃ち抜く。
無限に送られる電子エネルギーを高エネルギーイオンビームに変換した『アバランチシュート』は、襲い掛かってきたワームを逆に吹き飛ばした・・・その間も次々と襲い掛かってくるが、皆、クナイガンのビームによって返り討ちにあい動きを止めた・・・チャンスと言わんばかりに、クナイガンを放り投げたカブトは反転させアックスモードに持ち変える。
超高温で対象物を切断する『アバランチブレイク』で、周囲にいるワーム達を次々切り裂くカブト・・・流れるような動きのまま遠心力を利用した斬撃は華麗にして凶悪で、その破壊力によって一体、また一体と爆発しながら死んでいく。

20体はいた幼生ワームを全て斬り倒したカブトの姿を見た関羽と鈴々は、その姿に感動していた。

「やはり・・・あの御方こそ天の御使いだ・・・」
「お兄ちゃん凄いのだ・・・あっ!!お兄ちゃん後ろっ!!!」

鈴々が大声とともにカブトの背後を指差す。気配に気が付き振り返るよりも早く、蜘蛛のワームが全身でカブトに体当たりをし、もつれ合いながら転がっていく両者。
すぐさま立ち上がる両者だったが、若干ワームの方が早かったのかカブトの体勢が立ち直る前に殴り飛ばし、カブトは岩場に激突してしまう。

カブトを吹き飛ばしたワームは、再びクロック・アップを使用してその姿を消してしまう。

「あれはっ!!」
「お兄ちゃん!!逃げるのだ!!」

だが二人の言葉は聞こえているはずなのに、カブトは逃げようとせずクナイガンを構えるのであった・・・だが、クロック・アップしたワームの動きは根本的に『今の』カブトとは異なっており、突進の一撃で弾き飛ばされ、更に中空で追い討ちを一撃、二撃、三撃と受けてしまう。

まるで壁に跳ね返るピンボールのように左右に激しく弄ばれるカブト。

「あああっ!!」

関羽から悲痛な叫び声が上がる。
ワームはいったんクロック・アップを解き、間合いを取ってカブトを睨み付けるワーム・・・カブトの方は地面に転がされワームを見ながらも、ふと地面に光る物を見つけた。

黄巾党達が捨てていった槍や剣である。

「・・・やはり師匠(せんせい)の言った通りだ。俺が望みさえすれば運命は絶えず俺に味方する!」

何かを閃いたカブトは、転がりながらも地面にむかってクナイガン・ガンモードを何発も立て続けに放ち、砂埃が一面に舞い上がる・・・そんな中をワームは三度クロック・アップしてカブトをかく乱するような動きを見せた。
そこをカブトは素早く立ち上がり、今度は地面に転がる無数の武具を撃つ。武具の刃が砕け散り、破片が埃と一緒に空中に広がっていくのを見たカブトは、クナイガンの銃口から伸びたレーザーサイトが破片によって乱反射し、光の檻を形成する。
カブトの狙いは見事に的中した。

肉眼では捕らえ切れなかったワームの動きが、乱反射したレーザーによって浮き彫りにされたのだ。

真っ直ぐに突っ込んでくるワーム。
動きを見切ったカブトは素早くガンモードからアックスモードに持ち変え、迎え撃つ。

「「!!!」」

激突した時、クナイガンの刃が確かにワームの腹に突き刺さった時、青白い炎と共にワームが大爆発を起こす。



立ち上る炎の中・・・その中から、銀色の戦士は威風堂々と大地に立ち、落ち始めた夕日を背に天を指差す・・・まるで太陽すら己の味方であると言わんばかりに・・・



その姿に、胸を打たれた関羽は呆然としながらカブトに近づいていくのであった。

「あ、あの・・・」
「フンッ・・・奴等を倒すのは俺の役目だ・・・それは怪しい占いの結果などではない。」
「・・・そう、ですか。」

関羽は目の前の男にもう一度、天の御使いになってほしいと嘆願しようとしたことを見抜かれたのを感じ取った・・・だが、

「だが、俺の義務は全ての生物を守ることだ・・・アメンボから人間までな・・・」
「えっ?」
「お前が成し遂げたいこととはなんだ?」
「私が・・・成し遂げたいこと・・・」

思わぬ質問であった・・・そして関羽は意を決したように目の前の男を見つめ、己の決意をぶつける。

「私の成し遂げたいこと・・・私の願い・・・それはこの乱世の世を鎮め、この大陸に住む、力無き者達が平穏に生きていける世界・・・そして何より!」

その手に握られた青龍偃月刀を大地に打ち付け、

「これ以上、いわれ無き暴力で死んでいく者達を出さないよう、力及ぶ限り守り抜きたいのです!!」

関羽の熱の入った決意を聞いた、カブト―天道からカブトゼクターが離れ、その姿を元に戻す。

「いいだろう・・・その瞳に宿った決意・・・俺はお前を信じよう。」
「では!」
「天の御使いなどという呼ばれ方は正直好かんが、全てのワームを倒すこと。そしてこの乱世を鎮めること・・・俺が成し遂げてやる。」

天道のその言葉を聞き、関羽は眼に涙を溜めるほどの感動を受ける。

「!!!・・・ありがとうございます!ご主人様!!」
「ご、ご主人様?」

予想外の呼び方に、天道は初めてどもってしまう。

「はい!貴方様はたった今から私達の主になられる方・・・ならば貴方は私のご主人様です!」

関羽のその言葉に戸惑っている天道であったが・・・

「そうなのだ!お兄ちゃんはたった今から天の御使いで、鈴々のご主人様なのだ!!」

鈴々もその意見に賛成してくる。

「だから愛紗のことも真名で呼ぶのだ!お兄ちゃん!!」
「私の真名は愛紗です、ご主人様!!」
「真名?」
「はい!・・・親しい者や己が使える主のみ呼ぶことを許される名です。知らぬ者が呼べば命すら奪うことになる、私達には大切な名なのです・・」
「そうなのだ!だけどお兄ちゃんは鈴々と愛紗のご主人様だから、真名で呼んでほしいのだ!!」

二人の説明を聞き納得する天道。

「わかった・・・鈴々に・・・愛紗だな・・・」
「「はい!!」」

そんな二人揃って元気の良い返事をするのを見た天道の表情が、微妙に微笑んで見えたのはきっと気のせいではないのだろう・・・


その日、この大陸の後の世にまで『天の道を往き、総てを司る』という伝説の男の壮大な物語と戦いが、こうして始まりを告げるのであった・・・



『次回、恋姫ライダーカブト!』

天「奴らワームは思っている以上に、この大陸の人間達に溶け込んでいるみたいだな。」
朱「はわわわわわ!!わ、私も皆さんのお役に立ちたいんです!」
鈴「くっ!二人だけで戦かう気なのか!?」
星「常山の昇り竜!趙子龍!!いざ参る!!!」
愛「あのワームとかいう奴の消える妖術をどうにかできないのか!!!?」

襲い掛かる黄巾党とワーム達を倒すため、カブトの真の力が解放される!

天「・・・キャスト・オフ」


 天の道を往き、総てを司る!!



[10942] 第二話 キャスト・オフ(前編)
Name: 突撃戦法◆5a858fe9 ID:5a44932f
Date: 2009/09/19 21:13


私達がご主人様と出会ってから、2週間の月日が流れました。

あの日、『ワーム』と呼ばれたあの化け物を薙ぎ払い、太陽を背にされた我が主に、偶然それを見ていた街の住人から県令になって欲しいとの願い出があり、渋々といったご様子でそれを引き受けたご主人様。

当初は乗り気ではなかった話のようでしたが、いざ政務につかれれば私など10人いても追いつかないほどの仕事の速さで、次々とこなされていくお姿はとても素晴らしく、私の目に狂いは無かったことを確信させてくれます。

黄巾党との戦でもすばらしい指揮を発揮され、連勝につぐ連勝・・・そして我々の噂を聞きつけた近隣の村々からも徐々に義勇兵が集まってくれ始めており、ここまで出来た主に使えることが出来て、私、関羽雲長は幸運の極みなのですが・・・


「・・・まだ、ご主人様の準備はできないのか?」
「ハッ!・・・それがその・・・」

愛馬の上から兵士の報告を受け、私の表情は苦々しいものになった。

それは、黄巾党を討伐するための出陣しようとしていた朝・・・ご主人様が『またしても』出発の時間になってもお姿を見せないのである・・・実はこれは一度や二度のことではなく、遠征に出かける度に頻繁に起こっていることなのです。

「わかった・・・報告ご苦労。とりあえず兵達にもうしばらく待機しておくよう部隊長達に通達しておいてく・・・私が直接行く。」

馬から降り、若干早歩きになりながら目的地に向かう・・・それは宛がわれたご主人様の自室ではなく、政務室でもなく、鍛錬によく使う中庭でもなく・・・

ある部屋の扉を乱暴に開く・・・そこには忙しそうに動き回る城の女中達と、的確な指示を送りながら、揚げ物に専念するご主人様のお姿でありました・・・

「ご主人様ぁっ!!!!!!」
「叫ばなくても聞こえてる・・・なんだ?」

『調理場』に押し入る私を、ご主人様は手を差し出して静止する。

「前にも言ったはずだ・・・俺が料理をしている時、半径4尺3寸(約1メートル)は神の領域だ。うかつに入ってくるな・・・」
「それなら私も以前申し上げました!遠征の度にご自身で弁当の準備など行わないでくださいと!!・・・そもそも何処の国に、ご自身の弁当を作る県令がありますか!?」

実際目の前にいるのだが・・・だが私の怒りも何処吹く風のごとく受け流すご主人様・・・

「あの・・・味付けはこれでよろしいでしょうか?」
「うむ・・・盛り付けは任せる。」
「ご主人様!!?」

味見をした角煮を女中に任せ、揚げ終わったばかりの春巻きを私の前に出し、

「そうカリカリするな・・・今から腹を空かせているのか?」
「私を鈴々と一緒にしないでください!!」
「鈴々がなんなのだ~?」

背後から声が聞こえた。振り返った時そこにいたのは口の周りを食べカスでいっぱいにした鈴々であった。

「一番最初にご主人様の所へ行ったと思えば・・・こんな所で何をしているのだぁ!!?」
「きゃうっ!!・・・り、鈴々はお兄ちゃんの料理の試しょ・・・じゃなかった、そ、そうなのだ!護衛をしていたのだ!!」
「ほう~?・・・で?ご主人様が作った揚げ餃子は美味しかったのか?」
「最高なのだ!!!外がパリパリで中がジュワ~っと肉汁が・」
「たっぷりと満喫しておいて、何が護衛だ!!!!」
「あうっ!」

罰として鈴々の頭を小突く・・・子供相手とはいえ、鈴々も一軍を預かる将なのだ・・・いつまでも甘やかす訳にはいかない。だが、当の鈴々は頭を抱えながらご主人様に泣きついてしまう。

ムムム、うらやま・・・否!

「お兄ちゃ~ん~!!!愛紗が鈴々を殴るのだ~!!」
「・・・鈴々・・・愛紗は今お腹が減って気が立って・」
「断じて減っても立ってもおりません!!」
「じゃあ鈴々とお兄ちゃんが仲良くしていたのにヤキモチを焼いたのだ!!」
「誰が誰にヤキモチを焼いただと!!?」
「そうか・・・よし、完成した。では、いくぞ・・・兵をあまり待たせたくはない」

私が鈴々と言い争っている間に手早く弁当を完成させたご主人様は、さっさと行こうとされる・・・誰のせいで待たせたと思われているのですか?

「愛紗・・・お前はもう少し笑え・・・?」
「なっ!?」
「美人なんだからな・・・お前達もそう思うよな?」

絶句する私を尻目に、女中たちにまで同意を求めるご主人様・・・最近は特に口調も表情も穏やかになってきてくれておられるのだが、女中達もクスクスと笑いながら「そうですよ。関羽将軍♪」「お綺麗なんですから、もっと笑顔で♪」などと言ってくる始末だ。

「な!・・・そ、そのような世辞では誤魔化されませんよ!!?」
「・・・プッ・・」
「!!!!」

噴出してしまうご主人様に憤慨した私は顔を真っ赤にして逃げ出すように調理場を出て行く・・・その後をご主人様と鈴々が笑いながら追いかけてくるのがよくわかった。なんという口の上手い方なのだ!!!・・・内心憤激する。

だからだ。私の胸を鼓動が強く打つのは・・・だけど・・・


「・・・美人・・・なんて、初めて言われました・・・」


 第二話 『キャスト・オフ』


総勢約5千の兵力で黄巾党討伐に向かう天道軍を率いて、天道、愛紗、鈴々は、他県の黄巾党討伐を終え帰還していた、県境の公孫賛軍が交戦中ということでその援軍に向かっていた。

「しかしご主人様、こう戦続きでは兵達の疲弊は免れませんね。」
「そうだな・・・では今度は気晴らしに兵達の分まで弁当をつくr」
「お・や・め・く・だ・さ・いっ!!!!(怒)」
「・・・・ムウッ・・」

天道が不満そうにうねり声を上げた。
それが趣味なのか・・・すぐに料理を作ろうとするこの主に頭を悩ませる愛紗・・・なまじ城の誰よりも美味しい料理を作り、尚且つ誰にでもすぐに振舞う為末端の兵士達にまで評判になり始めているのである。

「料理が美味しいと評判の県令など前代未聞です!!」
「でもお兄ちゃんの料理が美味しいのは本当なのだ!まさに幽州一なのだ!!」
「鈴々・・・世界一と訂正して貰おうか?」

そんな愛紗の心配などどこ吹く風よと、天道と鈴々はのん気な会話をしているのでッた。


その時、前方から偵察に出ていた兵士が大急ぎで戻ってくる。


「ご報告します!」
「どうした!?」

愛紗が緊張した面持ちになり、それが天道軍の兵士たちにも伝わる。

「前方三里に農民が多数こちらに向かってきています!!更にその後方から黄巾党の軍勢!数は約1万!!!」

その報告を受けた愛紗がすぐさま天道に指示を仰いだ。

「ご主人様っ!!」
「わかっている・・・」

天道が一瞬目を閉じる。

「おそらく黄巾党から逃げてきた難民と、それを追いかけて来たバカ共です」
「だが、今来ているあれは恐らく分隊か本隊の増援か・・・主力は公孫賛軍の方だろうな・・・」
「ではこちらのを先に叩いておかねばなりませんね。」
「・・・だが・・・んっ!?」

天道が前方を凝視する・・・そこには農民たちが何かから逃れるように大挙と押し寄せてくるのがだんだんと視界に入ってきた。

「考え込む状況じゃないな・・・部隊を二つに分ける。鈴々は俺と一緒に黄巾党を退ける。」
「りょうかいっ!なのだっ!!」
「・・・農民の誘導を頼めるか、愛紗?」
「それは!?」

前方を見ながら指示を出す天道に愛紗が噛み付く。
彼女にしてみれば自分と鈴々が前線に出て、主には後方で待機しておいてもらいたかったのだが、天道はそんな愛紗の考えをいち早く理解したのか笑って彼女の肩に手を置き、諭すように語る。

「これが一番いい布陣だ・・・俺の背中をお前に預ける!農民を安全なところまで送り届けたら急いで戻ってきてくれ・・・」
「ご主人様・・・」
「頼むぜ、愛紗?」
「・・・わかりました、ですがどうか無理はなさらないように・・・」
「・・・わかってる」
「鈴々!?・・・ご主人様を必ずお守りするんだぞ!!・・・いいなっ!?」
「任せるのだっ!」

元気のよい鈴々の返事に満足したのか、踵を返し馬を走らせる愛紗・・・
彼女を見送った天道は、すぐさま鈴々と兵士達の方を向き号令を発するのであった。


「これより我々は黄巾党を叩き潰す!!無茶はいいが、無理はするな!!」
「オオオッッ!!!」


 ―農民サイド―


「はぁー、はぁー、はぁー・・・おばあさん!?、もう少しですからね・・・」

黄巾党に追いかけられ逃げ続ける農民の最後列・・・荷物を抱え、息切れを起こし今にも倒れそうな老女の背中を押す少女がいた。

「へぇー、へぇー・・・あんただけでもお逃げ・・・私なんかに構うんじゃないよ・・・」
「そんなの駄目です!!私は力の無い人々を助ける為に塾を飛び出してきたんです!!・・・こんな所で諦められません!!」
「お嬢ちゃん・・・」

小さな体で必死に老婆を押す少女であったが、明らかに体力不足である・・・自身も息切れし、その場にへたり込みそうになるが背後から迫る黄巾党のおかげでそれも叶わず、額から流れる汗も拭わずにこの場を切り抜けようと前進し続ける・・・

だがその思いも空しく、背後から追いついた黄巾党の一人が二人に向かってその刃を振り下ろすのであった。

「死ねぇ!!!」
「危ないっ!!?」

黄巾党の一人が先に老女の方を槍で突き通そうとするが、それを少女が咄嗟に立ち塞がったのだ。


スローに見える切っ先・・・間違いなくその矛先は自分を貫くのであろう・・・

「(先生!!・・・御免なさい!!・・・黙って飛び出しておいて、何も出来ずに死んでしまうなんて・・・)」

思わず目をつぶる少女・・・思い出が走馬灯のように脳裏を駆け巡り・・・


 ―ガキャンッッ!!!―


「(ガキャンッッ!!!という武器が私を・・・)・・・って・・・がきゃん?」

何かが砕ける不思議な音が思考に混ざり、目を開く少女・・・彼女が見たのは、何かに槍を粉々に砕かれた上に、誰かが投げた槍の尻のほうが顔面にめり込んでいる黄巾党であった・・・

「・・・無事か?」
「・・・へっ?」

その槍を放り投げた人物・・・見慣れぬ服を着た男・・・もとい天道が、老女と少女に近寄ってくる。

「鈴々!!・・・このばあさんを早く非難させろ!!・・・こっちは俺が連れて行く」
「合点承知なのだ!!」

呼ばれた鈴々が駆け寄り、自分よりも大きな老女をおんぶ←(!?)して駆け出していった時、ようやく事態を把握した少女が男に声をかける。

「あ、あああああああの!!?」
「・・・話なら落ち着いてから聞こう・・・今は色々と忙しいからな・・・」
「い、いいいいええええええそうじゃなく・・・」
「礼か?・・・だったら構わん。これも俺の道、誰に言われたからではない・・・」
「あ、ああ貴方様が、たた啄県の県令様なのですか!?」
「・・・そうだが・・・」
「じゃあ、貴方があの噂の天の御使い様・・・」
「・・・またそれか・・・それは正しくもあり、間違いでもある」

天道は少女の方から空を見上げ、自分の指を天高くかざす・・・それに思わず釣られる少女・・・

「俺は天の道を往き、総てを司る男だ・・・」
「・・・はぁ・・・」
「断じて天の御使いなどではない・・・俺は誰かに遣われたわけではないからな・・・」

いまいち何が納得できないのかよくわからない理由で納得していないようなのだが、うなづく少女はとりあえずその事を思考の脇に置き、自身の本題に入る。

「あの・・・私を貴方の仲間にしてくだひゃい!!・・・あぅ!ひた噛んじゃった・・・」
「・・・なぬ?」
「貴方様のお仲間に入れてくだひゃい!!」

またしても舌を噛んで痛がる少女を見下ろしながら、天道は冷静な目で彼女を見下ろしていた・・・その目線に強張る少女。

査定されている・・・そう思い込んでいるようなのだが、実は天道は全く別なことを考えていた。

「(いや待て・・・どうにもこの世界はおかしな事ばかりが続いている・・・もしや・・・)・・・名は?」
「ひゃい?」
「名前は・・・何ていうんだ?」
「あ!私の性は諸葛!名は亮!!字は孔明!!!でひゅっ!あひっ!!また噛んじゃったぁ!!?」
「諸葛亮!!!?」

この世界に来て一番驚いたかもしれない・・・もしやと頭の中で考えていた武将の仲で、真っ先に外した名前だったからだ・・・

「(『臥龍』と『鳳雛』の名で知られる蜀の二大軍師の一人にして、三国志において劉備、曹操、孫権を除いた有名所で真っ先に出てきそうな有名人・・・)なんだが・・・」

・・・プルプルと震え、雨の日に捨てられたチワワを髣髴とさせるこの目の前の少女がそうなのか・・・と、内心でため息をつく。

「(想像していたのはせいぜい知的で文学者肌の美人だったんだが、ある意味予測を遥かに上回れたな)・・・諸葛亮・・・」
「は、はいっ!」
「・・・下がってろ」
「へっ?」

事態が把握できない諸葛亮の目の前を、紅い何かが高速で通り過ぎる・・・と同時に、飛んできた矢がそれにぶつかり地面に突き刺さるのであった。

「えっ!へぇっ!!?」
「・・・お前ら・・・」

話し込んでいた彼らを黄巾党の連中が取り囲む・・・いや、それにしては様子がおかしい・・・人数は十数人なのだが、誰もが手持ちの武器を持っていないのだ・・・

「・・・・・・」
「・・・・・・」

無言で天道と諸葛亮を見つめる黄巾党の不気味な一団・・・そして突如その姿をワームの一団に変えるのであった。

「は・・はわわわわわわわわわわわわわぁ!!」
「思っていた通りだな・・・お前達・・・この世界の人間社会にどれだけ食い込んでいるんだ?」

不気味な緑色のワーム達が二人に迫る・・・だがその一団と、二人の間を猛スピードで駆け抜ける真紅の閃光があった。

先ほど諸葛亮を守ったカブトゼクターが天道の手に掴れ、そして・・・


「変身!」
<<HENSINN!>>


銀色のベルトに装着され、瞬く間に天道を『仮面ライダーカブト・マスクドフォーム』に変身させる。

「うぇ!!はわわわわわわわわわわわわわ!!!!!!」

もう『はわわわ』しか言えないほどに混乱を極める諸葛亮・・・まあ、無理も無いが・・・

「お兄ちゃん!!」
「・・・鈴々か・・・ナイスタイミングだ」

そこへ、老婆を安全な場所に避難させた鈴々が兵を引き連れ戻ってくる・・・が、カブトの姿と、周りを取り囲むワームの群れを見て事態を把握する。

「お兄ちゃん!!鈴々も・・・」
「いや・・・おい!諸葛亮!」
「ひゃ、ひゃい!?」
「息を止めて、何も話さず、暴れるなよ・・・」
「へっ?」

諸葛亮が返事をするよりも早く彼女の襟首を掴むと、そのまま物を放り投げるように鈴々の方へ彼女を投げ飛ばすカブト・・・かなり酷い扱いであるが、少女の安全を考えるならこの場にいさせないのが一番なのである。

「はっ!わわわわわっ!!!!!!????」
「鈴々っ!?」
「!?・・・合点なんだ!」

一瞬、何が起こったのかわからなかった鈴々であったがカブトの呼び声で我を取り戻し、飛んできた諸葛亮をキャッチした。
・・・思わぬ扱いを受け、完全に気を失っている諸葛亮であったが、どこも怪我はしておらず、鈴々も一安心する・・・

だが、周りを取り囲んでいたワームはそうは思っておらず、カブトが諸葛亮を放り投げたのと同時に、彼に襲い掛かるのであった。

背後のワームがカブトに組み付き、地面に押し倒そうとするのをカブトはあえて逆らわずに、転がりながらワームを投げ飛ばす。
立ち上がると同時に、腰のクナイガンを抜き去り、ガンモードで周囲のワーム達を連続で撃ち抜くカブト・・・その威力に押されるワームの群れであったが、一匹だけ両手でガードしながら果敢に突撃をかけて来るワームがいた。
銃撃では止まらないと判断したカブトは、ガンモードからアックスモードに持ち替え、すれ違いざまに突撃してくるワームを切り裂く・・・紙一重で攻撃を回避され、逆にカウンターで切り裂かれたワームが緑の炎を上げて爆発する。
目の前で仲間を殺れ、逆上したのか一匹が更に背後から襲い掛かるが、反転したアックスの刃がそれを許さず、また一匹、爆砕させ、勢いに乗ったカブトが次々斬り飛ばしてく・・・

ワームが相手でも鬼神の如き強さを見せ付けるカブトを警戒したのか、最後尾の一匹が静かに戦線を離脱する・・・

最後の一匹を全て打ち倒し、周囲を見回すカブト・・・その時気がつく・・・


自分の姿を黄巾党の連中も呆けた表情で見つめていることに・・・

「・・・・・・・」
「「「「・・・・・・・」」」」

見詰め合うカブトと黄巾党(約一万)・・・とりあえずカブトがクナイガンで空に向かって威嚇射撃する・・・その瞬間・・・


「うわああああ!!!!殺されるーー!!!!」
「あの化け物よりも強い化け物だぁぁぁぁぁーーー!!!!!」

戦場は一瞬で大パニックに陥るのであった・・・だが、逃げ惑う黄巾党の一人が足を滑らせ無様にこけてしまう・・・その男の前に立つカブト・・・

「おい・・・」
「ひぃぃぃぃ!!!!!」
「答えろ・・・お前達はあの化け物についてどこまで知ってるんだ!?」
「ひぃぃぃぃ!!!こ、殺さないでぇ!!?」
「・・・・・・」

パニックを起こし地面にうずくまる男を無理やり起こし、目の前に立たせると、若干温度の下がった声で、もう一度問いただす。

「質問に答えれば手を離して見逃してやる・・・いいな?」
「は、はいぃぃぃぃっっ!!!」
「質問だ・・・あいつ等の正体をお前達は知っているのか?」
「あ・・・あいつ等?・・・あの緑の妖のことですか?」
「ああ・・・」
「は、はい!・・・あいつ等、俺達に『朝廷に不満のある者は我々に従え。そうすればお前達の思うがままの世界に導いてやる』って、謳い文句で俺達に話を持ちこんできやがりまして・・・」
「(黄巾党をプロデュースしたのはワームなのか)・・・で?お前達は黙って従ったわけか?」
「お、俺達だって最初はあいつ等のこと全然信用してなかったんですが、あいつ等のあの姿と妙な妖かしの術のおかげで誰も逆らえなくなっちまたったし・・・気がついたら仲間がだんだんとあいつ等と同じ妖になっていくし・・・」
「結局逆らえずにそのままあいつ等の手下になった・・・という事か・・・」
「仕方なかったんだ!!・・・俺達だって自分の命が惜しいんだ!!」
「・・・・・・」
「それにあいつ等はなぜか俺達一人一人に報酬もくれたし、手柄を立てた奴には家族にも褒美を与えてくれるから・・・今の朝廷に従うよりも、よっぽどいい生活が送れるんじゃないかって・・・」

黄巾党が苦虫を潰す形相で話している中、カブトは男の話を自分なりに纏めていた。

「(力で無理やり従えたんなら抵抗も生まれるが、力を見せ付けた後に飴を与えることで自分達は『逆らわなければ良い目を見れる』という思想を植えつけた・・・というわけか・・・典型的な植民地化だな・・)なるほど・・・わかった・・・では最後だ・・・お前達の別働隊がいるな・・・本体はどれぐらいの規模だ?」
「え?・・・ひょっとして公孫賛とかいう武将を攻める部隊の事か?」
「そうだ・・・規模は?その中にワーム・・・緑の妖みたいな奴は・・・・」
「規模はこっちと同じ一万だが・・・あいつ等の中に、緑の妖みたいな奴と別の化け物も混じってやがる・・・」
「別・・・成体か!?」

思わず目の前の男から手を引くカブト・・・男は2.3秒呆けるとすぐさまその場から走り去ってしまう。

「まずいな・・・」
「お兄ちゃん!!」
「鈴々・・・お前はいったん愛紗と合流して部隊の指揮を・・・」

気絶した諸葛亮をおんぶしている鈴々に指示を出すカブト・・・その声はかなり切迫しているのを鈴々にも見て取れた。

「お兄ちゃんはどうするのだ!!?」
「俺はこのまま公孫賛のところまで・・」
「伝令!!!」

兵士の一人が二人の会話に割って入って来る・・・

「前方より公孫賛軍が接近!!」
「にゃに!?」
「まさか!?」

前方に目をやるカブトと鈴々・・・


そこには、数十の兵士と馬を引き連れたボロボロの武将・・・公孫賛の姿があった。


後編へ続く




[10942] 第二話 キャスト・オフ(後編)
Name: 突撃戦法◆5a858fe9 ID:5a44932f
Date: 2009/09/22 16:42

平原を数十の騎馬が駆け抜ける・・・

最初は善戦をしており、このまま押し切れるハズだった。

公孫賛と呼ばれる女性は、全速力で走る馬に跨りながら内心毒づく・・・
こんなはずではなかったと・・・
配下の家臣達をこれほどまでの犠牲など出す必要などなかった・・・
あの化け物どもが出てくるまでは・・・

「白蓮様!?」

自分の真名を呼ぶ古くからの重臣がまた一人、地面に転がる・・・思わず馬を止めようとした白蓮であったが、それを制する者がいた。

「なにをしているか!!!?公孫賛殿っ!!」
「!!・・・邪魔をするな!!?超雲!!!!」

空色の髪を後ろに一つに纏め、白い戦装束に身を包んだ美少女・・・公孫賛軍の客将、超雲が白蓮を叱咤する。

「何をなさるおつもりかっ!!配下の事を思うのであれば今は卑しくも生き延びよ!!・・・貴方が犬死などされてはそれこそ臣下は死んでも死に切れませんぞ!!?」
「クッ!!」

その事を出されれば白蓮も黙り込むしかない・・・緩めていた馬の速度を再び上げて、ひたすら前進し続ける・・・生き残るために・・・
白蓮の目に生き残る意志を見た超雲は、馬を併走させながら白蓮にそっと囁く。

「公孫賛殿・・・私はこのまま殿を勤めます・・・貴方は先を行ってください」
「!!?・・・馬鹿を申すな!!お前はあいつ等のあの力を見なかったのか?」

白蓮が怒鳴りつけるが、超雲の意志は変わらない。

「誰かがせねばこのまま全滅ですぞ?・・・ならばこそ、貴方に縁も所縁もない私が適任でありましょう?」
「だが・・・貴様はこんなところで死ぬ気なのか!?」

問い掛けに静かに首を横に振る・・・その瞳は、明らかな死地へと旅立つ者の目ではない・・・それは挑戦者の目であった。

「このような所で死ぬつもりはございませぬ・・・ですが、これからの乱世の世にあのような物の怪が闊歩するのは我慢ならんもので・・・」
「・・・超雲・・・」
「安心なされ!・・・生きてお会いしましょう!!」
「超雲ーッ!!!」

白蓮が名を呼んでくれるが返答の代わりに無言の微笑だけを返すと、馬を止め愛槍「龍牙」を構え、その場に留まる。

「さて・・・まさかこのような所で我が武人としての最後を迎えようとは・・・人生とは思うようなものではないな・・・」

超雲は後方から追いかけてくる『敵』を睨み付ける・・・強い殺気と奇怪な気配をかもし出す奴等を・・・


 ―シュンッ!―


「ハァッ!!」

自分達を追い続けてきた敵・・・緑色のワームが一匹、飛び出してきた・・・すれ違いざまに槍の一撃を喰らわす超雲・・・

「だが、常山の昇り竜、趙子龍!!・・・庶民と祖国を弄ぶ貴様ら妖らに易々とくれてやる命など持ち合わせていない!!、悪行重ねる悪鬼共っ!!!我が槍を正義の鉄槌と思え!!!」

地面に転がるワームに追撃を加えるべく、馬の上から華麗に跳ぶ超雲。
そして上空で槍を振り回し、遠心力と重力を加えた渾身の打ち下ろしをワームにぶつける・・・

「!!!」

一撃で爆死するワーム・・・それを見た超雲は得意げな微笑を浮かべ、内心で安堵する。

「(よし!!我が武でも奴等を殺せる!!・・・これならば・・・)」

前を向く超雲・・・そこには次々と緑色のワームの幼体がワラワラと湧き出てくる。

「恐れる者は背を向けろッ!、恐れぬ者は掛かって来い!!、我が名は趙子龍!!!、一身これ刃也!」

常人なら恐れをなして逃げ出す状況を、この超雲と呼ばれる少女はむしろ楽しんでいた・・・自分が鍛え上げた武で人外の化け物と戦える・・・この状況が、彼女に言い知れぬ興奮を与えていたのだ。

ワームの一匹が、右方から迫る・・・と同時に逆方向からも迫る・・・
右のほうが一瞬早いと判断した超雲は、その場から飛び上がり、右から来たワームを飛び越し背後を取ると、体重を乗せた突きでワームを突き刺す。
また一匹倒した超雲は、勢いに乗り自分からワームの群れに突撃を掛けるのであった。

「はぁぁっっ!!!」

自身の跳躍力を生かし、ワーム共の上を取りながら、時に華麗に飛び回り、

「はいはいはいはいはいはいはいはいはいっっ!!!」

時に、神速の突きと斬撃をを繰り出し、

「この程度か化け物共!!?」

一刀両断する・・・ワームにしても、相手がライダーならいざ知らず、ただの人間がこれほどの戦闘能力を有しているなどと考えもしていなかったのだろう・・・思わぬ強敵にその足を止めてしまう・・・だが、

「!!?」
「・・・・・・・」

そのワーム達の群れを真っ二つに割って現れる新手のワームがいた・・・先日カブトが倒したワームとよく似た蜘蛛のようなワームである。

「ほう・・・さしずめコイツらの頭目といったところか・・・」

槍を持つ手に力が篭る・・・見た目が違うだけではない、威圧感といい、緑色のワーム達が黙って従っている感じといい、明らかに他とは違う気配がしてくるのを超雲は敏感に感じていた。

「フッ!・・・相手にとって不足無し!!・・・いざっ!」

飛ぶ超雲・・・如何なる敵であろうと、神槍と名高き自分の槍を持ってして貫けぬものなどありはしない。


だが、それは驕り昂ぶりであるとすぐさま思い知らされた。


 ―目の前から一瞬で消え去る蜘蛛のワーム―


「!!」

それに気がついた超雲が地面に着地した瞬間、彼女の腹部をワームの強烈な蹴りが打ち抜いていた。

「グフッ!!!」

超雲が悶絶しながら地面を転がされる・・・ワームはそんな彼女に更なる追い討ちとして、背中を踏みつけ、グリグリと擦り付けながらいたぶる・・・まるで虫ケラを無邪気にいたぶるように・・・

「ガッ!ハァッ!!」

軋む背骨・・・このまま踏み潰されてしまうのだろうか・・・超雲の意識が遠のいていく・・・
超雲が諦めかけた時・・・彼女を踏みつけていたワームの頭部を突如、光弾が撃ちぬき、ワームをすっ飛ばす。

「かはっ!・・・なっ・・・いったい・・・」

超雲もその衝撃で意識を覚醒させ、驚いて起き上がる・・・そんな彼女を助ける為に、二本の刃が周囲の緑色の幼体を次々薙ぎ倒していく。

「これは・・・」
「無事か!!?」

起き上がった彼女のを支えたのは、大急ぎで農民を安全圏まで非難させた愛紗であった。

「我が名は閑雲長・・・主と共に貴公を助けに馳せ参じた」
「汝があの青龍偃月刀の!?」

驚く超雲であったが、更なる衝撃が彼女を襲う・・・ワームの群れを無数に切り裂いていくのは、小柄な身体に似合わぬパワーとスピードを兼ね揃えた鈴々と・・・銀色の鎧に身を包んだカブトであった。

「あの銀色の奴は!?」
「『奴』とは何たる無礼な!?・・・あの方こそ我が主にして、この乱世を静める天の御使い!・・・天道総司様だ!!」

愛紗が心外だと言わんばかりに憤慨するが、その声も今の超雲には届きそうもない・・・彼女の目を捉えているのは、ワームの群れを華麗に斬り飛ばしていくカブトの戦いぶりだけであった・・・

「愛紗!そいつは無事なのか!?」
「はい!」
「お前が超雲か・・・」

ワームの群れを斬り開いたカブトが超雲に近寄る・・・超雲はそんなカブトに膝まづき、頭を下げるのであった。

「貴方様が天の御使い・・・この超子龍、己の未熟さも考えず挑んだばかりにとんだ醜態を御見せしてしまいました・・・」
「畏まるな・・・それにお前を助けたのは公孫賛だ・・・」
「公孫賛殿が!?」

カブトの言葉に驚く超雲・・・

「ウチのバカな客将が一人死に急いでいるから助けてくれ・・・そう頼まれてな・・・」
「・・・そうですか・・・」

そう言われては苦笑するしかない超雲・・・

カブトと愛紗達の登場で一気に追い詰められるワーム達であったが、しかしリーダー格の蜘蛛のワームはクロック・アップを使い、一瞬でカブト達を吹き飛ばす・・・

「きゃあああっ!」
「うわああああっ!」
「くぅぅっ!!」
「チッ!」

吹き飛ばされる四人・・・カブトは咄嗟に愛紗と鈴々を抱きかかえながら、体を無理やり超雲の方を飛ばし、三人の下敷きになり、彼女達を衝撃から守るのであった。

「ご、ご主人様!?」
「・・・気にするな・・・」

さっと立ち上がる四人・・・だが、蜘蛛のワームはクロック・アップを連続で使い、視界から消え続ける・・・更には調子に乗った幼体も多数詰め寄ってくる・・・

「ちっ!・・・進退窮まったな・・・」
「ご主人様っ!?・・・私が囮なりますから、早くお逃げください!」
「ちょっと待つのだ愛紗!!?、だったら鈴々が囮に・」
「助けに来た人間を置いてなどいけるか!?・・・この超子龍が蒔いた種だ・・・私が何とかする・・・」

三人が自分を囮にという中で、カブトは一歩前に出て三人に告げる・・・

「・・・『このまま』でどこまでやれるか試したかったんだが・・・どうやらそれも頃合だな・・・」
「ご主人様?」
「お前ら・・・伏せてろ・・・」


言うや否や、ベルトのゼクターホンを上げるカブト・・・瞬時に全身の銀色の装甲が浮き上がる・・・そして・・・


「キャスト・オフ!」


その言葉と共に、ゼクターホンを操作し、スイッチを入れる・・・

咄嗟に伏せる愛紗たち・・・

その瞬間、全身の銀色の装甲が弾け飛び、カブトの本来の姿が全貌を現すのであった・・・


<<CAST OFF!>>


弾け飛んだ装甲が、弾丸のように弾け飛び、それ自身が攻撃となり雑魚のワームをすべて蹴散らしてしまう・・・そしてそこに現れたのは真紅のボディーカラーをし、青い瞳を持ったカブトムシを模した鎧であった。
顎の部分を基点に、カブトホーンが起立して顔面の定位置に収まり・・・電子音声があたりに鳴り響く。


<<CHAGNGE BEETLE!!>>


愛紗たちが顔を上げ、その目にしたのは先程までの無骨な銀色の重装甲ではなく、真紅に染まったスマートな軽装甲のカブトの姿であったが。


 『仮面ライダーカブト・ライダーフォーム』


これこそマスクドライダーシステムの本来の姿ともいえる、カブトの第二形態なのだ。


その姿に恐れをなしたのか、それとも逆に闘志を燃やしたのか・・・蜘蛛のワームがクロックアップで姿を消す・・・
そしてカブトはそれを視覚で確認した後、腰のベルトのボタンを押すのであった。


「クロック・アップ!」
<<CLOCK UP!>>


ライダーフォームにのみ備わっているワームに対抗するための『クロック・アップ』を起動し、すぐさま蜘蛛のワームの後を追うカブト・・・

「なっ!」
「お兄ちゃんが・・・」
「消えた・・・だと!?」

姿を消したカブトに驚く三人・・・彼女達は知る由もないのだが、カブトは姿を消したのではなく、彼女達とは違う時間軸にその身を置いたというを・・・


常人が知覚できない速度で戦場を駆け抜ける者達・・・人も馬も鳥も、何もかもが止まったかのような時間の中を、カブトとワームは激しい打撃戦を繰り広げていた。
激しく打ち合うカブトとワーム・・・数度の打撃戦を展開する中、重装甲から解き放たれたカブトの動きは見違えるようで、軽快なステップと華麗な受け流しでワームをいなしながら、的確な打撃を当てていく・・・やられ続ける蜘蛛のワームが苦し紛れにその口から糸を吐きカブトを狙い撃つが、それも回避しジョブと裏拳によるコンビネーションで吹き飛ばしてしまった。

カブトの予想を遥かに上回る強さにたじろぎながらも、なんとか必死に喰らい着いていくワームであったが、繰り出す攻撃は尽く回避され、逆にカウンターばかりを叩き込まれ、ついには吹き飛ばされ、激しく地面を転がっていく・・・

「・・・それで終わりか?」
「!!!」

カブトの挑発に簡単に頭に来たのか、ワームは渾身のパンチを繰り出す・・・カブトもそれに答えるように渾身のカウンターを繰り出し、ワームを殴り飛ばしてしまう・・・


<<CLOCK OVER!!>>


電子音声がライダーに設けられたクロックアップの限界時間を告げる・・・と同時に、愛紗たちの目の前にカブトとワームが同時に姿を現す。

「ご主人様!」
「お兄ちゃん!!」
「・・・これは・・・」

呆然となる三人・・・そんな中で、ワームに何故かあえて背を向けるカブト・・・その姿を見たワームが『隙在り』と言わんばかりに背後から不意打ちをかける。

<<ONE!>><<TWO!!>><< THREE!!!>>

ベルトの『カブトゼクター』のボタンを順番に押していく・・・そしてカブトはこの戦いに終止符を打つべく、必殺の攻撃を繰り出すのであった。

「ライダー・・・キックッ!!」
<<RIDER KICK!!!!>>

カブトの足と角に一瞬、雷が走ったかと思えば、カブトは振り向きざまの回し蹴りを繰り出す。


 ―名刀を斬り落とすような一撃がワームを切り裂き・・・―

「!!!」

 ―爆砕するワーム・・・―


かつて、自分を救った男の・・・自分が魅了された姿を髣髴とさせたカブトは、手をゆっくりと動かし天にかざす・・・


 ―威風堂々とした正に王者の貫禄―


そのカブトの姿を見た愛紗は、彼こそ真の戦乱を治める者であると強く確信するのであった・・・
カブトの活躍により、黄巾党を裏から操っていたワーム達はその姿を消し、有象無象の集まりになった黄巾達も各地の武将達に制圧されていく・・・
こうして・・・長かった黄巾党との戦いに終止符が打たれることになる・・・


そしてそんな中・・・新たなるライダーがカブトに知られることなく産声を上げていた・・・


 ―魏・華北某所―


「逃がすな!!追え!!」

長く黒い髪が特徴的で、背に大剣を背負った美しい女性が兵士達に号令を発する・・・彼女達が今追いかけているのは、一匹の幼体のワームであった。
的確な指示の元、周囲を武装した兵士達に取り囲まれ、身動きが取れなくなるワーム・・・兵士たちも対処に慣れているのか決して深追いはせず、微妙な間合いを取りつつワームをけん制する・・・

「よし!・・・後は私がトドメを・・・」
「・・・待ちなさい春蘭」

真名で呼ばれた黒髪の女性が振り返る・・・『その姿』を見た春蘭は驚きながらもその場に平伏するのであった。

「華琳様自ら御出でにならなくとも・・・」
「・・・あら?・・・私の大事な春蘭にもしもの事があってはこの覇王・曹操の沽券に関わるわ・・・」

『蜂を思わせる独特な頭部をした鎧』と、凛とした声と威圧感溢れる存在感が、場を支配する・・・こういう空気を春蘭はとても好んでいた・・・この世の何よりも愛する主の醸し出してくれる空気を・・・

「さあ・・・汚らしい虫よ・・・お前に最初で最後の慈悲をこの覇王が与えてやる・・・一撃よ?」

一歩、一歩・・・近づいてくる死の気配を感じ取ったのか・・・それとも目の前の『敵』を倒せれば活路を見出せると思ったのか・・・ワームは自らを覇王と呼ぶ者に襲い掛かる。
それを見た春蘭が剣を取りワームを斬り倒そうとしたが、主自らが手を差し出し静止する・・・

迫るワーム・・・だが、覇王・曹操はまったく動じることもなく、己の腕についている『ゼクター』を操作する・・・


「ライダー・・・スティング!」
<<RIDER STING!!>>


電子音声が発せられると同時に、黄色の雷光が右手に走り、ゼクターにタキオン粒子が収束し、必殺の一撃と化す。

繰り出される猛毒の一撃・・・

タキオン粒子が全身を駆け巡り、ワームを一瞬で爆砕させる・・・

静まり返る場・・・曹操の左手から『ザビーゼクター』が離れる・・・


「虫ケラ如きがこの大陸で存在するなんて許されるはずはない・・・この覇王・曹操が命ずる!!・・・醜きワームどもを一匹残らず殲滅せよ!!」

小柄ながら独特な髑髏の髪飾りで金髪を両サイドで纏めた『覇王・曹操』こと、華琳が号令を発し、その場にいた全ての者が平伏する・・・


くしくも、かつて完全調和を掲げた『仮面ライダーザビー』を受け継いだのは、自らの野望でこの大陸を一つにまとめることを目標にしている魏の覇王、曹操であると、天道は未だ知る由もなかったのであった・・・



『次回、恋姫ライダーカブト!』

天「お前が魏の覇王・・・曹操か?」
曹「真の天道を歩むのはこの曹操ただ一人!!・・・いいから関羽を私によこしなさい!!?」
朱「はわわわわわ!!!・・・ご主人様も曹操さんも落ち着いてください!!?」
天&曹「キャスト・オフ!!」

暗躍するワームと圧政を敷く董卓軍を打ち破るため、カブトとザビーがキャストオフを果す!

愛「我が信じ、愛するのはこのご主人様ただ一人だ!!」


 天の道を往き、総てを司る!!






[10942] 第三話 仮面ライダー・ザビー
Name: 突撃戦法◆c5f8077d ID:5a44932f
Date: 2009/09/25 12:06
世に轟く天才軍師(予定はただいま未定)の諸葛亮孔明は、己の日々を綴る日記帳にこう記していた。

「水鏡先生の塾から飛び出して早一月・・・私が探していた天の御使い様こと天道総司様の元で無事軍師としてお仕えすることができるようになりました・・・」



あの日・・・戦いが終わった後、公孫賛と超雲の簡単な挨拶が行われていた。
数十の配下を連れた公孫賛と、数千の兵士と愛紗、鈴々、そして諸葛亮を連れた天道が、向き合い、互いに握手をする・・・

「本当に世話になった・・・正直お前が来てくれなきゃ私は死んでたな・・・」
「いや・・・アンタが生き残ったのはアンタ自身が望まれたからだ・・・俺が来なくてもアンタは生き残れたさ・・・」
「そうか・・・・・・配下には悪いことしちゃったけど・・・」

そういって落ち込んでしまう公孫賛であったが、天道はそんな彼女を励ますように言葉を続ける。

「乱世はまだまだ続く・・・死んでいった者達が望んだ平和な世を俺たちが作るんだ・・・悲しい声じゃない・・・平和の中で笑いあう者達の笑い声なら、何よりも奴等の慰めになるんじゃないのか?」
「・・・ありがとう・・・そうだよな・・・」

一瞬だけ目を閉じ、そして空を見上げた公孫賛は笑顔で天道に別れを告げる・・・


「じゃあな天道!・・・なんかあったら言ってほしい!絶対に力になってみせるからよ・・・」
「・・・わかった・・・今回は『貸し』だな?」
「はんっ!・・・『借』りちまったな!」


馬に跨り笑顔で去っていく公孫賛・・・彼女を見送った後、自分達も啄県に戻ろうとした天道に超雲が声を掛けてきた。

「天道殿・・・貴君のお力、真に感服しました・・・」
「お前は・・・一緒に戻らなくていいのか?」

顎で公孫賛の方をさすが、超雲は黙って首を横に振り、

「あの方は決して悪い方ではないですが、残念ながら天下を掴む御仁ではない・・・天を掴むのは貴方だ・・・天道殿・・・」

そういって天道を真剣な表情で見る超雲・・・愛紗や鈴々もこの超雲という武人にはそれなりの好感が持てていた・・・無謀とはいえ、たった一人でワーム相手にあそこまで立ち回れたのだ・・・仲間にするには十分な実力を持っている・・・愛紗が一歩前に出て超雲に尋ねるのであった。

「では、貴公は我々の仲間になっていただけるのですか?」
「・・・いえ・・・今しばらくは武者修行に励みたいと思っています。」
「!!?・・・貴方は今、この方をお認めになられたではないですか!!?・・・ならば・・・」
「ならばこそ・・・今回の戦いで己の未熟さを痛感しました・・・天道殿の助けがなければ命を落としていたでしょう・・・」
「・・・・・・」
「私は武人・・・その事実に目を背けることほど愚かな事はない・・・天道殿に仕えるのであれば、それに見合った武がなければ私自身が許せないのです・・・」
「超雲殿・・・」

超雲の心境を聞き、それ以上強く勧誘できなくなる愛紗・・・

「天道殿・・・」
「わかった・・・だが忘れるな・・・」

天道が真っ直ぐに天を指差し、高々に超雲に告げる。

「お前が自分の道を進むのであれば、いつか俺の道と交わるだろう・・・天の道は常にお前と共にある・・・」
「天道殿・・・」
「武者修行・・・体に気をつけろよ・・・」
「・・・重ね重ねのご好意とお言葉・・・真にありがたく受け取らせていただきます・・・」


天道と愛紗たちに一礼すると、無人の野を愛槍片手に去っていく超雲・・・天道も愛紗も近々彼女とは再会するだろう・・・そんな予感が胸に過ぎるのであった。


「さて・・・最後の一人だ・・・」
「あ!・・・ご主人様っ!!!・・・私もそれについて・・・」
「・・・諸葛亮・・・」
「はっ!?はぃぃぃぃいぃっ!!!」

突然話を振られた諸葛亮がびっくりして声を裏変えながら返事をする・・・天道は彼女と向き合い、真剣な表情で彼女に話し変ける。

「・・・戦はまだ続く・・・お前は本当に俺達の仲間になりたいのか!?」
「・・・は、はいぃ!!」
「ご主人様!!お待ちください!!!?・・・そのような娘がいったい何の役に・・・」
「やらんといかんことは何も槍を持って敵を刺すことだけじゃない・・・10日だ・・・」
「へっ?」
「はい?」
「10日以内に内政・軍備に使う予算を二割増しにする案件を俺に提出しろ・・・」
「なんと・・・」
「二割増し・・・ですか・・・」

諸葛亮が真剣な面持ちで思考を広げていく・・・その様子を見た天道はにやりと笑い、

「それが出来たなら正式な軍師として俺についてもらう・・・愛紗・・・実力が見れたなら文句はないな?」
「は・・・はい・・・」

天道の言葉に今ひとつ納得できないが、条件出しという内容ならば無下に却下できない・・・そう思っていた愛紗であったが・・・


 ―10日後―


執務室で真剣な表情で諸葛亮の案件を読む天道・・・と、その隣で必死に内容を理解しようとする愛紗と、すでに理解を放棄して鼻提灯を作って立ったまま寝る鈴々・・・

「ど・・・どうでしょうか?」
「愛紗・・・」
「は、はい・・・」

読み終えた天道が、案件の書かれた筒を愛紗に手渡すと、ニヤリ笑い・・・

「急いでそれを文官たちに書き写させろ・・・俺の名を持ってたった今からこの方針で行く・・・」

天道の言葉に笑みを浮かべる諸葛亮と、驚きを見せる愛紗・・・と、鼻提灯が割れて目を覚ます鈴々・・・

「な!・・・ご主人様!?」
「ちゃんと諸葛亮は俺達に実力を示したぞ?」
「しかしですね・・・それとこれとは・・・」
「にゃはははは♪・・・愛紗は単に朱里に焼きもち焼いてるだけなのだ♪」
「鈴々!!!?・・・キサマ!!今まで寝ておいて、なんだいきなり!?」

鈴々の言葉に顔を真っ赤にして怒鳴る愛紗・・・

「・・・朱里・・・それがお前の真名か?」
「は、はいぃっ!!」
「・・・朱里・・・」
「は・・・はひぃ・・・」

自分の名を連呼されて顔を真っ赤にする諸葛亮・・・そして天道は、


「今日からお前は俺の参謀だ・・・よろしく頼むぞ、天才軍師殿・・・」
「なっ!!!・・・てててててて天才だなんて・・・そんなこと・・・」


顔を真っ赤にして伏せてしまう朱里の頭を優しく撫でる天道・・・と、それを鈴々の首を締め上げながら羨ましそうに見る愛紗・・・(ちなみに鈴々は白目を剥き、半失神状態でタップ中)


今日の天道軍も、賑やかに騒がしく、だが明るい日々を過ごしていくのでありました・・・



 第三話 『仮面ライダーザビー』



天道こと仮面ライダーカブトが率いる天道軍の活躍によって倒されたワーム達・・・彼らが裏から操っていた賊軍・黄巾党達も、後ろ盾を失くしてしまった結果、各地の武将達に討伐され、この国もようやく安定の色を見せ始めていた・・・だがその矢先、国を揺るがす事件が起こる。

 ―漢王朝の皇帝『霊帝』の死を端にした後継者争い―

弁太子という後継者に対して、反対派と呼ばれる者達は西方の英雄『董卓』を味方につけて形勢を一気に逆転・・・だが董卓は巨大な軍事力で朝廷を壟断し、そのおかげで騒乱は朝廷内部から一気に大陸全土に飛び火することになる・・・

 ―そして現状を打破するべく結成された反董卓連合―

董卓の圧政を如何にかするべく、各地の諸侯たちによって結成された連合軍の陣営の中に、天道軍の姿があった・・・


「すっ・・・・・・ごい!!数の兵士達なのだ・・・」

目を輝かせながら鈴々が辺りを見回す・・・無理もない。
愛紗と各地を転々と旅していた彼女でもこれだけの規模の兵士を目にすることなどなかったのだから。

「鈴々!!?、あまりはしゃぐんじゃない!」
「愛紗ー!!!、見て見てぇ~!!!・・・この馬すっごい顔してるのだ~!!」
「・・・はぁ~・・・」

まったく聞こえていない鈴々に思わずため息を漏らす愛紗・・・そんな彼女を慰めるように、天道が背後から頭を撫でるのであった。

「ごっ!?・・・ご主人様!!?」
「あまり鈴々を型にはめてやるな・・・あいつはあれでいい・・・」
「・・・ご主人様は鈴々を甘やかし過ぎです・・・」
「・・・そうか?・・・じゃあ、今からは愛紗を甘やかすかな?」

思わず振り返ってみた愛紗が目にしたのは柔らかく笑う天道の笑顔であった・・・愛紗は顔を真っ赤にして硬直してしまう・・・天道はそんな愛紗の反応がつくづく楽しいのだ・・・

が・・・そんな二人を楽しく見ない娘が一人・・・

「ええ~~・・・コホンッ!!!、ご主人様っ!?、愛紗さん!?」
「!!?・・・朱里!?」

愛紗が過剰な反応で飛び退きながら朱里を見る・・・若干引き攣った笑顔で天道と愛紗を見る朱里・・・

「ご主人様・・・軍議のお時間です」
「ああ・・・もうそんな時間か・・・じゃあ、愛紗・・・行ってくる」
「・・・わかりました」
「鈴々!!?・・・あまり遠くへ行くなよ・・・」
「は~いなのだ!!」

怖い笑顔のままの朱里を連れて、連合中枢の本陣に向かう天道・・・その途中、見知った顔に出くわす・・・

「お~い!!・・・天道~!!」
「!!・・・公孫賛か」

1ヶ月前に救った武将・公孫賛こと白蓮が手を振って二人に近づいてくる。

「いや~・・・まさかお前も来てるとはな~?」
「乗り気ではなかったんだが・・・優秀な武将達と優秀な参謀殿との話し合いの結果、やはりここは参加しておくべきかと言われてな・・・」
「・・・・・えへへへへ~♪」

『優秀な参謀』と言われてテレまくる朱里・・・

「?・・・そのちっこいの・・・参謀なのか?」
「ああ・・・内政・軍略に関しての天賦の才・・・大人しめだけど芯のある性格・・・そして周囲に気配りが出来てこちらの先を考えて行動してくれる理想の副官タイプ・・・まさに天が与えてくれた賜物だ」

おだてられた朱里が、『えっへん』と胸を張る・・・一mmも揺れないが・・・

「へえ~・・・お前がそこまで褒めるなんて、本当に優秀なんだな・・・」
「・・・優秀で思い出しが・・・文を送りつけてきた袁紹ってのは、どんな武人なんだ?」
「ぐっ!?」

天道の素朴な質問に喉を詰まらせる白蓮・・・出来れば永遠に思い出してほしくない話題なのだが・・・

「あ・・・会えばわかるさ・・・会えば・・・」
「・・・そうか?」

滝のような冷や汗を出す白蓮を不審に思いながらも、軍議の場に来た三人に・・・大上段から思いっきり見下した声のかけ方をする者がいた。


「お―――――ほっほっほっ!!!、門地が低い者同士、仲がよろしいようね?・・・公孫賛さん?」
「ゲッ・・・」
「・・・」

金髪ロールに金の鎧に豪華に着飾った装飾品と、高級な繕いの剣を腰に下げた見るからに趣味の悪い成金のような女性の武将が、やたらハイテンションで二人を笑い飛ばしている・・・天道は10秒ほど彼女を見た後、指を差して略的な説明を白蓮に要求した・・・

「(指を差しながら)・・・これが『袁紹』か?」
「(頭を抱えながらも指差し)・・・これが『袁紹』だ・・・」

白蓮の様子から察するに頭が『悪い』を通り越して『イタイ』タイプなのだろう・・・なるほど・・・説明したがらない訳である。

「あ~ら!・・・この三国一門地の高いこの私の偉大さを前にして頭を抱えたくなるお気持ち・・・よ~くわかりますわ♪」
「・・・・・・イタイ・・・」
「はい?・・・何かいいましたか!?」
「いや・・・」

言葉がまともに通じるのかも不明だが、まあいいだろう・・・すでに目の前の女性とのコミュニケーションを放棄する考えを出した天道・・・


そんな奇妙な集団を、凛とした声とオーラが鋭く切り込んでくるのであった。


「・・・ったく、相も変わらずうるさいオバサンね・・・死んじゃう?」
「なっ!!・・・現れやがりましたわね!クルクル小娘!!?」

長髪と短髪の両極の女性を左右に従えたカリスマ・・・三国にその名を轟かせる『覇王・曹操孟徳』が不快そうにやってくる。

「・・・あれは・・・」
「ご主人様!!・・・あの方が曹操さんです!」

朱里が耳打ちしてくれる・・・曹操と言えば三国志でもその名を轟かせる三大君主の一人であり、本人も優秀な武人であったと言われている武闘派である。

「まあ、バカは放っておいて・・・」
「誰がバカですの!?」
「・・・貴方・・・最近名を上げている天道とかいう男ね・・・」
「・・・・・・」

バカ呼ばわりされて憤慨する袁紹をまったく無視して天道を見つめる曹操・・・その瞬間、場の空気が一気に重たくなる。

「名を上げている?・・・そんなつもりはないのだがな・・・」
「・・・どういう意味?」
「太陽が輝くのは当然の事だ・・・お前は太陽に一々『貴方は何の為に輝くのですか?』と聞くのか?」

意味不明とも取れる天道の返答に、目が点になる朱里と白蓮・・・天道の唯我独尊の態度に、曹操の側近―黒髪の夏候惇こと春蘭が大剣を抜き放つ。

「キサマッ!!!・・・華琳様を侮辱するつもりなら容赦せんぞ!?」
「やめなさい春蘭・・・」
「華琳様!!・・・しかし!?」
「これから軍議よ・・・これ以上時間を浪費すると、『そこの方』にも悪いわ?」

曹操が顎で差した先にいたのは、褐色の肌に赤の戦着を身に纏った少女であった・・・若干愛想がないが・・・その背後には、長身でメガネをかけた素晴らしい胸の持ち主がこちらを見ていた・・・こっちも愛想に若干欠けるが・・・

「ご主人様!!・・・呉の孫権さんに、軍師の周瑜さんです!!」
「・・・呉の孫家か・・・」

天道が二人を見る・・・呉の孫家・・・三代続く大国を治める名門であり、その三人ともが優秀な指導者だったと歴史に記されているまさにエリートの家系である・・・どこかの名ばかりと違って・・・

「フッ・・・どうやら揃ったようですので、軍議を始めさしてもらってもよろしいかしら?」

なぜか仕切りたがる袁紹であったが、天道も曹操も孫権も互いの存在に探りを入れている状態で袁紹の言葉など全く聞いてはいなかった・・・そのため、自分が仕切ることに依存がないと勝手に判断した袁紹が勝手に軍議を取り仕切る・・・ちなみに公孫賛は一応抗議してみたが却下すらされなかった・・・

「さて皆さん・・・『わたくし』の元にこうして集まっていただいたのは他でもない・・・董卓さんのことですわ」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「(空気が重たい・・・てか、お前ら!!少しぐらい袁紹の話聞いてやれよ!)」

一人心の中でツッコミを入れる公孫賛だが、本人も絶対聞いてきてくれないんだろうな~と、半ば諦めている・・・

「董卓さんという田舎者は、田舎者の分際で皇帝と朝廷の威光を盾に、暴虐の限りを尽くしていると聞き及んでいます・・・そんな世間知らずで残虐非道の董卓さんを懲らしめるために、わたくしこと!この三国一の名家の当主たるこの袁紹にお力をお貸しいただけますでしょうか?」
「断る」
「嫌よ」
「話にならん」
「少しぐらい躊躇してやれよ!?」

天道・曹操・孫権の三者が、袁紹の言葉を見事に瞬殺した・・・口が開いたまま塞がらない袁紹・・・

「話がそれだけなら俺は帰ろう・・・いくぞ、朱里・・・」
「そうね・・・行くわよ、春蘭、秋蘭」
「・・・帰るぞ、冥琳」
「お・・・お前ら!!!?」

公孫賛が止めようとするが、三人が腰を上げ、そのまま引き上げていく・・・だが、ショックから復帰した袁紹が慌てて引き止めるのであった。

「お待ちなさい!!!・・・貴方達何の為にここへ来たと・・・」
「連合の総大将ならお前がやれ・・・大方それが目的の軍議なんだろう?・・・好きにしろ・・・こちらも好きにやらせてもらう」
「そうね・・・それがいいのかもしれないわね・・・」
「異論はない」

別の意味でまとまりが出来上がっている三者がそれだけ言い残すと、その場を去っていく・・・残された袁紹と公孫賛は・・・

「ムキーーーーーーッ!!!!、なんなんですの!?、あのムッツリ男にクルクル小娘にネクラ女は!!!?」
「いや・・・(しもうた!?・・・逃げ遅れた!?)」

この後、しばらく公孫賛は袁紹の愚痴につき合わされ、ヘトヘトのまま自分の陣地に引き上げることになるのであった・・・まさに後の祭りであった。



どこ吹く風よと辺りを見物しながら引き上げる天道と、その後を慌てて追いかける朱里・・・

「ご主人様ーー!!!?」
「・・・どうした?」
「どうしたじゃありません!?・・・宜しかったんですか?」

朱里の戸惑いももっともである・・・いくら天道だけではなく曹操も孫権も同様の反応とはいえ、総大将(現時点意味無し)の袁紹にあんな振る舞いをすれば、後でどんなしっぺ返しがくるのか・・・
だが朱里の心配をよそに、天道は余裕の態度を崩そうとはしない・・・

「何が来ようとも関係ない・・・俺が望めば、総ては俺の味方になるんだからな・・・」
「・・・はぁ・・・」

すでに恒例になりつつある天道語録に、朱里はため息ともなんとも言い難い『はぁ』としか言えなくなるのであった・・・


その時・・・連合の陣内から悲鳴にも似た叫び声が響いてくるのであった。


「ば・・・化け物だぁーーーー!!!!!」
「「!!?」」

天道と朱里がすぐさまそちらの方向へ走り出す・・・自軍の陣地に程近いのだ・・・まさか愛紗や鈴々に・・・
だが、彼らが見たのは天道軍の兵士達ではなく、西涼連合の兵士達がワーム達に追い回されている姿であった。

「あれは・・・」
「西涼の方々です!・・・ご主人様!?」
「わかって・」

天道が助けに入ろうとしたとき、それよりも早くワーム達を狙い打つ矢があった・・・曹操率いる魏軍である。
魏の猛将軍、夏候惇と彼女の姉妹である夏候淵が兵士を指揮しながら、巧みにワームを追い立てていく・・・
天道と朱里の目にも、その動きが専門に訓練された者の動きであることが手に取るようにわかった・・・決して深追いをせず、矢でけん制しながら正面ではなく、背後から複数で槍を用いて突き刺す・・・確かに訓練すれば、ある程度幼体相手なら戦っていける戦術である・・・

だが、その中の一匹が成体に脱皮し、クロックアップを使用するのであった。

「マズイ!」
「あれは!!」

成体はノミに近い形態をしており、空を飛びながらクロックアップの超速で兵士を次々と薙ぎ倒していく・・・その様子に若干焦りが見えた夏候惇であったが、彼女の目の前を、『ハチ』のような物が通り過ぎ、クロックアップを解いたワームに激突し、成体を仰け反らせる・・・


「春蘭、秋蘭・・・だから言ったのよ・・・貴方達と兵士だけではまだ辛いって・・・」
「華琳様!?」

魏軍が一斉に曹操の方を振り向き、平伏する・・・


右手に愛鎌『絶』を・・・

左腕にライダーブレスを装着した曹操が、まるで汚らしいものを見るような目でワーム達を見る・・・

「私の兵士達をお前達のような虫ケラがいたぶるなって、想像を超えた不愉快よ・・・死んで出直してらっしゃい!!」

絶を地面に突き刺し、空いた右手にザビーゼクターが乗せ、左腕のブレスに装着する曹操・・・そして・・・


   「変身・・・」
<<HENSHIN!!>>


電子音声とともに、曹操の姿が『仮面ライダー・ザビー』に変わっていく・・・その姿に呆然となる朱里・・・そして・・・

「あれが・・・ザビーなのか・・・」

何か思う所がある天道・・・

『マスクドフォーム』に変身したザビーは素早く絶を拾い上げると、幼体に斬り掛かる・・・
ザビーは本来武器を一切使用しない打撃戦が主体なのだが、それを嫌った曹操が自分の手持ちの武器である絶を好んで使用するのであった・・・結果、ライダーの力によって振るわれる絶は正に死神の鎌のような破壊力で、次々ワーム達を蹴散らしていく・・・

その異様なまでの姿にたじろぐワーム達であったが、背後から援軍のワームが到着すると、戦意を取り戻し、再び攻勢を見せてくる。

「うっとしい虫ケラね・・・」

その様子にイラつくザビー・・・魏軍も負けじとザビーに続いて反撃を始める・・・だがその時、ワームの一体が夏候惇の背後に迫るのを彼女は目にする・・・

「春蘭!!」
「!!?」

気がついた時には、すでにワームの魔手が彼女に肉薄しすぎていた・・・今からではキャストオフしても間に合わない・・・

絶叫するザビー・・・
だが・・・そのワームを『紅い』何かが吹き飛ばす・・・あれは・・・

その紅い何かを目で追いかけていくと、天道の手によって掴まれ・・・そして・・・


   「変身!」
<<HENSHIS!!>>


腰のベルトに装着され、彼の姿を『仮面ライダーカブト』に変えるのであった。

「お前・・・」
「まさか・・・」

夏候惇も夏候淵も魏軍の兵士も驚愕で固まる・・・カブト・マスクドフォームは打撃でワーム達を薙ぎ倒しながら、ザビーの背後に立つ・・・未だショックから立ち直れないザビーにカブトは声をかけるのであった。

「おい!!雑魚を一掃するぞ・・・」
「・・・貴方・・・まさかライダーだったなんて・・・」
「俺のほうも驚いている・・・俺以外でこの世界にライダーがいたなんてな・・・」
「・・・いいわ・・・貴方の意見を今日は聞いてあげる・・・」

ワームに取り囲まれるカブトとザビー・・・だがそれさえも彼らの作戦の内なのだ・・・
なぜならば・・・


「「キャスト・オフ!!」」


キャストオフでアーマーを吹き飛ばして、弾丸のような攻撃を繰り出すカブトとザビー・・・その威力に幼体のワームが全て爆死してしまう・・・


<<CHAGNGE BEETLE!!>>
<<CHAGNGE WASP!!>>


ライダーフォームにキャストオフしたカブトとザビーを見て、分が悪いと判断したのか、最後の成体ワームがクロック・アップして逃げ出そうとするが、それを見逃すカブトとザビーではない・・・すぐさま後を追いかける。

「「クロック・アップ!!」」
<<CLOCK UP!>>

その瞬間から、彼らの時間軸は別次元に移行する・・・連合陣営のいたるところを飛び回るカブト・ザビー・ワーム・・・見た目には何かが通り過ぎているのをかろうじて常人も感じれるのだが、実際は何かが通り過ぎるなどというレベルではない・・・

ザビーの絶がワームを連続で切り裂く・・・ノミに似た成体も負けじと右手から針を連続で射出するが、ザビーはその攻撃を絶を回転させることで防ぎ切ってしまう・・・
飛び道具ではラチがあかないと、力任せに殴りかかるワームであったが、ザビーは絶をワームに向かって放り投げると、自身も突撃するのであった。

高速で回転しながら飛来した絶の直撃を受けて大きく仰け反るワームを、ザビーは回転蹴りの三連撃で追い討ちをかけて吹き飛ばす・・・そして、地面に転がったワームに最後の一撃を加えるのであった。

「ライダー・・・スティング!」
<<RIDER STING!!>>

ザビーゼクターの先端に大量のタキオン粒子を収束し、それをワームの体内に突き刺すザビー・・・収束されたタキオン粒子がワーム体内で暴発し、まるで猛毒のような勢いで体内からワームを破壊する・・・


爆発するワーム・・・そして、

<<CLOCK OVER!!>>

カブトとザビーがその姿を衆目に晒すのであった・・・ちょうどその時、騒ぎを聞きつけた愛紗と鈴々もやってくる・・・

「ご主人様っ!!」
「・・・って、愛紗!!!アレはっ!!?」
「!!?・・・アレは・・・ご主人様と同じ・・・」

互いに背を向け合う二人・・・重い沈黙が場に流れる。だが最初に口を開いたのはザビーの方であった。

「只者じゃないことは一目見て気がついてたけど・・・まさかライダーだっとはね・・・」
「・・・なぜライダーやワームのことを・・・?」
「ザビーゼクター(この子)がいろいろ教えてくれたのよ・・・さて・・・私も本題に移るわ・・・」

ゆっくりと歩きながらザビーは、駆けつけてきた愛紗を見ながらカブトに挑発的に告げる・・・

「私の欲しい物は二つ・・・一つ、あの美しい黒髪の義の猛将・関羽・・・」
「なっ!!」

愛紗が絶句する・・・だがザビーはそれさえ気に止めず更に・・・

「そしてもう一つ・・・あなたのカブトゼクターよ・・・さあ、寄越しなさい・・・」

『お前の物は俺の物』と言わんばかりのザビーの物言いであったが、そこは天道・・・彼女の発言を鼻で笑い飛ばす・・・

「フンッ・・・断る・・・」
「・・・でしょうね・・・馬鹿な男」


ある程度予想ができていたのか・・・不快さをさほど出さないザビーであったが・・・ザビーがカブトの隣に並んぶ・・・
その時―


 ガキャンッ!


けたたましい金属音と共にぶつかり合う、ザビーの裏拳とカブトの腕・・・


 今まさにこの世界における、初のライダー同士の戦いの火蓋が切って落とされたのだった・・・



『次回、恋姫ライダーカブト!』




翠「ここって楽しそうな所だ!・・・あ、あたいは馬超。西涼の領主、馬騰の娘だ」
愛「な、何者だ!!キサマっ!!」
曹「私の名は覇王・曹孟徳!!!・・・貴方という存在に、心奪われてた女よっっ!!!」
華「我が武こそ最強!!・・・死ね!関羽!!」

ついに始まる連合軍と董卓軍との戦い!・・・そして現れる新たなライダーの影・・・

恋「恋・・・みんな守る・・・変身・・・」



 天の道を往き、総てを司る!!







[10942] 第四話 汜水関・攻略戦
Name: 突撃戦法◆5a858fe9 ID:5a44932f
Date: 2009/10/05 02:16
愛紗達の前で信じられない光景が繰り広げられていた・・・
人々を守る者である筈のライダー同士が、激しく火花を散らしあっているのだ・・・

ザビーが裏拳、後ろ回し蹴り、そして最後に絶による斬り上げという連携を繰り出すが、カブトはその打撃を捌き、回避し、そして絶の斬撃をクナイガン・クナイモードで受け止める。

「へぇ~・・・やるわね」
「・・・何のつもりだ?」

刃を弾き返して間合いを開いたカブトがザビーに問いかける・・・その問い掛けにザビーは、

「私は曹孟徳!!・・・欲しい物は必ず手に入れる女よ!!関羽雲長!!そしてそのゼクター・・・貴方が私に寄越す気がないのなら力づくにでも手に入れて見せるわ!!?」
「・・・そうか・・・」

クナイガンと絶が火花を散らしながら激突する・・・

「ならば覚えておけ・・・俺は天道総司・・・天の道を往き、総てを司る男・・・」
「きゃあっ!!」

絶の刃を回避し、ザビーを蹴り飛ばすカブト・・・その威力に地面を転がされるザビー・・・

「星がどれほど輝こうとも、太陽には敵いはしない・・・」
「・・・クッ・・・キサマッ!?」

見下ろすカブトと見上げるザビー・・・この構図が覇王の逆鱗に触れたのか、怒りを露に立ち上がり再び斬りかかろうとするが・・・その時、二人の間を野太い声が割って入ってきたのだった。


「待たれいぃ!!!!!」
「「!!!?」」


そこにいたのは西涼連合軍を引き連れた2mに届くがっしりした体格の巨漢・・・西涼連合の長・馬騰であった。

「ここは西涼連合の陣地なるぞ!!・・・他軍の将とはいえ、勝手な振る舞い!?許されるとお思いか!?」
「・・・・・・」
「・・・・・・」

覇気に満ちた落雷に似た怒号に、動きを止めるカブトとザビー・・・その隙に、各陣営の武将たちが駆け寄ってくる。

「ご主人様!!」
「お兄ちゃん!!」
「ご主人様~!!」

愛紗、鈴々、朱里がカブトに駆け寄る。

「華琳様!」
「お怪我はありませんか?」

春蘭、秋蘭も駆け寄ってくるが、ザビーはそれを自ら制止し・・・カブトとザビーが同時に変身を解除する。

「・・・興が削がれたわね・・・いいわ。」
「・・・そうだな」
「それにしても・・・あなたが関羽?」
「貴様が曹操か!?」

自分の主に対して問答無用での攻撃を加えた曹操に敵意剥き出しの愛紗であったが、曹操の方はそんなものお構いなしに、とても恍惚とした笑みを浮かべて愛紗に抱きついてしまう。

「なっ!?」
「そう・・・私の名は曹孟徳!!!・・・貴方という存在に、コ・コ・ロ!奪われた女よっっ!!!?」
「何が心奪われただ!?・・・ふざけるな!?」

その愛の抱擁を無理やり解き、身構える愛紗・・・愛紗の背筋にかつてない悪寒が走る・・・
そんな愛紗の態度に腹を立てたのは曹操本人ではなく、側近の夏候惇こと春蘭であった。

「キサマッ!?・・・華琳様の御眼に掛かっておきながら何たる無礼な態度だ!?」
「無礼?・・・ふざけるな!!!・・・我が主に対して問答無用で襲い掛かるなどという無礼を先に働いたのはそちらではないか!?」
「なにぃ!?」

互いに怒髪天を衝く勢いな愛紗と春蘭が互いの獲物を手に構えるが、それを曹操が制止する・・・

「やめなさい春蘭・・・」
「華琳様!!、ですが・・・!?」
「私の言うことが聞こえなかったの、春蘭?」

凄みの効いた曹操の低音の声にたじろぐ春蘭・・・まさに彼女にとって曹操とは唯一絶対の主であるのだ・・・
そんな春蘭の態度に満足したのか、またしても余裕の笑みを浮かべた曹操が愛紗に話しかけてくる。

「私の軍に来れば貴方の理想を叶えられるわ・・・こんな貧乏軍の貧乏太守なんかの元にいる必要がどこにあるのかしら?」
「なにをっ!?」
「我が軍の選りすぐりの精兵と、それを従える大将軍としての地位・・・優秀な人材と潤沢な軍資金を持って貴方の理想を・」
「ふざけるなっ!!!!?」

それは今までで一番大きな声、一番大きな怒りだったかもしれない・・・己の獲物を曹操に突きつけると、愛紗は胸を張り堂々と言ってみせる。

「我が理想とは、天の御使い・・・いや!天の道を往かれるこの方と共にこの乱世を鎮めることだ!・・・貴様の助けなど借りる必要などない!!」
「・・・・・・」
「私を侮辱したことなら受け流そう・・・だが我が主を侮辱した貴様を私は決して許さん!!」
「・・・そう・・・わかったわ」

曹操がそっと目を閉じ、諦めたかのように見えた・・・んが、

「『今日の所』は大人しく引いてあげる・・・でも覚えておきなさい!、私は欲しい物は力ずくでも手に入れて見せるわ・・・それと、私のところに来てももう優しくしてあげない・・・たっぷりと!その肌が紅く染まりながらも!痛みが快感になるぐらいに嬲ってあげる・・・」

そして天道のほうを向き、彼にも一言言い残していく・・・

「関羽と貴方との決着とゼクター・・・今日のところは預けておくから、関羽とその首とゼクターを大事にしておきなさい・・・いいわね?」

曹操はそのまま歩き出すと、なんの挨拶もせず馬騰の隣を通り過ぎる・・・その後を曹操の軍が続くが、さすがにその態度に西涼の兵士達から不満の声が上がった。

「何だアレは!?」
「好き勝手やっておいて何の謝罪も無しか!?」
「大国だからってやりたい放題しやがって・・・」

不満爆発の西涼の兵士であったが、それを馬騰が諌める。

「止めぬか・・・曹操がいなければあの化け物どもを退けられなかったのだ・・・感謝こそすれ、逆恨みなど愚の骨頂だ・・・・」
「しかし!」
「今はそれよりも・・・」

馬騰の目が天道を見つめる・・・そして・・・

「あの化け物を退治してくれたこと・・・感謝させてもらうぜ、天の御使い殿?」


その顔は、珍しい玩具を手に入れた子供のそれによく似た笑い顔そのものであった・・・


 
 第四話 『汜水関・攻略戦』



「だーはっはっはっはっ!!!・・・あんた本当に強えーんだな!?」
「当たり前だ・・・俺は人類総勢60億の頂点に立つ男だぞ?」

得意げに天に指差す天道の肩をバンバン叩く馬騰・・・そしてなぜか即効で意気投合している二人についていけない天道軍ご一行様方・・・
西涼の陣営に案内された天道達を快く迎え入れた馬騰は、天道から戦いの経緯を一通り聞いていたのだ・・・

「いや~・・・天の御使いとか呼ばれてるからどんなイケすかねー野郎かと思ってたんだが、中々の御仁じゃねーか!」
「いや・・・あんたも伝承(はなし)以上の男だな・・・安心したぞ」

天道のその言葉になぜか得意げになる馬騰・・・伝承によればかつて貧しい生活を送ったことのある馬騰は、温厚にして賢明であり人望も厚い将で名高く、後の蜀の五虎将である錦馬超の父としても知られていた・・・

そしてここに来て天道はあることに気がつく・・・

「(関羽、張飛、諸葛亮・・・まだ仲間になったわけではないが趙雲・・・なるほど。この世界においての俺のポジションはさしずめ『蜀』の『劉備』といったところなのか・・・)」

なぜ自分が呼ばれたのか?・・・最初はワームとゼクターが絡んでいると思っていたのだが、どうやらそれだけではなさそうなのだ・・・
なぜこの世界における武将達はこうも伝承と異なっているのか?
なぜ自分が劉備の役に選ばれたのか?

「(どうやら思っていた以上に複雑な何かがあるのかもしれないな・・・)」

一人考え込む天道であったが、そんな彼の背後からよく通る澄んだ声が天道を思考の海から拾い上げた。

「おお~い!親父~!!!」
「ん?・・・帰ってきたのか翠?」

天道が振り返った先にいたのは、焦茶色の長い髪をポニーテールした活発そうな少女であった。

「・・・ったく、親父の代理とかいってアッチコッチ慣れないとこ行かされたりやらされたり散々だ・・・って、お前等誰?」
「こらっ!翠!?・・・お客さんに失礼だ!!、天道軍の総大将と将軍様たちだぞ!?」

男のような口調で不満をたれる少女を諌める馬騰であったが、翠と呼ばれた少女は気に留めることなく、むしろ興味深げに天道を見つめていた。

「ほほ~・・・じゃああんたが袁紹を口論でぶっ飛ばした上に、ウチを襲った緑色の化け物を退治してくれたっていう『天の道を・・・』なんだっけ?」
「・・・フッ・・・覚えておけ・・・俺はて・」
「天の道を往かれぇ!!」
「総てを司る男ぉ!!」
「天道総司様です♪」

何時もの口上を言おうとした天道であったが、愛紗たちに先を言われ、せっかく伸ばした天を衝く指をすごすごと下ろしてしまう・・・

「そうそう!・・・それだそれ!!」
「おい!翠!!・・・お前もきちんと自己紹介しろいぃ!?」
「あっ!?・・・ゴメンゴメン!!、あたいの名は馬超、字は孟起!・・・見ての通り西涼の領主、馬騰の娘さ!」
「「「「・・・見ての通り?」」」」

天道軍の四人が一斉に馬騰と馬超を見比べる・・・辛うじて髪の色と眉毛が濃いぐらいしか遺伝の後が見受けられないが・・・

「もう一方が優秀だったんだな・・・」
「そうですね・・・」

即座にそう納得してしまう失礼な天道と朱里(笑)
ちなみに馬騰と馬超はなんのことだかわかってはいない・・・

「あ!・・・そうだそうだ!!・・・あんたらが天道軍だってんなら、ちょうど伝令を受けてたんだ!」
「伝令?」
「ああ・・・袁紹からの伝令なんだけど・・・どうやらあんたらは後曲らしいぜ」
「後曲だと!?」
「ええ~!!?」

愛紗と鈴々から不満の声が上がる・・・まあ無理もない。彼女達は生粋の武人として華々しく戦う前曲こそが自分達の戦場だと思っているのだから・・・
だが、どれほど優秀な武将を抱えていても、戦の基本は兵士の数・・・その点では天道軍はもっとも少ないのだ・・・むしろ大軍相手に最先方なんぞ任されることほど迷惑なものもない・・・

「まあ袁紹にしては悪くない判断だ・・・袁紹がしたのかどうかは知らんが・・・よし皆、準備するぞ・・・」
「はっ!!」
「ちくしょーーーー!!なのだ~」
「鈴々ちゃん?・・・後曲には後曲の戦い方がありますから・・・」
「ついでに私ら左翼だから・・・後ろからあたいらの活躍をしっかり見物しててくれよな!!」
「ああーー!!ずっこいのだああ!!」
「へへへぇ~ん!!・・・戦に卑怯もずっこいもねぇーんだよ!!?」
「「・・・はぁ~・・・」

論点のズレた言い争いをする鈴々と翠にため息が漏れる愛紗と馬騰・・・そんな二人に天道と朱里は苦笑いするしかないのであった・・・



 ―汜水関―


都である洛陽を守る最初の関門である汜水関に向け、連合軍の大攻勢が始まったのはしばらくしてからであった・・・

「オーホッホッホッ!!!・・・左翼を涼州連合、右翼を伯珪さん、前曲を魏と呉がお取りなさい!・・・そして本陣となる後曲を、貧乏で戦力的な魅力がまるでないくせに太守の態度だけが人一倍な天道軍と、この三国一の名家にして戦力、資金が潤沢で、太守の魅力が溢れんばかりのこの袁家が指揮します!!では皆さんの働きを存分に期待していますわ♪・・・オーホッホッホッホッ!!!」

高飛車な物言いで発した袁紹の号令の元、連合の前曲が出陣する。その光景を後ろから眺める形になってしまった天道軍であったが、鈴々と愛紗からはやはり不満の声が上がっていた。

「ううぅ~・・・つまらないのだ!!鈴々も前曲に行きたいのだ!!!?」
「こら!鈴々!?・・・だが、確かにこのようにただ見ているだけというのも歯痒いものですね・・・」
「仕方ありませんよ~・・・私達一番兵の数が少ないですし・・・」
「・・・・・・」

前曲で魏軍が夏候惇を先頭に汜水関に向かって突撃をかける・・・

「夏候惇・・・あの者も相当な強者ですね・・・」
「・・・よかったのか、愛紗?」
「どうされたのですか、ご主人様?」

戦場の様子を黙ってみていた天道が重い口を開き、愛紗に問いかける。

「曹操が言っていたことだ・・・俺の元で戦うよりも、曹操の下の方が良い条件で戦える・・・お前の理想を早く叶えるのなら俺よりも・」
「それ以上言われますと本気で怒りますよ、ご主人様・・・・」

愛紗の「本気の静かな怒り」に軽く驚く天道・・・彼は愛紗を思っての提案であったが、彼女にしてみればこれほど屈辱的なことはないのであった。

「誰が何をどう言おうとも私の主は貴方ただ一人です・・・それを貴方さまがお疑いになるのですか?」
「イヤ・・・そういうわけでは・」
「ならばこの話はここで終わりです・・・それとも・・・」

怒っていたかと思えば急にしおらしくなり、俯きながら髪の先をいじりだす愛紗・・・

「・・・それとも・・・貴方様にとってもう私はいらないのですか?」
「・・・愛紗・・・」

プッ・・・と軽く噴出した天道が、愛紗がいじっていた髪の先を奪い取り・・・


一瞬だけ口付けをする・・・


「!!!!!!!?????」
「これからもよろしくな、愛紗?」

一瞬で最高潮に真っ赤になる愛紗・・・天道はその表情が、仕草が愛しくてたまらないのだ・・・

だが、はた目にはバカップルのいちゃつきにも取れる二人のやり取りに、朱里と鈴々が不満を持たないはずがなかった・・・

「お兄ちゃん・・・」
「ご主人様?」

天道にすがりつく二人に、天道は困ったような・・・それでいて二人にも別の親愛が芽生えるような・・・そんな気持ちで何も言わずに、ただ微笑みながら頭を撫でるのであった・・・


妙な空気が流れ出した天道軍・・・だがそんな彼らに袁紹からの伝令が届く・・・

「魏・呉軍に混ざって城門突破に協力しろ?・・・だと?」
「援軍なんてどう考えても必要ないのだ・・・」
「嫌がらせ・・・もしくは何も考えていないだけなのですか、袁紹は?」
「・・・おそらく両方かと・・・」

うんざり顔の鈴々と愛紗と、頭を抱える天道と朱里・・・彼らに敵よりも、袁紹の方が数段迷惑以外の何者でもないのだが、一応総大将(誰も認めてないけど)の命令に従う義務がある・・・

「仕方ない・・・天道軍、前進!!邪魔にならないように「適当」に前曲に移動する・・・」
「そうですね・・・形だけ参加させてもらいましょうか?」

天道の判断に朱里も賛成し、天道軍が前進を始めた・・・が、その様子を見ていた曹操サイドと孫権サイドが同様な意見を同時に採用する。


 ―曹操軍陣営―


「前線では我が軍がずいぶん苦戦してるわね・・・これだから、バカ(袁紹)に付き合うとろくな事がないのよ・・・」

前線の様子を見ていた曹操から不機嫌な言葉が漏れる・・・もっとも無策で突っ込めと言われた曹操の気持ちも考えるとあながち解らなくもないが・・・
そんな曹操に猛将・夏候惇こと春蘭が一歩前に立ち、

「我が軍が大攻勢を仕掛けています!今しばらくお持ちいただければ・・・」

勇ましい発言をするのだが、そんな春蘭に水を差す者がいた。

「・・・待ちなさい春蘭!」
「桂花!?」

小柄な体型になぜかネコミミフードを被った少女が、春蘭の隣に立つのであった。

軍師・荀彧

曹操軍きっての名軍師であり、曹操からの信頼も厚く、そしてなによりも本人が曹操に心酔しきっている少女である。

「甲羅に首を引っ込めた亀を殺すには餌が必要です。華琳様・・・」
「・・・桂花、続けなさい。」
「はい!ありがとうございます!!・・・幸い、後曲から天道軍が動き出した模様です。我が部隊はこれを利用して天道軍の前進に合わせ、素早く後退してみてはどうかと・・・」
「なにっ!?、前曲を譲れというのか桂花!!!?」

春蘭か驚愕と非難を交えた声が上がるが、桂花はそれを冷ややかな目線で見下ろし、

「フンッ!?・・・無形の誉れよりも実益を取るわ。天道軍に敵将を排除させて、その機を逃さず城門を突破するのよ・・・」
「・・・いいわ。その案を採用しましょう・・・」
「!!?」
「ありがとうございます!!」

曹操の言葉に対照的な表情を浮かべる両者・・・だが曹操にしてみれば・・・

「(あの男を囮にする?・・・面白いことになりそうね・・・)」


 ―孫権軍陣営―


「どうやら魏軍が天道軍の前進に合わせて後退していくようですね・・・」

後ろからその様子を眺めていた呉軍の軍師・周瑜が何かを含めた笑い顔で孫権に告げるのであたった・・・その言葉を受け、一拍おいてから孫権は自分の斜め前で待機していた武将に命を下す。

「思春・・・」
「ハッ!!」
「我が軍も後退させろ・・・曹操の狙いは天道軍を囮にすることだ・・・このままでは我が軍もとばっちりを受ける・・・」

呉の猛将にして孫権の親衛隊長の甘寧にそう告げる孫権に、周瑜は満足げな笑みを浮かべるのであった。

「(とりあえずは合格ですよ・・・我が王よ・・・)」


 ―前曲―


「・・・魏呉もだいぶ苦戦しているようだな・・・」

天道が兵士達を指揮しながら呟く・・・
大混戦の様相を呈している前線を掻き分けるように進んでいた天道軍であったが、巨大な城壁を前に立ち往生している魏と呉の軍勢の前に完全に足を止めることとなっていた。

「これだけの乱戦に割って入るなどと正気の沙汰ではありませんよ!!」
「ご主人様!!・・・ここは危険ですからもう少し下がってください!!」

愛紗がそこらしから飛んでくる攻撃を裁きながらぼやき、朱里が天道を下がらせようとするが、その時天道がいち早く周囲の異変に気がつく。

「しまった!!?・・・兵を下がらせろ!?愛紗!!?朱里!!?」
「「!!??」」

珍しく叫ぶ天道にあっけに取られかけた二人であったが、徐々に下がりだす魏呉の軍勢を見て、状況を理解する。

「これはっ!」
「鈴々達の為に道を空けてくれてるのかな?」
「違います~!!?私達を囮にするために下がってるんですよ~!!」

鈴々の暢気な展開に涙目でツッコむ朱里であったが正直それどころではない・・・このままだと朱里の言ったとおり、篭っている敵の餌にされてしまう・・・

今ならまだ間に合う・・・

天道がそう思ったとき、彼は背後から迫る人とは違う鋭い殺気に振り返る。


「ご主人様!!お早く撤退を!!」
「このままでは我が軍が!!」

呆然とその場に立ち尽くす天道を何とかしようとした愛紗であったが、更に見計らったかのようなタイミングで汜水関の門が開くのであった・・・


「連合の烏合の衆よ!!!・・・天下無双の武を持つこの『華雄』の戦斧の餌食になりたい者は前へ出ろ!!!」


開いた門から傾れ出てくる軍勢の先頭を切っていたのは、この汜水関を守る将にして『無双の武』を自負する戦斧の使い手、『華雄』であった。

「いけません!!敵将が・・・」
「・・・悪いな皆・・・どうやらこっちも俺達を逃がしてはくれないらしい・・・」

天道の視線の先を三人が見つめる・・・

そこにいたのは、天道軍の衣装を身に纏った兵士であったがどこか様子が違う・・・戦場にいながら他の兵士たちとは違い、余裕の笑みを浮かべて、どこか場違いな印象を与えてくる・・・

「(ニヤリッ)」
「!!?・・・ご主人様!!?」

・・・その笑みに愛紗がいち早く気がつく・・・と同時に、その兵士が自らの正体を明かすのであった・・・

現れたのは、蝿に似た姿のワーム・・・そう、成体のワームであった。

「大方戦場に紛れて俺を狙っていたんだろうな・・・愛紗、鈴々、朱里・・・兵士を連れて今すぐ撤退しろ・・・」

天道の手に、空の彼方から飛来したカブトゼクターが握られる・・・

「ご主人様を置いてなどいけません!!」
「そうなのだ!!・・・それにあの目の前の敵も足止めしないと・・・」

朱里と鈴々がそれぞれ噛み付くが、ワームも華雄も待ってはくれそうもない・・・このまま両方に攻撃を食らえば間違いなく天道軍は壊滅・・・連合軍にも大打撃を与えかねないのだ・・・
ならばこそ、天道はワームと軍を両方を抑える殿を自分一人で務める気でいたが、決意を固めた愛紗がそれに異議を申し立てる。

「いけませんご主人様・・・いかにご主人様でもこの軍勢とワームの両方を抑えるなどとは不可能・・・それに以前おっしゃってられました・・・」
「・・・・・・」
「『ワームとの戦い以外でライダーの力は使わない』・・・生身で一軍全てを抑えられると本気で思っていられるのですか?」
「・・・ならばどうするのが最良だ?」

天道の真剣な問いかけに、珍しく愛紗は笑顔での返答をする。

「華雄めはこの私が討ちます!・・・ですからご主人様はワームとの戦いに集中してください!!」
「愛紗!!危ないのだ!!」
「そうです!!?・・・いくら愛紗さんでも敵の数が多すぎ・・・」
「ご主人様・・・早急なご判断を・・・」

愛紗が天道の返答を急かす・・・

 
 ―絡み合う二人の視線―


一呼吸おいた、天道は深呼吸すると・・・カブトゼクターを腰のベルトに差込み・・・

 「変身!」
<<HENSHIS!!>>

その姿を仮面ライダーカブト・マスクドフォームに変えるのであった・・・

「愛紗・・・俺達の軍の命運をお前に託すぞ・・・」
「!!?・・・承知しました!!」

カブトのその言葉に俄然闘志が燃え上がる愛紗。

「鈴々!!軍勢の指揮を!・・・朱里は補佐をしてやってくれ!!」
「わかりました!!」
「ううぅ~~!・・・二人してカッコつけて後がどうなってもしらないのだ!!」

ふてくされながらもきちんと自分の役割を忘れずに軍の指揮をする鈴々の姿を微笑ましく見送ったカブトと愛紗は、すぐさま振り返り、背中合わせになりながら互いの敵に視線をやる・・・

「これより敵軍勢に突撃をかける!!この関羽雲長の青龍刀に全てを託せ!!我が軍の勇者達よ!!」
「おおおっーーーー!!!」

愛紗の号令の元、関羽親衛隊が愛紗とともに敵軍に突撃を果たす・・・

そしてカブトの方も早々に勝負をかけるのであった。

「キャスト・オフ!!」
<<CAST OFF!>>

ゼクターホンを操作し、カブトの体から銀色の装甲が弾け飛び、紅のボディーカラーと青い瞳を持ったライダーフォームが姿を現す。

<<CHAGNGE BEETLE!!>>


天道軍とワームと董卓軍・・・三つ巴の戦いの火蓋がこうしてきって落とされたのであった・・・


 ―虎牢関―


「ぬあにっ!?・・・呂布ちんがどこにもおらんやと?」

汜水関の激闘が続く中、その先にある最大の難所といわれる虎牢関において異変が起こっていた・・・
ここを任されたのは董卓軍の中でも現実感を持った『張遼』と、三国志の世界において最強の呼び名で知られる呂布なのだが・・・
今、その呂布が行方不明だという配下からの報告に、頭を抱えたのが張遼その人であった・・・
関西弁とサラシと袴とポニーテールという独特なスタイルで頭を抱える張遼・・・断っておくがこれが彼女の立派な戦着なのである・・・

「しもうた・・・油断してもうた・・・食べ物さえ与えとけばじっとしてるやろうと思うとったのに・・・」

苦悩する張遼・・・彼女が与えられた作戦には、呂布は要としての役目があるのだ・・・行方不明など論外以外の何者でもない・・・

「ああああーーーーーー!!!!!!・・・どこいったんやーーー!!!!?」


 彼女は思いもしていなかった・・・まさかその呂布が遥か汜水関に行っているなどということは・・・


 ―汜水関―


汜水関の城壁の一番高い所から戦場全てを見下ろす少女がいた・・・褐色の肌、赤い瞳と髪の毛をした少女の右腕に・・・オレンジ色のゼクターが止まり・・・そして・・・

「セキト・・・皆・・・待ってて・・・」
<<HENSHIS!!>>

その姿を、オレンジ色のボディー、突き出した右肩の装甲、そして特異なマスクを持った『仮面ライダーケタロス』に変えるのであった・・・

<<CHAGNGE BEETLE!!>>

「皆を守る・・・その為には・・・カブト・・・殺す・・・」



『次回、恋姫ライダーカブト!』



曹「苦戦しているようね天道・・・ここは一つ貸しにしてあげるわ♪」
周「これからの戦は量よりも質・・・そしてその象徴となるのが『ライダー』です」
孫「強過ぎる力が争いを作る・・・お前の力は強大過ぎるのだ、天道!!」
張「今、洛陽には空き家のゼクターが二つ転がっとる・・・こりゃ各陣営による争奪戦になるで・・・」

ライダーを中心に変わりゆく世界の常識!・・・そして激しく火花を散らせるカブトVSケタロス!!

愛「ご主人様!!?」
恋「終わりだ・・・ライダービート!」



 天の道を往き、総てを司る!!





[10942] 第五話 『カブトVSケタロス』
Name: 突撃戦法◆5a858fe9 ID:20c46476
Date: 2010/05/15 14:10


晴れた日には東京タワーがよく見えるとある路地裏・・・
その店は隠れた名店として料理評論家達の間でも絶賛されていた・・・フランス家庭料理の店ながら、出される料理の数々にはフレンチ以外の技術も惜しみなく使われており、型に嵌らないメニューが評判の名店・・・


 『Bistro la Salle』


一番のオススメメニューがお昼のランチの『ひよりみランチ』というこのお店の厨房にて、一人の男が休憩時間を割いて夜の仕込みを黙々とこなしていた。

その精密な手捌きを見れば、本場のフレンチシェフが唖然となっていただろう・・・
その豪快な火の使い方を見れば、中国の特級厨師が今すぐ自分の店に連れて帰りたがっていただろう・・・
その繊細な彩りを見れば、老舗の懐石料理屋が是非とも勉強に来たかもしれない・・・

だが何も料理の腕だけが超一流というわけではない・・・

そう・・・この男こそ、己こそが最も優れた天才と自負し、且つそれに見合った評価を周囲から得ている『天の道を往き、総てを司る』男なのである。


その時・・・仕込みで煮ていたスープの味付けをチェックしていた『彼』の背後から、緑色の何かが発光する・・・

だが彼は驚かない・・・それが何なのかを彼はよく知っているから・・・

「・・・呼んだ覚えがないんだが・・・今日はいったい何のようだ?」

振り返らず、鍋の中身を真剣な目で見る彼の背後には、『ハイパーゼクター』が空中に浮かんでおり、突如ハイパーゼクターがある映像を映し出す・・・

映し出された映像には、混戦状態になっている無数の兵士達と、ワームと戦うカブトの姿が映し出されていた・・・

「フッ・・・そうか・・・アイツもようやく己が天の道を歩き出したのか・・・」


その映像をいつの間に食い入るように見つめていた『彼』は、ハイパーゼクターにあることを伝える・・・

「向こうに行くなら一緒に表に停めてあるのを持っていってけ・・・俺からの餞別だ・・・」

だが映像を見るのを止め、再び仕込みに専念する彼―『天道総司』の表情はとても面白い物を見た子供のようにはしゃいでいるように見えるのであった・・・


 第五話 『カブトVSケタロス』


「我が戦斧の餌食なれぇぇぇーー!!!」
「はあああぁぁぁぁっっ!!!」

愛紗の青龍刀と華雄の戦斧が激突する・・・

華雄には不満があった・・・そもそも華雄が与えられた『篭城して敵戦力を削げ』というものであったからだ。

「なぜ武人の自分が敵を前に引き篭もらなければならない!?」

彼女は声を荒げて抗議するが、その返答は更に辛辣なものであった。

「お前如きがそれ以外に役立つ手段などあるはずはない・・・呂布と違いゼクターに選ばれなかったお前にはな・・・」

『ゼクター』に選ばれなかった・・・それだけのことで自分は侮られたのか?

「ふざけるな!!・・・貴様らぁぁぁ!!?」
「ふざけているのは貴様の方だ・・・そもそも呂布に劣る能力でありながら『天下無双』名乗ろうなどとおこがましい・・・素で勝てぬ貴様が、ゼクターを持った武将達に適うはずなかろう?」
「そういうことだ・・・諦めて篭城戦をしろ・・・いいな?」

そう言って『奴等』は彼女を最後まで見下したまま去っていく・・・屈辱で腸が煮えくり返った華雄だけを残して・・・


「我が『武』こそ最強であると証明してみせる!!・・・栄えある最初の獲物として、死ね!!!」

戦斧が愛紗の首筋を狙い澄まし振り下ろされる・・・加速された刃が際どい所を通り過ぎるが、それをなんとか避けてみせる愛紗・・・

「(こいつ!?・・・この尋常ではない闘気!!・・・呑まれればヤラれる!?」

相手の底知れない闘志に一瞬臆しかける愛紗であったが、すぐに雑念を振り払う・・・今この戦場では、自分の目に映っていないだけで天道が一緒に戦ってくれているのだ・・・

華雄が放った打ち下ろしの一撃を真っ向から受け止める愛紗。

「貴様っ!?」
「生憎、私は貴様などに負けてなどいられないのだ!!」

気合の篭った言葉と共に戦斧を跳ね返し、返す手で胴を狙って青龍刀を薙ぎ払う愛紗。
その攻撃を紙一重で回避した華雄であったが、その顔は屈辱に塗れていた。

「主が隣で戦っているのに、私が無様な戦いを見せるわけにはいかないのだ!!・・・悪いが早々に終いにさせて貰うぞ!!」

青龍刀を上段に持ち替え、華雄に突撃する愛紗・・・その合間を二人が知覚できない速度で何かが通り過ぎる。
まさに今彼女の言ったとおり、彼女の主であるカブトがワームとクロック・アップして死闘を繰り広げているのであった。


ワームが左右の拳を高速で振り回しカブトに殴りかかってくるが、バックステップで回避しつつ、そこをカブトはカウンター気味の前蹴りで勢いを止め、仰け反ったところに左ストレートを叩き込む。
その威力に後づさるワームに対して更に左右の拳を連続で叩き込み、最後に後ろ回し蹴りを喰らわすカブト・・・その洗練された格闘技術はワームを明らかに圧倒していた・・・

だが、ワームもそれだけで諦めるはずもない。

ハエに似た容姿であるためなのか、背中の羽を高速で振動させ一気に飛び立ったワームが、カブトを弾き飛ばす。
地面に転がされたカブトであったが、すかさず立ち上がり、クナイガン・ガンモードを連射しワームを攻撃するが、空中を高速で移動するワームにはかすりもしない・・・

高速でその場から離脱しようとするワーム、その後を追いかけるカブト。
空中に飛び交っているはずの矢を追い抜き目に映らぬ速さで飛び去っていく影、それを追いかけるように、止まったに等しい人間の垣根を紅い閃光が駆け抜けていく・・・
影と閃光が幾度も火花を散らしながら城門を駆け上がり、上にたどり着いたとき、カブトの一撃がワームの片羽を斬り裂くのであった・・・墜落して城壁に激突するワーム。

<<CLOCK OVER!!>>

クロック・アップの終了とともに、その姿を衆目にさらすカブトとワーム。
通常空間に戻ったカブトは、ワームに背を向けながらもすかさず止めの一撃を仕掛けるためベルトの『カブトゼクター』のボタンを順番に押していく。

<<ONE!>><<TWO!!>><< THREE!!!>>

その光景をチャンスだと勘違いしたのか、片羽を失ったワームがカブトに突っ込んでいく。

「・・・ライダー・・・キックッ!!」
<<RIDER KICK!!!!>>

そのワームに渾身のライダーキックを放つカブト。

「はぁっ!!!」

―それは蹴りというよりも『刀』というべき鋭さを持った一撃で、ワームを切り裂く―

「!!!??」

カブト必殺の一撃になす術なく、爆発してしまうワーム・・・



「なにぃ!?」
「(アレは・・・ならばあの方をお待たせするわけにはいかない!)」

突然起こった城門上の爆発に華雄が驚きにあまり振り返るが、愛紗は僅かな動揺の後、何が起こったのか理解していた・・・自分の主が勝ったのだ。
ならば自分も勝って、二人で一緒に鈴々達の元へ帰るだけだ!

「フッ・・・その程度の腕で余所見など・・・よほど自惚れが過ぎるようだな?」
「なにぃお!!?」

苛烈とも言える愛紗の挑発に激怒した華雄は、果敢に切り込んでくる・・・だがそれこそ愛紗の狙いなのだ。
ただでさえ重量のある戦斧を扱い、しかも怒りに任せた無謀な乱撃・・・体力を見る見る消費していき、太刀筋の鋭さも目に見えて鈍ってくる。

「この程度で息が上がるようなら、獲物を持ち替えたほうが得策ではないか!?」
「グハッ!!?」

更なる挑発とともに、愛紗は青龍刀の打ち下ろしを繰り出す・・・本来なら避けられたはずの華雄であったが、度重なる打ち合いが彼女の体力を奪い去り、踏ん張る力が損なわれた結果、繰り出された一撃の威力に弾き飛ばされてしまう。

「勝負は決したな・・・」
「何っ!?」

地に屈した華雄の眼前に、青龍刀の切っ先が突きつけられる・・・

「このまま降伏しろ・・・お前が降伏してくれるなこれ以上の戦いをする気もない・・・」
「!!・・・ふざけるなよ!?」

青龍刀を弾き、立ち上がる華雄・・・このまま何一つ証明できずに負けるなどという事は彼女の存在意義そのものを揺るがすこと・・・

 ―ただの役立たずのまま死すなどと、天が許しても我自身が許さず―

「我が武こそ天下無双!!!・・・貴様などに負けるはずなどないのだ!!!!!」

華雄が魂の雄たけびと共に、全身全霊の一撃を愛紗に繰り出す・・・その一撃に込められた想い・・・愛紗は重々承知していた。

「お前の誇り・・・確かに受け取った!!」

構える愛紗・・・そして彼女は華雄に応えるように名乗りを上げる。

「我が名は関羽雲長!!幽州の青龍刀にして、無敵の武神なり!!」

 ―相手の全身全霊に応えられるのは、己の全身全霊のみ―


「はああぁぁぁぁぁぁぁっっーーー!!!」
「だりゃぁぁぁぁぁぁぁっっーーー!!!」


龍の刃と武の斧が閃光となって交差し、一瞬だけ場を静寂が支配した。


・・・そしてゆっくりと崩れ落ちる華雄・・・

「・・・見事な腕だった・・・できればお前とはもっと大きな場所で刃を交えたかったぞ、華雄・・・」

振り返ることはしないが、だが胸に秘めた想いを持って戦った華雄を称えるように静かに語った愛紗は、一呼吸置いて自分の青龍刀を天にかざし、高々と勝ち鬨を上げる。


「敵将・華雄!!討ち取ったりぃぃっ!!!」


響き渡る彼女の声が、汜水関の戦いが終わったのだがということを戦場全てに告げる・・・そして一拍遅れて、連合の兵士達による勝利の咆哮が鳴り響くのであった・・・その光景を見ていた曹操と孫権の両方から賞賛の声が上がる。

「フフフッ・・・益々欲しくなったわ、関羽。」
「ですが華琳様・・・今はまだ規模が小さいながらも、天道軍の実力・・・決して侮れないモノになっているはずです。」

となりで一緒に見ていた秋蘭は、今回の天道達の活躍を見てかなりの警戒心を持つようになっていた。だが、曹操はそんな秋蘭の心配を笑顔で吹き飛ばす。

「心配性ね秋蘭・・・それとも関羽の強さに怯えてうろたえる私を見てみたいのかしら?」
「・・・失礼しました、華琳様」
「あら?・・・私は貴方のそういうところが好きなのよ、秋蘭?」

その言葉に僅かに頬を赤らめる秋蘭を見ていた曹操であったが、その目は獲物を捕らえようと隙を伺う鷹のような鋭さで、関羽をしっかりと見つめていた・・・


「関羽・・・あれほどの武将を従える天道・・・やはりいずれ難敵になるやもしれんな・・・」

曹操と同じく、天道軍の活躍を見つめていた孫権もぽつりとそう呟く。

「ですがこれからの戦さにおいて、ただ強いだけの武将を揃えても意味はございません・・・」
「・・・どういうことだ、冥琳?」

主の意見に水を差したのは、腹心の部下であり、先代の友であった軍師・周瑜であった。

「先ほどの戦の最中、例のワームなる化け物が現れ、それを天道自らが退治したのとの事です。」
「何?・・・私はそのような報告は受けていないぞ!!」
「・・・申し訳ございません。何分情報も混乱しておりまして、ご報告差し上げるかどうか審査しておりました故・・・」

頭を下げる周瑜であったが言葉と雰囲気はむしろ孫権を試すかのような感じがして、孫権は不機嫌そうに眉を吊り上げる。

「ふん!白々しい・・・だがどういう意味だ?・・・意味がないとは?」
「・・・言葉の通りでございます。どれほどの武将であっても、ワーム相手に抗し切れません・・・ワームに対抗するには・・・」
「例のライダー・・・か・・・」

周瑜は主のその言葉に、満足げな笑みを浮かべる。

「猛将が抗しきれないワーム・・・そしてそれすらも超えるライダーこそ、これからの戦場において、真の切り札になる存在なのです。」
「・・・わかっている。だが・・・」
「他国はすでにライダーを自軍に取り入れ、戦力として保有しております・・・このままでは我が国は一方的な侵略を受けるだけですよ?」

周瑜が詰め寄る・・・だが孫権の迷いはそう簡単に晴れはしない。
そもそも彼女は、専守防衛に徹して遠征による民への負担を失くしたいと考えているのだ。
確かにライダーというものは強力にして戦力として実に魅力的かもしれないが、返ってその存在が争いの元凶になりえはしないだろうか?

だが隣にいる周瑜にはそのような相談ができるはずもない。彼女は戦による領土拡大と大陸統一という確固とした意志の元に自分に仕えてくれているのだ・・・

迷える若き呉の王の苦悩は、更に深まるばかりであった。


勝利の歓声が上がる・・・愛紗が勝ったのか・・・
カブトはその光景を城壁の上から見下ろしながら、マスクの中で微笑んでいた。
将軍を失ったことで、董卓軍の指揮系統は瓦解し、このままでもさほど時間を掛けずして城門も突破できるはずだろう。
一番乗りが出来ないのが少々癪ではあるが、事実上この戦を制したのは愛紗が属する天道軍なのだから今はこれ以上の戦闘は避けるべきか・・・
そんな風に考えていたカブトを下のほうから見つけた愛紗が何かを呼びかけている・・・彼女らしからぬ嬉しそうな笑みを浮かべているが、遠すぎることと戦場の轟音にかき消されて何を言っているのかまでは聞こえないが、きっと『今の戦いを見ていてくれましたか!?』などだろうか・・・

「(とりあえず陣地に帰って褒めるとするかな・・・)」

カブトが城壁から飛び降りようとしたとき、さっきとは打って変って驚愕した愛紗が何かを叫んでいる。

それを見て反射的に振り返った瞬間、背後から凄まじい威力の回し蹴りがカブトに襲い掛かる。

「グッ!!?」

ガードが僅かに遅れ、脇腹に強烈な痛みが奔り、その威力に吹き飛ばされたカブトが城壁の上を転がっていく。
痛みを抱えたまま立ち上がったカブトの目の前に立っていたのは、山吹色の装甲と左右非対称の右肩に特徴的なアーマー・・・そして巨大な戟を持ったライダーであった。

「・・・お前がカブトか?」
「・・・お前・・・いったい何者だ?」

抑揚のない口調で話すライダーに逆に問いかけるカブト・・・だが返ってきた答えは、

「・・・恋・・・」
「恋?・・・それは姓か?字か?」
「恋は・・・恋・・・」

さすがのカブトもこの返答には若干戸惑う・・・だが、目の前のライダー・・・ケタロスはそんなカブトの心境など一切気にせずに、手持ちの戟『方天画戟』を突きつけ、先ほど同様、まったく抑揚のない口調で宣言する。

「カブト・・・お前、この場で殺す。」
「・・・いきなり物騒なことだ・・・その声、お前は女か?」
「・・・(コクリッ)」
「女がいきなり殺すなどという言葉を使うもんじゃない・・・『全ての女性は心豊かで優しくあるべき』だと師匠(せんせい)も言っていたぞ。」
「・・・黙れ・・・」

僅かに怒りと戸惑いを込めた声で斬りかかって来るケタロス・・・戟を薙ぎ払いカブトを斬り飛ばそうとするが、カブトはその攻撃をクナイガン・クナイモードで受け止める。
火花を散らす刃と刃であったが、異変はカブトの方に起こった。

「(クッ!!?さっきの一撃・・・まだダメージが・・・)」

脇腹に受けたダメージが思った以上に重く、踏ん張りきれずに吹き飛ばされるカブト。
そこへ追撃を加えてくるケタロスは、続け様に突き二発、薙ぎ払い、そして斬り上げというコンビネーションで攻め立ててくる。
辛うじてクナイガンで全弾弾き返すが、その威力に押され後ずさるカブト・・・

「(クッ!・・・愛紗と鈴々と超雲を足しっぱなしにした奴をライダーにしたみたいな感じだな・・・手強い!)」

愛紗以上の技のキレと、鈴々以上のパワーと、超雲以上のスピードを、ゼクターで強化したようなケタロスの動きに、さしものカブトも舌を巻く。

強さだけなら彼に全てを叩き込んでくれた師匠(せんせい)すら凌駕するかもしれない・・・あまり考えたくないがそんな予感すらさせる、鬼神の如き強さである。
暴風のように戟を操り、雷光のような身のこなしで駆け巡り、圧倒的な勢いの剛撃をくわえてくるケタロスの隙を何とかうかがうカブトであったが、突如ケタロスが戟を叩き付けると同時に戟を手放し、瞬時にカブトの腹にもう一度蹴りを叩き込んできた。

「グハッ!!!」

同じ所に二度も強烈な蹴りを受け、ダメージのために膝を突くカブト・・・その姿を見たケタロスがトドメの一撃を放とうとする。

「・・・ライダー・・・ビート・・・」
<<RIDER BEET!!!!>>

カブティックゼクターを180度回転させ、電子音声の発声とともに、ゼクター内で生成・貯蔵されたタキオン粒子を開放・チャージアップし、腕力を大幅に上昇させた戟を振りかぶるケタロス・・・この一撃を今のカブトが食らえば間違いなく即死確定の威力のはずであった・・・だが、

「ライダースティング!!」
<<RIDER STING!!>>

真横から放たれたライダースティングが、ケタロスのライダービートに直撃し、互いのタキオン粒子が反発消滅した。
その余波で吹き飛ぶケタロスが睨むように自分の必殺技を妨害した者を見る・・・カブト以外でライダーの必殺技を相殺できるものなどこの戦場にただ一人だけ・・・そう、それは・・・


「意外に苦戦しているようね天道・・・ここは一つ貸しにしてあげるわ♪」


ライダーフォームのザビーが絶片手に二人の戦いに割って入ってきたのだ。

「曹操・・・お前、どうして?」
「あら?・・・『私の』可愛い関羽が泣いて頼みに来てくれたのよ♪」

『私の』を強調して話すザビーに、カブトが食って掛かる。

「お前・・・まさか妙な条件を吹っかけたりしてないだろうな?」
「妙な条件?・・・まさか『貴方のご主人様を助けてほしかったら、私の愛玩奴隷になりなさい!?』・・・なんて言ったと思ったの?」
「・・・・・・」
「あら・・・疑り深いのね?、安心なさい。今回は貴方への貸しということで関羽には何も条件出しはしてないわ・・・」
「ならいいが・・・なっ!!!?」

話し込んでいた二人に、背後からケタロスが斬り込んでくる・・・その一撃をクナイガンで受け止めるカブト・・・ケタロスがそれに驚くよりも早く、ザビーの絶による一閃がケタロスの脇腹に直撃し、火花を散らしながら後退させるのであった。

「・・・聞き覚えがあるわ・・・方天画戟を操る最強にして狂気の武人・・・貴方が噂の『呂布奉先』ね?」
「!!・・・」
「・・・お前、邪魔・・・カブトの味方するのか?」
「味方ってわけじゃないわ・・・ただ、この男を倒すのはこの私・・・そして関羽を頂くのもこの私・・・残念だけど、貴方には譲れないのよ?」
「・・・わからない」

ザビー(曹操)の言葉を理解できないケタロス(呂布)であったが、なぜか心の底から湧き上がる正体不明の苛立ちを隠すことができず、猛烈な勢いで突進を仕掛けてくる。
突進の勢いを上乗せした渾身の打ち下ろしを真っ向から受け止めるザビーであったが、激突した両者を中心に数メートルのクレーターを作り出すほどの破壊力を生んでしまった。
ライダーの力がなければそのまま叩き潰されていたかもしれない・・・ライダー抜きにしても、目の前の武人の力は凄まじいものであると、ザビーは直感した。

「(ラ、ライダーであることを差っ引いても、この怪力は前代未聞ね!!)・・・カブト(天道)!!」

言われるよりも若干早く、カブトの蹴りがケタロスを仰け反らせる。そこへ絶による追撃の一撃を加えるザビー。
体勢が崩れるケタロスに今度は二人同時に拳を叩き込み、後退すると蹴りも同時に繰り出す・・・即席ながら絶妙なコンビネーションを見せ付けるカブトとザビーにさしものケタロスも手も足も出ずにいた・・・

ダメージが蓄積し、疲労によって膝をつくケタロスにカブトが声をかける。

「なぜ俺を狙う?・・・何をそんなに焦っている?」
「・・・なにぃ!?」
「お前の動きが本来のものじゃないことはわかってきた・・・何か事情があるのなら話をしろ・・・悪いようにはせん・・・」
「・・・黙れ!」

カブトのそんな態度に激怒するケタロス・・・普段の自分には起こらない感情の起伏こそ、本来の実力を発揮させることを阻んでいることに気がつかず、無我夢中で突進してくるケタロス・・・
それを見たザビーがザビーゼクターに手を掛け、再び必殺技を繰り出そうとするが、それをカブトが制する。

「・・・俺が決める。」
<<ONE!>><<TWO!!>><< THREE!!!>>

『カブトゼクター』のボタンを順番に押していくカブトがケタロスにゆっくり近づく・・・振りかぶるケタロス・・・


 ―そして一瞬の激突を果たす斬撃と蹴撃―


強烈な一撃同士が交差し衝撃波が爆音と共に戦場を駆け巡る!!

今度は競り負けることはなくカブトのライダーキックが一瞬早くケタロスを吹き飛ばし、ケタロスを壁に叩きつける・・・その衝撃で気を失ってしまうケタロスからゼクターが離れ、ケタロスの姿から狂気の武人・呂布へと変わってしまうのであった。

「噂ほどのものでもなかったわね・・・」
「何か事情があるんだろう・・・でなければあんな単調な攻めにはならないはずだ・・・」

警戒しながらも気を失った少女を見る二人・・・気を失った少女はあどけない表情のまま、その口で何かを呟くのであった。


「・・セ・・・キ・・・ト・」




「・・・で、そのままトドメを刺すこともなく連れて帰ってきたと?・・・本当に本当にご主人様は女子には、お優しい限りですね~♪・・・私は心底感動致しました♪」
「・・・・・・」
「本当ですね~♪私もすっごく感動しました♪・・・可愛い女の子であれば敵であっても連れて帰ってくるなんて!!鈴々ちゃんもそう思うでしょう?」
「・・・・・・」
「ニャハハハァ~♪お兄ちゃんがまた違う女の子を連れてきたのだ~!!」
「なぜそんな不機嫌になってるんだ?」

自陣に帰った天道を出迎えたのは、不機嫌なオーラが目に見えて溢れ出る愛紗と朱里とお気楽な鈴々であった・・・女心知らずな天道である(笑)

「聞きたいこともあったしな・・・一応このことを知っているのは曹操だけだ。」
「!!!・・・よく曹操が納得しましたね。」
「土産にゼクター渡してきた。」

何気ない天道の台詞に三人の顔色が一変する。

「なんということを!!・・・あれが曹操の手に渡れば!!」
「・・・曹操も理解っているさ・・・ゼクターだけじゃあ大した問題になりはしないってことがな・・・」
「どういうことなんですか、ご主人様?」
「ゼクターは人を選ぶ・・・誰でもライダーになれるってわけじゃないってことさ・・・」

気を失った呂布を見つめながら答える天道・・・その時、見慣れぬ服を着た兵士が自軍に近づいてくるのが見えた。

「袁紹の奴等なのだ!!大方、鈴々達に『虎牢関に向けて全速前進ー!!』とか言いに来たのだな!!?」
「恐らくそんな辺りかと・・・」
「・・・おのれ!!・・・好き放題しおって!!」
「・・・まあ、こんな所でチンタラしてるわけにもいかんのは事実だ・・・ここは黙って従っておこう・・・あくまで『ここ』は!・・・だけどな」

今回の袁紹の采配には連合全体でうんざりする結果である・・・特に危うく全滅の危険にさらされた天道軍にしてみればたまったものではなく、董卓軍との戦いさえなければすぐさま兵を率いて国に帰るところであった。

「とにかく前進しよう・・・幸い敵将で一番厄介な呂布がなぜだか知らんがここにいるんだ・・・少なくとも董卓軍には彼女以上の武将はいないはずだ。」
「そうですね・・・では、兵士の皆さん!!・・・前進を始めてください!!!」

朱里の号令で前進を始める天道軍・・・本当なら最低半日ほど休んでもらいたかったが総大将の命令である以上それも無視できない・・・フツフツと湧き上がる怒りを抑えるように愛紗達は前進を始める。

そんな中、気を失った呂布を黙って見つめる天道・・・その寝顔は無邪気なもので、とても戦場で肌が焼きつくような殺気を放っていた人間と同一人物とは思えず余計に彼女のことが気に掛かってしまう・・・

「寝顔は子供、されど戦えば鬼神の如く・・・嫌なもんだな・・・こういうのは・・・」



「全軍に通達!!!・・・前方より敵襲!!!」

それは連合軍が再び進撃してから僅か小一時間後のことであった。
袁紹の号令の元、虎牢関に向かう連合軍・・・だが、その途中前方から突如砂塵を巻き上げて何かが大挙とし向かってくる。

「敵襲!?・・・こんなところでか!?」

愛紗達はすぐさま戦闘体勢を取るよう全軍に指示を出す。
連合の誰もがこの事態に驚いていた・・・難攻不落で知られる虎牢関をどう攻め落とすのかと思案していた所への寝耳に水なのだ・・・動揺が走る兵士達をなんとか治めようと必死に激を飛ばす武将達であったが、前方の砂塵はすぐさま近くまで迫ってきた。

「こんなところを戦場にするだなんて・・・不意打ちを狙ったとしてもあまりに中途半端すぎます、ご主人様!?」
「俺もそう思う・・・それに・・・」

天道と朱里が注意深く前方を見る・・・砂塵がかなりの勢いで上がっていることから大軍団が迫ってきていたのかと誰もが思っていたのだ・・・だが、実情は違っていた・・・

「あれは・・・民が混じってるのか!?」
「いえ!!・・・どちらかといえば・・・民の中に兵士が混じっているみたいです!!?」

朱里が驚く・・・迫ってきていたのは敵ではなく難民と、それを引き連れているであったのだ・・・

連合の誰もが呆然となる中・・・突如前方の集団から馬に乗った一人の武将がこちらに駆け寄ってくる。

サラシと袴とポニーテールという独特なスタイルに、愛紗と良く似た青龍刀を手にした武将・・・虎牢関を守っていたハズの『張遼』であった。
彼女は連合軍の前で止まると、大声で名乗りを上げる。

「我が名は張遼!!!・・・董卓軍の武将にして虎牢関を預かる者や!!・・・やけど今ウチらには戦う意思は無い!!・・・連合の総大将と話をさせてくれ!!!」

そう叫ぶ張遼に、戸惑いを見せる兵士達・・・
『何かが起こっている』・・・天道は直感的にそう感じ取る。
しかもそれは予想をはるかに上回る規模の事態になっていたのだと、この後天道は知ることになるのであった・・・


『次回、恋姫ライダーカブト!』


愛「この者が・・・董卓?」
董「私のせいで・・・大勢の人が死んでしまいました。だからっ!」
賈「月に何かしてみなさい!?私がアンタを殺すわよっ!!」
天「安心しろ・・・俺がお前を護ってやる。」


都を覆い尽くすワームの群れ!そして明かされる董卓の意外な正体!?


天「これは・・・師匠(せんせい)の!?」
華「では今からワーム(虫けら)を、一掃しにいくわよ!!」



 天の道を往き、総てを司る!!





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