中学卒業までの子ども1人当たり年31万2000円(月額2万6000円)の「子ども手当」を創設する(平成22年度は半額)。
中学生以下の子どもに1人当たり、月1万3000円を支給する子ども手当法が3月26日、参院本会議で民主、社民、国民新の与党3党と公明、共産両党などの賛成多数で可決、成立した。子ども手当は民主党が昨年の衆院選マニフェスト(政権公約)に掲げた目玉政策で、6月から支給が始まる。ただ、11年度以降に満額の2万6000円に引き上げるための財源への不安や、支給対象に対する異論もあり、政府は4月以降、制度の枠組みを練り直す方針だ。
手当は年4回支給され、6月は4、5月の2カ月分(2万6000円)、10月と11年2月は前月までの4カ月分(5万2000円)、11年6月に2、3月の2カ月分(2万6000円)が支給される。所得制限はない。
法律は10年度限り。政府は来年の通常国会に11年度以降を対象とした法案を提出する。しかし、11年度に必要な5兆円程度の財源にはメドが立っていない。また、国籍に関係なく親が国内に居住していることが支給要件に含まれるため、海外赴任中の日本人が受給できない一方、在日外国人は子どもを母国に残していても支給されるなどちぐはぐな点もあり、政府は要件の見直しを余儀なくされている。
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鳩山政権が当初予算として初めて編成した10年度予算は3月24日の参院本会議で可決、成立した。公共事業費は過去最大の18・3%減の5兆7731億円に抑制して家計支援に重点的に配分した結果、一般会計総額は92兆2992億円と、2年連続で過去最大を更新した。税収の急減により、新規国債発行額も過去最大の44兆3030億円となった。政府・与党はマニフェスト(政権公約)に掲げた子ども手当法案と高校無償化法案も月内に成立させる方針。
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衆院厚生労働委員会は3月12日、中学卒業までの子ども1人あたり月額1万3000円を10年度に支給する子ども手当法案を、民主、社民、公明、共産各党の賛成多数で可決した。自民、みんなの党は反対した。16日の衆院本会議で可決後、参院に送られる。
民主、社民、公明の3党の修正で、(1)支給対象外となっていた児童養護施設の入所者に必要な措置を講じる(2)11年度以降の子育て支援策の拡充を検討する--との付則が盛り込まれた。
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10年度予算案は3月2日の衆院本会議で民主、社民、国民新の与党3党の賛成多数で可決され、参院に送付された。自民、公明、共産、みんなの党の野党は反対した。憲法の規定により、参院で採決されない場合でも送付後30日で自然成立するため、年度内成立が確定した。10年度予算案の一般会計総額は過去最大の92兆2992億円。
予算案採決に先立ち、自民党が子ども手当などの撤回を求めた予算案の組み替え動議を提出したが、与党などの反対多数で否決された。また、ガソリンの暫定税率の水準維持やたばこ税引き上げを盛り込んだ税制改正法案などの関連法案も可決された。
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鳩山由紀夫首相は2月15日午前、子ども手当について「11年度は当然予定通り満額をやる。財源は歳出削減を徹底的にやって、繰り出していく」と述べ、11年度からは中学生以下1人当たり月2万6000円(10年度は半額でスタート)を支給する方針に変わりないことを強調した。首相公邸前で記者団に語った。14日に「無駄を削減する中で、余裕ができた分だけでやる仕組みを作ろうと思う」と述べたことが、財源不足の場合は満額支給にこだわらない発言と受け取られたため、打ち消した形だ。
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長妻昭厚生労働相は2月3日の参院本会議での各党代表質問で、児童養護施設などに入っている子供にも「子ども手当」を支給する方針を明らかにした。政府提出法案は支給対象を親などに限定しており、親がいないなどの理由で施設に入所している子には支給されない。
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峰崎直樹副財務相は2月1日の記者会見で、衆院選マニフェスト(政権公約)の目玉施策である11年度からの子ども手当満額支給(月額2万6000円)について、「個人的には相当無理があると思っていた」と述べ、財源的に実現が難しく、修正を検討すべきだとの考えを示した。今年6月から月額1万3000円が支給される同手当の満額支給については、野田佳彦副財務相も1月30日の講演などで「現実的には厳しい」と述べている。
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厚生労働省は1月14日、通常国会に提出する「子ども手当」法案の概要をまとめ、同省政策会議や各都道府県に示した。4月1日から1年限りの時限措置で、月額1万3000円を6月以降、年3回(6月、10月、2011年2月)にわけて支給する。所得制限は設けない。新たに手当を受け取るには、事前に各地の市町村窓口で申請手続きをする必要がある。
子ども手当は、子育て家庭を支援するため中学卒業までの子ども1人あたり月額2万6000円を支給する新制度。民主党の衆院選マニフェスト(政権公約)に基づき実施され、法案では来年度は半額の月額1万3000円を支給する措置とし、支給額が倍となる11年度以降は財源などを調整した上で、改めて新法案を提出する。
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「子ども手当」は鳩山政権の目玉政策で、中学3年までのすべての子どもに月2万6000円(10年度は1万3000円)を支給する。年間5・3兆円(10年度は2・3兆円)の財源が必要だが、現行の児童手当の地方負担分(約5700億円)を維持し、そのまま子ども手当の地方負担分にあてることを決めたため、「事実上の地方負担を残す奇策で、姑息(こそく)な手段」(松沢成文・神奈川県知事)なとと地方からは反発も出ている。民主党が政府に求めていた「所得制限」は、鳩山首相が設けない方針を表明し、党側も了承した。
現行の児童手当は、小学6年まで。支給額は3歳未満で月1万円。3歳以上は、第1子と2子が月5000円、第3子以降は1万円。所得制限もあり、扶養親族の数や職業などによって異なる。総支給額は1兆160億円(09年度予算ベース)だが、その財源構成は国、地方自治体、事業主がそれぞれ2690億円、5680億円、1790億円を負担している。
先進30カ国でつくる経済協力開発機構(OECD)のグリア事務総長は講演で「財源が限られる中、子ども手当の一律支給より、保育サービスや就学前の教育に重点を置くべきだ」と指摘している。
民主党が支給額も明示して子ども手当をマニフェストに入れたのは05年の衆院選から。配偶者控除や扶養控除の廃止で、生み出された約3兆円を、所得水準にかかわらず、1人当たり月1万6000円支給する、という内容だった。子ども手当の「生みの親」とされる小宮山洋子衆院議員は「控除廃止分を子どもの数で割って1人当たりの額を出した。財源に根拠はあった」と説明する。
その後、有権者へのアピール力も考慮し月2・6万円に引き上げたのは小沢一郎幹事長(当時代表)だ。07年1月に国会の代表質問で「6兆円規模の子ども手当を創設する」と表明し、同年夏の参院選のマニフェストに月2・6万円と盛り込んだ。これが09年8月の衆院選に引き継がれた。支給額の根拠は、生活費や教育費を合わせた平均額と説明しているが、後付けの印象は否めない。
| ( 65/178 ) | 具体的な検討や議論に着手、予算の要求、当面の期限を区切った実施表明など達成の初期段階にある政策 | ||
| ( 40/178 ) | 法案の策定や提出、予算措置など達成過程の中間段階にある政策 | ||
| ( 12/178 ) | 法案などの審議が継続され達成に向け大詰めを迎えている政策 | ||
| ( 34/178 ) | 法案などが成立したり、実施した政策 | ||
| ( 2/178 ) | 長期間にわたって具体的な検討を見送ったり、実施を断念するなどして公約に明確に違反した政策 | ||
| ( 25/178 ) | 具体的な検討や論議に入っていない政策。省庁や政党での内部的検討にとどまり、公表や表面化していないなど実行度を評価できない政策も原則として「未着手」に含めた |
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| ( 28/178 ) | マニフェストに限らず公約を修正した政策。喫緊の課題や時期的な明示をしながら当面判断を見送った政策も含む | ||
| ( 1/178 ) | 修正にとどまらず、公約内容や目標時期を大幅に後退させるなどした政策 | ||
| ( 2/178 ) | 修正などを経てなお政府内や与野党間で行き詰まっている政策など |