エネルギーの安定確保、新エネルギーの開発・普及、省エネルギー推進等に一元的に取り組む。
経済産業省は3月24日、30年までのエネルギー政策の指針となるエネルギー基本計画の改定案を公表した。鳩山政権が掲げる「20年の温室効果ガスを90年比25%削減」の目標達成に向け、排出量が増え続けている家庭や自動車など「くらしのCO2(二酸化炭素)」を半減させるほか、IT(情報技術)を活用したスマートグリッド(次世代送電網)など新しいエネルギー関連産業を経済成長につなげることが柱。エネルギー安定確保の目標として、従来の自給率ではなく国内で確保できるエネルギーに海外の資源権益を加えた広義の「自主エネルギー比率」を創設、現在の38%から70%への向上を目指す。
73年の石油ショック以降、産業部門のCO2排出は横ばいの一方、家庭や運輸部門は約2倍に増えている。改定案は家庭や運輸部門の対策として、30年までに家庭の照明を省エネ効率の高い発光ダイオード(LED)などに転換する▽20年までに新車販売の半分を次世代自動車にする--などを掲げた。
また、太陽光、風力など再生可能エネルギーによる発電拡大を明記。大量導入に不可欠なスマートグリッドは20年代早期に構築を終える。鳩山政権が推進する原子力発電は20年までに8基増設する。
自主エネルギー比率の創設は、日本の自給率(現在18%)が30年間、低迷していることが背景にある。経産省は「日本は資源に乏しく、広義の指標が必要」と説明している。6月の閣議決定を目指す。
◆エネルギー基本計画改定案の骨子◆
・「自主エネルギー比率」を現在の38%から30年に70%へ
・「くらしのCO2」を30年までに半減
・家庭やオフィスの照明を30年までにすべて高効率照明へ転換
・家庭用燃料電池を20年に140万台普及(現状1万台未満)
・20年に新車販売の半分を次世代自動車に
・スマートグリッドを20年代の早期に構築
・20年までに8基の原発を増設。稼働率を85%に(現状60%台)
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鳩山政権が当初予算として初めて編成した10年度予算は3月24日の参院本会議で可決、成立した。公共事業費は過去最大の18・3%減の5兆7731億円に抑制して家計支援に重点的に配分した結果、一般会計総額は92兆2992億円と、2年連続で過去最大を更新した。税収の急減により、新規国債発行額も過去最大の44兆3030億円となった。政府・与党はマニフェスト(政権公約)に掲げた子ども手当法案と高校無償化法案も月内に成立させる方針。
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経済産業省が「新たな資源・エネルギー供給源の確保」のために10年度予算案に計上した予算額は302億円(09年度当初282億円)。このほかメタンハイドレードなど「非在来型を含む化石燃料の開発促進」150億円(同180億円)、「戦略的な資源・エネルギー外交の展開」140億円(124億円)などが盛り込まれた。
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民主党「次の内閣」が08年12月24日に中間報告を受けた「民主党環境ビジョン」では、エネルギー安定供給体制の確立について次のように記述されている。
私たちの現在の「豊かな」生活は、エネルギーの大量消費に支えられているといっても過言ではありません。しかし、現在のような化石燃料に依存するエネルギーの大量消費型文明が永久に維持できるものではありません。したがって、持続可能な社会を構築するためには、省エネルギーや再生可能エネルギーの導入を今まで以上に促進しなければなりません。
とりわけ、エネルギーを安定的に確保する「エネルギー安全保障」の確立は、国家としての責務です。長期的な国家戦略を確立・推進する機関を設置し、そのための施策を一元的に進めます。
地球環境との調和を図り、環境対策技術の開発を推進します。省エネルギー技術をさらに発展させるとともに、天然ガス、石油、石炭、原子力に加え、風力、太陽光、太陽熱、地熱、バイオマス、海洋エネルギーなど再生可能エネルギーや、水素、燃料電池などを中心とした未来型エネルギーの普及開発を図ります。
こうして、エネルギー供給源の多様化を促進することにより、総合的なエネルギーのベストミックス戦略を確立します。特に、風力、太陽光、バイオマスなど再生可能エネルギーについては、一次エネルギー総供給量に占める割合を、EUの導入目標を踏まえて大幅に引き上げ、2020年までに10%程度の水準の確保をめざします。
 また現在、日本のエネルギー自給率は原子力も含めて18%に過ぎず、先進国では最低水準にあることから、自給率の目標を2030年に30%、2100年には50%とします。
| ( 65/178 ) | 具体的な検討や議論に着手、予算の要求、当面の期限を区切った実施表明など達成の初期段階にある政策 | ||
| ( 40/178 ) | 法案の策定や提出、予算措置など達成過程の中間段階にある政策 | ||
| ( 12/178 ) | 法案などの審議が継続され達成に向け大詰めを迎えている政策 | ||
| ( 34/178 ) | 法案などが成立したり、実施した政策 | ||
| ( 2/178 ) | 長期間にわたって具体的な検討を見送ったり、実施を断念するなどして公約に明確に違反した政策 | ||
| ( 25/178 ) | 具体的な検討や論議に入っていない政策。省庁や政党での内部的検討にとどまり、公表や表面化していないなど実行度を評価できない政策も原則として「未着手」に含めた | ||
| ( 28/178 ) | マニフェストに限らず公約を修正した政策。喫緊の課題や時期的な明示をしながら当面判断を見送った政策も含む | ||
| ( 1/178 ) | 修正にとどまらず、公約内容や目標時期を大幅に後退させるなどした政策 | ||
| ( 2/178 ) | 修正などを経てなお政府内や与野党間で行き詰まっている政策など |