格差社会の中心で友愛を叫ぶ
【第20回】 2010年5月14日
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西川敦子 [フリーライター]

低収入、ストレス病の夫が捨てられる!?
家族崩壊を招く「謎のうつ100万人時代」

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 一方、家族を持てない人、家族を失ってしまった人は、どうすれば孤独を乗り越えられるのだろう。

 ひとつの答を提示してくれるのが「コレクティブハウス」などの新しい住居形態である。

 コレクティブハウスとは北欧発の集合住宅。それぞれ独立した居住スペースのほかに、リビングキッチンなどが付いた共用スペースがある。入居者同士が一緒に食事やだんらんしたりでき、自宅で孤立することがない。日本ではまだ数は少ないが、NPOが担い手となり、少しずつ模索が始まっている。

 若者の間に広まっている「シェア住居」も、孤立を防げる点では魅力的だ。コレクティブハウス同様、リビングキッチンなどの共用スペースがあり、その他、シャワーやトイレなどの水回りも共同で使う構造になっている。中には賃料が格安なだけで入居者同士の交流が見られないところもあるが、一般的にはコミュニケーションの活発な住居が多い。

 ただ、心の病を抱えた人にとって、他人との共同生活はストレスになるのでおすすめできない。回復した段階で入居を考えてみてもいいだろう。

「うつ100万人時代」を
生き抜く“孤立回避策”とは

 タバコの健康被害はよく知られているが、同じように孤立は知らぬ間に心を蝕み、貧困、果ては自殺をも招きかねない。

 「特定非営利活動法人 自殺対策支援センターライフリンク」では、自殺の10大要因として、うつ病のほかに、家族の不和、負債、身体疾患、生活苦、職場の人間関係、職場環境の変化、失業、事業不振、過労を挙げており、これらが連鎖しながら「自殺の危機経路」を形成する、としている。
単に医療機関を受診したり、休職するだけでは、この複雑な危機経路をサバイバルするのは難しそうだ。

 前出の医師は次のように話す。

 「苦しみを抱えているからこそ病院を訪れる、という点ではうつ病も適応障害も同じ。でも、家族に見捨てられ、生きる意味を失いかけた人には治療は通用しません。“意味の回復”を成し遂げられるのは患者さんご本人。我々はただ、悩みに耳を傾けることで、そのお手伝いをすることしかできないのです」

 とうとう到来したうつ100万人時代。だが薬で治らない“うつ”には、新たな手立てが要る。

 家族崩壊の時代に突入した今、私たちはこれまでとは違うコミュニティを作り直す必要に迫られているのではないだろうか。

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西川敦子 [フリーライター]

1967年生まれ。上智大学外国語学部卒業。編集プロダクション勤務を経て、独立。週刊ダイヤモンド、人事関連雑誌、女性誌などで、メンタルヘルスや介護、医療、格差問題、独立・起業などをテーマに取材、執筆を続ける。西川氏の連載「『うつ』のち、晴れ」「働く男女の『取扱説明書』」「『婚迷時代』の男たち」は、ダイヤモンド・オンラインで人気連載に。


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