家族社会学者の山田昌弘氏は、著書「近代家族のゆくえ」(新曜社)で、「『家族責任を負担すること=愛情表現』という“家族イデオロギー”が一般に広がったのは高度経済成長期」と指摘している。
経済発展により男性の収入が伸びたため、人々はそれまでのように地縁、血縁に頼らなくても、家庭生活が営めるようになった。おかげで、家族愛やマイホームパパがさかんに賞賛される一方、“よそ(他人)”と“うち(家族)”が分断され、周囲との絆は急速に希薄化していった。
だが今や、この“家族イデオロギー”までもが崩壊しつつある。雇用が不安定化し、男性がこれまでのように大黒柱としての役割を果たせなくなっているからだろう。
とくに就職氷河期世代以降の男女は今、親世代には考えられなかった家族の危機に直面しているのかもしれない。とはいえ、支え手もなくひとりでストレスに耐えるには、今の職場環境はあまりにギスギスしている。
不況のせいで業務量そのものは一時に比べ減ったかもしれないが、その分、人間関係はさらに悪化した。給与カットやリストラ不安などで、不満をため込んだ人々が、互いにあらさがしをしたり、パワハラ、セクハラに走ったりする。
孤立無援のワーキングプアたちが行き場を失い、精神科に押し寄せたとしても不思議はない状況だ。
家庭内別居で「時間稼ぎ」を
それでは、離婚の危機にさらされている人が、妻をつなぎとめるにはどうすればいいのか。
澁川さんは「まずは家庭内別居を提案しては」と勧める。「絶対に離婚なんかしないぞ、などと騒ぐと、妻は『これ以上話し合っても時間の無駄』と判断し、一方的に家を出てしまう。そこで、『家事はしなくていいから』『口をきかなくていいから』などと相手に歩み寄ったうえで、同居を続けてもらうのです」
いきなり結論を出さず、とりあえず時間稼ぎする。その間に少しでもうつ状態から回復し、“以前より元気になった自分”をアピールするのだ。
その際、うつ病なら休職してしっかり療養することが望ましいが、場合によっては休職がかえって仇となる。
前出の医師は「適応障害の人々が3ヵ月も会社を休んだらかえって復職が困難となり、立ち直りにくくなる、と私は考えます。休んでもせいぜい1、2週間がいいところでは」と話す。