妊娠を避けたい。避妊の方法を知りたい。



まず、簡単な妊娠の成立についての説明・・・。

妊娠とは、精子が腟内をとおり、子宮内に進入します。そして上方へ移動し、卵管のなかにはいりこみます。
そのときに、ちょうど排卵されてまだそんなに時間がたっていない活動性のある卵子(卵子の生存期間は一般的に24時間といわれています)と出会い、受精が行われ、そしてその受精卵が子宮内膜に着床することを妊娠の成立といいます。(ここで受精卵がうまく子宮内に到達できずに育ってくると、子宮外妊娠、と呼ぶのです)。
ですから、避妊を成功させるためには、この過程のどこかを成立しないようにしてやればいいのです。

精子について・・・。

精子は男性の精巣から作られるのですが、おおよそ1秒間に1000個単位というものすごい数の精子が作られているのです。
だいたい、精液1mlあたり8千万個くらいの精子が含まれるといわれ、(もちろん平均的な値です)射精された精液3〜5ml中には約3億5千万の精子が存在します。(ただし実際に受精能力を持っているのはそのうちの約1%くらいではないかとはいわれていますが、それでも約300万の数です)
ですので、ほんとにわずかな量の精液が子宮内に進入しても妊娠する可能性はあるのです。

いろんな説がありますが、精子はおそらく腟の中で6時間以上は生存できないだろうといわれています。(ただしいままでの研究で例外的に16時間たってまだ生存している精子が発見されたという報告はあります)
ただしいったん子宮内に進入した精子は平均3〜4日は生存すると言われています。
(5日以上、場合によっては7日くらい生存する、という説もあります)
またいったん腟内に射精された精子が子宮内に侵入するまでの時間はおおよそ90秒(1分半)くらいです。
ですから、セックスしたあと腟内を洗浄する方法というのはほとんど無効です。(それまでに精子は子宮内にはいってしまっているのです。腟の中だけを洗ってもあまり意味がありません。)
このようなことを知っておいて、よりとい受胎調節を考えていかなければならないのです。

では理想的な避妊法とは・・・・

 1・100%安全で、副作用がない
 2・100%有効(失敗がない)
 3・セックスするときにわずらわしい思いをしないですむ
 4・いつでも妊娠可能な状態にもどることができる
 5・使い方が簡単・だれにでもできる
 6・値段が安い
 7・医療専門家に頼らないでも使える、やめることができる
 8・あらゆる人たち(宗教・文化・政治的立場)に受け入れられることができる
 9・女性が自分の意志で使用することができる(妊娠に関してはやはり女性自身に直接的な影響は大きいた め)
10・苦痛・痛みがない
                          etc・・・・・・
などが考えられます。
しかし、現時点でこれらすべての理想を満たす避妊法は残念ながら存在しません
いろんな避妊法がありますがどれも一長一短です。
ですから、自分たちに必要な避妊法とは、いったいどの部分を重視したいのかをよく考えて各個人が自分にあった避妊法を選択するべきなのです。


では具体的にどんな避妊法があるのでしょうか。
下にメジャーな方法をならべてみました。
知りたいところをクリックしてみてください。


膣外射精 言葉のとおりです。
排卵日の予想 排卵日の前後を避ける方法です。
コンドーム 男性側の避妊法です。(最近は女性用のものもできていますが)
ペッサリー 女性側のコンドームのようなものです。
殺精子ゼリー 性交渉の前に膣内にいれるものです。
リング 子宮の中に器具をいれます。
低容量ピル 内服するホルモン剤です。
不妊手術 卵管をくくる手術です。

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膣外射精
性交中絶法ともいいます。もっとも古くから行われてきた避妊法です。(聖書にもそのような記載があります)
20世紀の後半までは一番メジャーかつ第一選択の方法でした。
費用はかかりませんし、その場その場で対応でき、たとえば器具を使うわけではありませんので簡便です。
また副作用などもありません。
しかし、明らかにセックス自体は不完全に終わるので精神的・肉体的な満足感にかける部分があります。
射精前の分泌液中に精子が含まれる可能性もあり、避妊効果はあまり期待できません
また、どちらかといえば男性側に頼るところの多い避妊法であり、タイミングも時には困難です。




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排卵日の予想
オギノ式ともいいます。
たとえば、毎月きっちりと排卵している人であれば、周期が28日としたら、だいたい生理開始日より14〜15日目くらいに排卵がおこります。
その場合、精子の生存条件が最適な場合に生理開始日より7日目〜14日目、それに卵子の最大生存期間の1日を加えた7日目〜16日目までの間は妊娠の可能性があるので、その期間を避けてセックスをしようというものです。
ただし、普段きっちりした生理周期の方でも、ちょっとしたストレスや環境の変化などで排卵の時期がずれたりすることは非常によくあることですし、毎回きっちり28日ぴったりで生理がくる方もどちらかといえば少数派(2、3日のずれはよくあることです)です。
ですので、そのつもりで計画をたてていても、思わぬ妊娠、という可能性は否定できません。
この方法は非常に手軽で簡便ですが、そのぶん避妊の効果としてはあまり期待しすぎるのはむつかしいかもしれません


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コンドーム
精液が腟内に入るのを物理的に防ぐ目的で考えられた避妊法です。
非常に昔から存在し、古代ローマ時代には性感染症の拡大を防止するために動物の膀胱が使われていました。
いろいろな説がありますが、公的な記録では1564年にイタリアの解剖学者がローションで湿らせたリネンの鞘を考えついたとのことです。
また、18世紀には羊などの動物の盲腸から作られていた、という話もあります。
現代では主にラテックス・ゴムで作られており、品質のよいコンドーム(現在の日本製品は非常に高品質といわれています)は、すべて製造された後品質検査を受け、穴や弱い部分がないかを確認されて販売されており、また、日本でもっとも一般的に知られている避妊法のひとつです。
装着方法や時期がが正しければ効果的ですが、破損などの可能性があります。(ベビーオイルやワセリンなどでゴムが劣化します)
利点は、比較的費用がかからず、簡単に入手できること、副作用がないこと、医療機関受診が必要でない、STD(性感染症)やHIV、B型肝炎、ヘルペス、コンジロームといったようなウィルスなどの感染予防(毛じらみなどにはあまり効果的とはいいがたいですが)、子宮頸部腫瘍(子宮頚癌、細胞異型など)などの予防、ほか早漏防止、などです。また女性の眼に見えるため、精神的な安心感を伴います。
欠点は割と少ないのですが、セックスの時に装着するためムードには多小欠けること、また性感の低下(最近の高品質のものでは減ってきています)、最中の脱落、破損などによる感染や妊娠などです。
また、再使用は避けてください。

また最近話題になった女性用のコンドームですが、これは目的としては同じ意味で作られています。
一見、大きなコンドームのようなもので、長さは17センチくらい、両端にそれぞれ7センチ(外側、開口部)と5,6センチのリング(腟内にいれる側で閉じています)がつけられており、セックスの前に女性が自分で腟内に挿入します。
女性が自分で調整可能なこと、また装着時にペニスの勃起を必要としない、STDの感染予防などの利点がありますが、自分で装着を必要とする点でまだ抵抗感などがあるひとたちもいるようです。


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ペッサリー
女性側の避妊法で、腟の中にふたをして子宮内への精子の侵入を避ける(女性のコンドームのようなもの)という方法です。
これも古くから考えられていた方法で、2世紀のユダヤ律法には、性交前の腟内に湿らせたスポンジをいれることを勧める1節があるそうです。
19世紀にはいり、ゴム製のペッサリーが登場して1900年代半ばは非常に人気のあった避妊法だったのですが、ピルが登場するとペッサリーの利用は激減したといわれています。
いろんなサイズがありますが大体直系5〜10センチくらいのもので、ゴムでできたわっかのようなものです。回りは弾力性のあるばねのようなものがあります。女性が自分で腟内に挿入します。このサイズは医師に測ってもらわなければなりません。
セックスのあと6時間は取り出さないようにします。(腟内で精子が生きている可能性があるため)また逆に感染症などをおこさないよう、24時間以内に取り出さないといけません。
使い捨てではなく、自分で取り出してきれいに洗ってまた利用します。
利点は、うまくつければかなり有効なものであり、かつ、コンドームよりは早い時期に装着可能であり、セックスのムードを損ねにくいこと、性感の低下があまりないこと、おおきな副作用はなく、コンドームまではいかなくてもSTDなどの感染防止に役立つことなどです。
欠点としてはやはり自分で装着するという抵抗感、ピルなどよりは避妊効果は少ないこと、また腟の形などによっては装着しにくい人もいること、自分で装着するためどうしても腟内にキズをつけてしまうことがある、などです。
特に、装着になれるまでは産婦人科医の指導を必要とするなど、自分で装着するのは、かなりむつかしいときもあるようです。


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殺精子ゼリー
これも女性側の避妊法です。精子が子宮内へ入らないように精子自体の活動性を止めてしまう、あるいは死滅させるという方法です。
非常に昔からある方法で、最初の記録は紀元前1850年、ワニの糞を成分に含む殺精子作用のある腟坐薬のことがパピルスに
記述されています。
欧米などでは、殺精子剤をしみこませた腟スポンジが使われており、女性が水道水でそのスポンジを湿らせて腟内に挿入するというものも使われています。(日本では市販されていません)
日本では一般的にセックスの前に膣の中に薬を入れて精子を子宮にはいらないようにします。
利点は、簡単に入手でき、副作用も少なく、医療機関での指導が必要ないこと、また他の避妊法との組み合わせが可能なことなどです。
欠点は、投与する時間を間違えるとあまり効果がないこと、アレルギーの可能性も0ではないことなどです。


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リング
子宮の中に器具をいれます。IUD(intrauterine device)ともいいます。異物を着床する場所にいれて、受精卵の着床を防止する、というためのものです。
もともとの起源は、北アフリカで長い旅の最中にもっとも大切な移動するための手段であるラクダの妊娠を防ぐために子宮内に石をいれたのがはじまりだとされていますが、ほんとうかどうかはわかりません。
19世紀後半かたは、象牙やガラス、黒檀、ダイヤモンド鋲つきの白金といったようなものでできた避妊ピンといわれるものが使われたといわれています。
完全な今のIUDの原型ができあがったのは、蚕の幼虫の体内からとった絹糸腺でできていました。そして、合金などを巻いたりいろいろな工夫がほどこされ、現在の形になってきたのです。
いろんな種類がありますが、よく使われているものは弾力性があり硬すぎないラテックスなどで作られていることが多いです。
入れる時期は生理終了直後くらいがベターです。
ただし、子宮の中に異物をいれますので、まれに感染をおこしたり、不正出血などの原因となることもあります。また生理痛や過多月経の原因となることもあり、さらに自然に子宮内から脱出する場合もあります。
避妊効果はかなり高いですが、位置がずれたり、ということもあり、だいたい95%くらいではないかといわれています。
一度いれたら定期的な検査が必要です。
また2,3年に一度入れ替える必要があります。
費用的には2、3年分と考えればそれほど高額ではないかもしれませんが、医療機関での挿入・定期的なチェックが必ず必要なことなどがあります。しかし、いったん挿入し、異常がなければ毎日の自分の避妊に対する気遣いは必要でなく、セックスのムードを壊したりということはありません。

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低容量ピル
ホルモン剤を内服する方法です。
飲み忘れがなければ避妊効果は高いです。また生理周期を規則的にして、生理痛を軽減します。
ただし、STD(性感染症)の予防効果はありません。また、タバコをたくさん吸われる方や血管・心臓、肝臓の病気の方、
耳硬化症の方など使用できない方もいらっしゃいます。定期的な診察が必要です。
詳しくはここをクリックしてくださいね。
ピルについての詳しい説明

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不妊手術
卵管をくくってしまう方法です。
避妊率はほとんど100%に近いですが、一度くくってしまえば二度と元にはもどりません。(一旦手術をしてから、もう一度妊娠したくなっても、妊娠はまず不可能と考えてください。)
帝王切開の時に同時にすることなどが多いです。
くくってももちろん卵巣や子宮はそれまでどおり機能しますので生理もまったくそれまで通りあります。またホルモン状態も別に変化しません。
ただ、ごくまれに、非常に再生能力の強い卵管の場合にもう一度再生して、卵管がくっついて再開通することがあるといわれています。
もちろん、かなり確実な避妊法のひとつです。