「ドクターカー」の車内。上部のカメラを使い、患者の状態を病院へ伝えることができる
大分大学医学部付属病院(由布市挾間町)は4月から、医師らが重症患者の元に駆け付けて早期診断、治療をすることができる救急車「ドクターカー」の運用を始めた。消防の救急車が病院に到着するのを待って処置するのではなく、医師らをいち早く派遣し、車内に装備された機器を使って医療行為に取りかかれるのが大きなメリットで、救命率アップにつながると期待されている。
同病院では従来も、消防などから要請があれば医師が消防の救急車に同乗して患者の元に向かったり、搬送途中の救急車と落ち合って治療に当たっていた。ただ、救急車が病院に迎えに来る時間がロスとなる上、救急車が出払っていたり、迎えに来る人員の余裕がない場合は出動できず、患者が病院に到着するのを待つしかなかった。
自前のドクターカーを導入したことで、こうした制約なしに医師を派遣できるようになった。車内には除細動器や人工呼吸器、心電図モニターなどを備え、治療しやすいよう、ストレッチャーは左右に動かせるよう工夫した。
ビデオカメラ2台も搭載し、患者の状態や心電図の状況などを病院へリアルタイムに伝えるシステムを導入。このシステムを配備したドクターカーは県内初で、病院で待機するスタッフとやりとりしながら治療できる。2台のうち1台は取り外しが可能で、災害などの現場を実況中継できる。
消防や医師、県知事からの要請を受け、医師や看護師ら数人のチームが24時間態勢で出動する。病院の運転手がいない夜間などは医師が運転することもあるという。
6日までに7件の出動があり、脳卒中や低酸素脳症などの患者に対応した。
同病院救命救急センターの石井圭亮診療教授(44)は「一分一秒を争う患者は、いかに迅速に診断、治療できるかが救命、社会復帰への鍵。“病院前救護”を充実させていきたい」と話している。
大分市、救急救命士の研修で協定
ドクターカーは、大分市消防局の救急救命士の研修にも活用される。7日は大分大学挾間キャンパスで研修に関する協定の調印式があり、古林秀則病院長と佐藤日出美消防局長が協定書にサインを交わした。
同消防局には救急救命士が56人おり、救急救命士の資格を取った直後の教育実習や、その後の再教育の一環でドクターカー研修を取り入れる。第1弾は今春に資格を取ったばかりの2人が10日から交代で7日間、実習。医師らと一緒にドクターカーに乗り込む。
同消防局は「多くの症例に携わることができ、職員の資質向上につながる」。同病院も「救急医療は消防機関と医療機関の“顔の見える関係”が大事。研修が触れ合う機会になれば」としている。
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