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「噂の真相」元編集長・岡留安則が嘆く雑誌ジャーナリズムの諸行無常

サイゾー5月14日(金) 17時11分配信 / 国内 - 社会
岡留安則氏。
「噂の真相」休刊から6年。かつてはスキャンダリズム全開の誌面構成で、多くの読者の心をわしづかみにした岡留安則氏。国策捜査と批判された小沢問題を筆頭に、現在のスキャンダル報道をどう見ているのか──。

──早速ですが、最近のスキャンダル報道でもっとも注目しているニュースはなんですか?

岡留 やっぱり検察による一連の小沢一郎捜査だね。これまでいろんな国策捜査を見てきたけど、今回ほど露骨なものは前例がない。検察の狙いは、明らかな“小沢潰し”。検察は霞が関改革を進めようとする民主党の要・小沢を政権交代前から狙っていて、「捜査すれば何か出てくるだろう」というお決まりのパターンでやったけど、結局、起訴まで持っていけなかった。完全に検察の敗北だよ。

──疑惑を報じる報道も、当初からかなり偏っていた印象があります。

岡留 「司法記者クラブはいったいどうなってるんだ」って思うほどの御用報道だったね。連日、検察がリークする「小沢は悪の金権政治家」という情報を嬉々として書きまくっていた。その点では検察のマスコミ操作は成功していたわけだ。もともと検察の記者会見なんて一方的だけど、司法記者はネタが欲しいから逆らえない主従関係。検察は、長い間批判に晒されてこなかったせいで、ますます傲慢になってきているね。

──ところが暴走した検察は、最終的に小沢を在宅起訴すらできなかった。

岡留 本当なら、今こそ司法記者たちが、特捜検察の捜査ミスをしっかり検証して書くべきなんだけど、それもない。「週刊朝日」が石川(知裕議員)の女性秘書に対する強引な事情聴取を報じていたし、そもそも捜査の唯一の根拠になった証言をしていた水谷建設の元会長だって脱税で獄中にいる人間。過去には暴力団や北朝鮮との関係も噂されるなど、いかにもスジが悪い。ここまで行くと検察の“情念国策捜査”だね。にもかかわらず、大手メディアはその部分になかなか触れようとせず、それどころか、「小沢が幹事長を辞任するまで、検察リークに乗り続けるぞ」って勢いだった(苦笑)。

──ただ、石川議員ら小沢氏周辺の人間が3人も逮捕され、世論も捜査を支持しているように見えます。

岡留 検察がメンツを保つために意地になっただけでしょ。それに、起訴されたから石川議員は辞めろという報道も、推定無罪の原則を完全に外してる。判決が出てから出処進退を決めればいい。いったい誰が判決を決めているんだと言いたいね。ついでに言えば、裁判員制度も一旦凍結するべきだと思う。取り調べ可視化や代用監獄の廃止といった問題をクリアした上でなきゃ、司法改革のアリバイづくりでしかない。

 世論調査にしても「小沢は説明責任を果たしていると思うか?」なんて設問なら「NO」が8割になるのは当然だよ。その意味では、検察と大手マスコミという旧勢力が一体となって小沢攻撃を仕掛けているというのが、一連の小沢スキャンダルの構図だろうね。天皇を政治利用したって小沢批判も、自民政権がこれまで散々利用してきたワケだし、何を今さらって感じだよ。

──新聞・テレビが報じないとなれば、週刊誌メディアの出番ですが。

岡留 それも正直、ビミョー(笑)。中途半端だし、ずっと小沢・民主党叩きがトップに来てる「週刊現代」なんてどうなってるの?って思うよ。編集部はプラスだと判断したんだろうけど、果たして国民の感覚に合っているのか疑問。ただ、そんな中でもやっぱり「週刊朝日」の検察批判記事は秀逸だった。強引な捜査の問題以外に石川議員のインタビューなんかも載せていて、部数もかなり伸びたと聞いてる。それだけ新聞やテレビがタレ流している検察情報に疑問を持って、真相を知りたいと思っている賢明な読者も多いという証明でもあると思うよ。
民主党へのダメ出しと普天間問題の深い闇

──小沢以外にも民主党には鳩山首相の献金問題というスキャンダルがあり、ほかにも問題が山積みです。

岡留 現段階では、確かに迷走を続けてる。ただ、政権交代前に打ち出していた路線を徐々に縮小せざるを得なくなっているのは霞が関の抵抗が大きいんだろう。僕は岡田克也外相にしても消費税論議を言いだした菅直人にしても、官僚に洗脳されてるとニラんでる。そこで民主党にダメ出しするのは簡単だけど、「もっと官僚と戦え!」ってケツを叩くのがメディアの役割だと思うよ。八ッ場ダム問題でも談合を思わせる受注業者の異常に高い落札率のデータが出ていたけど、あれも本来メディアが徹底検証していなければならない話でしょ。

──7月の参院選でも争点のひとつになると見られる沖縄の普天間基地移転問題はいかがでしょうか?

岡留 東京からも知り合いの記者や編集者がたくさん取材に来るけど、これも行き着く先は霞が関。大手メディアは霞が関の意向を気にするあまり、防衛や外務官僚の誘導にのって書くから沖縄県内移設でやむを得ないという論調になる。共同通信ですら霞が関に依存してるわけだから、自前の記事は突っ張って書いてる地元紙も、共同の配信記事を使うと「霞が関の言う通り」みたいな記事になっちゃう。沖縄県民の立場からは、鳩山のリーダーシップに期待してるけど、もし県内移設で決着すれば暴動のひとつも置きかねない。そのときは俺も火炎瓶の1本でも投げようかな。ダメか?(笑)

──全体的に、自民政権への批判に比べて、民主党スキャンダルにはやや甘口な印象です。

岡留 権力を持った民主党をチェックするのは必要なことだよ。ただ、僕は民主党がこれまでの官僚主導政治から政治主導へ変えてくれることを大いに期待しているから、まだヨチヨチ歩きの政権でも、もう自民党は終わっているから長い目で見ようって気持ちでいるんだ。

──ほかに話題になった、朝青龍の暴行事件などはいかがでしょうか?

岡留 朝青龍引退も、バッシング報道の結果だと思う。酒に酔った上での喧嘩なんて一般社会ではよくあることだし、示談も成立している。「週刊新潮」も、暴行相手はマネージャーじゃなかったとスッパ抜いたのはいいけど、それだけで終わっちゃってるからね。本当に問題なのは日本相撲協会の封建的・利権的な体質だし、NHKを中心にしたメディアもそれを黙認してきた。角界スキャンダルを追及してきたはずの「週刊現代」「週刊ポスト」も歯切れが悪いし、今回も朝青龍ひとりを悪者にすることで決着した。メディアの体質は何ひとつ変わっていない。

──押尾やのりピー事件といった芸能スキャンダルも盛り上がりました。

岡留 確かに事件でもあるし、ヒューマンインタレストとして面白いのはわかるけど、それでもあそこまで執着するほどのネタかと思って見てたよ。スノーボードの國母和宏や沢尻エリカ叩きもそうだけど、芸能人やアスリートにモラルを持ち込んで叩くけど、芸能レポーターのほうがよっぽどひどい(笑)。

──大きなスキャンダルがあっても、メディア全体が低調な時代に入っています。

岡留 ネットに押されてる部分もあるんだろうけど、そのわりに部数を伸ばすための努力が見えてこないね。気になるのはネット配信を始めた日経新聞みたいに、紙媒体がネットと共存共栄を図ろうとしてること。若者の新聞・雑誌離れが進む中で、ますます紙媒体を読まない層を増やしてる。タコが自分の足を食ってる感じだよね。ネットとは違うんだっていう部分を線引きしないと、最終的には完全にのみ込まれちゃうんじゃないかな。もちろんネットにも情報はあるんだけど、新聞のような社会的影響力やクオリティを持つのは難しいと思ってるし、ジャーナリズム性もあんまり感じない。そんな状況だからこそ、週刊誌はタブーなき誌面づくりでガンガンしかないんじゃないかな。

(構成/常田 裕)

岡留安則(おかどめ・やすのり)
1947年鹿児島県生まれ。法政大学卒業後、「マスコミ評論」編集長を経て、79年、「噂の真相」を創刊。数々のスクープとスキャンダラスな記事で注目を集める。主な著書に『「噂の真相」25年戦記』(集英社新書)、『武器としてのスキャンダル』(ちくま文庫)、『噂の真相闘論外伝』(小社刊)など。現在は沖縄県に在住。

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  • 最終更新:5月14日(金) 17時11分
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