マット安川 まずなによりも、アグネスさんのアグレッシブさに驚かされた今回。日本ユニセフ協会では大使として、発展途上国の視察へ行く。歌手としては、長期にわたる全国ツアーを回り、武道館をお客様でいっぱいにする。
教育学の博士号を持ち、世界中で講演やメディア出演によって今起きている諸問題を、ありのまま世間に訴える。そして3児の母として、子育てにも精力的。すべてがアグネスさんの中で生きる意味、1つの生き様として貫かれており、脱帽です。
ソマリアの悲惨な現状を知ってほしい
歌手、日本ユニセフ協会大使、教育学博士(Ph.D) 1998年日本ユニセフ協会大使就任。芸能活動のかたわら、各国の現状を広くマスコミにアピールしている。
(撮影・前田せいめい)
アグネス 今年2月、日本ユニセフ協会大使としてソマリアを訪問しました。皆さんに声を大にしてお伝えしたいのは、現地の悲惨な実情です。ソマリアでは1980年代からずっと内戦が続いています。
中部と南部では、今も暫定政府(TFG)とイスラム原理主義の組織、アル・シャバブが激戦を繰り広げています。私が行った北部も、自爆テロや誘拐事件がしばしば起こるなど治安がよくありません。
国際援助団体が思うように活動できず、撤退するケースが少なくないのもそのためです。今年初めには、食糧支援を行ってきたWFP(国際連合世界食糧計画)が支援活動を停止しました。その日の食べ物にも困っているソマリアの人たちにとって、これは文字通りの死活問題です。
孤児院を訪ねたら夕食は薄いパンケーキ2枚だけ。衛生状態が悪いので、安全な水を飲める人は3割を下回ります。子供の4割が栄養失調になり、5人に1人は5歳まで生きられないというのも当然でしょう。
病院の医師は「レントゲン機器も保育器もない。せめて薬だけでも送ってほしい」と必死に訴えていました。ソマリアには命をつなぐためのあらゆるものが不足しているのです。
戦場から逃げてきたけれど、物乞いしないと食べていけない
今回ソマリアに行ったのは、この国の現状とユニセフの募金がどう使われているかを皆さんに報告するためです。現地で活動しているユニセフの仲間の熱心な説得にも後押しされました。
「お願いだからここの実態を日本中に知らせてほしい。決して安全ではないけど私たちが守るから」と。しかしちょうどテロが起きるなどして2度の申請が却下され、3度目にようやくOKが出たのです。
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