2010年5月10日
国公私立、すべての大学や大学院、短大に、入学者や卒業生の人数などの情報を2011年度から、それぞれのホームページなどで公開することが義務づけられることになった。適切な情報提供で、受験生らによりよい大学選びをしてもらうほか、公開による大学の質の向上が狙いだ。公開内容が適正かどうかは第三者機関で評価を受けることになる。
義務化の対象となるのは、入学者数のほか、教員の経歴、奨学金制度など9項目。文部科学省は今夏、学校教育法施行規則を改正する方針だ。
大学の情報公開は、中央教育審議会(文部科学相の諮問機関)の質保証システム部会が09年から検討を始め、4月28日に義務化の方向で了承した。
大学進学率が50%を超えるなか、受験生や保護者、高校側にとって、大学選びの際、教育や学生支援の内容は大切な情報だ。同時に、外部に情報を提供することで説明責任を果たし、教育や研究の質の向上につなげるように、部会では議論が進んだ。さらに、大学教育の国際競争や留学生の交流を進めるうえでも情報を世界に提供する必要があるとして、大学の自主性を尊重しながら公開を進めることでまとまった。
大学の情報公開については、積極的な大学がある一方で、「経営に悪影響がある」として都合の悪い数字などを公表したがらない大学も少なくなかった。文科省の調査では、大学のホームページは100%つくられているものの、受験者・合格者・入学者数などを公開している大学は6割、在学者や教員の総数も各6割程度しかない。教員の紹介や教育課程の概要も各約9割、卒業後の進路は約8割だった。
また、自己点検・評価結果の概要は約5割、第三者機関による認証評価結果の概要は約4割とやや比率が低かった。さらに、大学教育で身につけてもらう知識や技能の体系や全体的な学生の成績の評価については取り組みが遅れていたという。
こうした現状から、一定程度すでに公表され外部への説明責任を果たすべき情報については9項目を例示して義務化することにした。また、教育力を向上させる狙いで公表を努力義務とするものと、国際関係の情報も分けて示すことになった。
義務化によって公開内容は第三者機関に審査される。国からの補助金交付は、それまで情報公開をすればプラス評価になり加算されたのに対して、義務化されると公開が当然となり、不十分だとマイナス評価になり、減額される可能性が高い。
部会では、検討課題として、公開されている教育情報は学部や学科の間でも取り扱いが統一されていないことが指摘されている。このほか、受験生や保護者などが利用しやすいように、各大学が同じ形式で情報を提供して、比べられるように求めた。(見市紀世子、編集委員・山上浩二郎)
◇
■情報公開義務化の対象
【義務化される情報】
・学部、学科、課程などの名称
・教員組織、教員数、教員の学位・業績
・入学者数、定員、在学者数、卒業者数、進路
・学部・学科・課程・研究科・専攻ごとの教育研究上の目的
・授業科目、授業の方法や内容、年間授業計画
・修業年限に必要な修得単位数、取得可能な学位など
・所在地や交通手段、キャンパス、施設、課外活動など
・授業料、入学料などの費用、授業料減免の概要
・学生の支援組織、利用できる奨学金概要
【情報公開の努力義務が求められるもの】
・学部、学科、課程、研究科、専攻ごとの教育研究上の目的(「義務化」情報にも同じ項目あり)
・教育課程を通じて修得が期待できる知識・能力の体系
・学修成果への評価や卒業認定への基準
【今後公表が考えられる国際的な情報】
・修業年限に卒業する学生の割合や中途退学率
・教員に対する学生数
・単位・学位・成績評価の基準について大学の統一方針
・学位授与数
・外国人教員数
・研究成果の水準(論文引用数など)
・外部資金の獲得状況
・国際連携の状況
・留学生への詳細な情報
(一部略、中教審審議経過概要から)