格差社会の中心で友愛を叫ぶ
【第20回】 2010年5月14日
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西川敦子 [フリーライター]

低収入、ストレス病の夫が捨てられる!?
家族崩壊を招く「謎のうつ100万人時代」

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「年収300万円夫」が
心の病で離婚される

 この孤立病、じつは根深いところで収入格差と結びついているようだ。

 まず、非正規雇用の男性は結婚しづらいことなどもあり、独り暮らしのケースが多い。「いつまでそんなフリーターみたいな生活をしているんだ」「従弟の○○ちゃんのところはもう子どもが生まれたってよ」などと親からせっつかれたりして、実家とうまくいかない人たちも少なくない。

 さらに最近では、既婚者といえどいつ単身者に転落するかわからない。低収入の夫に“心の病疑惑”が発生すると、離婚してしまう妻が急増しているからだ。

離婚110番の代表で心理カウンセラーの澁川良幸さん。これまでに15000件以上もの離婚相談に乗ってきた。

 妻から三行半を突き付けられやすいのは、年収300万円台の男性たち。逆に600万円以上だと離婚には至りにくい――と話すのは離婚110番の代表でカウンセラーの澁川良幸さんだ。

 夫が低収入の世帯では、妻が共稼ぎで家計を支えていることが多い。そのうえ子育てもしているとなれば、公私両面で精神的な余裕がないのが実情だ。彼女たちが「今、ここで夫に倒れられたら共倒れになる。見限るしかない」と考えたとしても無理はないだろう。

 一方、妻に去られた夫は、仕事のストレスに加えて、プライベート面でも打撃を受け、ますます精神状態が悪化してしまう。

 「数年前は、『夫が心の病気になってしまいました、どうしたらいいでしょうか』といった相談が多かった。でも、今は違う。『夫が心の病気になったので離婚したいが、どうすればいいか』といった内容に変化しているんですよ」と澁川さん。

 そもそも、“心の病がらみ”の離婚相談の自体が異常に多く、年間相談数1500件のうち「相談者、パートナーのいずれかがうつ状態」というケースは半数以上にのぼるという。

じつは「精神疾患で離婚」はムリ?

 ただし、その訴えは男女で明らかに異なる。「男性は『妻が心の病になり、別れると言って聞かない。自分としてはどうにか思いとどまらせたいのですが』などという。ところが女性は違います。相手がうつ状態とわかると、ぐずぐずせず離婚の準備を始めるのです」

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西川敦子 [フリーライター]

1967年生まれ。上智大学外国語学部卒業。編集プロダクション勤務を経て、独立。週刊ダイヤモンド、人事関連雑誌、女性誌などで、メンタルヘルスや介護、医療、格差問題、独立・起業などをテーマに取材、執筆を続ける。西川氏の連載「『うつ』のち、晴れ」「働く男女の『取扱説明書』」「『婚迷時代』の男たち」は、ダイヤモンド・オンラインで人気連載に。


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