「年収300万円夫」が
心の病で離婚される
この孤立病、じつは根深いところで収入格差と結びついているようだ。
まず、非正規雇用の男性は結婚しづらいことなどもあり、独り暮らしのケースが多い。「いつまでそんなフリーターみたいな生活をしているんだ」「従弟の○○ちゃんのところはもう子どもが生まれたってよ」などと親からせっつかれたりして、実家とうまくいかない人たちも少なくない。
さらに最近では、既婚者といえどいつ単身者に転落するかわからない。低収入の夫に“心の病疑惑”が発生すると、離婚してしまう妻が急増しているからだ。
妻から三行半を突き付けられやすいのは、年収300万円台の男性たち。逆に600万円以上だと離婚には至りにくい――と話すのは離婚110番の代表でカウンセラーの澁川良幸さんだ。
夫が低収入の世帯では、妻が共稼ぎで家計を支えていることが多い。そのうえ子育てもしているとなれば、公私両面で精神的な余裕がないのが実情だ。彼女たちが「今、ここで夫に倒れられたら共倒れになる。見限るしかない」と考えたとしても無理はないだろう。
一方、妻に去られた夫は、仕事のストレスに加えて、プライベート面でも打撃を受け、ますます精神状態が悪化してしまう。
「数年前は、『夫が心の病気になってしまいました、どうしたらいいでしょうか』といった相談が多かった。でも、今は違う。『夫が心の病気になったので離婚したいが、どうすればいいか』といった内容に変化しているんですよ」と澁川さん。
そもそも、“心の病がらみ”の離婚相談の自体が異常に多く、年間相談数1500件のうち「相談者、パートナーのいずれかがうつ状態」というケースは半数以上にのぼるという。
じつは「精神疾患で離婚」はムリ?
ただし、その訴えは男女で明らかに異なる。「男性は『妻が心の病になり、別れると言って聞かない。自分としてはどうにか思いとどまらせたいのですが』などという。ところが女性は違います。相手がうつ状態とわかると、ぐずぐずせず離婚の準備を始めるのです」