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タイ情勢動き出す? 最強硬派銃撃で変化も
【バンコク=宮野弘之】タイのタクシン元首相を支持するUDDの強硬派で、首都バンコク中心部での大規模デモの撤収に反対していたカティヤ陸軍少将が銃撃され、重体に陥ったことにより、タイ情勢は大規模デモ開始からちょうど2カ月が経過した14日、大きく動き出し、変化する可能性が出てきた。ただし、UDDは態度を硬化させており、このまま政府側との交渉を拒否し、断固デモを続けるのか、それとも段階的に撤収へと向かうのかがわかるにはなお、時間がかかりそうだ。
今回のデモはタクシン氏の支持基盤である北部や北東部の農民や都市部の低所得者層が中心となり、アピシット首相の即時退陣と総選挙の実施を求め、3月14日からバンコク中心の繁華街で座り込みを開始した。4月10日にはデモ隊と治安部隊とが衝突し、日本人カメラマンが撃たれ死亡したほか、デモ隊と治安部隊双方に多数の死傷者が出た。
今回、銃撃されたカティヤ少将はタクシン派の軍人のトップとされ、今回のデモでも竹やりや鉄条網を使った“陣地”の構築を指導するなどしていた。また、4月の衝突では治安部隊の指揮官が死亡したが、黒い目出し帽と黒シャツを着た武装集団が射撃している様子が目撃され、少将が組織した民兵ではないかと指摘されていた。
少将は13日の銃撃直前の地元紙とのインタビューで「これから軍が強制排除に乗り出すが、やるのは夜明けだろう。それが軍のやり方だからだ」と指摘。「そうなれば黒シャツの男たちが再び出てくる。彼らは銃を持ち標的を探しているが、私とは関係はない」などと関係を否定していた。
ただ、同氏はこれまでも反タクシン派の政治家への襲撃事件などにかかわったとされ、テロ容疑で逮捕状が出ている。13日のインタビューでも、政府を解散・総選挙に追い込むまでデモを続けるべきだとし、UDD指導部の穏健派とされる3人を名指しし、「臆病(おくびょう)者」と批判していた。
同少将が撃たれたことで武装集団が報復に出て爆弾テロなどを起こす可能性もあり、当面、緊迫した状況は続きそうだ。
その一方で、「最強硬派がいなくなったことで、UDDが交渉に応じる可能性が出てきた」(西側外交筋)との指摘もある。
アピシット首相は13日、先に提案した国民和解に向けた行程表のうち、11月14日の総選挙実施は撤回する考えを示唆したが、一方で社会格差の是正などは行程表に従い取り組んでいく姿勢を強調しており、UDD側との交渉の道を残している。