このブログで書くはじめての読書感想文がこの本なのはいかがなものかと、思います。あまりにもヒドい本なので(^^;)

onkimo が温暖化派だから、ヒドい本だと言っていると思われたあなた。違います!

タイトルを読めば、このブロで取りあげてしかるべき本のようにしか見えない。でも、中身を読むと驚愕です。ほとんどの部分は地球温暖化とは関係無い! まったく詐欺のようなタイトルです。

中身を紹介するまえに、ちょっと著者の丸山茂徳さんについて、おはなししておきましょう。

丸山さんは、現在東工大の教授をなさっています。固体地球(つまり、地球そのもの)の研究で、非常にすぐれた業績を持っておられる方。プリュームテクトニクスという、プレートテクトニクスをおおきく発展させる概念を提唱された方の一人です。プリュームテクトニクスについてくわしく知りたい人は、wikipedia でも見てみてください。

そんな丸山さんは、現在、地球温暖化の懐疑論を精力的に唱えていらっしゃいます。この本もその一環。

地球惑星科学連合学会、という、地球科学関係の研究者が一同にあつまる学会があります(なぜか大気、海洋の研究、温暖化研究をしている人、の出席は少いのですが…。私も出ていません)。2008 年に幕張メッセで開かれたこの大会で、丸山さんが中心となって、温暖化懐疑論の講演会(セッション)が開かれました。温暖化に反対をとなえる人を集めて温暖化論を批判する講演会だったそうです。討論を行うため、少しだけ CO2 による温暖化支持派の研究者を呼んだ模様。このセッションは、たとえば雑誌「日経サイエンス」などでも取りあげられています。私は残念ながら参加していなかったのですが、情報は聴いていないでもないので、いつか取りあげしょう。

さて、問題の本、「科学者は~」の冒頭前書きから、丸山さんは飛ばしています。この連合大会における講演会で、丸山さんはアンケートを取りました。すると、10 人のうち一人しか、「21世紀は一方的温暖化である」とする人がいなかったそうです。

懐疑論者を中心にあつめたシンポジウムでのアンケート。そりゃ温暖化を信じない人が多いのはあたりまえでしょう。

このアンケートを取る時に、「このアンケートを公表したりして、なにか企む人が出るのではないか」という反対が出たそうです。そんな人を、丸山さんは、税金を貰って公的役割を担っているはずの科学者なのに社会的役割を放棄している、と痛烈に批判しています。

まあ、批判するのはよろしいのですが、それにしてもこの本のタイトル…。会場で反対した人の懸念、的中してしまいました orz

さて、「科学者〜」の本文についてですが、目次をここに抜粋しておきましょう。

1 章 「地球温暖化」 CO2 犯人説のウソと「寒冷化」の予兆
2 章 2020 年「成長の限界」と人類の危機
3 章 人口減少時代の日本の政策
終章 人類のバブルが崩壊する

この中で、本文のタイトルから予想される、温暖化を科学的側面から批判したものは、1 章のみ。全ページの 1/3 程度でしかありません。

その他は、丸山さんの「思い」が書いてあります。国家間の争いのために、資源の無駄遣いが起きている、世界統一国家を作らなければならない、とか、戦争を無くすために、民主主義を世界に広めなければならない、その中心になるのはアメリカだ、とか、将来のことを考えると、日本の人口が減るのはいいことだ、とか、日本が発展していくためには、他国から人材を集めるボーダーレス社会になる必要がある、日本語はどうせ絶滅するのだから、英語教育に力を入れるべきだ、とか。

丸山さんは筆が走るままに、まあ次から次へといろいろな意見を書かれています。とほほな意見がいっぱい。もちろん、中には興味深いお話があります。話をふくらませればとても面白いものになりそうですが、残念ながら書きとばす筆致のおかげで、どうしてもうすっぺらいものに見えます。

なんとなく、居酒屋でつばを飛ばして部下相手に天下国家を論じる、管理職サラリーマンを連想。


ここまでいろいろと書いてきましたが、とはいえ、実はあんまり悪い印象も受けませんでした。丸山さんは良い人なのかもしれません。アメリカの民主主義を手放しで賞賛するあたり、もしかしたらとても素直な人なのかも。

この新書の出版経緯を想像すると、こんな感じではないでしょうか。丸山さんは世界を論じたかった。でも、その内容で本を出してくれる出版社は無さそう。そこで、温暖化本として売り出しながら、内実は丸山さんの「所信表明演説」とすることにした、と。

ちなみに、この本の第 1 章は温暖化についてとりあつかっていますが、特にこれといったオリジナリティのある批判ありません。この項であえて取りあげる必要はなく、別のところで論じるついでにふれれば十分だと思います。まあ、温暖化について実際に手を動かして研究しているところと、数年後に寒冷化が始まる、と大胆に予言をしているところは評価すべきかな、という気もしますが。

最後に。あらためて言いますが、この本はヒドいです。ここ数年で買った本の中で、もっともヒドかった。でも、買って損した、とは思っていません。あまりのぶっ飛びぶりを、それはそれで楽しめたからです。それに、たまにはヒドい本を読まないと、他の本の良さもわかりませんからね。

2008 年 9 月 8 日、追記

有名なブロガーである池田信夫さんの書かれた記事を読んでいると、本文中で取り上げたセッション(丸山さんがアンケートを取ったセッション)の模様を書いているブログ記事へのリンクがありました。この記事です。この記事も、同じセッションの様子を描いたもののようです。

私と全く逆のたちばに立つ人の書いた記事ですが、良いですね。非常に生き生きと、セッションの様子が記されています。是非読んでみてください。温暖化懐疑論を唱えている人たちが、このアンケートの結果に快哉を叫んでいるところが目に浮かぶようです。そして、あらためて、ここでとりあげた丸山さんの本のタイトルの意味を考えてみていただければと思います。

2008.09.06 Sat l 読書感想文 l COM(2) TB(0) l top ▲

コメント

No title
人口が減るのは100%良いことです。

もうすぐドル安、発展途上国の経済成長、人口増加により、一人当たりエネルギー消費量の平均も上がり、石油、食料価格などは急騰します。

貧乏な人には死んでいただかなければいけません。



2009.12.03 Thu l 草食系温暖化論者. URL l 編集
Re: No title
> 貧乏な人には死んでいただかなければいけません。

早まらないで!生きていればきっといいことがあるはず!

2009.12.05 Sat l onkimo. URL l 編集

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