きょうのコラム「時鐘」 2010年5月15日

 沖縄復帰以前、昭和40年代はじめの旅先の思い出である。学生数人でこんな話をした。「日本は第2次大戦でドイツや朝鮮のように分割されなくてよかった」

中に沖縄の青年がいて「日本も分割されている」と怒った。「日本人なのに国内旅行にパスポートがいるんですよ」と出して見せた。一堂シーンとなった。沖縄は外国だった。その現実を軽く見た不明を恥じた

沖縄が本土に復帰したのは38年前の5月15日。様々な制度が一夜で変わった。だが、米国式に道路右側を走っていた車が日本式に左側通行になるのには6年かかった。交通法規と同様、基地は残った

一夜にして道路から米軍の車が消えたわけではなかった。今でも一見普通車だが米兵所有を示す「Yナンバー」車が多い。地元の人は米兵車両と事故を起すと厄介だから近づかない。沖縄県民の苦労は、基地騒音や治安問題ばかりでない

鳩山首相は安全保障の考えも不明なまま、一夜で基地問題が解決しそうな幻想を振りまき、反故にした。沖縄を再訪するようだが、わざとらしい「かりゆし姿」など県民感情を逆なでするばかりだ。