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荒れた言葉 無意識に

2010年05月13日

写真

パソコンで映像作品を制作する男性(手前)。奥は「ソラーナ」のスタッフ=和歌山市手平6丁目

◎電車や職場 突然「死ぬ」「殺す」・・・/トゥレット症候群の男性

・周囲の理解 求める声

 電車の中や職場で「死ぬ」「殺す」などの乱暴な言葉を無意識に発する---。「トゥレット症候群」という発達障害の人で、こんな症状が出る人がまれにいる。中には専門医の診断や治療を受けないまま長期にわたって周囲の偏見にさらされる人もいる。県内在住のある男性(29)の場合、症状に気づいてから診断を受けるまで10年余りかかった。(宮崎亮)

 男性は高校に入学してから通学途中などに乱暴な言葉が口をつくようになった。同級生に特別視され、いじめられたこともある。成績はそれほど悪くなく、大学に進学したが、キャンパスではいつも独りだった。

 大学生のころから自分でインターネットを使って発達障害や精神病のことを調べ始めた。だが自分の症状にあてはまるものは見つからなかった。就職活動では面接で緊張してしまい、失敗が続いた。

 県内の会社に就職したが、症状は悪化していく。同僚には笑われ、冷たくされた。見かねた社長と心療内科を受診したが、自分の様子を映したビデオを見てショックを受け、一層周りの目が気になった。自ら精神科の病院を探してまわり、2007年に和歌山市内の診療所でトゥレット症候群と診断された。

 東京大学医学系研究科の金生由紀子准教授(こころの発達医学分野)によると、トゥレット症候群は多くは18歳以前に発症する。発達障害の一種。発声と動作のチックが1年以上続く場合に診断されることが多い。発症率は米国の診断基準では1万人に5人程度だが、もっと高率の可能性もある。当事者や家族らの団体「日本トゥレット協会」の会員数は220人(09年度)。

 薬物療法が一定の効果を上げることが多いが完治は難しいとされる。周囲の無理解からうつ病になったり、ストレスで症状を悪化させたりする人も多いという。

 この男性の症状は「汚言症」と呼ばれ、トゥレット症候群で通院する人の25%程度にみられるという。

 男性はいま、専門医の観察や治療を受けながら、和歌山市内の福祉施設「事務支援センター ソラーナ」(和歌山市手平6丁目)で働いている。施設では、障害者らが中古パソコンの修理やホームページの作成などをしている。

 中浜倫太郎施設長(34)は男性を受け入れるに当たって、一緒に作業をする10人ほどの利用者たちに男性の障害について説明し、理解してもらった。男性が時々発する大声にも周囲は特別な対応をせず、淡々と作業を進める。今の職場について男性は「ストレスを感じにくいところがいい」と言う。

 中浜さんによると、男性はこれまでにビデオ作品の制作などを手がけ、顧客からもその出来栄えが高く評価されているという。中浜さんは「この障害を持つ人は周囲の理解があれば一般の企業で働くこともできる。障害が広く理解され、社会の中で受け入れられるようになってほしい」と話す。

 ソラーナへの問い合わせは電話(073・498・5883)で。

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