コラム

2010年05月14日号

【ここが問題】
陸山会事件、元事務担当者・石川知裕衆院議員が独断で収支報告書に記載しなかったという捉え方は不自然だ!!


●東京第5検察審査会
 周知のように、小沢一郎・民主党幹事長の資金管理団体「陸山会」の政治資金規正法違反事件で、東京地検特捜部は同法違反について小沢氏を不起訴(嫌疑不十分)とした。

 この不起訴処分に対し、東京第5検察審査会は『被疑者は、いずれの年の収支報告書についても、その提出前に確認することなく、担当者において収入も支出も全て真実ありのまま記載していると信じて、了承していた旨の供述をしているが、きわめて不合理、不自然で信用できない。』『被疑者が否認していても、以下の状況証拠が認められる。』と判断した。

(1)被疑者からの4億円を原資として土地を購入した事実を隠蔽(いんぺい)するため、銀行への融資申込書や約束手形に被疑者自らが署名、押印をし、陸山会の定期預金を担保に金利(年額約450万円)を支払ってまで銀行融資を受けている等の執拗(しつよう)な偽装工作をしている。
(2)土地代金を全額支払っているのに、土地の売主との間で不動産引渡し完了確認書(04年10月29日完了)や05年度分の固定資産税を陸山会で負担するとの合意書を取り交わしてまで本登記を翌年にずらしている。
(3)上記の諸工作は被疑者が多額の資金を有していると周囲に疑われ、マスコミ等に騒がれないための手段と推測される。
(4)絶対権力者である被疑者に無断で、A、B、Cらが本件のような資金の流れの隠蔽(いんぺい)工作等をする必要も理由もない。

 これらを総合すれば、被疑者とA、B、Cらとの共謀を認定することは可能である。』と議決した。

●異例な登記留保
 私は(2)に関心を抱く。明らかに小沢氏側の都合で「登記留保」にしているからだ。

 読売新聞によれはその理由は「同会元事務担当者・石川知裕衆院議員(36)(起訴)(以下石川被告)の供述によると、石川被告は当時、小沢氏が用意した4億円が簿外資金で、表に出せない金ではないかと推測。04年分の収支報告書に土地購入を記載すると、05年9月頃に公表されるため、翌06年9月頃に予定されていた次期同党代表選に向けた党員やサポーターの獲得に支障が出ることを懸念した」という。

 しかし、こんな例は不動産取引では異例な登記留保といえる。特捜部は「石川被告の独断」と捉えたが、私は検察審査会の議決の方が合理的推測と思う。
 土地は売り主と仲介業者だけしか、売り主の売る意志を知らなかったという物件であったのなら、ともかく、土地は世田谷区民農園の跡地だそうで関心を持っていた業者は少なからずいたとされる。人気のあった物件だと言う不動産業者もいる。

 そんな土地を石川被告が独断で購入した事実を収支報告書から除いたという捉え方は業界の常識と矛盾し、不自然である。小沢氏が誰も欲しがらない、人気のない場所や地型の悪い土地を購入したわけではない。04年10月29日に不動産引渡し完了しているのに、2ヵ月以上、所有権移転登記がなされないのは何故か、不審を抱く人がいたらどう対応する考えだったのか、国民が知りたいのはここだ。それがはっきりしない以上、政治資金収支報告書の虚偽記載を石川被告が独断でやったと捉えるのは不合理である。


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