万物萌(も)え出(い)ずる季節に新しい年度が始まる。命の力をもらうような、人の暦の妙である。百花新緑のもとで様々なスタートが切られた4月の言葉から
伝統の博多包丁の職人、宮崎春生さん(23)が故郷の長崎県・五島で独り立ちした。福岡の親方に弟子入りして丸5年、技を研いできた。「道具を作るだけでなく、お年寄りの家には包丁研ぎに回ります。人の役に立てる職人になる」と思いを語る
東京の高野雅夫さん(69)は大学院の特任教授に就任した。少年期の曲折をへて、17歳のころ初めて文字を覚えた。「初めて『たかのまさお』って書けたとき、頭のてっぺんからつま先まで電流が走ったようだった。人間になったんだと感じた」。自らを教材に貧困や尊厳を学生と考えたいそうだ
厳しい門出もある。献金疑惑に揺れる西松建設の入社式で、石橋直社長(69)は「凪(な)いだ海での出航を用意できなかったことを本当に申し訳なく思う」。それでなくても不況の日本で、艱難(かんなん)はフレッシュマンを玉にするか
日本中央競馬会の競馬学校には8年ぶりに女子合格者が入った。埼玉出身の小沢桃子さん(16)は「騎手になることをゴールにするのではなく、勝てる騎手になりたい」。牝馬(ひんば)ながらダービーを制したウオッカに自身を重ねる
東大の入学式に、昨年ノーベル物理学賞を受けた米国の南部陽一郎さん(88)が祝辞を寄せた。「学校の成績と社会に出てからの成功度とは別物。人はボルトやナットのような規格品であってはつまらない」。全国の新入生へのはなむけでもあろう。
2009年4月30日
天声人語
創価学会 地球市民 planetary citizen 仏壇 八葉蓮華 hachiyorenge
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2009年05月01日 22時35分55秒