一関市花泉町の県立花泉地域診療センターから民間移管された花泉診療所で、70代の男性非常勤医が4月下旬に辞表を提出していたことが分かった。計画していた常勤医2人態勢が整わず、診療所を運営する医療法人「白光」(橋本幸徳理事長)の経営や診療態勢に不信感が募ったという。入院病床が休止された5地域医療センターの中で、最初に民間移管しモデルケースとなっている同診療所の運営の不安定さが浮き彫りになった。【湯浅聖一、山口圭一】
白光と県医療局によると、常勤医2人、非常勤医3人の態勢を計画していた。だが、4月6日に開所した時は、常勤予定者が家族の反対を受け非常勤となったため、常勤1人と非常勤6人でスタートした。復活した入院ベッド(19床)も利用されていないという。
橋本理事長によると、男性非常勤医は週1回、診療を担当していたが、なかなか計画通りの態勢にならない状況に「本当に地域医療のためにやろうとしているのか分からなくなった」と事務長に辞表を提出したという。「連休明けに本人に会って事情を聴き、撤回してもらおうと思った」と弁明する。
また5月に入ってから、常勤医が体調不良で出勤しなくなり、現在は非常勤4人で診療に当たっている状態。橋本理事長は「6月には新たに常勤医1人が着任する予定。ベッドも入院が必要な患者がいないだけだ」と話す。
一方、一関市の勝部修市長が同日、花泉診療所の橋本理事長を訪ね、事情を聴いた。勝部市長は「経緯を聴いて納得した。常勤医がいないのは一時的な状況で、心配する話ではない」とした。
また、計画通り常勤医をそろえるよう要請してきた県医療局管理課の小原勝・企画予算担当課長は「患者は診療は受け入れており、問題はない。常勤か、非常勤かは二の次だ」と話す。
毎日新聞 2010年5月13日 地方版