「あんまり手を入れるんじゃないのよ。奈緒美ちゃんに悪いでしょう」と妻。連載「蔵王温泉ルネサンス」で、私が筆を加えたところを妻が当てた。私の記事の十年来の読者である妻には私の文体はばれている▲いや、文体というより、文章が「臭い」というのだ。「奈緒美ちゃんが、こんな文章を書くわけないでしょう。きっと泣いてるよ」とも。確かにその部分の加筆に林記者は抵抗していた▲しかし「臭さ」で言えば、浅妻記者は私より「臭い」原稿を書く。思えば、この2年、浅妻記者の文章の臭さを薄める一方、林記者の記事を臭くし続けてきた、かもしれない。「次長、ありがとうございました」。原稿を出し終えた時には、殊勝なことを言ってみせた林記者だが、その心中やいかに。【石川宏】
毎日新聞 2010年5月14日 地方版