集団予防接種が原因でB型肝炎ウイルスに感染したとして患者や遺族が国に1人当たり1650万~6600万円の損害賠償を求めているB型肝炎訴訟で、国側は14日の札幌地裁(石橋俊一裁判長)の口頭弁論で、和解勧告受け入れを表明した。原告側も受け入れを決めており、提訴から2年余で、双方が和解交渉のテーブルに着くことになった。今後、救済範囲や補償額などを巡る協議が始まる。
札幌地裁は前回期日(3月12日)で双方に和解を勧告し、14日までの回答を求めていた。原告側はただちに和解協議入りを決定。札幌に続き、3月26日に福岡地裁でも同様の勧告が続いたが、政府は方針を正式表明していなかった。
この日の口頭弁論で、国側代理人は和解協議の受諾を表明した一方、「和解対象者の範囲や認定方法、原告の症状に応じた和解金額などについて、議論が尽くされていない」と述べ、具体的な条件は示さなかった。
札幌地裁は和解勧告に当たり、救済範囲や補償額を「広くとらえる方向で判断する」との指針を示した。しかし国内感染者数は推計で最大140万人とされ、補償額は過去の薬害などと比べて過去最大規模になる可能性がある。国側は慎重な姿勢を保つとみられ、交渉は難航も予想される。
B型肝炎を巡っては、ウイルス感染の危険性を知りながら注射器の使い回しを放置していたとして、最高裁が06年6月、北海道の患者5人に対し国に1人550万円の賠償を命じた。しかし国は被害者の一律救済や実態調査に踏み出さなかったため、08年3月から全国10地裁で訴訟が順次起こされ、原告は420人に上る。札幌訴訟の原告は62人(患者59人、遺族3人)で、請求額は総額21億5050万円。【久野華代、金子淳】
毎日新聞 2010年5月14日 11時13分(最終更新 5月14日 11時57分)