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B型肝炎訴訟、国側が和解協議入り表明

 乳幼児期の集団予防接種でB型肝炎に感染したとして、全国の患者ら計420人が国に損害賠償を求めて10地裁に起こしたB型肝炎訴訟のうち、和解勧告が出されている札幌地裁(石橋俊一裁判長)で14日、口頭弁論が開かれ、国側は和解協議に入ることを正式に表明した。

 国が話し合いのテーブルに着いたことで、10地裁での集団訴訟は新たな局面に入ったが、原告と国の主張には大きな隔たりがあり、今後の協議は難航も予想される。

 午前10時からの口頭弁論で、国側は「裁判所の仲介のもとに和解の席に着くことにします」と和解協議に応じることを明らかにした。しかし、患者・感染者の救済範囲や賠償額など和解の具体案については「議論が尽くされていない」として提示しなかった。

 B型肝炎の感染ルートは集団予防接種以外にも複数ある。このため訴訟では、〈1〉乳幼児期に集団予防接種を受けたことの証明方法〈2〉出産時の母子感染ではないことの証明方法――が争点となったが、国と原告の主張には大きな開きがある。

 国はこれまで、集団予防接種を受けたことは母子手帳で確認する必要があり、母子感染の否定には母親の血液検査が陰性であることが求められると主張してきた。これに対し、原告側は「日本の乳幼児はみな集団予防接種を受けており、母子手帳は必ずしも必要ない」「母親が亡くなっていても、きょうだいに感染者がいなければ、母子感染は否定できる」として、より広く救済するよう求めている。

 賠償額について原告側は、少なくとも薬害C型肝炎被害者の救済基準(症状に応じて4000万〜1200万円)並みを求める方針。弁護団によると、全国10地裁で計420人いる原告全員を救済した場合、薬害C型肝炎被害者と同水準なら総額約93億円になるという。

 ただ、B型よる慢性肝炎、肝硬変、肝がんの患者は推定で計約7万人、未発症の感染者を合わせると計約110万〜140万人と推定される。原告以外にも救済対象を広げた場合、「兆単位の財源が必要」(厚労省)との見方もあり、協議は曲折が予想される。

2010年5月14日11時06分  読売新聞)
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