湯谷昇羊 不屈の経営者【列伝】
【第11回】 2010年5月13日
著者・コラム紹介バックナンバー
湯谷昇羊 [経済ジャーナリスト]

ナタデココ爆発的大ブーム終息で倒産寸前
新感覚の「東京ラスク」で成長、15店舗に
――東京ラスク グランバー社長 大川吉美

previous page
2
nextpage

 そこで84年6月、日本で初めて、スイス製チョコを使った手作りチョコレートの卸専門店「スイス亭」を千葉県松戸市に設立した。大川29歳のときのことだ。

 チョコレートは年間を通して売れない。売れるのは12月から3月までの冬場だけ。このため、夏はゼリーやクッキーを作って売った。売上は初年度1億円で、毎年1億円ずつ増えていき、6年目で6億円になった。取引先は300社、従業員も50人になっていた。工場が手狭になったため、90年に茨城県つくば市に移転した。

ナタデココブームで年商9億に!
しかしブームは2年で終わる

 相前後して大川にカミカゼがやってきた。ナタデココが爆発的に大流行したのだ。大川はゼリー製造のため1億円もするラインを導入、大手フジッコの下請けとなってナタデココを作りまくった。売上はみるみる伸びていった。なにしろナタデココだけで3億円も売り、6億円の売上が9億円にも達した。従業員も100人にまで増えた。

 大川はこの頃、「人生はこんなにも楽しいものか」と思っていた。大川は、朝工場で指示を出すと、昼にはゴルフ場でボールを追いかけていた。順風満帆で、絶頂期を謳歌していたのだ。

 しかし、好事魔多し。ブームは2年でパッタリと終わった。注文がゼロになった。残ったのはゼリーの機械のリースと100人の従業員のリストラだった。会社は絶頂から一転、経営危機に陥った。原料業者、パッケージ業者への債務は、頭を下げて2年間の長期支払いに繰り延べてもらった。

スイートポテトで復活するも
約10年で再度経営難に…

 再起策として考えたのは、1社依存経営からの脱却だった。これまでの経営を反省し、多くの顧客から支えられる体制づくりを考えた。

 大川は、デパートなどを見て回り市場調査を行なった。そこで目に付いたのがスイートポテトだった。大川にはスイートポテトを1ヵ月保たせる技術があった。「これだ」と思った大川は、300社に売って反応をみた。反応は上々だった。92年、自らインドネシアに出向き、現地農場でさつまいもを直営栽培。これを現地でペースト加工して輸入し、低価格で販売した。

 これが大当たりした。スイートポテトは1日4万個製造、年間4億円を売り上げた。これで経営危機を脱したのだ。96年、社名を「スイス亭」から「グランバー」に変更した。これは「大川」の英訳、グランドリバーをベースにして考案したもの。2000年には工場を岩手県釜石市に移転した。

previous page
2
nextpage
上枠
下枠
underline
昨日のランキング
直近1時間のランキング
ベストセラー書籍iPhoneアプリ登場
ダイヤモンド社から、あの『もしドラ』をはじめ、話題のベストセラー書籍3冊のiPhone向け電子書籍が発行されました。
オンラインの顧客体験を分析せよ
売り逃しはないか!? 顧客の体験を追跡しECサイトの問題点を洗い出すことで機会損失を最小化する

話題の記事

週刊ダイヤモンド

詳しくはこちら

特大号・特別定価号を含め、1年間(50冊)市価概算34,500円が、定期購読サービスをご利用いただくと25,000円(送料込み)。9,500円、約13冊分お得です。さらに3年購読なら最大49%OFF。

ハーバード・ビジネス・レビュー

詳しくはこちら

1冊2,000円が、通常3年購読で1,333円(送料込み)。割引率約33%、およそ12冊分もお得です。
特集によっては、品切れも発生します。定期購読なら買い逃しがありません。

ZAi

詳しくはこちら

年間12冊を定期購読すると、市販価格8,400円が7,150円(税・送料込み)でお得です。お近くに書店がない場合、または売り切れ等による買い逃しがなく、発売日にお手元へ送料無料でお届けします。
※別冊・臨時増刊号は含みません。

Diamond money!

詳しくはこちら

偶数月の1日発売(隔月刊)。1年購読(6冊)すると、市販価格 5,880円→4,700円(税・送料込)で、20%の割引!
※別冊・臨時増刊号は含みません。

Keyword
Information

湯谷昇羊 [経済ジャーナリスト]

経済ジャーナリスト。鳥取市出身、1952年生まれ。法政大学経済学部卒業。1986年にダイヤモンド社入社、2004年週刊ダイヤモンド編集長。2007年営業局長兼論説委員、同年取締役。2008年同社退社。2000年に立命館大学客員教授として教鞭をとる。主な著書に、「迷走する銀行」、「生保危機の真実」、「会社再建」(いずれもダイヤモンド社刊)、「サムライカード、世界へ」(文春新書)などがある。最新刊は「立石一真評伝 『できません』と云うな」(ダイヤモンド社刊)。


湯谷昇羊 不屈の経営者【列伝】

経済危機後の今も好調・堅調な業績をあげる経営者たち――。しかし、彼らは順風満帆にこの地位を築いてきたわけではない。どのように逆境を乗り越え、成功を導いてきたのか。経営者たちの「不屈の精神」に迫る。

「湯谷昇羊 不屈の経営者【列伝】」

⇒バックナンバー一覧