日本のセーフティーネットは、明らかに時代のズレを生じている。湯浅氏は「雇用保険が切れた後も、仕事が見つからない人たちは、どう生活していけばいいのか。次のセーフティーネットまでたどり着けなった人は、“本気でたどり着く気がなかったことだね”と言われてしまう。その結果、途中で溺れ死んだ人がたくさん出てしまった」と明かす。
「途中で溺れ死んだ人」の中には、地域に潜在化して、引きこもっていく人たちも多い。もちろん、貧困問題ともリンクしている。
笹森氏は「よく自己責任という言葉にぶつかる。しかし、自己責任の届かない、とんでもない所に押し込まれている人たちもいる。本当に自分だけの責任なのか」と疑問を投げかけるシーンもあった。
「協同労働」の法制化は
“社会からこぼれ落ちた人”を救うか
世間の目や中傷などを気にし、誰にも相談できずに行き詰った人たちを社会がどう救済していくのか。頑張ってもどうすることもできない本人に寄り添えるよう、時代に合わなくなったシステムを見直していく必要もある。
前回も紹介したように、愛知県豊川市の一家5人殺傷事件では、「引きこもり」に特化した専門機関や同じ悩みを持つ仲間などに相談や支援ができないまま、容疑者の本人も家族も行き詰った末の悲劇となった。
こうした「引きこもり」の長期化、深刻化を防ぐため、東京都は5月30日、「ひきこもりの若者と暮らす家族へのアドバイス」というテーマで、日本家族研究・家族療法学会会長の中村伸一医師の講演会を開催する。時間は、午後1時30分から、都庁第1本庁舎5階大会議場で、入場は無料(5月28日までに事前申し込みが必要)
これからの日本の社会は、どうあるべきなのか。高年齢化、長期化する「引きこもり」の問題は、その1つの切り口でもある。
フォーラムに参加した前出の下村氏は、新しい働き方である「協同労働」の法制化に期待を寄せる。
「法制化されれば、今まで入れなかった雇用保険などに入れるようになる。法人格を持てて、社会的に信用度も高まります。今後は、法人税の優遇措置をしてもらえれば、その分、活動費に回せるのでありがたいと思います」
法案は、今国会の5月中には通過する見通しというが…。
鳩山政権は、こんな時代のうねりをどう感じとるのか。普天間問題も大事だが、社会からこぼれ落ちた人たちにとっては、冷淡な国の対策が、心の軋むプレッシャーとなって、ボディーブローのように効いてくるだろう。