望 〜都の空から
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【社会】児童ポルノ掲示27人摘発2010年5月14日 07時08分 十二歳未満の男児のわいせつな画像をインターネットの男児ポルノ愛好者の掲示板に載せたとして、警視庁少年育成課は十三日、児童買春・ポルノ禁止法違反(公然陳列)の疑いで東京都世田谷区奥沢一、アルバイト佐藤誠容疑者(40)ら十九都道府県の男二十人を逮捕、男六人と女一人を書類送検した。同課によると、一つの児童ポルノ掲示板の投稿者の摘発人数では全国最多という。 逮捕容疑では、昨年十月二十二日〜今年二月二十日、香川県丸亀市の県立高校三年の男子生徒(17)が開設した掲示板に、この生徒を含む二十七人が携帯電話から男児の全裸などの画像データを送信し、児童ポルノの画像約百五十枚を公然陳列したとされる。 同課によると、男子生徒は「掲示板を作れば、多くの男児のわいせつ画像が手に入ると思った」と供述。ほかの二十六人も「男児ポルノのコレクションを自慢したかった」などと話し、全員が容疑を認めている。 同掲示板は、警視庁が四月三十日に削除要請した主な児童ポルノのランキングサイト十四サイトのうち、九サイトでアクセス数が十一位以内に入っていたという。 ◆『接続遮断』で温度差 インターネット上の児童ポルノサイトを強制的に閲覧できないようにする「ブロッキング」の実施に向け、関係省庁や通信業界の思惑が交錯している。早い実現を望む警察庁と、ブロッキングは「通信の秘密」を侵害するおそれがあるとして十分な環境整備を求める総務省や業界。犯罪対策閣僚会議は六月中にも実施に向けた考え方をまとめる方針だ。 「こうしている今も画像がネット上にあふれている」。いたいけな少女の画像を前に、警察庁幹部は表情を曇らせた。全国の警察はネット上の児童ポルノ根絶へと摘発に力を入れるが追いつかず、ブロッキング導入を切望している。 ブロッキングを実際に行うのはインターネット接続事業者「プロバイダー」。総務省や業界関係者は「児童ポルノは重大な人権侵害で、ブロッキングに反対はしない」と口をそろえるものの、「主に二つの点で懸念がある」と指摘する。 一つ目は、通信の秘密を侵害するのではないかというおそれだ。この点で、二つの民間団体「安心ネットづくり促進協議会」(安心協)と「児童ポルノ流通防止協議会」が三月、相次いで見解を公表。いずれもブロッキングは通信の秘密を侵害すると結論づけ、刑法の規定にある違法性が問われない場合に当たるかを検討した。 安心協は警察がサイト管理者を摘発できなかったり、サイトが削除されなかったりしたときに限り「緊急避難」で可能とする見解をまとめた。例としてサーバーが海外にあり、管理者も行方がわからないなど摘発や削除が難しい場合を挙げた。 しかし、警察庁の安藤隆春長官は「ブロッキングが許されるケースが限定され、実効性のある手段にならなくなる」と異を唱えた。 流通防止協議会は、さらに議論すべき課題があるとして結論は出さなかった。 二つ目は、児童ポルノ以外にも広がるのでは、という懸念だ。映像や音楽などの著作権を侵害しているサイトへの適用も考えられ、関係者は「一つ認めると際限がなくなるのでは」と案じる。 プロバイダー側の負担となる数億から数十億円とされる費用や、どのサイトを誰の判断で対象にするのか−などの問題もある。 原口一博総務相は二日、「ブロッキングが実施できる環境整備を進める」と述べ、近く通信業界トップらと法的課題を議論し、同省の方向性を取りまとめる意向を示した。 総務省の結論が安心協の見解と同じく緊急避難に限れば、警察庁の反発は必至だが、ネット業界関係者は「ブロッキングは児童ポルノ対策の一手段にすぎず、技術的な限界もある。児童ポルノは絶対に許されないとの社会的な意識の熟成を図る方が大事だ」と話す。 児童ポルノをめぐっては、個人が画像や映像を持つ「単純所持」を禁じる児童買春・ポルノ禁止法改正案が昨年、国会に提出されていたが衆院解散で廃案になっている。 (加藤寛太) <ブロッキング> プロバイダーがサイト閲覧者の同意を得ないで、児童ポルノなど特定サイトへの接続を強制的に遮断すること。プロバイダーが接続先を選別することになるため、憲法21条2項で規定されている「通信の秘密」を侵害しているとされる。電気通信事業法で罰則が設けられ、プロバイダーなどが侵した場合は重い罰則が科せられる。 (東京新聞)
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