(セ・パ交流戦、巨人9−1西武、2回戦、1勝1敗、13日、東京ドーム)オーロラビジョンに『祝 原監督 500勝』の文字が浮かぶ。声援を送るファンに、帽子を振って応えていた指揮官は次の瞬間、思わぬ行動に出た。オレンジ色に染まった一塁側の客席に向かって、記念のウイニングボールを投げ入れたのだ。
「500というよりも、きょう勝ったという方に安心というかうれしさがある。500というものは一足飛びにできるものではない。皆さんの協力、ファンの皆さんのおかげという部分で、ああいう形になった」
過去は振り返らないのが流儀だ。7年がかりの500勝だが、あくまでも通過点に過ぎない。だから、記念球にもまったく未練はなかった。
3年連続のセ・リーグ制覇を果たし、昨季は7年ぶりの日本一にもチームを導いた。日本代表を率いてワールド・ベースボール・クラシックも制し、“名将”の称号を手にしたが、向上心は衰えない。
その源は読書。移動中や就寝前などの時間をあて、今は『論語』について記された書物をカバンに入れている。会員制の月刊誌も購読し政財界、芸術分野などでトップに立つ人々の思考を吸収している。
“脳トレ”だけではなく、自宅近くや遠征先での約1時間の散歩など、体力強化も欠かさない。7月22日の誕生日で52歳。先輩監督たちの記録を塗り替えていく実力も時間もたっぷりある。(阿見俊輔)