きょうの社説 2010年5月14日

◎国際会議の誘致 「創造都市」でも先手打ちたい
 金沢市内で開催された日仏自治体交流会議は、日仏44自治体のトップが集った会議の 規模もさることながら、フランス芸術週間の設定や、市内の工芸工房などをめぐるクラフトツーリズム実施など、参加者を手厚くもてなす新たな仕掛けが試みられた点で意義があった。

 今回の会議は日本では初の開催となったが、準備段階から試行錯誤を繰り返すなかで一 定の成功を収めたことは、金沢にとって貴重な経験といえ、今後の国際会議誘致の大きな弾みになる。

 国際会議に関しては、金沢経済同友会が昨年、ユネスコの創造都市ネットワークの世界 会議誘致を提言した。今年は12月に中国・深●で開催し、2011年はカナダ・モントリオールが候補になっている。日本の「創造都市」は金沢のほか、神戸、名古屋市が登録されているが、国内のどこかで開催されれば、しばらく日本に回ってこないことも考えられ、誘致活動では先手を打つ積極さがほしい。開催資格がある以上、その可能性を早期に実現できるよう周到に準備を進めてほしい。

 金沢には横浜のパシフィコ横浜や新潟の朱鷺メッセのような、大規模なコンベンション 施設はない。国際会議誘致では都市全体の魅力やもてなしの工夫など総合力が問われることになる。日仏の会議は、その重要性をあらためて確認する場にもなった。

 フランス芸術週間で、訪れる人たちの国の文化に市民が親しんだことは、何よりの歓迎 の意思表示になったのではないか。クラフトツーリズムにしても、誘致競争で他都市との差別化を図る独自のもてなし策として工夫を重ねたい。

 国際コンベンションは国との調整が必要なものも多いが、自治体の力で引っ張れる会議 もある。その一つが創造都市ネットワーク会議のような都市会議である。

 世界で21都市が登録され、文学、音楽、映画、食文化など、それぞれ得意の分野で地 域づくりを進める海外自治体との交流は、日仏の会議に劣らず、学ぶべき点は多い。「クラフト創造都市」として金沢の工芸や文化を世界に発信する絶好の機会になるはずである。

☆●は土ヘンに川

◎小沢氏再聴取へ 疑惑を払しょくできるか
 民主党の小沢一郎幹事長が東京地検特捜部の再聴取に応じ、衆院政治倫理審査会にも出 席して自ら弁明する意向を表明したのは、参院選への影響と党内でくすぶる不満を無視できなくなったからだろう。だんまりを決め込んで批判されるより、自分から進んで説明の場を求め、責任を果たしたとアピールする方が得策と考えたのかもしれない。

 「起訴相当」の議決をした検察審査会は、小沢氏と大久保隆規被告らとの共謀を認定す ることは可能であり、判例に照らしても、絶大な指揮命令権限を持つ小沢氏の地位と、大久保被告ら3人の立場などを考慮すれば、小沢氏に共謀共同正犯が成立するとの認定が可能と指摘した。検察当局は、検察審査会の議決を重く受け止め、仕切り直しをするつもりで再捜査に臨んでほしい。なぜ不起訴なのか、市民感覚での「素朴な疑問」をぬぐい去る努力を求めたい。

 小沢氏は原則非公開の政倫審で、自身の資金管理団体による土地購入事件に絡む疑惑に ついて説明するという。偽証罪が問われる証人喚問を避けて、非公開の場で「みそぎ」を受けた実績を得たいという思いが透けて見える。

 政倫審への出席について、小沢氏は「国民の皆さんにしっかりお話しすることによって 理解と支持を獲得することができると思っている」と述べたが、本当にそう願うならば、やはり公開の場で説明するのが筋だろう。

 小沢氏は過去の定例会見などで、必ずしも十分な説明をしてこなかった。都合の悪い質 問にはまともに答えようとしなかったり、開き直りとも受け取れるそぶりや質問者を威かくするような態度を見せたこともあった。隠そうとすればするほど、国民の疑惑は深まる。すべての質問について真摯な態度でこたえてほしい。

 小沢氏の起訴相当の議決は、民主党に衝撃をもたらした。このままでは参院選に勝てな いという焦りが日増しに強くなっているはずだ。だが、それは鳩山由紀夫首相と小沢氏の「政治とカネ」の問題について、自浄作用を発揮してこなかったツケでもある。