■柳沢 自衛隊をどう使っていくのか、基地のネットワークをどう維持していくのかということは、もう米国任せではすまなくなっている。日本としてもグローバルな戦略をもって米国と議論しないと、鳩山総理の言う「対等な日米」は実現しない。軍事力で対等になるわけはないので、そんなことは米国も求めていない。
今度のQDRを見ても同盟国との協力関係を非常に強調している。本質的な変化ではないという専門家もいるが、ブッシュ政権の時代の「単独行動主義」と比べれば、オバマは、アメリカ単独ではグローバルな問題を解決出来ないと言っている、それはかなり大きな変化で、同盟国にいろいろ求めてくる。そのとき、同盟国としてどういうものができ、日本のグローバルな戦略認識としてどういうことが必要だということを言っていかないと、いつまでたっても対等にならない。
■森本 昨年末に、日米同盟に関する検討が行われた際、米国側のローレスなどが、レポートを出して、基本的に米国はグローバルな問題に米国1国で対応できる能力はない、米国は同盟国に協力を求めるが、それができないのであればやらなくていい。その代わり自分の国の防衛力を米国に依存しないような状態になるように、自主防衛の努力をしろ、ただ国際協力に出てくるのであれば独立完結性のある能力を持って出てこいと主張している。日本は、いま、防衛大綱を検討しているが、単にどういう防衛力にするか、ではなく、むしろどういう役割を果たしていくか、それをどう国民に説明するかということができないと本当の意味での防衛大綱ではない。今度の大綱は量を論じるよりも、機能というか、防衛力の役割や規模を論理的に説明できるモノにしないと行けない。
■柳沢 大きく言えば、そこでコンセンサスがないと、今後も起きるであろう日米安保をめぐるいろんな問題に対応できない。
■森本 その前提となる対中脅威認識がずれている。
■柳沢 日本のほうが脅威観は強いのではないか。
■森本 事務レベルは日本のほうが強く持っている。しかし、政治レベルは日本のほうに脅威観がない。官僚レベルは、米国の中国に対する脅威観が少ないことにむしろいらだっている。ところが政治レベルはねじれていて、なんで中国が脅威なのか、そんなことは国民に説明できないというのが日本の民主党の政治家です。
脅威という考え方は間違っているかもしれないが、中国が米国に対して挑戦しようとしていることははっきりしている。挑戦につねにヘッジする、きちんと対応する、例えば宇宙でASATを作るとか、空母をもって東シナ海に出てくるとか、あるいは人権侵害が重大で深刻なスーダン政府に武器を売るとか、あるいはイランの核開発制裁に反対するとか、そういう中国の対応にはきちんと対応しないといけない。
そこは日本として、つねにヘッジし、関与していく必要がある。それをやらないと、おそらく中国は国際社会のなかで受け入れられるような国にはなりませんよ、ということを常に指摘し続けるということをやらないといけない。実際はオバマ政権は1年たってからだんだんそうなってきた。一年間は相当に、対中協調主義だったが、1年たったらそれではうまくいかないということがわかってきて、リベラルから中道にカジを切っている。QDRは明らかにその変わり目で中国脅威論にカジを切ったと思う。
2010年4月5日