■森本 それは、日米安保体制の中で、今まで、あまり触れられないできた部分であり、安保条約に基づいて米軍が来援するというのは旧ガイドラインの時から想定があるんですが、どこの部隊がどのくらい、どこに来演するかということを、米国は日本側に説明したこともなく、日本も米国に問いただしたことはないんです。だから、危機事態に際しての、コンテンジェージー・プランを米国は日本に示したこともなく、聞いたこともない。これはこれからの日米同盟協力の中ではっきりとさせる必要があると思います。
また、拡大抑止というのは核の抑止と通常戦力の抑止をトータルで考えるんだけども、核の抑止についても、一体、核の傘の実態は何かということは今まで明らかにしてこなかった。例えば、米軍の戦略核が、どういうふうにターゲッティング(目標選定)されているかということを米国側に聞いたこともない。拡大抑止のために、米国の核戦力が同盟国の安全のために割り当てられる「余裕があるか」「余っているのか」ということについて米国側から説明も聞いたことがない。
これを抽象的な言葉で「核の傘」が確保されているということで国内に説明してきたが、それを詰めずに、「むしろあいまいな状態にしているのが抑止だ」ということにはならない。例えば、米露の戦略核戦力弾頭が1550レベルになるということになると、米国にとって最小抑止戦力しかないという状態になり、拡大抑止に使われる核弾頭なんて全然ないということが軍事的には分かったとしても、それを黙っている。これが同盟の実態なのかという議論をするべきだろうと思うんです。それはこれから突き詰めて考えてみなければいけないし、通常戦力についても同じです。例えば、台湾有事に、一体、米国がどういう作戦をするのかということを日米でシミュレーションをして、シナリオ書いて、抑止がどこまで働くかということを本当に詰めないで日米防衛ガイドラインを作ってますね。
■柳沢 はい、それはもう、私も担当していましたので。
■森本 だけれども、確かにあんまり詰めてしまうのは正しくないかも知れないんですけれども、同盟国に対する抑止というのはどのような意図で、太平洋軍がオペレーションするかという全ぼうが分からずに、「米国は多分、こうするだろう」という推測で日本が防衛計画を作る、あるいは日米防衛協力のガイドラインを進める。これは、はっきり言って国家として怠慢ということだと思う。いざとなった時に我々が予想もしないようなことを米国が考えていて、しかも米国は事前に同盟国といえども、相談しませんから。軍事作戦については。
2010年4月5日