ニュース争論

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ニュース争論:沖縄に海兵隊は必要か(2止)(2/11ページ)

 ■森本 アメリカは、領有権を係争している地域で紛争が起きたときには介入しないと思います。だから、例えば、竹島で日韓がぶつかったときに、アメリカは中立を維持するかもしれないです。しかし、尖閣というのは明らかに日本が領有していて実効支配している。日中間に領有権問題はないという立場を維持している地域に、仮に中国の普通の漁船が来るならいいですけれども、正規軍があそこを取りに来た場合にはアメリカは介入するでしょう。それがなかったら安保条約第5条のわが国の施政の下における日米いずれか一方に対する武力攻撃に対して共通の危険とみなすことにはならない。それこそ日米安保体制の危機ではないですか。

 ■柳沢 5条ですね。

 ■森本 それが成り立たないのでは、安保条約そのものの根底が崩れてくるんじゃないでしょうか。

 ■柳沢 それはまさに正規軍が出てくれば日本有事そのものですからね。ただ私も、官邸にいるとき、中国のコーストガードが尖閣に来たり、いろんな体験をしましたが、その時に疑問に感じながら悩んでいたのは、その辺の所なんです。自衛隊をそういう場面で出すわけにも行かない。自衛隊を出せば向こうも軍隊を出して引っ込みがつかなくなる訳だし、その時にアメリカがどういう態度をとるのかな、ということを、常々考えていたんです。

 ■森本 ただ、アメリカは多分、すぐに海兵隊を派遣してということにはならないかもしれない。恐らく、最初の活動は、海上阻止で対応するということなんでしょう。

 ■柳沢 むしろそうだと思います。

 ■森本 台湾海峡危機が1996年に起きた時に台湾海峡に空母を入れたような、そういった抑止機能を果たすという対応になるんでしょう。しかし、その空母機動部隊の中には海兵隊の揚陸艦も入っているということですから。空母が一隻だけ入ってくるわけではありませんので。

 ■柳沢 確かに96年に、台湾周辺で中国がミサイル演習をやって、米空母が台湾海峡に出て、中国はすごく大きな挫折感を感じたわけですね。

 ■森本 そうですね。

 ■柳沢 今回はそれからもう十数年たって、今度のQDR(国防政策の指針となる「4年ごとの国防政策の見直し」の中では、中国はアメリカに対するアンタイ・アクセス能力を持っているという言い方をしています。対中国の軍事バランスを考えた時に、やはり大きなポイントは、海兵隊がどう動くかは別として、ポイントは海空にますます移ってくるんだろうと。海兵隊を台湾有事で投入・・・私は投入できないと思っています。政治的にも軍事的にもね。それをやったら、本当にお互い引けなくなっちゃいますから。もちろん最悪の状況に備えるための「軍事力だ、抑止力だ」というのは、その通りだけれども、それを語るのであれば、まさに政治は、そういう時に備えてどういう覚悟を持っているのか、どういう戦略的な発想でそういう事態に立ち向かおうとしているのかということなんですね、私の一番の動機はそこなんです。あまりにも安易に「抑止力だ」と。

 もう一つ私が疑問に思い始めているのは、「抑止力」という時に、アメリカが考えている抑止力とそろっているだろうか、日本は。例えば核密約の問題一つとっても、それは「持ち込み」について密約があったかどうかということは問題になるんですけれども、そもそも使う可能性があるから持ち込むわけですよね。そっちの方について日本政府はどう考えていたのだろうかと、おそらく、そこは考えていなかったんじゃないかという気がしてしょうがないんです。

 つまり核なり海兵隊なり、あるいは相手に対する打撃力が米軍の役割ということになっていますが、そういうアメリカがやる作戦の中身について、日本は、基本的には「口を出さない、触らない」という、そういう姿勢ではもう済まなくなってくるだろうと思うんですね。北朝鮮だって、それはもう、そんなに遠い将来でなくて、何かあるかもしれない訳だし。私は、だから政治家である総理のスタッフとして勤務しながら、「自分だったら、総理に何を上げていくのか」というようなことを悩んできました。今、「政治がそういうところをちゃんと考えているんだろうか」というところがすごく気になっている。

2010年4月5日

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